00344_比較広告が違法とされるリスクその1:景表法違反リスク

日本では、憲法21条で表現の自由が保障されていることもあり、名誉棄損罪や侮辱罪といった犯罪に該当する場合を別として、キャッチコピーにどのような文句を使用したとしても、使用差し止めや損害賠償を請求されるいわれはないとも考えられます。

しかしながら、景表法(景品表示法)第4条は、
「自己の供給する商品等の内容や取引条件について、実際のものまたは競争事業者のものよりも、著しく優良または有利であると一般消費者に誤認される表示」
を不当表示として禁止し、公正取引委員会は、これに違反する行為の差し止めなどの命令を行うことができると規定しております。

この規定ゆえ、日本では、長年、競合する他社商品と比較して自社商品の優位性をアピールするいわゆる比較広告の手法については忌避されてきました。

しかしながら、昭和62年4月21日に公表された公正取引委員会の比較広告に関するガイドラインにより、
1 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
2 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
3 比較の方法が公正であること
といった3つの要件を満たすことを条件として、行政解釈により、比較広告が許容されるようになりました。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00343_国立大学医学部教授へ贈り物や接待をした場合の法的リスク

刑法198条は、
「賄賂を供与し、またはその申込みもしくは約束をした者は、3年以下の懲役または250万円以下の罰金に処する」
と規定し、公務員に公権力の行使に関して何らかの便宜をはかってもらうために、金品などを提供したりする行為を
「贈賄罪」
としています。

そして、ここでいう
「公務員」
について、刑法は、
「この法律において公務員とは、国または地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう」
と定義しています。

このように、公務員に対し、公権力の行使に関して何らかの便宜をはかってもらうために、金品などを提供したりすることは厳罰をもって禁止されています。

ところで、一口に公務員といっても、霞が関の中央省庁に勤務している一見して明らかな公務員から、かつての旧国鉄、旧電信電話公社のように、民間の鉄道会社や電話会社と変わらない業務を行っている公務員もいます。

その後、このような民間企業と同様の業務を行っていた公務員などは、所属先が民営化したり、また、行政改革推進法の施行など、一連の行政改革などによりその所属先が独立行政法人として組織改変などが行われたことなどによりその身分を失うこととなりました。

その一方で、独立行政法人造幣局など、一部の
「業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められる」
業務を行う独立行政法人の役職員は、公務員としての身分を保持することとされる場合があります。

国立大学は、かつては、その名のとおり国が運営する大学でしたが、一連の行政改革等により、その運営主体が国から国立大学法人に移行することとなり、これまで公務員の地位を有していた国立大学の教授や職員は、その地位を失うこととなりました。

国立大学医学部教授といっても、もはや公務員ではない以上、例えば
「インフルエンザ新薬開発のプロジェクトに参加するための便宜を図ってもらうこと」
を目的にゴルフ接待をしても収賄罪は成立しないようにも考えられます。

しかしながら、国立大学法人法19条は、
「国立大学法人の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす」
とし、刑法などの罰則が適用される限りにおいて、国立大学の教授や職員は、公務員とみなされますので、高中社長の行為は贈賄罪に該当する可能性があります。

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00342_消費者団体訴訟リスクの本質

民事訴訟においては、争いを解決するための手段である
「判決」
に実効性を持たせるために、自分の権利の実現を求める者本人が
「原告」
となり訴えを起こす必要があります。

すなわち、可哀そうで見ていられないという理由で、見ず知らずの第三者が
「原告」
となり、民事訴訟を提起するということは原則としてできません。

民事訴訟法においては、これを
「当事者適格」
と言い、民事訴訟を適法に進めるための条件のひとつとされていますので、
当事者適格を有さない者が
「原告」
となったり、
当事者適格を有さない者を
「被告」
として
訴訟を提起した場合、当該訴訟は、
不適法なものとして
「却下」
される
ことになるのが原則です。

しかしながら、社会的強者である企業と社会的弱者である消費者との格差が顕著となった現代社会において、このような民事訴訟上の原理原則を形式的に貫くことによる不都合が生じました。

すなわち、企業などが消費者契約法に違反する営業行為を行い、これによって被害を受けた個々の消費者が個別に解決を図ろうとしても、情報力や交渉力に圧倒的な差があるため、また、このような営業行為の被害者となる消費者にはお年寄りなど、訴訟遂行費用すら賄えない社会的弱者が多いということもあり、泣き寝入りしてしまうケースが常態化したのです。

そこで、消費者問題に関し、当事者適格に対する例外が設けられるようになりました。

これが、消費者契約法に基づき設けられた消費者団体訴訟制度と呼ばれるものです。

この制度は、消費者全体の利益を守ることを目的として、
「消費者のことをよく理解し、利益を代弁することが客観的に期待でき、かつ、組織的にも堅実と認定された消費者団体」
に対し、
1 消費者契約法に違反する営業行為に対して、書面にてそのような営業行為をやめるよう請求する権利と、
2 当該書面でも是正されない場合に、民事訴訟の例外として、消費者に代わって、消費者契約法に違反する営業行為をやめることを求めて訴えを提起する権利を、
それぞれ付与しているのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00341_個人情報保護における侵害論と損害論:たとえ重篤な違法行為をしても、損害がなければ賠償義務は生じない

個人情報は、個人情報保護法により法律上保護されるべき権利であることが明記されているところ、これを違法に第三者に売り渡しますと、当該行為者は権利侵害行為を行ったことになります。

そして、この行為者が所属する企業についても、個人情報保護法に基づく監督義務違反による社固有の不法行為(民法709条)として、あるいは使用者としての責任(民法715条)として、個人情報を漏洩された被害者各人に対して損害賠償責任を負うことになります。

しかしながら、権利侵害行為があれば常に賠償義務を負うというものではなく、権利侵害行為が明らかであっても具体的に発生した損害が不明な場合等には、損害賠償義務が生じないということもあり得ます。

法的解決の場面においては、権利侵害の議論(侵害論)と発生した損害に関する議論(損害論)とは明確に区別されるからです。

すなわち、個人情報の漏洩により現実に被った経済的損害や精神的苦痛といったものは被害者各人で異なるでしょうし、そもそも被害者が賠償請求の主張すらしていない段階において、具体的に損害賠償の議論をするのは、拙速に過ぎる場合もあり得ます。

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00340_個人情報保護法の制定背景:努力指針から法的義務へ

一昔前であれば、個人情報の保護など全く意識されず、各種学校の名簿なんかがごく普通に名簿業者に売買されていました。

会社の従業員も、カネに困ったら、小遣い稼ぎのために会社の顧客名簿を売りさばき、バレたところで、ちょっとお叱りを受ける程度で済んだ牧歌的な時代もありました。

しかし、高度情報化社会が到来した現代にでは、各種企業が保有する顧客データなどの膨大な個人情報は、情報処理技術などの発達により、その蓄積、加工、編集などが簡単に行えるようになり、一旦漏洩すると、インターネットなどを通じて、これら個人情報が一瞬で世界中を駆け巡りました。

さらに漏洩した個人情報は、オレオレ詐欺やフィッシング詐欺といった、個人情報を用いた新手の犯罪に使われるようになってきました。

そこで、2005(平成17)年に個人情報保護法が全面的に施行され、個人情報などを扱う企業は、従業員に個人情報などを扱わせるに当たり、個人情報の安全管理のための必要な監督義務が課されるようになりました。

その結果、個人情報の保護は単なる努力指針ではなく、法律問題・経営課題として意識されるとともに、個人情報を漏洩させた企業に対しては厳しい責任追及がなされるようになってきています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00339_企業法務のイシュー・スポッティング・ツール(企業法務の全体像・各論)

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00338_企業法務のイシュー・スポッティング・ツール(企業法務の全体像・総論)

組織論(ハードウエア)とオペレーション論(ソフトウェア)

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00337_企業法務の定義

企業法務の定義について、諸説あることは理解しております。

1ついえることは、法律で明確な定義があるわけでもなく、いまだ学説が固まっているわけではなく(そもそも、企業法務について、学説や理論自体が存在せず、私を含めて、学者や実務家が、それぞれ勝手気ままな考え方を述べている、極めて未熟な分野です)、その意味では、私の定義も含めて、
「どれも正解であり、どれも不正解でもある」
と言い得る状況です。

その意味では、企業法務をどのように定義するかは、各々の選択課題でもあるのですが、経営者と法務部員間、法務部員と弁護士間、その他、企業法務に携わるステークホルダーズにおいて、定義によって補足されるべき内包と外延において齟齬が生じず、錯誤や誤解が生じていなければ特段の選択基準はなかろう、と考えます。

私としては、私が作った

「企業法務とは、『企業経営・企業活動に関連して生じる法的脅威に対する安全保障活動全般のマネジメント』を指す」

という定義がもっともしっくりくるのではないか、と考えています。

以下、この「企業経営・企業活動に関連して生じる法的脅威に対する安全保障活動全般のマネジメント」という定義を、因数分解的に各要素還元してその内包を吟味していきます。

1 「企業経営・企業活動に関連して生じる」
まずは、どのような活動に関する法的脅威か?という点についてです。

これは、「企業経営・企業活動に関連して」と限定されています。企業経営・企業活動は、商売や金儲けとは少し違うニュアンスを含みます。

商売や金儲けというのは、個人営業として行うものを包摂します。

専業主婦がメルカリで不用品を売って儲けるのも商売・金儲けです。

しかしながら、企業法務ではこの種の法律問題は扱いません。

なぜなら、このような個人営業として行う商売や金儲けは、企業経営・企業活動とは異なるからです。

「企業経営・企業活動」も、別に高尚で公益的なことをやっているわけではなく、その本質は「営利活動」であり、平たくいえば、「商売や金儲け」です。

では、「企業経営・企業活動」と 「個人営業として行う商売や金儲け」とどこが違うか、というと、「個人として行うか」、「組織として、チームとして、有機的一体的に『ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン』として、行うか」という点で違います。

犯罪でも単独犯と共同正犯では、犯罪成立上の取扱い方も異なります。単独犯においては「自己責任原理」が貫かれますが、共同正犯においては「一部実行全部責任」として「個人としてはやってもいない犯罪まで責任を背負わされる」という乱暴な取扱が正当化されます。これは、共同正犯の方が、単独犯と比べると、遥かに犯罪成功の可能性が高く、反社会性・凶悪性が高いからです。

商売や金儲けも同じです。

「個人営業として行う商売や金儲け」 と違い、「人・モノ・カネ・チエを有機的に集積して一体的人格と化した、巨大組織」たる企業(たいてい株式会社という法人形態によって行われます)により金儲けを行う企業経営は、個人営業とは全く違うレベルにおいて、安全かつ効率的な金儲けを可能とします。株式会社制度が人類社会最大の発明と言われる所以です。

すなわち、企業、すなわち営利法人たる株式会社は、「頭(カシラ)を決め、掟(オキテ)を定め、下の連中に掟を守らせる」という組織としての有機的活動前提を整えた上で、ヒト・モノ・カネ・チエといった資源を調達・運用・廃棄や組み替えを行い、企業内に蓄積した付加価値(商品やサービス提供システム)をカネに替え、企業内に蓄積した富を、ステークホルダーに還元・分配していく、という活動を大規模かつ組織的かつ永続的に展開しますが、これが企業経営・企業活動とも言うべきものの実体となります。

そして、企業経営・企業活動には、個人営業とは異質の、組織活動特有のリスクや脅威が生じます。

2 「法的脅威に対する」
そして、企業法務が対象とするのは、
「法的脅威」
です。

地震や災害といった物理的脅威への予防・被害軽減・対処は、企業法務の所掌外となります。

実際、弁護士はじめとした法律の専門家は、防災の専門家ではありませんし、地震や災害の際に、先頭に立って避難誘導するスキルももっていませんし、災害時の復旧活動に出しゃばると、かえって、自衛隊の邪魔になるだけです。

もちろん、
「経営上の脅威」
も含みません。

モノが売れない、客が来ない、アテがはずれた、カネがない、借金が減らない、景気が悪い、といった問題は、弁護士も法務部も全く解決できません。

というより、そもそもこういった問題が解決できるのであば、弁護士や法務部員をやめて、とっとと起業して、大金持ちになっています。

とはいえ、暴力団の脅威や、税務署や規制当局からお咎めを受ける脅威、また、
「経営が立ち行かなくなったので借金を合法的に減らすなり、一部チャラにして助けてもらいたい」
といった、法律の力を用いて除去・解決・改善・緩和しうる脅威課題は、すべて、
「法的脅威」
として捉えることが可能です。

3 「安全保障活動全般の」
そして、
「安全保障活動全般」
ですが、こちらは想像以上に非常に幅広い活動を含みます。

事件処理、トラブル対応といった有事対応も含まれますが、危機予防や紛争予防も含まれます。

また、法的脅威をきちんと把握した上での、事業上の意思決定を行うこと(戦略的意思決定支援のための経営政策法務)や、仮に、
「脅威」
が存在したとしても
「制御可能な脅威」
であれば、積極的にリスクテイクして、企業活動を展開するようなアグレッシブな事業構築支援(戦略法務)も定義に含まれます。

さらに、法的脅威に対する日常的な認知と警戒を不断に行うことも含まれます。

すなわち、
「法的脅威など一切存在しないし、当社には無関係」
という
「楽観バイアスによる平和ボケ」
を克服し、企業内外に存在する
「法的脅威」
を、

鋭く感受し(不安に感じ)、
クリアに認知し(発見・特定し)、
発見し特定した「法的脅威」を、具体化・見える化・カタチ化・言語化・文書化して共有し、
自社の置かれた状況について、ゲームルール・ゲーム環境・現実的相場観といった点からリアルに把握し、
「法的脅威」への対処方針を具体的なゴールとしてデザインし、
ゴールに至る道筋に存在する課題を抽出し、
課題克服のための選択肢を創出し、
プロコン分析に基づき、トップが判断した選択肢を実施し、脅威を回避し、低減させ、効果的に制御できるよう働きかけを行う、

といった活動をも捕捉します。

国の安全保障活動が、
「空母を派遣し、戦闘機を飛ばし、ミサイルを打ち込み、軍隊を派遣するといった古めかしい暴力的活動」
のみならず、
「外交や、インテリジェンスといった、知的でソフトでスマートでエレガントな活動をも包含する、幅広く、奥行き深い活動」
をも包含するように、現代の企業法務も、
「企業の内外をとりまく法的脅威に対する多種多様な広汎な働きかけの手法」
を、幅広く、奥行深く取り込んで理解すべきと考える次第です。

4 「マネジメント」
最後に、 『企業の法的脅威に対する安全保障活動全般のマネジメント』 という定義の
「マネジメント」
という部分です。

これは、主に、企業経営陣あるいは企業内の法務部において、もっとも意識が欠けており、かつ、もっとも意識しなければならない観点です。

企業法務活動も
「マネジメント」
である以上、目標を設定し、その目標を達成するために組織の経営資源を効率的に活用するものでなければなりません。

ところが、
「企業の法的脅威に対する安全保障活動」
というものについては、病理性と非常識性と不確実性が高いため、なかなか目標を設定しがたく、かつ、経験値が欠如し展開予測能力を喪失した経営陣が恐慌に陥り、冷静な対処知性を欠如している状態で、事態に臨もうとするため、費用対効果の概念を度外視した過剰な対応に陥りがちです。

結果、脅威は克服できたが、振り返ったら、
「1万円札を5万円で買った」
ような、コスパの悪い資源動員をしてしまっていた、という例も少なくありません(私のクライアントが愚痴をこぼしていた例でいうと、労働紛争で、100万円の請求に対する弁護活動で、250万円請求されたことがあり、だったら、最初から請求丸呑みにしてもよかった、という話があります)。

無論、名目上の脅威は僅かな損害賠償請求事件であっても、当該請求を受諾することが蟻の一穴を崩すように、ドミノ倒し的に同種請求の連鎖的波及を生じる場合や、企業としてのアイデンティティが問われるような事件については、実際の事件の経済的価値は、貴重でかつ高額なものである、ということがあるかもしれません。

とはいえ、だからといって、目的も明確にせず、費用対効果検証もなく、ただただ、脊髄反射の如く、感情の赴くまま、資源動員を過剰に行う、という
「マネジメント」の喪失を
正当化することにはなりません。

また、企業法務活動については、そもそも正解なき課題への取組であることから、
「効果」を定量的に測定しにくく、
また、
「品質」や「価格」とのバランス
もブラックボックス化されがちです。

さらに、発注する企業側にリーガルサービスの取引リテラシーがないことから、取引情報の非対称性が顕著になりがちで、結果、
「規模やブランド」
で選択する方向に陥りがちです。

結果、対処方針も、
「提案する人間の“レベル”」
ではなく
「提案する人間の“ラベル”」
で判断してしまい、
「迷ったら高い方を買っておけば安心する」
という、世間知らずの金持ちの愚かな買い物と同様の失敗を犯しがちとなります。

すなわち、観光バスが提携している土産物屋に無目的に立ち寄り、
「一体何を買いたいのか、相場観がどうなのか」
を明確にせず、提案してきた土産物屋の主人のアドバイスにしたがい、
「迷ったら一番高いものを買っておけば安心する」
という愚劣なバイアスにしたがい、結果、
「使う意図も目的もはっきりしないゴミやガラクタの類に大金を投じてしまう」
ような、推奨できないサービス調達をするリスクが生じうる、ということです。

弁護士への依頼も、煎じ詰めれば、単なる外注・購買活動の一種であり、当然ながら、しっかりとした外注管理、調達管理を行うべきです。

すなわち、

調達目的を明確にし、
費用対効果を意識し、
(ラベルやブランドではなく)機能的・経済的な競争調達(価格と品質の両面で、シビアにドケチに、具体的に確認しながら、賢い買い物をする)を実施し、
調達した後も、当初の計画どおりのサービスが行われているか、しっかりとフォロー、管理すべき(サボっていないか監視をし、サボりや手抜きに対して必要な嫌味を述べる)

ということを行うことが必要です。

以上のとおり、企業法務は、

企業の法的脅威に対する安全保障活動全般であり、
この活動を経済合理性に基づき「マネジメント」する、

ということがその定義内容となります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00336_日本企業の法務格差(3)法務弱者企業・法務無能力企業に共通する特徴

法務弱者企業や法務無能力企業には、下記のとおり共通する一定の特徴なり傾向(端的にいえば「ダメ」な要素)がみられます。

そして、下記の各特徴は、
「不祥事で多額の損失を被り、あるいは倒産する企業」
の特徴なり傾向とそのまま近似します。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00335_日本企業の法務格差(2)法務「無能力」企業

地方等においては
「法務無能力」
とも評すべき企業も多数存在します。

2005年に大阪市立大学大学院法学研究科
「企業法務研究プロジェクト」
が実施した調査によると、1,838社の大阪府下の中小企業中、顧問弁護士がいないと回答した企業は1,530社(83%)に上ったそうです(『中小企業法の理論と実務』高橋員=村上幸隆編・民事法研究会、591頁)。

東京に次ぐ大都市である大阪ですらこのような状況ですから、その他の地方都市の企業の法務支援体制は推して知るべしです。

地方では弁護士の数が不足していることもあり、税理士や司法書士、行政書士が事実上顧問弁護士としての役割を担い、企業の契約書をチェックし、法務上の相談に応じ、ときには訴訟指導等もしていることは公然と知られた事実です。

そして、このような形の法務上の処置が原因で後日深刻なトラブルに発展するケースも実に多く存在します。

前述のとおり、現在の産業社会は、法務弱者企業や法務無能力企業が生き残れるほど寛容ではありません。

有効な企業法務上の助言が得られないばかりに、不祥事や契約リスクが現実化し、倒産や廃業等を余儀なくされ、市場から退場させられた企業は数多く存在します。

いずれにせよ、これだけ法令遵守や法務武装の重要性が叫ばれている中、企業の継続的発展のためにも適切な法務体制構築は極めて重要といえます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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