00029_モデル仲裁条項

本契約に起因ないし関連して当事者間に生ずるすべての紛争、論争または意見の相違は、仲裁法及び一般社団法人日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って、東京都において同協会の非公開仲裁手続により最終的に解決されるものとする。
仲裁が申し立てられた事実、仲裁手続きの内容、仲裁判断あるいは和解の内容、これらに起因、派生ないし関連する内容、あるいはこれらを推知させる一切の内容は、本契約に定める守秘義務が及ぶものとする。
仲裁人が当事者を審尋することなく仲裁判断をなしたとしても、あるいは、理由の付記を省略した判断を行ったとしても、両当事者はこれを予め異議なく承諾する。
当事者は、前記仲裁人の行った仲裁判断に従い、異議を述べないものとする。また、仲裁人によりなされた判断は最終的なものとして、当事者を拘束するものとする。
当事者は、本仲裁合意に基づく当然の法的効果として、相互に訴訟提起をしないことを約する。したがって、仮に当事者の一方により訴訟が提起されたとしても上記仲裁合意が防訴抗弁となり、当該訴訟が当然に却下されるべきことを相互に異議なく確認する。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00028_紛争プライバシーを守る方法(揉め事を公にしない方法)としての、不起訴の合意と仲裁契約

訴訟沙汰なんてあまり聞こえがいいものではありませんし、ましてや衆人監視の下で法的トラブルをあれやこれや議論するなんて事態は誰しも避けたいと思われます。

しかし、憲法では国民に裁判を受ける権利を保障しており、かつ、裁判は原則として公開で行なわれることになっています。

従って、紛争の相手方に
「こちらのプライバシーも考えて、訴訟を起こすな」
ということをいう権利はありませんし、特段の事情がない限り、裁判所に対して
「頼むからこの裁判については密室でやってくれ」
などと注文することはできません。

しかし、このような
「こちらのプライバシーも考えて、訴訟を起こすな」
「頼むからこの裁判については密室でやってくれ」
という紛争プライバシーを実現する方法(揉め事を公にしない方法)があります。

さすがに刑事訴訟を密室で行なうことは困難ですが、民事裁判については、相手と事前に合意して、
「訴訟を起こさない」
という約束(不起訴合意などといいます)により、訴権を放棄させることが可能です。

民事裁判なんて、そこらへんの私人同士のカネや権利のトラブルですから、当事者の意に反してまで公開しておおっぴらにする必要性がないからです。

さらに、仲裁合意という方法もあります。

法的な紛争解決は、常にかつ当然に裁判所で行なわなければならないというものではありません。

当事者が合意の上で、
「裁判官でない、特定の人の判断に委ね、その判断に文句を言わない」
と合意すれば、仲裁法という法律に基づき、私人が裁判官役として、非公開のテーブルで、紛争を法的かつ終局的に解決することができるのです。

仲裁というと国際取引にまつわる紛争解決の際に使われるものですが、国内の一般的な民事紛争も利用できる方法です。

無論、相手が事前に仲裁することに同意してくれないと取りえない方法ですが、
「事件プライバシー」
を保ちつつ、紛争を表沙汰にすることなく、極秘的に解決するには最適な手続きです。

訴訟では3審制が取られ、当初の判決に不服があれば高裁、最高裁へとさらに2回の裁判を起こせますが、仲裁は1回勝負で、不服があっても上訴に持ち込むことができません。

その意味では、訴訟に比して、迅速な解決が期待できます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00027_企業法務ケーススタディ(No.0004):揉め事を公にすることなく、こっそり、スピーディーに解決するための紛争解決手法としての仲裁

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
医療法人社団大藪会 理事長 大藪 毒太(おおやぶ どくた、40歳)

相談内容:
先生、どうもどうも。
この間の理事会ではオブザーバ参加いただき、いろいろご指導賜り、ありがとうございました。
どうもウチの理事の医者連中って、どいつもこいつも世間知らずで商売センスゼロなもんで、先生に喝を入れていただかないとダメなんですよ。
ところで、理事会後に行ったフレンチ、気に入っていただけました。
東麻布にいいイタリアンみつけましたから、次回理事会後は、また、そこ行きましょうね。
あ、そうそう。
今日の相談なんですけどね。
実は、最近、ウチの病院でちょっとした医療過誤がおきましてね。
いやいや、たいしたことないですよ。
水虫の患者にまちがえてプロペチア処方したら足の指に毛が生えてきた、ってそんなバカバカしい話なんですけどね。
でも、
「訴訟を提起して、公開法廷で、病院の医療管理態勢のいい加減さを洗いざらいぶちまけてやる!」
なんていうんですよ。
さすがにこれには参りましてね。
そりゃ、当病院も努力はしてますけど、どうしても漏れはある。
その度に、公開法廷で恥をさらしていたら、こちらも信用商売ですから、商売あがったりですよ。
ウチにもプライバシーってもんがあるわけですから、こういうの、なんとかできませんかね。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点:密室裁判でこっそり事件処理できる不起訴の合意・仲裁契約の利点
訴訟沙汰なんてあまり聞こえがいいものではありませんし、ましてや衆人監視の下で法的トラブルをあれやこれや議論するなんて事態は誰しも避けたいと思われます。
しかし、憲法では国民に裁判を受ける権利を保障しており、かつ、裁判は原則として公開で行なわれることになっています。
従って、紛争の相手方に
「こちらのプライバシーも考えて、訴訟を起こすな」
という権利はありませんし、特段の事情がない限り、裁判所に対して
「頼むからこの裁判については密室でやってくれ」
などと注文することはできません。
この問題を解決するためには、不起訴の合意(民事裁判について、相手と事前に合意して、「訴訟を起こさない」という約束をして、訴権を放棄させる)、さらには仲裁法に基づく紛争解決手法としての仲裁契約( 当事者が合意の上で、「裁判官でない、特定の人の判断に委ね、その判断に文句をいわない」との契約を行うこと)を活用することが考えられます。

モデル助言:
患者の方から医療過誤で訴えられるとすれば、治療契約における不履行という問題ですね。
ということは、治療前に患者の方と治療契約という契約をするわけですよね。
患者の方から、治療を受ける前に提出いただく書面とかがありますよね。
その書面に、
「紛争が起きた場合には、訴訟を提起せず、仲裁で解決します」
という旨誓約いただくような文言を入れておき、併せて看護士やスタッフの方にきちんと説明していただくような仕組みを考えられたらいいでしょう。
厳密にいうと、
「不起訴の合意をする」
とか、
「訴訟提起しても妨訴抗弁として却下されるべきことに異議を唱えない」
とかいう形で緻密に記載したり、加えて、相手方に守秘義務を課したりすることもできますが、一般人から徴収するこの種の合意文書はギチギチ書くと、かえって合意の有効性が疑われます。
ですので、フェアな内容をサラっと書いて、質問があればきちんと説明する、というソフトな運用姿勢が必要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00026_国際契約交渉における「契約自由の原則」の派生原理:準拠法選択の自由、裁判管轄選択の自由及び契約言語選択の自由

取引や契約を規律する私法の根本原理である
「契約自由の原則」
は、欧米の私法原理としても採用されており、宗教的あるいは国家の特殊な政策が濃厚な非欧米国の企業等との交渉でない限り、万国共通のものと考えて差し支えありません。

そして、
「契約自由の原則」
というルールは、
「契約条件のありとあらゆる内容を、当事者間が合意する限り自由に決めていい」
という内容を意味し、したがって、国際契約においては、
「準拠法選択の自由」
「裁判管轄選択の自由(紛争解決方法として、裁判ではなく、仲裁を選択する場合には、仲裁地選択の自由)」
「契約言語選択の自由」
というものも、派生原理として当然も含まれます。

すなわち、契約書をどのような言語で記載するかも契約当事者同士の力関係で決まるのであり、
「国際契約だから英語でしなければならない」
というルールがあるわけではありません。

極端な言い方をすれば、アメリカの会社とフランスの会社とドイツの会社が、日本法を準拠法とし、リオデジャネイロを仲裁地とし、アラビア語で契約締結をしたってかまわないわけです。

相手が外国の会社であっても、ア・プリオリに
「国際契約なんだから、絶対英語で契約しなければならない」
などと考えず、もし、こちらが特許技術等相手の欲しいものを有していて、破談して困るのはこちらではなく外国会社の側、という状況の場合、
「ライセンスほしけりゃ日本語での契約に応じろ。いやなら、ゴー・ホームだ」
という形で強気に進めたってまったくかまわないわけです。

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00025_日本語を正文と、英語を訳文(参考訳文)とする場合の契約条項モデル

本契約は、日本語を正文とする。
本契約につき、参考のために英語による翻訳文が作成された場合でも、日本語の正文のみが契約としての効力を有するものとし、英語訳文にはいかなる効力も有しないものとする。

The solo and only governing language of this Agreement shall be Japanese.
If an English translation hereof is made for reference purpose, only the Japanese version shall be regarded as original and have the effect of a contract and such English translation shall have no legal effect.

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00024_ライセンサー(技術ないし権利保有者)として、強気に契約交渉を展開するためのリテラシーと手法

ライセンス契約を行う上では、契約内容として、独占/非独占の別・ロイヤリティ算定方法・ミニマムギャランティ・契約期間・機密保持・テリトリー・源泉徴収税額の取扱・為替・解除条項・準拠法・仲裁条項等々、詳細な取引内容を取決める必要があります。

これらの取引の条件、内容ともにすべて交渉の際の綱引きで決まりますし、何も定めなかった場合(あるいは雑にしか定めなかった場合)は、ライセンスを受ける側(ライセンシー)は
「書いていないことはやっていいこと」
という解釈を前提に、たとえこちらに不利となったり、迷惑になるようなことであっても好き勝手なことをし始めます。

これが、取引や契約を規律する私法の根本原理である
「契約自由の原則」
の帰結です。

したがって、
「やられたら困ることは、すべて、事細かく、事前に、文書で書いておくべき」
であり、この手間や労力を惜しんで、雑に
「想定なことは信頼関係で」
といった取り決めしかしておかない場合のリスクは、全て、ライセンサーの不利な状況となって襲いかかります。

そして、これは、強い立場をもち、いくらでも細かく契約を取り決めることができるにもかかわらず、面倒くさがり、きっちり定めることを怠ったことによる当然の報いであり、自業自得、自己責任、因果応報の帰結として、法律上、救済の余地は一切認められません。

ライセンスする側(ライセンサー)としてライセンス契約を行う場合においては、
「基本的なことを定めて、後は信頼関係」
などという甘い考えは絶対禁物です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00023_「破談したら相手は困るが、こちらは困らない」という強い立場を有する場合の契約交渉戦術

まず、国内契約であれ、国際契約であれ、契約交渉においては、契約締結までは、お互い自己の主張を何の制限もなく自由にぶつけ合うことができます。

したがって、相手が誰であろうが、不本意な内容であれば、誰に遠慮することもなく、交渉を打ち切ってもペナルティーはありません。

例えば、交渉において、こちらが相手の欲するものを独占していて、
「破談したら相手は困るが、こちらは全く困らない」
という状況の場合、交渉上の立場は明らかにこちらが圧倒的に優位です。

国際交渉においても、こちらが技術を有していて、相手がライセンスを欲するという場合などでは、交渉を進める条件として、すべての交渉を日本語によるものとし、相手側に日本語の話せる交渉担当者を要求してもよいわけです。

契約交渉においては、たとえ相手は外国の会社でも、遠慮は一切禁物です。

遠慮したら、その分、相手は土足で踏み込んで半身を入れてきて、あとはぐいぐい体全体を押し込んできます。

交渉上の立場をよく理解認識するとともに、もし、強いバーゲニングパワーを有している状況の場合、これを最大限駆使して、相手のペースに巻き込まれずに、終始主導権を握り、こちらとしてストレスなく自己の要求を伝えられる環境をまず作りましょう。

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00022_企業法務ケーススタディ(No.0003):きちんと本質を理解して臨めば、国際取引交渉で不利で弱い立場に追い込まれることはない

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
目蒲技研 会長 下丸子 カマ太(しもまるこ かまた、70歳)

相談内容:
いやー、先生、いつもお世話になっています。
で、今日の相談なんですが、実は、ご存じのとおり、当社は、いわゆるニッチ産業つうんですか、テレビその他の家電のリモコンのボタン、キーボードのキートップといった、入力装置の製造に特化して長年やってきてまして、この辺りの特許については何件も取っていますし、この種のボタンやキートップに限っては市場シュアは世界的レベルなんです。
昨年、キーボードで入力する際に、大昔に流行った
「北東の拳」
っていう人気アニメの主人公の
「アータタタタ」
っていう甲高い特徴的な叫び声と連動するようなシステムを作ったら、大人気になりました。
このシステムは、実は、目の不自由な方向けのシステムとして、日本の他にアメリカと欧州の主要国に特許出願し、すでに公開されています。
先日、アメリカの大手メーカーから、是非ともライセンスを受けたいという申出がありました。
当社としては、人気商品であり、今後多数のオファーが来ることも考えられるので、有利な条件であれば、この契約をまとめたいのですが、私も社長をやらしている義理の息子も英語はからきしダメで。
そこで、特許出願した弁理士さんから紹介された、
「ドナルド・マイケル」
っていう日本語が片言で話せるインチキ臭いコンサルタントの方にお願いして進めていました。
ですが、どうも話合いが相手ペースでうまく丸め込まれているような気がして。
マイケルさんは
「ドンマイ、ドンマイ、ドンマイケル」
をくりかえすだけで、不安でたまりません。
どうしたらいいのでしょうか。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点:バーゲンニングパワーの正しい用い方
まず、契約交渉における立場を強くするため、こちらの強みをよく認識し、主導権を握るような交渉設計をする必要があります。
そのためには、
「契約の自由」
という私法の根本原理を正しく理解し、
「なんだったら破談にしてもいい。
破談が嫌ならこちらの言うことに応じろ」
と強気で迫ることです。
破談して困るのは、こちらではなく、相手側です。
バーゲニングパワー(交渉の優位性)を回復するためのブラフとしてはかなり効果を発揮すると思います。
加えて、契約書を作成する段階では、徹底的にこちらに有利なものとなるよう、強く要求すべきです。

モデル助言:
下丸子さんは戦中派でしたっけ。
とにかく、青い目の人の前で無意味にビビる、という恐怖感からまず脱却してください。
今回の件は、この1社に決める必要はありませんし、明らかにこちらが交渉上の地位は上ですから、すべて仕切り直しとし、こちら主導で進めましょう。
マイケルさんは
「明日から、クビ。オシマイケル」
ということでやめてもらいましょう。
LOI(Letter of Intent。基本合意書)をみましたが特段排他的交渉権が設定されているわけではありませんし、その意味では、平行して他の企業と話し合いをすることは自由ですよね。
相手には一応
「貴社の条件に魅力が感じず、交渉の進展にも希望が持てないので、他社にもサウンディング(打診)させていただく」
と通告しておきましょう。
とにかく、主導権を回復して、強気で進めましょう。
最後にゴール設定ですが、日本語で、日本法を準拠した契約にして、トラブった場合の裁判管轄も東京地裁に指定しておく、そんな契約書としておきましょう。
無論、同内容で英文の翻訳文書を作ってもいいですが、契約言語(Governing language)はあくまで日本語。
英文は、単なる、Translation for reference (参考のための訳文)扱いとして、優劣を明確にしておきましょう。
相手にとっては、不愉快で屈辱的でしょうが、契約自由の原則を盾に強気に出てもいいでしょう。
ア・プリオリに
「相手はわざわざ遠くからやってきてくれたわけだから、国際親善の意味でも相手を立てて上げるべきだし、相手に遠慮・配慮し、相手の立場も反映してあげるべきだし、国際契約なんだから、絶対英語で契約しなければならない」
などと考えず、
「ライセンスほしけりゃ、この内容で、日本語での契約に応じろ。
いやなら、ゴー・ホームだ」
という形で進めたってかまわないわけですしね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00021_手形を独り歩きさせた場合に生じる重大なリスク

裏書きした手形を、見ず知らずの人間に漫然と手渡した場合、ほぼ確実に大きなトラブルに巻き込まれます。

そもそも手形は色々な人の手に渡ることが前提となっているため、手形法上、手形譲渡にまつわる支払いトラブルについては、すべて譲渡した側に責任を負わせる仕組になっています。

手形をよく知らずに入手した素人の経営者の方で、見ず知らずの人間に
「取り立てをお願いする趣旨」
で手形を渡してしまうケースがありますが、その
「見ず知らずの人間」
は、実際には、取り立てなどせず、さらに、別の第三者に売却してしまうことが多く、これがトラブルになる典型的なパターンです。

最終的に手形を受領した第三者は、
「取り立てをお願いする趣旨」
で手形を渡したという事情があったかなんて知る由もありませんから(知っていても、知らないフリをするでしょうし)、その種のトラブルはすべて裏書人が負担すべきことになるのです。

このように、署名に関わった手形がいったん独り歩きすると、
手形を譲渡する過程で生じた
「滑った」「転んだ」などのトラブル
は、手形を取得した第三者に対しては一切弁解できなくなりますので、信用の基礎がない人間に漫然と手形を渡すことは絶対してはいけません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00020_「手形の裏書」を安易にすべきではない

手形法上、裏書をした瞬間、裏書人は振出人の保証人とみなされます。

裏書という形で保証をした者は、法律上破綻した振出人(及び自分より前に裏書きした裏書人)に代わって手形金を全額支払う法的義務を負います。

このような保証をしたくなければ、無担保(ノンリコース)文言を付した裏書をするか、裏書をせずに交付のみで譲渡してしまえばいいのですが、これを知らずに、裏書きして手形を渡してしまえば、後の祭りです。

「そんなルール知らなかった」
という弁解は通用するはずもなく、問答無用で、振出人や自分の前の裏書人の連帯保証人として扱われ、彼らが破綻した場合、全額の支払い責任を負わされます。

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