01854_有事の際、自分に合う弁護士を探す視点その4

弁護士は、事態を予測し、想定した上で、時間的冗長性がある間に備える、という極めて価値ある提案をします。

それを、その場で聞き流した(何も対処せずにいる、というのは、結果的に、弁護士の助言・提案を聞き流したことになります)りしていると、時間と機会を喪失し、選択肢がなくなり、状況はますます悪化します。

にっちもさっちもいかなくなってから、身動きがとれなくなってから、混乱のあまり、
「しばらく考えさせてください」
と言い出すクライアントもいます。

考えてどうにかなるなら、それでよいのですが、交戦にはいっているのであれば、考えても時間と機会を喪失し、選択肢がどんどんなくなり、ジリ貧になるだけ、ということもあります。

戦闘中に真っ先に死ぬのは、
「戦争とは」
「人間とは」
「平和とは」
と哲学的な思索にふける人間です。

戦闘中に生き残るのは、状況を認知し、状況を評価・解釈し、展開予測をし、現実的な目的を設定し、目的達成のための課題を洗い出し、PCDA(試行錯誤)を間断なく継続し、ときにゲームチェンジを行う、ということを反射神経的に行える人間です。

必要なのは、ギブアップではなく、家族や友人のセラピーではなく、思考にふけるのではなく、洞察力と展開予測が正しく情勢判断も正確なプロフェッショナルとの軍議であり、軍議を受け入れるようなメンタルキャパシティの劇的改善です。

弁護士の武器は、手法の構築と実践です。

あの手、この手にとどまりません。

あの手、この手、に加え、奥の手まで考えます。

さらには、禁じ手や、寝技や小技や反則技も含めて、ありとあらゆる手法を構想して、最後まで、往生際悪くあがき続けます。

もちろん、それは、
「理解があって、謙虚で、聞く耳をもち、弁護士にお金と敬意を払ってくれる、忠誠心を刺激するようなクライアント」
から、強く依頼されて、という条件がつきますが。

あるクライアントに言われたことがあります。

人は自画自賛と言うでしょうが、
「親の小言と、畑中鐵丸弁護士の助言は、極上の冷酒と同じ」
だと。

「後からよく効く」
そうです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01853_有事の際、自分に合う弁護士を探す視点その2

有事の際、法務相談中、弁護士の助言や提案を聞いて、
「先生の話は難しすぎる」
「先生の話はわかりにくい」
「先生の話はあまりにも愚劣だ」
「私を愚弄している」
「私は客だ」
と怒りを感じるのであれば、それは、弁護士が
「難しすぎて何を言っているかわからない」
というのではなく、むしろ、しびれるくらい、腹立たしいくらいにわかりやすく、あまりにも鮮烈で、耳を塞ぎたくなるくらい、的を射ているからです。

なぜなら、
「難しすぎて何を言っているかわからない」
のであれば、怒りという感情は出てきませんから。

そもそも、弁護士の話が不愉快としたら、それは、弁護士に原因があるのではありません。

クライアントの状況が不愉快なのであり、これを、なるべく正確に、事態のマグニチュード(重篤さ)をリアルに伝わるように、咀嚼して、しびれるくらいわかりやすく伝えている弁護士には原因はないのです。

たとえるなら、顕微鏡を覗いたら、絶望的な病原菌が見えてきた。

そのときに、絶望的な状況を正確に投影する顕微鏡に八つ当たりしている状況と同じです。

顕微鏡に八つ当たりするのは、あまりに愚かというものです。

むしろ、状況を正確に教えてくれる顕微鏡には、感謝すべきです。

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01852_有事の際、自分に合う弁護士を探す視点その1

「私には、この弁護士は合わない。私に合う弁護士は、話をわかりやすくかみくだいてしてくれる方だ」
と、いうクライアントがいたとしましょう。

そのクライアントの視点は、どこにあるのでしょうか。

有事の際、法務相談では、誠実である弁護士ほど、腹立たしいほどの現実を伝えます。

「勝つため、有利に運ぶために、最善と考えられたもの」
を伝えることこそが、誠実に仕事することだからです。

ただし、それは、クライアントにとっては、
「あまりにも鮮烈で、耳を塞ぎたくなるくらい、的を射ている」
というものです。

「勝つため、有利に運ぶために、最善と考えられたもの」
を伝えることをモットーとしている著者の場合、今まで、どのクライアントからも、
「先生の話はわかりにくい」
「咀嚼が足りない」
と言われたことはありません。

むしろ、
「先生、何を言ってもいいけれど、本当のことだけは言わないで。しかも、わかりやすく、ど真ん中をつかないで」
と言うクライアントもいるほどです。

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01851_弁護士の深謀遠慮を受け入れるか無視するか

弁護士の軍議(作戦協議)は、当然ながら、勝つため、あるいは勝率を上げるため、状況を改善するために、これを最優先の目的として行います。

特に、クライアントが、
「管理資源や知的資源(状況認知資源や状況評価資源)や事務資源や対処資源が不足している」
ような場合、
「すべての事実や状況や経緯をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化する」
という価値と実装の困難性を、より迅速に認識、ビビッドに理解してもらうために、クライアントが不快になるほどメタファーを用います。

この前提認知共有段階の弁護士とのコミュニケーションは、決しておもしろいものではありません。

クライアントによっては、強い不快感をもつ方も多く、弁護士とのコミュニケーションそのものを忌避する方もいます。

そもそも、弁護士はサービス業です。

クライアントが、
「不快だ、やめろ、十分だ、要らない」
と言うのであれば、クライアントの忌避を乗り越えてまで押し付けるわけにはいきません。

そこで、戦い以前の前提認知共有段階で、中断したまま、となる方もいるのが、現実です。

その間に、状況は刻一刻と変化します。

実務経験上、それは良い方向への変化ではなく悪化の一途をたどる、ということです。

これも含めて、すべては、クライアントの自業自得、因果応報、自己責任の帰結となります。

以上の話をきいて、
「不快だ、やめろ、十分だ、要らない」
という方針や前提環境や求める趣旨を180度 変える、ということもあり得るかもしれませんが、そのためには、

・過去の誤った考えや行動の特定
・過去の誤った考えや行動に及んだ原因
・過去の誤った考えや行動についての真摯な謝罪
・過去の誤った考えや行動と同様のことを二度と行わない(再発防止)誓約

等が必要になろうかと考えます。

なぜなら、前記の謝罪や誓約なしに、軍議(作戦協議)が再開されると、また、再発して、軍議が停止する危険が生じるからです。

なお、前記の謝罪や誓約があったからといって、まったくに何もなかった状況に戻るか、というわけではありません。

暫時とはいえ、喪失した時間や機会、
「敵(彼)と戦う前に、自軍(我)の欠点・脆弱性・過去の失敗をきちんと振り返って総括すること」
が遅れて、交戦に突入したことによる有害・利敵の状況変化は、回復不可能なのです。

ようするに、これらを所与として、後退した環境での目標再定義や作戦立案をしなければならない、ということなのです。

クライアントとしては不快なことではありましょうが、すべては、
「勝つため、有利に運ぶために、最善と考えられたもの」
ということです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01850_弁護士のコミュニケーションスタイル_「目的優先、儀礼軽視」か、「目先の儀礼を尽くして、作戦目標を放棄する」か

有事の際、弁護士は、資源の効率的運用と、最善の結果の最速の実現のために、(クライアントへの忖度も含めて)作戦に障害となるようなものは、すべて無価値と判断し、物事を構築して実践することを徹底しています。

このような姿勢から、クライアントに対しては、
「目的優先、儀礼軽視」
のコミュニケーションを図ることとなります。

しかし、
「君は無礼だ」
「君は不敬だ」
「不快だ」
「礼儀を尽くせ」
という要望を寄せるクライアントもいます。

その場合は、
「目的優先、儀礼軽視」
は、放棄し、クライアントへの目先の儀礼を尽くすことを最大限の目標に切り替えます。

たとえ、それが、事態の共有に無駄な時間を要し、結果、対処の遅れや対処時間軸が共有されず、あるいは事態の深刻さの評価や解釈上の齟齬を生み、利敵に失したとしても。

そして、そのような儀礼最優先の目標にシフトするのであれば、弁護士は分をわきまえ、奥に控えることとなります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01849_有事の際、自分に合う弁護士を探す視点その3

法務相談を何度か受けているにもかかわらず、本業が忙しいからと、あるいは、そんなに大げさなことにならないだろうとタカをくくっていると、状況は悪化の一途をたどります。

時間的に緊迫し、選択肢すらないような状況になってから、混乱のあまり、
「もうすべてにおいて無理」
「家族や友人と相談したい」
と、連絡をしてくるクライアントもいます。

もちろん、撤退や手仕舞いも、
「軍議」「外交戦略」
の一種です。

家族や友人に相談するのも結構ですが、家族や友人が
「軍議」「外交戦略」
に対応できる知性や経験値をもっているとはいえません。

よくよく思い返していただきたいのですが、弁護士は、事態を予測し、想定した上で、時間的冗長性がある間に備える、という極めて価値ある提案を、法務相談初期において、しているはずです。

それを、その場で聞き流した(何も対処せずにいる、というのは、結果的に、弁護士の助言・提案を聞き流したことになります)がために、時間と機会を喪失し、選択肢がなくなり、状況はますます悪化したのです。

著者は、しびれるくらい噛み砕いて、わかりやすく、誰に配慮することなく、ストレートにズバッと話すことを信条としています。

たとえるなら、ガンと診断して、ガンの状況を正確に伝えた医師を、
「そんな話は聞きたくない」
といって、遠ざけて、耳に心地良い話をしてくれるセラピストに依頼しても、ガンの進行は止まりません。

ガンに罹患したことが不愉快だからといって、ガンをイボだと言い張ったところで、ガンは進行するだけですから。

ガンに罹患したなら、どれだけ絶望的で不愉快であっても、ガンの状況や進行度合いを正確に見極めることです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01848_有事の際の依頼者が持つべきマインドセット_「軍事におけるシビリアン」である依頼者は、「総大将(プロジェクトオーナー)」の地位にあるとはいえ、どこまでいっても「有事のド素人」であることを自覚し、「ミリタリー」である専門家の助言に耳を傾けることが利口

有事の際、総大将(プロジェクトオーナー)は依頼者です。

状況判断権限および最終責任は、総大将(プロジェクトオーナー)である依頼者にあります。

一般的に、有事の素人(軍事におけるシビリアン)である依頼者は、有事のプロ(軍事におけるミリタリー)である弁護士の
「状況に対する認知、評価、解釈、展開予測」
を異議なく採用します。

たとえ、それが、依頼者にとって、どれほど、非常識で、不愉快で、自分の感性に反するとしても。

たとえ、依頼者が、どれほど、独自の
「状況に対する認知、評価、解釈、展開予測」
を強くもっているとしても。

ところが、依頼者によっては、最終責任は自分にあるからと、独自の
「状況に対する認知、評価、解釈、展開予測」
を採用する人がいます。

このような場合、弁護士は、その依頼者独自の
「状況に対する認知、評価、解釈、展開予測」
に拘束されることになります。

たとえ、それが正しくなくても、合理的でないがために認識がくるくる変わろうとも、
「やっぱり弁護士の言う通りでした」
とあとから(時間差で)作戦構築前提が一致したとしても、
「状況判断権限及び最終責任は依頼者にある」
からです。

弁護士は、たかが傭兵に過ぎないのです。

シビリアン・コントロールという鉄則は、弁護士が対処する作戦にも当てはまります。

ミリタリー(軍事の専門家)がどれほど助言を与え、状況認知の観察手法を披瀝しても、シビリアン(素人)が、
「あなたの見方や展開予測は間違っている」
と一蹴すれば、それが所与とせざるを得ないのです。

・闘争方針策定のための状況認知・状況評価・展開予測の誤り
・闘争方針構築がフォアキャスティング手法(行き当りばったりの出たとこ勝負)で冷静さ、緻密さに欠ける
・闘争資源としての資金の問題
・闘争資金捻出以前の収支状況の問題

これらは、弁護士に違和感があって、やりにくさを感じることの一例です。

問題を因数分解して、問題毎に冷静に分析して、状況を認知し、冷静に評価・分析し(傍目八目といいますが、外部の客観的な視点をもつ第三者の評価や解釈等について謙虚に耳を傾け)、合理的に展開予測を行い、現実的なゴールを設定し、ゴールから逆算したバックキャスティング方式で取り組む、という推奨されるべき対処から大きく逸脱すると、どのように戦うか以前の問題として、負け戦になりかねません。

依頼者は、総大将(プロジェクトオーナー)であっても有事の素人(軍事におけるシビリアン)であることを自覚することが、状況改善の肝といえましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01847_予防法務の大切さ_弁護士による現状総括DD

プロジェクト責任者が、企業トップに対し、
「現在の状況については結果的にはそこまで悪い状況ではないと考えていますが・・・」
などと前置きしながら報告をする場合、 たいていは、状況は悪化しています。

企業トップが、不快な状況を変えるための
「現状総括DD」
を依頼した場合、弁護士は、次のように認知・俯瞰・評価・解釈をすすめていきます。

1 認知

弁護士は、プロジェクト責任者に対し、あえて、あざけるような、しつこく質問して困らせるようなコミュニケーションをとります。

それは、プロジェクト責任者が
「状況改善あるいは解決」
にとって支援勢力や有害勢力か、要するに、敵か味方を見極めるためです。

ジェントルでエレガントな表現をすると、上っ面をなぞるようなコミュニケーションしかできず、プロジェクト責任者の真意・本音は見えてきません。

そこで、リトマス試験紙のような趣きで、挑発的なコミュニケーションを意図的に行うのです。

古来、軍事上の格言として、
「見えない敵は討てない」
というものがあります。

まずは、敵を見定めます。

2 俯瞰

1の結果、プロジェクト責任者が、
「状況改善あるいは解決」
にとって有害勢力(抵抗勢力)として、いわば、内憂として、顕著に存在することが確認されるとします。

「状況改善あるいは解決」
を志向する企業トップは、二正面作戦を強いられることになります。

内なる敵と外の敵、2つの敵です。

先の大戦の際に、国民党(国民革命軍)を率いる蒋介石が、毛沢東の人民解放軍という内なる敵と、大日本帝国陸軍(支那派遣軍)という外の敵に挟まれ、最終的に、ボロ負けして台湾まで逃亡したのと同様の状況です。

この内なる敵という認識を忌避した状態で、先に進もうとすると、間違いなく悪手をとることになります。

認識として狂っているからです。

蒋介石も、当初、大日本帝国陸軍の跳梁跋扈をほったらかしにしても、人民解放軍との戦争を優先しましたが、攻めても攻めても攻めきれず、結局、この内憂処置に失敗したまま、同床異夢・呉越同舟のような形で、国共合作しか打ち手がなくなり、日本との戦争には勝利したものの、内憂によって、惨敗し、国を追いやられました。

3 評価(課題

実は、
「状況改善あるいは解決」
を阻害する
「第3の敵」
ともいうべき存在があります。

それは、企業トップの内面に巣食う楽観バイアス・正常性バイアスであり、内なる敵を絶対的に忌避しようとする精神作用です。

OSを変換して、その上に、ゲームプレイヤーの体制構築することが大前提ですが、当然、チームに敵が混入していれば、絶対うまく機能しません。

第3の敵を見逃してはなりません。

4 解釈(総括

結局、
「状況改善あるいは解決」
という戦略課題に対する有害ファクターは、
1)外からの敵
2)内なる敵
3)敵として認めたくない企業トップのバイアス
というものとして整理されます。

内憂を含めこれだけ人の和を損ねる状況があれば、まともなプレーはできません。

5 提案

まずは、トップのバイアスを入れ替えたうえで、内なる敵を排除することとなります。

これは口で言うほど簡単なことではありません。

トップのバイアスを入れ替えるには、弁護士との対話を繰り返すことで企業トップ自身が俯瞰するしかありません。

そのうえで、
1)安全保障(予防法務・契約書作成・取引内容のミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化)
2)有事外交(裁判外交渉の予兆が確認出来るコミュニケーション課題)と交戦(弁護士が介入した交渉や裁判手続き)
について、どこに委ねるか、あるいはだれが直属で指揮するか、を設計し、内なる敵を排除していくことになります。

6 対応策

不快な状況を解決していくためには、統治秩序を確立することです。

創造的なサービス提供を行う企業の場合、自由闊達な意見が自発的に出てくる環境は根源的な価値をもちますので、すべてを独裁的に行うのはNGでしょう。

他方で、あまりにリベラルでフラットな裁量・権限帰属は、リーダーシップの在り処をあいまいにし、統治秩序を崩壊させる一因になりかねません。

その意味では、

・状況を評価したり、解釈したり、展開予測を行ったり、ストレステストを行ったり、課題を抽出したり、選択肢を抽出したり、選択肢のプロコン評価をしたり、というフェーズは、フラットな環境がよいでしょうが、

・対処行動を選択したり、対処行動を評価したり総括したり、責任や担当者変更を行ったり、という、見極め・総括や意思決定や人事評価や人事措置については、しっかりとした支配秩序を保たせるべきでしょう。

上記体制への移行については、企業トップが
「手を汚したくない」
「自分だけ悪者になるのは嫌だ」
という気持ちが出るかもしれませんし、このような悩みを抱えるトップは結構います。

その場合、
「暴力的な支配秩序」を体現する「いかつい嫌われ役」
といった汚れ仕事を担わせるべく、ボード(取締役会)やコミッティー(委員会)を設置して、トップが嫌われ者になる不快な事象を緩和させるようなやり方がアイデアとして浮上します(旧財閥系の非オーナー系企業において、取締役会が重視されるのはこういった事情です)。

トップが、企業統治をすすめると決意する場合、ここから先は、法務案件となります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01846_有事の際の上策・下策その2

有事の際、選択肢としては、
1 攻撃一辺倒
2 和戦(和睦と戦争)両用(要するに、和解を働きかける)
の2つがあります。

明らかな戦略ミスであるにもかかわらず、企業がいきなり和解を働きかけ、
「相手は増長し、嵩にかかって立場を強め、交渉の主導権を取る(=相手に完全にナメられている)」
状況に陥ったとしましょう。

このような場合、企業がなすべきは、まず、状況の認知、評価、解釈、そして総括をすることです。

総括を受け入れないことには、前にすすめません。

この時点における総括とは、
企業が
「時間やコストを優先」し、
あるいは
「安い、早い、うまい」手があると盲信し、
選択した初手の「和戦両用(和解の働きかけ)」が、
結果として、交渉における優位性を喪失した、
ということです。

総括を受け入れてはじめて、企業として次の手(方針や優先価値)を決めることになります。

ここにおいても、選択肢があります。

弁護士が新しく示す選択肢は、
1 時間やコストを優先
2 交渉におけるマウントを優先
と、なりましょう。

これは、トレードオフ課題であり、
「安い、早い、うまい」
というような、わがままで愚かな選択肢は存在しません。

1 時間やコストを優先する
のであれば、プライドをかなぐり捨てて、対話をすすめるべきです。

2 交渉におけるマウント
にこだわるのであれば、相手に対して粛々と訴訟提起をすべきです。

2を選択した場合にのみ、いずれの過程でか、相手がギブアップしてくることが出来しないともかぎりません。

相手がギブアップしてはじめて、こちらがマウントを回復でき、その上で、ようやく、優位に和解をすすめることができるのです。

重要なことは、焦らない、ということです。

焦ると、人は馬鹿になります。

有事においては、時間という資源が何より大事となります。

焦ったら、急ぐのではなく、前提を変え、前提を再考し、焦る原因を取り除き、時間的冗長性を確保して、対処すべきです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01845_有事の際の上策・下策

有事の際、選択肢としては、
1 攻撃一辺倒
2 和戦(和睦と戦争)両用(要するに、和解を働きかける)
の2つがあります。

弁護士としては、
「急がばまわれ」
「迷えば、苦しい方」
との作戦原理にしたがい、1を上策とし、2を排すべし、と考えます。

企業が2を選択した途端、相手を増長させ、却って交渉プロセスを長引かせ、結果として利敵に失することになります。

要するに、有事の際、いきなり和解を働きかけることは明らかな戦略ミス、ということになります。

ところが、企業によっては、時間やコストを優先し、
「急がば、近道」
という短絡的思考に陥り、相手から一刻も早く対話のメッセージを引き出すほうがいい、とばかりに、下策としての2を選択するところがあります。

誠実な弁護士なら、企業への助言として、相手方へのメッセージの起案において、1を基本としつつ2を追加し、最終決定においては、2を削除して1に徹することもできるようなハイブリッド型のギミックを含ませたものを提案するでしょう。

少しでも企業側にとって有利にコトが運ぶように、考えるからです。

それでも、企業が、時間やコストを優先するがために、和解を基本としたメッセージを相手に出すとしましょう。

事態は、まちがいなく、弁護士の懸念どおり、
「相手は増長し、嵩にかかって立場を強め、交渉の主導権を取る(=相手に完全にナメられている)」
状況に陥ってしまいます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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