01442_欧米国際法務>欧米国際法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境>米国

1 連邦制度

米国は連邦制度を採用しており、それぞれの州には、一定の範囲に関する立法権が与えられています。

他方、連邦議会は、米国憲法のArticle I Section 8(第1条8節)などによって定められた範囲においてのみ立法する権限を与えられています。

具体的に言いますと、破産や知的財産に関する法律は、連邦議会による立法権の管轄下にあります。

米国憲法によって連邦に委任されず、また、州に対して禁止されていない権限については、それぞれの州ないし人民に留保されています(米国憲法修正10条)。

したがって、各州において、 日本の民法、会社法、刑法などに相当する法律が決められており、かつ、それぞれの州ごとに最高裁も含む裁判所が存在し、独自に裁判例が積み重ねられています。

2 「連邦制度」が有する意味

米国の実態は、連合国家であり、国際法社会のミニチュア版です。

米国の弁護士が多い、というのは、実は、米国自体では、各州が主権国家並の立法権を有しており、州ごとに法的取扱が異なるからです。

「アメリカは法律先進国」
などと呼称する方もいるようですが、アメリカ法の実態を考えると、状況を正しく表した評価とは思えません。

たとえて言うなら、アメリカは、
「江戸時代の幕藩体制がいまだ続いているような、ある種、統一国家としての近代化がいまだ完了していない国家」
といえます。

すなわち、アメリカの法制度は、国内レベルで中世封建的なモザイク型法社会が絶望的な形で蔓延しており、近代統一国家としてのリフォームが完了した日本と比べると、取引を支える法律インフラが貧弱であり、
「無駄と非効率」
としか評しようがありません。

日本で言えば、鳥取県が鳥取民法をもっており、島根県も島根民法をもっており、それぞれが独自に司法機関(「鳥取県最高裁判所」とか)をもっており、弁護士にも県ごとに資格が定められ
「鳥取県弁護士」

「島根県弁護士」
がいる、という異常な状況を想像していただければ理解いただけるかもしれません。

3 アメリカの法体系の負の側面

日本において、近代国家に至るプロセスにおいて、戊辰戦争や西南戦争といった内戦を経て封建的体制が一掃され、国を貫く統一的な法律インフラが整備されました。

ところが、アメリカは、内戦(南北戦争)を経てもなお、分散した州の権限を合理的に集約し、整備統一化することができませんでした。

そのため、現在のような法制度や裁判制度の統一性における致命的欠陥を抱えた状態になっているのです。

以上のように、
「法律先進国」
どころか、度量衡(アメリカにおいては、10進法に基づかないヤード・ポンド法がいまだに使用されています)や紙の寸法規格(“何回半分に折っても永久に相似形が保たれる”国際的規格であるISO216ではなく、独自のローカル規格を頑なに固持)と並び、アメリカの法体系は、不合理で、時代遅れも甚だしい代物、ということができます。

いずれにせよ、アメリカに進出をしたり、アメリカ法に準拠した取引を実施する場合、アメリカはこのような複雑で非効率ともいえる法令環境を有している、ということを十分理解しておく必要があります。

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01441_欧米国際法務>欧米国際法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>課題と対応の基本

「イスラム諸国などとの比較において」
という留保が付きますが、欧米先進国は、その法令内容が、日本法と大幅に内容が異なるということはありません。

しかし、日本法と異なる法体系や法内容を有する外国も多く存在するところであり、国際取引において
「日本語で表現された契約書をそのまま英文に翻訳しさえすれば、当方の認識した相手方との合意内容が法的に異議なく確立し、取引上のリスクが完全に予防できる」
というものではありません。

したがって、国際取引において契約を取り交わすに際しては、互いに自身に有利な法環境や紛争処理環境を選択する方向で主張し、例えば、
「準拠法(該契約に適用される法律)について、双方自国の法とすることを譲らず、交渉が難航する」
等といったことが日常茶飯事となるのです。

また、国際取引においては、日本人同士あるいは日本企業同士の取引のように、いわゆる
「阿咋の呼吸」(暗黙知に基づく予定調和)
を期待することは一切できず、逆にその種の期待はことごとく裏切られることになります。

国際取引においては、
「法律だけでなく、文化や常識が当然異なり、他人をどこまで信頼するかという基本的部分すらも異なる相手との契約である」
ことを十分に認識して、
「わざわざあえて契約書に明記するまでもないと考えられる事項」
についてであっても逐一文書化し、双方署名することで共通認識とするといった煩瑣な作業が要求されます。

国際取引を遂行する企業法務の現場においては、諸事このような対応が必要となります。

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01440_欧米国際法務>欧米国際法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>概説その2

3 国際取引紛争が生じた場合における問題

各国家が主権としての司法権をそれぞれ固有のものとして専有していますので、ある国家の司法機関の判決といっても、当該国家の内部では強制力を有するものの、他の国においては一切強制力をもちえない、ということになります。

例えば、日本の裁判所で、国の人間に対する民事上の債権について請求認容判決を得ても、その判決を用いて、別の国に存在する相手方の財産に対して強制執行をすることは、当然には認められません。

このような状況もあり、万が一国際取引において法的紛争が生じた場合、

・どの国の法律を用いて
・どの国の司法機関で争い
・仮に当方の国の判決を得たとして相手方の国でそれが執行できるか

等、複雑で難解な紛争課題が多数出てくることになるのです。

以上のとおり、国際取引は量的・質的拡大する傾向にあるものの、一旦これが紛争に至ると、解決のための環境ないしインフラは実に貧弱であり、法務上の課題は山積している、というのが国際法務の現状です。

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01439_欧米国際法務>欧米国際法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>概説その1

1 活発化する国際取引

冷戦の終了に伴い、製品市場、労働市場、金融市場ともに世界の市場が単一化し、また、インターネットの発達により、大量のヒト・モノ・カネ・情報がスピーデイーに世界を行き来する時代が到来しました。

これにより、国際取引は増加の一途を辿っています。

質の面でも国際取引や国境をまたぐ事業は高度なものに発展しています。

債権や株式に対する国際投資、外国のマーケットでの資金調達、為替や金利差を用いた金融派生商品、ジョイントベンチャー、国際的M&A、クロスライセンスによる技術取引といった技術的に高度な国際取引が、今や日常的に行われるようになっています。

また、古典的な輸出入取引についても、商品や機器の輸出入だけではなく、設備・機器に技術を付加して輸出する取引、これにファイナンスを付加したベンダーフアイナンス取引、さらに複数の金融機関の参加を前提としたシンジケーション方式のプロジェクト・ファイナンスによるプラント輸出など、国際取引は日々発展を続けており、これを支援する企業法務(国際法務)についても高度の知見が要求されるようになってきています。

2  国ごとに全く異なる法の内容

以上のように世界市場は単一化され、国際取引は日々活発化しています。

ビジネスや会計の世界では、ヒト・モノ・カネ・情報の動きが国境をやすやすとまたぎ、言語の問題は別として、マネーや会計という共通言語で国際的なプラットフオームが形成されつつあることも事実です。

このような状況をふまえると、
「法律という分野においても、国境がなくなり、自由に取引できる環境ができるようになったのではないか」
という錯覚が生じます。

実際、法律を全く知らないビジネスパースンは、往々にして、世界に
「“国際所有権”とか“国際登記”とか“国際特許権”といった趣のものが存在し、債権や物権その他の法的関係を全て可視できる共通のプラットフォームがあるはずだ。国際取引における法律は、この種のツールを利用して、一元管理すればいい」
などといった安直な妄想を抱きがちです。

しかしながら、(ビジネスやマネー、会計と異なり)法律に関して、各国は、国際化の動きに一切関知せず、むしろこれに背を向けた姿勢を固持しており、それぞれ主権国家が独自性を貫く状態が続いています。

すなわち、国際社会における法秩序に関しては、主権国家という“巨大な暴力団”が、それぞれ、法律という“ナワバリ”を使って、領土という固有の“シマ”を排他的に堅持する状況が続いているのです。

このようなモザイク的な国際法環境は、世界が単一主権国家によって独裁される状況でも出現しない限り、永遠に続くものと思われます。

ある程度国際法務を経験された方であれば常識以前の話ですが、
「世界のあらゆるところで通用するオールマイテイーな法、としての国際法」
なるものは全く存在せず、一般に
「国際法」
と呼ばれるものの実体は、“シマ”ごとに異なるルールのハーモナイゼーションの手続ないし方法論に過ぎません。

一般的に、欧米先進国においては法律による統治がなされており、法律に従った行動をしていれば、予見不能な事態に陥ることは少ないといえます。

また、欧米先進国においては、日本の法令とその基本的哲学のレベルで異なる法令が存在することも少ないと思われます。

ただし、日本の法令とは大きく異なる制度が海外には存在することも事実であり、民事裁判における陪審制や懲罰的損害賠償の制度など、現地に進出する日本企業としては、その特性を十分に理解しておく必要があります。

したがって、国際法務においては、そもそも
「どの国の法律を用いて、当事者間の関係が規律されるのか」
が重要なポイントとなります。

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01438_ネットトラブル対策法務>特殊な課題・新たな課題>証券取引等監視委員会等対応

例えば、株式公開企業の主力商品やサービスに関し、
「A社の○○化粧品は、人体に悪影響がある成分が含まれており、アメリカでは販売停止になったらしい」
「B社のレストランチェーンのハンバーグは、実は○○の肉を使っている。あんな気持ち悪いもの食えるか」
といった書込みや、企業価値の変化をともなう企業再編や整理などに関し、
「C社は、大口取引先との契約が解除され、まもなく倒産します」
「D社はE社に吸収されるようだ。それによってD社のサービスは終了するだろう」
といったもの、また、行政作用などに関し、
「今、F社に税務調査が入っているらしいが、相当額の申告漏れを指摘されるだろう」
「ついに、G社の違法営業を理由に、業務停止命令がなされるらしい。G社もこれまでだな」
といった書込みがなされた場合、真実か否かにかかわらず、当該書込は株価に重大な影響を与える可能性があります。

そして、これらの書込みが、株価の操作を目的として行われた場合などには、金融商品取引法違反の問題が生じます。

このような場合、企業としては、適切的確なIRやプレスリリースを行う等して、株価の安定を図ることになりますが、当該事実を証券取引等監視委員会に報告することも重要です。

証券取引等監視委員会では、活動の一環として、市場の公正性・透明性の確保や投資者保護の上で問題があると疑われる情報を随時受け付けており、上記のような書込みがなされた前後に自社の株価に通常想定しえない動きがみられた場合には、速やかに下記相談窓口等に報告・相談するとともに、この点もIRにおいて開示し、企業として
「事態を放置する意思はなく、違反者は相応の処罰を受けてもらう」
という強い意思と姿勢を示すべきです。

このような確固たる企業の姿勢が、不心得者を萎縮させ、企業に対する攻撃を躊躇させることにつながっていくものと考えられます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01437_ネットトラブル対策法務>特殊な課題・新たな課題>マスコミ対応

万が一、インターネット上の掲示板へのネガティブな書込み等が広がって、売上の減少など、日に見える被害が発生した場合、それが事実であろうと、事実に反する情報であろうと、企業として、積極的にプレスリリースを行うべきです。

当該書込み等が事実に反する場合には、

1 当該書込みのどの部分が事実に反するか
2 なぜこのような事実に反する書込み等がなされるに至ったかについての見解
3 刑事手続、民事手続といった法的対応も含めた今後の対応方針

等を正確かつ可能な限り早急に発表するべきです。

このような迅速かつ確固たる対応を取ることを通じて、
「企業として、インターネットを利用した違法不当な攻撃に対し断固たる態度をとる」
という姿勢をアピールできますし、便乗する書込みをしようとする者に対して萎縮効果を与え、さらなる攻撃を抑止することも期待できます。

また、たとえ書込み等の内容が真実であったとしても、秘匿するようなことはせず、新商品の欠陥等に関する書込み等であれば、それを真摯に受け止めて改良に努めるべきです。

商品の改良に成功し当初のものより優れた商品が完成したならばその旨も積極的にリリースすべきです。

賢明な消費者は、企業も完全な存在でないことは理解しており、むしろ、企業が想定外の状況に遭遇した際、スピーディーにこれに対応して問題を効果的に解決できるか否かを冷静に観察しています。

企業にとって不愉快な書き込みやこれを行った者に過剰に執着せず、以上のような賢明な消費者に対して、きっちりとしたアピールをすることが、企業信用の回復への早道である、といえます。

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01436_ネットトラブル対策法務>特殊な課題・新たな課題>企業内関与者の処分

インターネット上の掲示板に新商品や新サービスの欠陥を書込むなどして情報を漏洩させたり、企業、企業関係者への誹謗中傷を書込むなどしたりした者が、実は、企業内部の従業員であった場合、

・当該人物を処分するか否か
・処分するとしてどのような処分が適切か

という点が問題となります。

この問題は、労働法務における懲戒(解雇含む)問題となりますが、当該従業員の情報漏洩行為が新商品や新サービスの欠陥を書込むなど、
「公益通報」
の要件を満たす場合には、当該行為は公益通報者保護法によって保護される場合があり、解雇等を行えない可能性があるので、この点も注意が必要です。

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01435_ネットトラブル対策法務>ネットトラブル対策法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>相手方の特定

「証拠保全」手続
等の一部の法的手続を除き、民事手続では、相手方を特定した上で、裁判所に対し、自己のどのような権利を実現して欲しいかを明示しなければなりません。

そのため、裁判所は民事手続による解決を求める者に対し、当該告知を行うべき者を特定するよう求めます。また、単に、
「山田太郎」
と特定するだけではなく、当該
「山田太郎」
に対し、
「この度、あなたにとって不利益な結果となる可能性のある民事手続が開始されます」
旨を記載した文書(通常、「訴状」や「申立書」といいます)を郵送でき、同人が受領することができる場所を合わせて特定しなければなりません。

この点、大手プロバイダであれば、相手方の氏名や住所を特定することも容易かと思われますが、中小零細のプロバイダの場合、まず
「ホームページや掲示板を管理しているインターネットサービスプロバイダを特定する」
作業を実施する必要が出てきます。

また、プロバイダに対する法的手続ではなく、
「当該プロバイダが提供しているサービスに基づきウェプサイトを作成したり、掲示板を管理したりしている者」
に対して法的手続を行う場合には、
「プロバイダに対する発信者情報請求」
等により当該ウェブサイト作成者や掲示板管理者を特定する作業が必要となります。

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01434_ネットトラブル対策法務>ネットトラブル対策法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>手続の選択

「インターネットを利用した違法な攻撃」
への法的な対応策としては、大きく分けて、民事手続と刑事手続に分けることができます。

民事手続としては、発信者情報の証拠保全手続、発信者情報開示の仮処分手続及び発信者情報開示請求訴訟、書込み等削除の仮処分手続及び書込み等削除請求訴訟、各種損害賠償請求訴訟等があります。

刑事手続としては、犯人(被疑者、被告人)に対する刑事罰の適用を求める刑事告訴手続があります。

このように複数の法的手続がある中で、どの手続を選択し実行すべきかについては、個々の事例ごとに異なるところです。

一般的には、

1 民事的解決:被害(社会的経済的信用の毀損)の回復を図ることを優先すべきか、

あるいは、

2 刑事的解決:書込み等を行った者を特定し、その者が処罰されることを事件解決のための優先課題とすべきか、

という観点から法的手続の選択の方向性を定めることになります。

なお、1の民事的解決は、被害を金銭によって回復するのか、あるいは、書込み等の削除をもって直裁的に被害の回復に努めるのか、という観点からさらに詳細な法的対応の方向性を定めることになります。

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01433_ネットトラブル対策法務>ネットトラブル対策法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>トラブルの認知・発見段階

トラブルの認知・発見段階におけるネットトラブル予防対策のポイントとしては、まず、
「インターネットを利用した攻撃」
を迅速に認知し、発見することが重要です。

特に、
1 新規ビジネスの立ち上げ
2 新商品の販売
3 新サービスの開始
4 役員の変更
5 決算等、各種重要IRの後
6 業務提携・合併・新株発行等の重要事実の発生
7 就職活動時期
等の前後には、定期的に新商品の名称、企業名、役員名等で、インターネット上のキーワード検索を行う必要があります。

もちろん、かような作業を継続することは、企業にとって貴重な人的資源を割かれることにもなりますので、インターネット・パトロールを専門に行う業者に依頼する方法も考えられます。

一概には言えませんが、

1 料金体系が明示されている(インターネット上のウェブサイトでは、「御見積をします。まずはご連絡ください」といった表示が目立ちますが、見積を依頼しても料金体系が明示されていなければ、果たして「同じサービスを依頼する場合、どの企業が依頼しても常に同じ値段になるのか」がわかりませんし、他の業者と比較もできません)

2 機械による自動監視だけでなく、人による「目視」による監視も行われている(プログラムの向上により該当キーワードの検索パフォーマンスも向上しているようですが、わざと該当キーワードの一部が変更されている場合(例:「ワタナベ ツヨシ」→「ワタナヘ シヨツ」)等への対応には限界があるようです)

3 「必ず削除できます」といったことを必要以上に強調していない(プロバイダや掲示板の管理者等が策定する自主的な削除ルールによるか、法的手続によらない限り、書込み等を削除する方法はありません<無論、見えなくする方法はあります>。当該掲示板を格納しているサーバをハッキングして、不法に進入し削除する等といった方法は、法律により罰則をもって禁止されています)

といった点をチェックするのも良いでしょう。

また、企業内関与者の可能性も検討しなければなりません。

すなわち、新商品や新サービスに関する未発表の情報や企業内の不祥事等がインターネット上に漏出し、これが原因となって違法な書込み等が相次いでいるような場合には、企業内の者による書込み等であることを疑う必要があります。

従業員に守秘義務を課している企業であれば当該守秘義務違反の問題が生じますし、情報の取得態様如何によっては、不正競争防止法違反として刑罰に問われる可能性もあります。

そこで、企業内にて調査委員会等を設置し、全従業員から
「調査同意文書」
等を入手し、ITの専門家の協力の下、徹底した調査を実施すべきです。

なお、たとえ、インターネット上に漏出した情報が企業内の不祥事を構成する可能性があったとしても、従業員が当該情報をインターネット上に漏出する行為は、それとは別の問題である、として対処する必要があります(当該「不祥事」自体は許容されるものではありませんが、従業員が認知した不祥事が事実かどうかはいまだ検証の必要がありますし、また、仮に不祥事が事実であったとしても、従業員の判断として、企業の自浄プロセスによる解決の可能性を頭ごなしに否定し、いきなり第三者に情報開示して企業を窮地に陥らせる行為に及ぶことは、法的には問題なしとできません)。

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