00330_日本企業法務史(4)外資系企業やベンチャー企業の台頭による企業法務プラクティスの進化

1998年に一時国有化された日本長期信用銀行(長銀、現:新生銀行)の売却交渉の際、外資系ファンドであるリップルウッドがウォールストリート流の交渉戦略を駆使し、8兆円超もの公的資金が投入された長銀をわずか10億円で買収しました。 その後、リップルウッドは「譲渡から3年以内に、当初の正常債権の判定に瑕疵が生じ、簿価より2割...

00329_日本企業法務史(3)「事前規制の時代」から「事後監視の時代」へ

護送船団行政全盛時代は、バブル経済崩壊後の1990年代後半頃には終焉を迎え、状況が一変し始めます。 1998年に中央省庁等改革基本法が成立し、2001年をもって、それまでの1府22省庁は、1府12省庁に再編されることになりました。 加えて、このあたりから、規制緩和が推進され、「護送船団行政」やこれを支えてきた裁量行政は...

00328_日本企業法務史(2)護送船団行政全盛時代における「企業の法務課題処理方法」

1980年から1990年代にかけて、企業がトラブルや問題が生じたときに駆け込むのは法務部や顧問弁護士のところではなく、まずは、監督行政機関や業界団体でした。 監督行政機関からの指導に対しては、阿咋の呼吸で伝えられるものも含め、徹底して従うことが企業のリスク管理行動として最も推奨されるものでした。 監督行政機関の見解を糺...

00327_日本企業法務史(1)護送船団時代

日本では、1980年代終わりから90年代なかばころまで、官庁の主導により産業界の育成が図られていた時代が存在しました。 この時代、各業界において競争力が最も欠落した企業であっても維持・存続できるような業界育成が行政の最大のミッションと考えられ、行政機関は、許認可権限やこれに基づく行政指導等の権限(行政裁量権)を駆使して...

00281_日経記事「中小の知財 大手が奪う 製造業以外でも深刻に」

2019年5月17日付日本経済新聞「中小の知財 大手が奪う 製造業以外でも深刻に 手口も巧妙化、改正法成立で提訴しやすく」と題する記事には、大企業が、巧妙な手口で、中小企業の特許やノウハウなどの知的財産を奪うやり口が克明にかかれていました。 ずいぶん前に経済雑誌で掲載したものですが、私も、同じ問題意識で、企業法務ケース...

00242_国際取引において、仲裁地の交渉がデッドロックになった場合のブレイクスルー・テクニック

国際契約においては、お互い仲裁地を譲らないことが多いです。 これによって、国際取引が暗礁に乗り上げてしまうことがあります。 無論、どちらかが契約交渉上に有利な地位を有していれば、力関係を通じて解決されます。 すなわち、強者が弱者に「契約条件についてオレの言うこときけないなら、契約はヤメだ」と要求すれば済む話です。 しか...

00241_管轄地・仲裁地の重要性

日本国内の会社同士の取引なんかですと、ある程度中味のしっかりした契約書を取り交わし、日常のコミュニケーションがしっかりしている限り、トラブルが裁判に発展するなんてことはありません。 とはいえ、いざ裁判になった場合、弁護士として一番気になるのは裁判管轄です。 サッカーや野球の場合、「試合の場所がホーム(当地)であるかアウ...

00240_売掛で商品を卸すということは、代金相当のカネを貸すのと同じ

売掛で商品を卸すということは、代金相当のカネを貸すのと同じです。 身なりや話しぶりだけで、いきなり新規取引先に売掛で商品を販売するような、物を知らない、世間を知らないベンチャー企業を見受けることがありますが、これは、見ず知らずの人に担保もなしにカネを貸したのと同じくらいアホなものだったということです。 代金引換で売り渡...

00239_著作者人格権:著作物を買った人間は、カネを払った以上、煮るなり焼くなり、いじくり回したり、落書きしたり、やりたい放題できるか?

資本主義社会においては、カネを持ってるヤツ、カネを出したヤツが一番エラい、というのがシンプルなルールです。 貧乏な芸術家に、シビれるくらいの大金を出して、絵画や彫刻を依頼して、作品の制作を委託した。カネに困っていた芸術家は、欣喜雀躍して、ひれ伏せんばかりに、制作を快諾した。 では、制作を委託した側は、出来上がった絵画や...

00238_知的財産権のデフォルトルール:権利は、誰のもの? 作った人? カネを出したスポンサー?

大工さんに家を造ってもらった場合、お金を払えば、当然ながら、出来上がった家は施主の所有となります。 「出来上がった家の所有権は代金支払と同時に施主に移転する」みたいなアホな条項を逐一契約書に記載する必要もありませんし、そんな当たり前なことが契約書に書かれていないことを盾にとって、大工さんが、「施主がこの家の所有者だなん...