01682_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(25)_各論1_会社法・ガバナンス(企業統治)に関する業務

1 序

会社法・ガバナンスに関する基本知識・前提知識に不安がある方は、


を事前にご高覧下さい。

2 株式会社制度

1)法人制度と有限責任制度

01502_株式会社には「責任者」などという者は存在しない1「有限責任」とは社会的・一般的には「無責任」とほぼ同義
01503_株式会社には「責任者」などという者は存在しないビジネス・ジャッジメント・ルール
01504_株式会社には「責任者」などという者は存在しない「法人制度」の本質とそのダークサイド
01505_株式会社には「責任者」などという者は存在しない会社が破産しても、社長も連座して破産するとは限らない

2)株式会社運営システム

00720_株式会社運営システムと国家運営システムとの相似性

3 取締役の「期待される役割・与えられている権限・責任」と「実体・実情」とのギャップ

01545_取締役の悲劇(1)_取締役なるためには、学校も、試験も、資格も、能力も、条件も何にもない。したがって、「取締役」というだけで、一定の知的水準や専門能力の裏付けとはみなせない
01546_取締役の悲劇(2)_取締役は、現実の知的水準に関係なく、会社法上、すべからく「経営のプロ」とみなされて、会社運営に関する大きな権限を与えられてしまう
01547_取締役の悲劇(3)世間知らずの「取締役」が約束手形に触れたことで始まる悲劇その1「取締役」氏、約束手形と出会う
01548_取締役の悲劇(4)世間知らずの「取締役」が約束手形に触れたことで始まる悲劇その2「取締役」氏、約束手形の換金に成功する
01549_取締役の悲劇(5)世間知らずの「取締役」が約束手形に触れたことで始まる悲劇その3「取締役」氏、知らない間に、手形の連帯保証人として、手形訴訟を提起される
01550_取締役の悲劇(6・終)_圧倒的大多数が法律知識を欠落している「取締役」が法的トラブルに遭わないようにするための推奨行動

4 会社法違反に対するペナルティとしての刑事罰

会社法や金融商品取引法においては、多数の利害関係者の利害を規律する関係上、特定の規範については刑事罰の制裁を以て履行を強制しています。

現実に、会社法違反に関する事案の多くが刑事事件に発展しており、この点において、企業組織運営上の法務リスクとして、刑事裁判も視野に入れざるを得ません。

参照:
01176_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境>刑事訴訟法

5 企業組織運営に関する予防法務課題
経営陣として、法務安全保障上、法務部にきちんと把握し、常に答えてもらいたい事柄として想定されるもの:
「企業経営に『失敗』した場合において経営幹部が負担しなければならない責任としては、どのようなものがあるか?」
→ 失敗の種類により、負担する責任の性質・軽重が異なる

1)経営上の失敗・経済合理性を欠如した経営(経営が下手くそで、儲けるどころか損して資産を減らした、資金繰りに失敗して銀行や取引先や社員・関係者等に迷惑をかけた)

(1)経営責任:
経営責任は発生する。辞任に追い込まれる。辞任を拒んでも、解任されたり、任期満了後再任されなかったりして、会社を追われる。

(2)法的責任:
よほどひどい失敗でもない限り、ビジネスジャッジメントルール(経営裁量保護の法理)により免責される。
参考:
00573_取締役の重い責任から解放するロジックとしての「経営判断の原則」

(3)オーナーとしての責任(オーナー経営者の場合におけるオーナーとしての責任):
株主有限責任(社会的意味としては、「株主無責任」と同じ)であり、責任なし(投資した金を無くすだけ)

2)法令に違反する失敗・合法性を欠如した経営(より大きく、より効率的に、より早く儲けようとするあまり、法令や定款に違反する経営を行い、それが露見した)

(1)経営責任:
やはり、経営責任は発生する。辞任に追い込まれる。辞任を拒んでも、解任されたり、任期満了後再任されなかったりして、会社を追われる。 →辞任・解任

(2)法的責任:
ビジネスジャッジメントルール(経営裁量保護の法理)により免責されず、法的責任は発生する。

いかにビジネス・ジャッジメント・ルールがあるといっても、法令違反行為には経営裁量が働く余地はなく、免責が一切なされない。例えば、取締役等が、投機取引を実施する際に為替取引や商品先物取引の複数の信頼性ある専門家の意見といった適切な情報を収集し、かつ取締役会決議といった適切な意思決定プロセスを経ていたとしても、明確な法令違反を構成する以上、ビジネス・ジャッジメント・ルールが働く余地はなく、これに関与した取締役が罪を免れることは、ほぼ不可能であるということになる。

参照:
00921_企業法務ケーススタディ(No.0241):善管注意義務とビジネス・ジャッジメント・ルール

ア 民事責任(善良なる管理者としての注意義務の違反):

(ア)株主代表訴訟(株主が会社に代わって、賠償請求)
参照:
01192_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>代表訴訟その1
01193_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>代表訴訟その2

(イ)株主からの直接の損害賠償請求

イ 刑事責任:

(ア)回収可能性がないにもかかわらず貸し付けを行うことは状況によっては背任罪を構成する可能性がある
参照:
00437_会社私物化をした場合に役員個人が負うべき刑事責任リスク
00994_企業法務ケーススタディ(No.0314):ナヌ? 傷ついた親友の会社を助けてやったら「特別背任」!?

6 ありがちな取締役の失敗事例

1)利益相反取引:
00591_企業法務ケーススタディ(No.0199):トップの公私混同取引が発覚した!

2)競業取引:
00508_取締役が競業避止義務に反して、ライバル企業となる事業を始めた場合の法的責任

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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