01124_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズ3B)内部統制システム構築・運用法務>(6)具体的内容

コンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)推進にあたっては、管理対象リスクとして、性悪説(リスクアプローチ)を 前提にすると、コンプライアンス法務の具体的内容は次のようなものとなります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01123_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズ3B)内部統制システム構築・運用法務>(5)具体的リスクの内容

コンプライアンス法務が企業の法務リスク管理として実施される以上、有効適切なリスク管理の前提として、リスクの特定が必要になります。

ここで、コンプライアンス法務が対象とし、コントロールすべきリスクとは、企業活動にまつわる刑事上・行政上の違反リスクと同義と考えられます。

まず、企業活動にまつわる刑事上の違反リスクですが、刑法違反のほか、下記のとおり、会社法の罰則規定違反、特定の企業に適用される刑事罰・個別業法違反に基づく刑事罰が考えられます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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また、企業活動にまつわる行政上の違反リスクとしては、以下のような各リスクが存在します。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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コンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)推進にあたっては、これらのリスクを管理対象リスクとして、性悪説(リスクアプローチ)を前提とした有効・適切な不祥事予防体制を構築していくことになります。

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01122_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズ3B)内部統制システム構築・運用法務>(4)メリット>最高裁判示

「企業の法令違反行為に起因する企業不祥事が発生した場合に、経営陣を免責するに足りるだけの実質を備えたコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)」
を実践していた企業において、現実に不祥事が発生してしまい、経営陣に対して責任を追及する訴訟が提起されました。

この事例は、従業員らが営業成績を上げる目的で架空売上を計上したため有価証券報告書に不実の記載がなされていたところ、これを信頼して株式を購入した株主が、その後不実記載が公表されたことで株価が下がったため、会社法350条に基づき損害賠償請求をしたというものです。

本件訴訟の地裁・高裁は、
「適切なリスク管理体制を構築すべき義務を怠った過失がある」
という理由で株主の請求を認容しました。

しかし、最高裁(平成21年7月9日判決)は、
「従業員らの行為が偽造印等を使用しての偽造という通常想定しがたい方法によるもので、しかも、会社で通常想定される不正行為防止体制が整備されていた」
として、
「管理体制構築義務についての過失は認められない」
旨判示しています(最高裁平成21年7月9日判決「日本システム技術事件」)。

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このように、最高裁も、
「合理的な内部統制システムを構築・運用している限り、仮に、事件・事故・不祥事が起こっても、取締役は善管注意義務違反を問われない」
という
「内部統制システム構築・運用義務の免責効果」
を正面から是認しています。

そして、最高裁は
「当該企業の活動によってどのようなリスクが具体的に発生する可能性があるのかという点を分析し、これに対処するための合理的なリスク管理体制を整え」
ることを求めていますので、次に各論として問題になるのは、
「自社における合理的な内部統制構築義務がどのようなものか」
ということになります。

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01121_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズ3B)内部統制システム構築・運用法務>(4)メリット>実務論

法令コンプライアンス(会社法に基づく内部統制システム構築)義務履行のメリットである
「現実に企業に法令違反の不祥事が発生した場合、適正な内部統制システム構築義務を尽くした取締役については、後日の株主代表訴訟等で善管注意義務違反を問われない」
という点に関しては、これを正面から議論している文献等は見当たりません。

倫理や道徳的といった非法律的課題をも企業法務活動として取り込もうとする立場からすれば、
「コンプライアンスという企業の高い倫理に基づく経営を目指す高尚なテーマにおいては、メリットやデメリットといった品のない議論を持ち込むべきでない」、
「後日不祥事が起きたときの責任回避や弁解構築のための手段として、コンプライアンスを語ることは言語道断」
との批判を浴びるかもしれません。

しかし、大和銀行ニューヨーク支店事件をはじめ、コンプライアンスないし内部統制が裁判上議論された事件は、全て
「不祥事発生当時において企業経営幹部が構築したコンプライアンス体制が企業経営幹部を免責するに足りる内容であったか否か」
という形で議論されていることに着目すべきです。

机上での議論とは異なり、企業法務の現場では、コンプライアンス体制は上記のような
「経営者免責機能」
こそが重視されているのです。

各企業の経営幹部にとっては、企業倫理や道徳面からの評価は広報やIR上のテーマとして、またその限度において遂行すれば足りる課題です。

すなわち、具体的リスクを科学的に把握することなく、企業倫理などという“お題目”に終始した経営では、三菱自動車等の不祥事事例をひもとくまでもなく、不祥事の発生を抑止することも、また、経営陣に対する免責機能も何ら持ちえません。

むしろ、経営幹部にとっては
「後日、株主代表訴訟において被告席に座らされた際、自分たちが構築したコンプライアンス体制が有効な保険となって、責任免責されるのか否か」
という方がはるかに切実な議論です。

その意味では、あるべき企業経営の姿を机上で論じるのではなく、競争社会において生き抜く企業の現場を意識した実務論・具体論をテーマにした本書においては、コンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)の推進にあたり、不祥事の効果的抑止・予防という点もさることながら、まずは
「企業の法令違反行為に起因する企業不祥事が発生した場合に、経営陣を免責するに足りるだけの実質を備えた統制の仕組みを構築する」
という点にこそ注力すべきと考えます。

無論、以上のような
「企業の法令違反行為に起因する企業不祥事が発生した場合に、経営陣を免責するに足りるだけの実質を備え」
たコンプライアンス体制を具備した企業においては、その合理的帰結として、企業内の不祥事が抑止ないし軽減できるという結果も達成されることにもなります。

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01120_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズ3B)内部統制システム構築・運用法務>(4)メリット

コンプライアンスが現代企業における必須の経営課題として述べられることが多いようですが、精神論や努力の方向性としての議論はさておき、コンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)が営利組織である企業の経営課題として実践される以上、当然ながら
「ゴールを明らかにした上で、ゴール達成のために、最小限の犠牲で最大限の効果を上げる」
というロジックが働きます。

すなわち、コンプライアンス体制構築が企業の経営課題として取り組まれる以上、体制構築の具体的メリットを明らかにしないことには、企業として効果を達成するために負担すべき犠牲の質や量を計測することができず、お題目はともかくとして、具体的な着手が困難になります。

では、企業にとってコンプライアンス体制(法令遵守のための内部統制)を導入するメリットは何でしょうか。

アメリカなどでは、独占禁止法違反の量刑ガイドライン(センテンシング・ガイドライン)において企業のコンプライアンス体制構築が量刑減免事由とれており、独占禁止法の抵触に不安を抱える企業にとっては、コンプライアンス体制構築は、独占禁止法違反リスクを回避あるいは軽減する策として大きなメリットが提示されています。

日本におけるコンプライアンス体制構築のメリットですが、会社法に基づく内部統制システム構築義務と金融商品取引法に基づく内部統制(財務報告に係る内部統制)構築義務それぞれにおいて、次のとおり、やや異なるメリットがあるようです。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01119_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズ3B)内部統制システム構築・運用法務>(3)法務遂行上の基本的視点

コンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)を実施する前提の問題として、
「企業内従業者を企業の法令違反行為に起因する不祥事の危険因子として捉えるべきか否か」
ということが問題になります。

平易な表現をすると、性善説(企業内従業者は倫理的に教化することにより企業の法令違反行為に起因する不祥事を行わないとみる)、性悪説(企業内従業者は常に企業の法令違反行為に起因する不祥事に関与する可能性があり、コンプライアンス経営にとって危険な因子とみる)のいずれの考えを採用するか、という議論です。

これらの考えの相違は、下記のとおり、企業内従業者全員が法令を適正に遵守できることを前提として教化・改善することを主眼とする体制を構築するのか(性善説型)、企業内従業者を
「常に法令違反の動機を有するリスクファクター」
と捉えた上で、違反ないしその計画や予備行動の検知・抑止を主眼とする体制を構築するのか(性悪説型、リスク・アプローチ型)、というコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)実施上のアプローチの違いとなってあらわれます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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この点を正面から議論している学説や裁判例等はありませんが、下記のとおり、大和銀行ニューヨーク支店事件判決は行員が不正を働くことを前提とした体制構築を求めています。

すなわち、裁判所も、性悪説に基づくリスク・アプローチを是とし、企業内従業者を法令違反の動機を有するリスクファクターと捉え、違反ないしその萌芽の検知と抑止を主眼とする体制を構築することが、会社法上の内部統制システム構築義務を充足する適正なコンプライアンス法務活動と考えているものと思われます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01118_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズ3B)内部統制システム構築・運用法務>(2)内部統制の関係

コンプライアンス経営あるいはコンプライアンス法務という概念が本格的に意識され始めたのは、大和銀行ニューヨーク支店の不祥事に関する株主代表訴訟に対する大阪地方裁判所判決(大阪地裁平成12年9月20日判決)が契機といわれています(1987年に発生した東芝機械ココム違反事件に際し、貿易管理法令遵守や輸出管理コンプライアンスといった概念の導入等が議論されましたが、この概念が産業全般にわたる法令遵守という経営課題として広がることはなかったようです)。

上記判決は、企業の経営幹部に対して、企業活動に関連する各種法令の遵守を取締役の善管注意義務の内容として求めるとともに、具体的法令遵守体制として
「企業内の従業者が法令違反を犯さないようにするための、科学的かつ合理的な、企業組織内部の管理・統制の体制」
ともいうべき体制の構築と運用を、企業の経営幹部の法的義務(善管注意義務)として求めた画期的なものでした。

そして、上記の大和銀行ニューヨーク支店事件判決を嚆矢(こうし)とする多くの裁判例の考え方で明らかにされた企業義務が、現在の会社法における内部統制システム構築義務として明文化されました。

さらに、カネボウの粉飾決算や西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載事件等、株式公開企業に関する財務報告の偽装問題が資本市場の信頼性を揺るがせた問題に端を発し、金融商品取引法においては
「財務報告に係る内部統制制度」
も導入されました。

その結果、株式公開企業は、会社法に基づく内部統制システム構築・運用義務に加え、
「財務報告に係る内部統制」
の構築・運用も義務づけられるようになりました。

企業のコンプライアンス体制をめぐっては、
「内部統制」

「コンプライアンス」
さらには
「財務報告に係る内部統制」
も加わり、様々な概念が入り乱れてきましたが、整理すると、次のようになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

なお、以上のようなコンプライアンス体制構築義務が、会社法に基づく内部統制システム構築義務と同義とする考えは、2002年4月5日神戸製鋼所株主代表訴訟における神戸地方裁判所の和解所見も採用しているところです。

以上のとおり、コンプライアンス法務ないしコンプライアンス経営を、
「会社法の内部統制システム構築義務の履行として企業が行うべき、(倫理や道徳等といった非法律的課題を除く)法令違反行為に起因する不祥事予防を目的とした、企業内組織体制構築に関する業務」
として定義します。

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01117_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズB)内部統制システム構築・運用法務>(1)法務の定義及び射程

企業活動において、法令違反等の不祥事を起こすことを防ぐための法務活動、すなわちコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)も、契約法務と並ぶ予防型企業法務の大きな柱となります。

まず、コンプライアンス法務を定義しておく必要があります。

コンプライアンス法務とは、
「企業活動が法令を遵守しながら行われることを確保するための体制を整備する法務活動」
を指します。

そして、コンプライアンス法務の範囲ないし射程ですが、本書では、コンプライアンス法務のゴールを、
「憲法上保障されている企業の営業の自由」
を制限する規範たる法令遵守に限定し、企業法務活動が所掌すべき範囲を、かかる法令遵守のための有効・適切な仕組みの構築・運用に限定します。

すなわち、
「憲法上の保障に基づき企業が有する営業の自由」
を規制する規範たりえない
「倫理」
「道徳」
「地球環境問題」等
といった非法律的概念の遵守の問題は、広報・IR等の部署が
「広報・IRの観点での企業価値向上政策」
として対処するべきです。

このような点から筆者は、企業法務活動として取り扱うべきコンプライアンス法務には、これら疑似コンプライアンス問題は取り込むべきではないと考えます。

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01116_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>契約法務(フェーズ3A)>(6)公正証書

契約法務(取引法務)の最後として、公正証書について述べておきます。

公正証書とは、一般私人の要請(嘱託といいます)に基づき作成される私的な権利義務等に関する文書ですが、その内容を法律の専門家である公証人が確認し、公証人法に基づき作成する公文書です。

すなわち私人の権利関係等を取扱内容としながら、他方で公文書としての性格を有している関係で、高い証明力がある上、債務者が金銭債務の支払を怠ると、裁判所の判決などを待たないで直ちに強制執行手続に移ることができます。

すなわち、金銭の支払いを内容とする契約の場合、執行認諾文言付公正証書を作成しておけば、裁判を起こして裁判所の判決等を得るという面倒な手続を踏むことなく、直ちに強制執行手続に入ることができるのです。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

以上のように、公正証書は非常に強い効力を有しますので、重要な契約に関しては、多少コストがかかっても、公正証書化も検討すべきです。

特に、金銭消費貸借契約(いわゆる貸金契約)で抵当権等を設定しない場合などは、支払憚怠があったときに公正証書が強い力を発揮しますので、債務者への融資条件として是非とも公正証書化を求めるべきです。

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01115_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>契約法務(フェーズ3A)>(5)会計・税務との整合性

法的な観点から契約事故・企業間紛争を防ぐ合意内容としては適正であっても、当該契約締結の結果、会計上、税務上の不都合が生じる場合があります。

例えば、物品販売の場合、委託方式か買取方式かによって売主・買主のどちらが在庫を負担するかが変わってきますし、資産譲渡の価格の決定如何によっては税務上低額譲渡等と認定され、思わぬ課税がなされることもあります。

さらに、M&AやSPCを用いたオフバランス取引等を実施する場合も、
「適格要件充足判断において企業組織再編税制の活用が可能か否か」

「税務上オフバランスと判断されるか否か」
を実例に即して具体的に検証しないと、取引そのもののゴールが達成されない場合もあります。

その意味で、契約書を作成する前に、依頼部門に税務・会計上の検討を完了したか否かを確認するとともに、必要に応じて、財務責任者や税務担当者らを招集して、取引組成が税務上あるいは会計上のゴールを達成するに十分な適格性を有するか否かを厳密にチェックする必要があります。

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