00354_満期白地の手形を振り出したら、何時までも手形の責任を負担しなければならないのか?

満期日が記載された手形であれば、その手形の時効は、記載された満期日から3年後ということになります(手形法70条「満期ノ日ヨリ三年」)。

すなわち、記載された満期日から3年が経過してしまえば、その手形本体が時効にかかってしまいますので、白地補充権が行使できなくなり、手形としての強力な権利行使が不可能となり、単なる民商事債権の証拠としてしか使えなくなります。

他方、満期日が記載されず空白のままである場合については、手形法70条が
「満期ノ日ヨリ三年」
と規定する以上、時効がいつまでたっても始まらないのではないか、との疑問が生じます。

この点については、簡便な金融手段として手形が飛び交い、これに比例して事故が多発した昭和30年代まで裁判例・学説が入り乱れた状態でしたが、昭和36年11月24日に、最高裁が小切手に関する訴訟において、
「『手形に関する行為』(商法501条4号)に準じて5年間の消滅時効にかかる」
との判断を下すことにより、理論上の決着がつきました。

この判例法理により、手形についても、満期が白地とされた場合、振出日から5年間で白地補充権が消滅時効にかかり、以後、手形としての権利行使ができなくなると解釈されています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00353_白地(しらじ)手形の取扱ノウハウ

手形は、振出人が重大な債務を負うという性格から、その記載方法は、厳しく規律されます。

すなわち、法律上、
「必ず記載しないと、未完成手形として、法的効力が生じない事項(必要的記載事項)」
というのが定まっています。

とはいえ、実際の手形取引においては、設例のケースのように、手形の必要的記載事項の一部をブランク(白地)にしたまま振り出され、後日、その手形の受取人が振出人との合意にしたがってブランクを埋めること(「補充」と呼ばれます)で、その手形を完成させる取扱とすることが多く見受けられます。

手形の決済日を後日取り決める趣旨で白地にしておくような場合は、
「満期白地」
などといい、手形取引の世界ではよくみられるものです。

そして、白地手形の白地部分に必要な記載を行い、完成手形に仕上げることのできる権利は
「白地補充権」
と呼ばれ、当該権利は、振出人と受取人の合意によって生じるものとされています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00352_「行政指導に従わず、建築確認申請を留保された場合」の対抗策構築の際に参考となる判例

建築主と周辺住民との間の紛争に関する行政指導が行われていることのみを理由として建築確認申請に対する処分を留保したことにつき、当該
「建築確認を留保したこと」
の是非をめぐって国家賠償請求訴訟が提起されたことがあります。

これに対し、最高裁判所(昭和60年7月16日判決)は、原則として
「建築主事が当該確認申請について行う確認処分自体は基本的に裁量の余地のない確認的行為の性格を有するものと解するのが相当である。(中略)建築主事としては速やかに確認処分を行う義務があるものといわなければならない」
としつつ、
「建築主が確認処分の留保につき任意に同意をしているものと認められる場合」
などには、当該留保も例外的に適法としました。

しかしながら、さらなる例外則として、
「建築主が右のような行政指導に不協力・不服従の意思を表明している場合には、(中略)行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは違法である」
としました。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00351_建物建築の際に必要となる建築確認とは?

建築確認とは、建築基準法に基づき建築確認を行う建築主事等が、一定規模以上の建築物の建築を希望する者の申請にかかる建築計画が建築基準法や建築基準関係の規定に適合しているかどうかを工事開始前に審査する行政行為をいいます。

そして、この行政行為としての建築確認は、
「許可」

「認可」
といった一定の裁量を伴う行為ではなく、その文言通り、
「申請」
であり、行政当局の裁量は働かない、というのが本来ないし建前です。

すなわち、行政当局が行うのは、建築確認申請に添付された設計図書などが建築基準法やその他の建築基準関係規定に適合するか否かを機械的に
「確認」
する作業に過ぎません。

したがって、適正に行われた建築申請に対し、建築主事等が何らかの裁量をはたらかせることは原則としてできないと考えられています。

ところが、実際は、
「申請」

「確認」
の間に
「行政指導」
余計なものが登場することがあります。

行政指導とは、行政機関が、一定の行政目的を実現するために特定の者に対し一定の作為や不作為を求める勧告や助言などをいいます。

このような行政指導に従うか否かはあくまで任意とされていますが、行政指導に従わないことを理由として、あるいはあからさまな理由とせず、一定の不利益処分(行政処分)が行われたり、姑息に意地悪をされることもあるので注意と警戒が必要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00350_外国人の入国・在留許可制度と不法就労助長罪

外国人が日本に入国し在留するためには、外国人が旅券を有していること以外にも、当該外国人において在留資格が原則必要となりますが、在留資格は、日本に滞在する目的ごとに付与されることになります。

現在、出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法)は、
「外交」
「報道」
「留学」
「家族滞在」
といった27種類の在留資格を規定しておりますが、外国人は、日本国から与えられた在留資格以外の活動は行うことができません。

ここで注意しなければならないのは、入管法は、日本国内にて就労する資格については、
「就労」
という一般的抽象的な在留資格ではなく、個別具体的に就労資格の種類を規定しているということです。

例えば、日本の中学校で外国語を教えるために
「教育」
の在留資格で在留している外国人が、本来、
「技能」
の在留資格が必要となるコックとして就労した場合などには、最高で1年以下の懲役刑が科せられたり(入管法73条)、日本からの退去強制に処せられる場合もあります(入管法27条以下)し、そのような外国人を雇った者も、不法就労助長罪として、最高で3年以下の懲役刑が科せられることがあります(入管法73条の2)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00349_外国人雇用等の際に知っておくべき、旅券(パスポート)と在留資格(ビザ)の違い

まず、旅券(パスポート)とは、その国の国籍を有している者に対して、その国が発行し、交付するものです。

例えば、日本の国籍保有者には、日本国が日本の旅券を、米国の国籍保有者には米国が、米国の旅券を発行することになります。

これに対し、在留資格(ビザ)は、外国人に対して、つまり、入国を認める側の国が、入国を求める外国人に対して発行するものです。

したがって、日本人が米国へ行くときは、短期の観光などで行く場合など在留資格が免除される場合は別として、原則として米国政府が在留資格を認めるが必要となります。

ちなみに、在留資格を付与するか否か等については、当該国の主権の本質的なものとして、入管当局の広汎な裁量に属します。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00348_「企業法務」の具体的内容>法務オペレーションの分析・整理

各法務活動(法務オペレーション)の概要を総括すると、次のようになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

運営管理コード:CLBP26TO26

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00347_「企業法務」の具体的内容>有事対応フェーズ(フェーズ4)>有事対応その2・不祥事等対応法務(企業の法令違反行為に起因する有事対応法務)(フェーズ4B)

有事対応法務のうち、企業の法令違反行為に起因する不祥事の発生等、コンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)にて予防に努めるも、意に反して不祥事が起こってしまった場合における裁判内外の各種対応(監督行政機関への対応や報道機関対応、被害者が提起する訴訟対策等)も重要な法務活動を構成します。

これらは、不祥事等対応法務(企業の法令違反行為に起因する有事対応法務)として整理されるべきものと考えられます。

予防対策フェーズ(フェーズ3)と有事対応フェーズ(フェーズ4)相互間において、それぞれどういう関係に立つのかを整理すると、次のようになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

なお、企業によっては、法分野を基準として、次のように、整理の上、特定の専門的法領域を法務部以外のセクションに担当させるケースもあります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

運営管理コード:CLBP24TO25

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00346_「企業法務」の具体的内容>有事対応フェーズ(フェーズ4)>有事対応その1・民商事争訟法務(契約事故・企業間紛争対応法務)(フェーズ4A)

古典的ながら、いまだに企業法務活動の中核的な位置を占める活動として、トラブル(契約上の事故や、企業の法令違反行為に起因する不祥事)が発生した場合に対応するための企業法務活動があります。

同じく争訟法務であっても、純然たる民事紛争である契約事故・企業間紛争対応法務では、危機状況や対応方針等が著しく異なりますので、まず、前者を民商事争訟法務(契約事故・企業間紛争対応法務)として整理します。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

運営管理コード:CLBP24TO24

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00345_比較広告が違法とされるリスクその2:不正競争防止法違反リスク

不正競争防止法2条1項14号は、比較広告でよく問題となる景品表示法とは別個に、
「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、または流布する行為」
を不正競争と定義し、被害者は、違反者に対しては当該行為の差し止めや損害賠償を求め得るものとしています。

これは、
「虚偽の事実を告げるなどして他社(商品を含む)の信用を害する営業行為は自由競争としての保護に値しない」
との趣旨によるもので、
景表法が独禁法・反競争規制とすれば、
本規定は
「やり方が汚い、えげつない競争活動」
への規制として、
別個に規律されるているものです。

最近でも、
「ある企業の自社商品の説明会などで他社商品の材質や品質に関し虚偽の事実を告げて自社商品をアピールした行為」
が、不正競争防止法2条1項14号に該当するとして、東京地裁は、当該行為の差し止めと損害賠償の一部が認容するとともに、信用回復措置として当該説明会に出席した業者に対する訂正文の送付などを命じました。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所