01791_権力とは、戦うものではなく、動かすもの_その1

権力と戦う弁護士はバカです。

他方で、権力に盲目的に服従するのもアホです。

権力は、動かすものです。

別の手法としては、権力を邪魔し、混乱させ、妨害し、足を引っ張り、困惑させ、ほとほと嫌にさせ、資源動員が成果に見合わぬことを自覚させ、ついには諦めさせる。

それが、権力空間におけるプロフェッショナルの本質的な活動の要諦です。

そのためには、権力空間の構造、秩序、メカニズム、オペレーションロジックやルールを知ることが重要です。

また、権力を持ち、権力を動かす権力者のことを、彼ら・彼女たちの、現実、欲求、価値のレベルで知り、感受性をシェアする必要があります。

その種のハック技術は、本に載っていないし、一般的な専門家は知りません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01790 _訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_その1_「彼を攻めるには我を顧みよ」

訴訟を起こしたいという場合、最初にすべきことがあります。

それは、
「彼を攻めるには我を顧みよ」
というものです。

「囲碁十訣」
の中にある一条であり、唐の時代の碁の名手、王積薪がまとめあげたと伝えられる、囲碁十ヵ条の要諦で、棋道普遍の真理です。

要するに、
「敵(彼)と戦う前に、自軍(我)の欠点・脆弱性・過去の失敗をきちんと振り返って総括しておけ」
という考え方です。

そして、これとは、逆の
「必敗の論理」
というのもあります。

それは、
「我を顧みず、彼を攻めよ」
というものです。

すなわち、自軍の欠点や弱点や過去の失敗など忘れて、敵との戦いに突っ込め、というものです。

弁護士の仕事をしていると、事実を正しく認識できていない相談者をよくみかけます。

これは、別に、認知症とかそういう話ではありません。

自尊感情が強すぎ、恥ずかしい思いが強すぎ、悔しい思いが強すぎ、自分が悪くない・悪いのはすべて相手であり世間、という自己中心的な感情が強すぎて、まともに事実を認知できないのだと思います。

「自軍の欠点や弱点や過去の失敗」
をきちんと洗い出して、えぐり出して、総括して、認識して、評価しようとすると、
「総大将(プロジェクトオーナー)のプライドやメンツや自尊心や体裁など」
といったどうでもいいものが邪魔して、正しい軍議の妨げになるのです。

弁護士との軍議(作戦協議)は、当然、勝つため、あるいは勝率を上げるため、状況を少しでもマシなものに改善するために、
「総大将(プロジェクトオーナー)が持っているであろう、プライドやメンツや自尊心や体裁などといった、本当にどうでもいいものあるいは現状認知や作戦立案上邪魔なもの」
は、置き去りというか、むしろ、土足で踏みにじり、横へ蹴り飛ばして、軍議に集中するのが、目的優先の行動として当然です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01789 _「報・連・相」での管理、監視にこだわる理由

企業活動は、大きく
・オペレーション

・イノベーション
に分類されます。

「仕事に困っている、客に困っている」
という状況であれば、イノベーション課題として営業仮説を立て、これをPDCA(試行錯誤)によって仮説実現していくことになります。

PDCA(試行錯誤)を明確に把握した上で、管理・監視するには、
「報・連・相」
や監視にこだわらなければなりません。

イノベーションの試行錯誤は、見方を変えれば、
「いくらでもサボることができる、失敗しても厳しく追及されない、時間管理もルーズになりやすい、趣味や道楽」
と極めて似た営みだからです。

「報・連・相」
や監視を軽視する、あるいは怠ると、この営みが
「いくらでもサボることができる、失敗しても厳しく追及されない、時間管理もルーズになりやすい、趣味や道楽」
と堕すのは時間の問題となります。

なお、コンセプトがお金に変わるプロセスとしては、

概念・妄想

プロジェクトの立ち上げと管理体制:時間・人員・予算・役割分担・進捗管理のための状況共有体制・想定外の場合のゲームチェンジ・定例方式でのプロジェクト会議

概念構築(概念の詳細化・具体化・言語化・文書化、ポンチ絵とかモックデザインによるミエル化・カタチ化)

POC(概念実証)

プロトタイプ

実証実験

ローンチ体制

ローンチ

マネタイズ

投資回収

という気の遠くなるような営みがあってはじめて、お金に変わります。

このPDCAの管理は、通常のオペレーション以上に困難です。

オペレーションすらまともに
「報・連・相」
できない会社が、社運を左右するイノベーションについてPDCA管理するなど、夢のまた夢です。

「報・連・相」
での管理、監視は、企業活動の品質を担保する唯一の手法なのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01788 _法的対処課題について_2種類の法執行権力

わが国においては、三権分立という制度運営上、2種類の法執行権力が存在します。
「行政権力」

「司法権力」
です。

2つの権力空間は近似していますが、 これらには明確な差異があります。

そして、弁護士は、おもに、
「司法権力が支配する空間におけるプロのプレーヤー」
すなわち
「裁判所という国家権力機関が支配する、司法権力空間の構造、秩序、論理、ルールを勉強し、司法権力の転がし方」
についての知見をもったプロフェッショナルです。

他方で、
「行政権力が支配する空間」
は、裁判所や弁護士が立ち入れない世界となっています。

行政個別法(約1800あるといわれています)及び各行政機関が定める政令(施行令)や総理府令・省令(施行規則)を含めた膨大なルールの数もさることながら、行政権力空間の 構造・秩序・論理・ルールは、司法権力空間とは異なるものとなっています。

また、取締法規については、一次的解釈権が行政機関に留保されており(公定力)、弁護士であれ部外者の解釈論(たとえそれが裁判例を援用したものであっても)を提示しても、無視や不利益処分をされても文句が言えない扱いが正当化されています。

このようなことから、
「取締法規対処事案(当局対私人のタテの権利義務関係の法律問題の発見と課題処理)」
が発生した場合は、依頼する側は、
「より専門的な内容になると、調べるのに大変手間がかかります」
と弁護士がいうことを頭に入れておかなければなりません。

もちろん、時間・予算を整えることは大前提です。

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01787_事業責任者が法務に相談したところ「当社の法務部から『特定の専門分野に関する法務課題は取り扱わない』と言い放たれてしまいました」という状況の病理性を分析し、法務部の役割を改めて考えてみる

事業責任者が法務に相談したところ
「当社の法務部から『特定の専門分野に関する法務課題は取り扱わない』と言い放たれてしまいました」
という事例がある企業で発生し、この事例についてコメントを求められたことがあります。

この状況を分析して、改めて、法務部のあり方を考え直してみましょう。

企業の法務部は、企業活動において生じるすべての法務課題、安全保障課題について、最終責任を負担して、対処すべきです。

この前提が機能していないとなると、
「法務部そのものが役立たずであり、それ自体が企業において大きなリスクになっている」
といえます。

「企業の法務部は、企業活動において生じるすべての法務課題、安全保障課題について、最終責任を負担して、対処すべき」
という前提は、何も、
「これらの課題を、すべて内製化して、企業法務部として、固有の内部リソースのみで対処すべき」
という過酷なことが要求されているわけではありません。

すなわち、法務部の所掌範囲は、一般的知見に基づく一次対処(いわば、町医者、ホームドクター)です。

これで対処できない場合は、顧問弁護士(顧問弁護士でも対処できない場合は他に対処能力ある弁護士の調査・発見・依頼)への外注(医療の世界にたとえると、特定機能病院への紹介と受診へのファシリテーション)によって対処することが許容されています。

法務部が、「特定の専門的法務課題については取り扱『わ』ない状況である」、などと言い放つ場合、それは、
当該法務部では、取り扱『わ』ないのではなく、
当該法務部では、取り扱『え』ない状況が存在する、ということであり、
「顧問弁護士(顧問弁護士でも対処出来ない場合は他に対処能力ある弁護士の調査・発見・依頼)への外注(特定機能病院への紹介と受診へのファシリテーション)」
という機能が喪失している状況が発生していることを示唆しています。

すなわち、法務部としては、特定専門的法務課題について、
・自らの知見に属さない(知的資源が不足している)
・さらに、顧問弁護士でも対処できない
・「対処能力ある弁護士の調査・発見・依頼」という対処課題について、パイプライン(外注先への接点構築のための関係性)も欠如しており、さらには新たなパイプラインを構築するような意思や能力や努力資源を欠如している
ということです。

このような「能力欠陥や対処スキルや努力資源」が顕著に存在する状況において、自らを顧みることなく、あたかも「自己の選択と判断によって、当該状況を選好している」かのような言い様は、非常に、病理的で悪質です。

すなわち、当該法務部は、
「法務部では取り扱『え』ずギブアップしている」
ところ、自己保存や自尊感情のため、上記事実を直視することができず、
「法務部では取り扱わない」
となどという狂った弁解をしているだけと推察できます。

では、どうすればいいのか。

経営トップとして、法務体制の病理性を早急に矯正する必要があります。

法務を含む間接部門というのは、いわば
「社内のサービス部門」
です。

法務部という社内部署は、
「原課・原局というお客様のニーズに応えて、神様であるお客様に応えてナンボ」
のセクションです。

「『法務課題処理や安全保障に対処するための社内のサービス部門』が全く機能していない(さらに言うと、役割を理解しておらず、運営哲学レベルで病理的で狂っている)」
ということは、
国家レベルの話で例えると「警察や自衛隊がストライキを起こしているようなもの」
であり、緊急事態です。

経営トップとしては、法務部の心得違いの矯正を含めて、早急な改善をすべきです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01786_「弁護士に相談したあと、どうするか」を選択する、とは

1 初回相談でもう十分

1) 大まかな方向性をもとに、あとは自分で考え、実行する(悪手連発して取り戻しが効かない状況もあり得る
2) この事件をなかったこととして無視する
3) 自分で外交をやってみる〔悪手連発して取り戻しが効かない状況もあり得る〕)

2 もう一度、弁護士と打ち合わせをして、弁護士にはディスカッションパートナーをお願いしたい

3 法律空間という、非日常空間のゲームロジック・ゲームルールを踏まえて、代理人を立てて、最適なプレーをする

4 以上どれにするかを考える

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01785_同じ法的対処課題であっても、民事紛争処理(司法権力空間におけるゲーム)と取締法規対処(行政権力空間におけるゲーム)は、まったく異なるゲーム(続)

特に、
「言葉の壁:(日本語であることはわかるが、難しい漢字や読解難易度の高い文体で書かれているため、全体として、どこか遠くの国の知らない部族が古い時代に書いた象形文字の羅列のように)そもそも、何を言っているのか、何が書いてあるか、怒られているのか、褒められているのか、得なのか、損なのか、自分と無関係あるいは中立的なものなのか、すらわからない」
という点においては、

も有害に作用していると思います。

「自社の法務部門が役に立たない場合、どのような手順で法規制調査を進めれば効率的か」
と答えを求める方もいらっしゃいますが、
「そもそも内製化出来るか対処課題か、外注すべき対処課題か」
を見極めることが重要です。

この点、一般のビジネスパースンは、予算制約もあり、
「何とか内製化を」
と足掻く向きが多いのですが、生兵法は大怪我のもと、という諺が示唆するとおり、内製化したところで、素人仕事の粗漏やミスが原因で、致命的な事故に至る場合があり、法務に関してはお勧めしません。

というより、
「何とか内製化を」
と足掻くビジネスパースンの方は、
「お勉強」と「仕事」との違い
をよくわかっておられないと思います。

引用開始==================>
「社会人の仕事」

「学生の勉強や試験」
との最大の違いは、社会人が仕事を進める場合、学生の勉強や試験と違って
「カンニングや替え玉受験やレポート代筆等がすべてOK」
という点です。

学生時代においては、勉強や調べ物や宿題やレポートはすべて自力でやり遂げるべきものであり、
「家庭教師にカネを払って代わりにやってもらう」
などということは言語道断であり、また、試験でカンニングしたり、替え玉に受験させたりするのは、犯罪行為とされます。

しかしながら、社会人が仕事を進める上では、
「『自分たちだけでやり遂げる』ことにこだわり、ロクに知識もない素人が何ヶ月かけてグズグズ議論する」
という方が給料の無駄であり、会社にとって有害です。

そういう無駄で有害な発想ではなく、むしろ、
・課題解決はすべて内製化して自力で行うというドグマを排して、外注という資源動員上の選択肢をきっちりもっておくこと
・迅速かつ適価にて、外部のプロから必要な資源を調達すること
・外注については、目的達成まできっちりフォローすること、すなわち外注管理(予算管理、品質管理、納期管理、使い勝手管理)をすること
の方が、本当の仕事のあり方(付加価値の創出)として求められます。

法務部や総務部に配属される方は、どちらかというと生真面目な試験秀才タイプが多く、
「“仕事”と“お勉強”の違いがわかっておらず、法務リスク管理という純ビジネス課題を学究課題と勘違いし、時間がかかっても自力で調査する」
という無駄で非効率な方向性に向かいがちです。

無論、自力で正しい解決に辿りつければいいのですが、情報や経験の不足から、方向性を誤り、
「時間をかけた挙句、仕切りをミスって、会社に大きな迷惑を被らせる」
という悲惨なチョンボをしでかすこともままあります。

法務リスク管理というお仕事、すなわち、
「法令に関する専門的知見に基づき、発見特定されたリスクをうまいこと処理して、大事にならないように仕切る」
という課題処理は、要するに、
「弁護士その他の専門家という“外注業者”をいかに上手に、適価で使い倒すか」
という点がポイントになります。

なお、それでも内製化をしたい、というお話で、
「どのような手順で法規制調査を進めれば効率的か」
というご質問に答えるとすれば、
「効率的」な方法などは存在しません。

丹念に、規制環境を調べ、該当法律を探し出し、法律の体系を把握し、規制を理解し、詳細な取り扱いを含めた規制の運用状況をスタディーして、ということを地味に続けるだけです。

「ショートカット(抜け道)、ファストトラック(近道)は、ラフロード(悪路)」
「急がばまわれ」
という諺どおりです。

私が弁護士をはじめた26年前から考えると、ネットの発達で、格段と調査インフラは整っているのですから。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01784_財務省の奇策_請求認諾による訴訟の強制終了

森友学園問題に関する財務省の決裁文書改ざんが原因で自殺した財務省近畿財務局の元職員、赤木俊夫氏の妻が、国と同省理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官に損害賠償を求めた事件で、2021年12月15日、大阪地裁で国が、
「請求認諾」
という奇策を使って、約1億700万円の損害賠償責任を認め、訴訟を強制終了させてしまう、という事件が報道されました。

これにより、裁判は終結し、原告は、法廷で改ざんに関する証拠開示や当事者の証言を国側に求めることができなくなり、事実の解明は困難になる反面、国側は、事態を隠蔽して逃げ切ることに成功することが確定しました。

この
「請求認諾による訴訟の強制終了」
については、

という形で本サイトに手法として紹介しております。

また、具体的な戦術活用例として、

という仮想ケーススタディでも紹介しておりました。

かなりあざとい手法であり、どちらかというと、裏技、寝技、反則技、禁じ手に属するようなものですが、筆者としても、まさか国が使うとは思いませんでした。

そのくらい、国は追い詰められていた、ということだと思います。

訟務検事は、検察庁や裁判所からの出向者であり、財務省とはまったく別の哲学・価値観・美意識で動く存在ではありますが(検察官も裁判官も、独任官庁であり、単独で国家意思表明をし得る、いわば、国務大臣と同じ権限をもっているので、誰かの「お願い」を考慮することはあっても、誰かの「指示や命令」で動く存在とは異なります)、財務省として、拝んで、拝んで、拝み倒したか、司法予算の拡充とかのバーターで、アンフェアな汚れ仕事をしてもらったのかもしれません。

いずれにせよ、筆者としては、主に、
「不都合を隠し、組織を防衛するためなら、何でもあり」
という感じで手段を選ばない一般企業向けに、
「あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、裏技、反則技」
の一種として、紹介したものですが、まさか、天下の日本国政府がこんなあざとい手を踏襲するとは想定外でした。

筆者としては、日本という国家も随分柔軟になったというか、手段を選ばなくなったなぁ、と感慨深く報道を受け止めました。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01783_同じ法的対処課題であっても、民事紛争処理(司法権力空間におけるゲーム)と取締法規対処(行政権力空間におけるゲーム)は、まったく異なるゲーム

民事紛争処理事案(私人対私人のヨコの権利義務関係の法律問題の発見と課題処理)
と、
取締法規対処事案(当局対私人のタテの権利義務関係の法律問題の発見と課題処理)
は、
同じ法律を用いた知的ゲームですが、前者は司法権力空間におけるゲームであり、後者が行政権力空間におけるゲームである点で、
「ゲーム空間の構造、秩序、論理、ルール、アノマリー」
がまったく異なります。

三権分立という制度前提は、司法権力空間と、行政権力空間が、それぞれ別異に存在し、まったく違った理念と哲学と秩序によって運営されることを内包します。

「取締法規対処事案(当局対私人のタテの権利義務関係の法律問題の発見と課題処理)」
が発生した場合、法務部に聞いてもわからない、弁護士に聞いても、ふわっとした適当な答えでお茶を濁され、まったく要領を得ない、という事態に出くわすことがあります。

それもそのはず。

弁護士というのは、基本的に、
「裁判所の出入りの業者」
であり、
「司法権力空間というゲーム空間における構造、秩序、論理、ルール、アノマリー」
には通暁していますが、
「行政権力空間というゲーム空間における構造、秩序、論理、ルール、アノマリー」
にはあまり詳しくないからです。

もちろん、行政争訟と呼ばれる分野は、特に、国家公務員合格実績のある弁護士や、ロースクール世代以降の弁護士は、行政法が必須科目になっているので、ある程度は、詳しいはずです。

しかし、行政争訟というのは、一種の病理現象であり、そこに至らない取締法規課題の対処といった生理現象的なゲームについては、
「すべての弁護士がゲーム対処可能な知識や経験の基盤を確実に実装している」
という根拠は見当たりません。

「取締法規対処事案(当局対私人のタテの権利義務関係の法律問題の発見と課題処理)」
が発生し、
「より専門的な内容になると、調べるのに大変手間がかかります」
という対応であればまだいい方で、最悪なのは、調べてもわからないか、適当で曖昧なことを言われて、お茶を濁しておしまい、というケースです。

このような状況に陥ることがあるのは、たいてい、その原因として、
民事紛争規範の処理と、取締法規対処では、
「権力空間の構造、秩序、論理、ルール」
が異なることによります。

では、どうすればいいのか。

「取締法規対処(当局対私人のタテの関係の法律問題処理)」
のプロジェクトが依頼されれば、
1 事業状況DD(デューデリジェンス、調査)
2 規範DD(こちらは、施行規則やガイドライン等を含めた最大深度に至る調査)
をスクラッチから着手し、見解を形成し、当該見解が保守的な観察において問題なければ、一応の結論し、それでもなお、見解に複数解釈が成り立ったり、スワリが悪い結論で疑義が残る場合は、ノーアクションレターという特殊な制度で安全保障措置を採ります。

なお、規範調査、法令調査の段階では、
1)どこにどんなものがあるか、いわゆる「あたり」が付けられない
2)「あたり」が付けられ、該当規範らしきものにたどり着いたが、「漢詩や般若心経のような奇っ怪な日本語であり、何が書いてあるのか皆目不明」である
3)日本語として読解を完遂して「何が書いてあるのか」がわかったが、意味がわからない、話が見えない
4)意味がわかり、話は見えたが、自社の置かれた状況にどのように作用するのか、実感として理解できない
といういくつかの段階でのつまづきが考えられます。

2)~4)のレベルをより詳細に分解すると、

1 言葉の壁:
(日本語であることはわかるが、難しい漢字や読解難易度の高い文体で書かれているため、全体として、どこか遠くの国の知らない部族が古い時代に書いた象形文字の羅列のように)そもそも、何を言っているのか、何が書いてあるか、怒られているのか、褒められているのか、得なのか、損なのか、自分と無関係あるいは中立的なものなのか、すらわからない
2 意味の壁:
(言葉や文字は判読できるが)意味がわからない
3 演繹的推論の壁(解釈の壁・言葉の意味はわかるが、話がよく見えない):
(言葉や意味は理解できるが、概念や状況の意味を論理的に推定把握したり、合理的な展開予測をする、といったスキルが欠如しており)言葉の意味する状況や環境を具体的にイメージして理解したり、展開予測をすることができない
4 帰納的把握の壁(実感の壁・話はわかるが、自分の身に置き換えた形で、具体的に体感することができない):
(言葉や意味はわかるし、状況や環境も理解できるし、状況や環境が我が身に及ぼす影響も解釈し一定の理解はできているが、経験を前提として理解できる事柄について経験がないため)理解したり、イメージしている事柄が、実務経験上あるいは現実的相場観として、具体的に生じ得るのか、確認してほしい

に、突き当たる現象と推察されます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01782_民事裁判官のアタマとココロを分析する(1)~(4)


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