01825_法的・戦略的ランドスケーピング(機能的状況俯瞰)の意義・価値・重要性~弁護士とクライアント、それぞれ眺めている風景が異なると、悲劇を生む~_その1_楽観バイアスによる「法的課題」の認識の有無

戦いにおける地の利の分析や、安全保障における地政学と同様、法的紛争解決を戦略的に志向する場合にあっても、環境を俯瞰的・客観的に観察し、機能的に理解・評価することは、非常に重要です。

これは筆者の造語ですが、この種の機能的状況観察(場合によっては、経時的変化を検討する、展開予測も含む)という営みを「ランドスケーピング」「法的・戦略的ランドスケーピング」と言うことがあります。

まず、そもそも、クライアントにおいて、
「こんなの法務課題ではない」
「こんなの普通に雑談していれば自然に解決できる」
「相手も常識人として普通に対応してくれるはずだから弁護士が出るような話でもない」
といった形で、楽観想定、楽観バイアスが働いている場合があります。

「こんなの法務課題ではない」
「こんなの普通に雑談していれば自然に解決できる」
「相手も常識人として普通に対応してくれるはずだから弁護士が出るような話でもない」
という素人さんの見立て(ランドスケーピング)が往々にして致命的に誤っている点については、下記拙稿で指摘しているとおりです。

引用開始==========================>
そんな
「言った言わない、話が違う」
ということなんて、普通の認知と記憶と常識があれば、起こり得ない、と言われそうです。

確かに、1000円貸した貸さない、とか、
「その本、私もう読んじゃったのがあって、メリカリで売ろうと思っていたから、500円で譲ってあげる」
みたいな話であれば、
「言った言わない、話が違う」
なんてことは生じ得ません。

お互い譲り合えばいいだけですから。

しかし、億単位、あるいは数十億円単位の話となれば、別です。

億単位、あるいは数十億円単位の話は、常識を超えた話です。

そんな常識を超えた話にトラブルが発生し、
そこは1つ常識的に、
ここはお互い譲り合って穏便に、
まあまあ、相身互いで、円満に行きましょう、
といって、納得するはずがありません。

だって、常識を超えた額の話ですから。

常識が通用しないスケールの話ですから。

ちょっと勘違い、食い違い、想定外、思惑違いがあったので、
ちょっとタンマ、
ちょいノーカン、
そこは許して、
譲って、
という話のサイズが、数億円、数十億円のロスやダメージの容認となります。

そんなことをにっこり笑って許容するなんてしびれるくらいのアホは、ビジネス社会では生きていけません。

たとえ、しっかり認知していて、はっきり記憶していて、ただ、契約書がなかった、あるいは契約書の記載があいまいだった、という事情があって、相手の言っている内容が事実としても記憶としても間違いなく常識的で正当な内容であっても、
「契約書みてもそんなことは書いていない。書いていない以上、認めるわけにはいかない」
と突っ張るのが、責任ある企業の経営者としての態度です。

すなわち、
「言った言わない、話が違う」
ということなんて、普通の認知と記憶と常識があれば、起こり得ない、
というのは、1000円、1万円の話であればそのとおりですが、ビジネスや企業間のやりとりにおいては、些細な勘違い、食い違い、想定外、思惑違いであっても、契約書や確認した文書がなければ、すぐさま、
「言った言わない、話が違う」

のケンカに発展し、常識も情緒もへったくれも通用しないトラブルに発展することは日常茶飯事なのです。
<==========================引用終了

億単位の話ではないとしても、企業としては、沽券やメンツがかかっているので、そう簡単にミスを認めるわけにはいきません。

このような企業の沽券やメンツという価値は、それこそプライスレスであり、表面的な金額とは別に、億単位以上の話かもしれません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01824_定年後の従業員との雇用関係解消

定年後の従業員を再雇用することなく、退職勧奨によって雇用関係解消をする場合、承諾書をつかうという手法があります。

その効果は大きいですが、つかいかたを誤ると、紛議の元となりますので、内容はもとより、その扱いには慎重を要します。

すなわち、従業員より承諾書を徴求できると、潜在的紛議は消失したものと評価されますが、承諾書を徴収できないとなると、潜在的紛議が残るということを意味します。

無論、承諾書を徴求できたとしても、その後、従業員が翻意して、錯誤で取り消すなどとして、紛争になる可能性はなくはありませんが、その場合でも、承諾書が有力な証拠になると推測されますので、企業側は有利にことを運べると推察します。

さて、受諾の見通しが不透明である場合、当該従業員に承諾書を送り、相手方からの自発的サインバックを待つ、というのは、良い方策とはいえません。

理由としては、

1 そもそも、相手方において、たとえ雇用関係解消に同意していても、サインするメリットがなく、自発的な行動を期待することが困難

2 加えて、相手方において、もともと、雇用関係解消に不同意であり、争う気であれば、退職勧奨があったことの証拠が相手の手許に残り、不利に援用される危険がある(「もともと会社は労働者を嫌悪・忌避し、退職させたがっていたのであって、縷縷説明する理由も、すべておざなりのものであって、更新拒絶の濫用である」といった主張を展開し、その際の証拠として利用される危険がある)

というものです。

したがって、承諾書を徴求する際は、

1 対面で

2 その場で徴求を試みる(できれば、現金で、承諾料代わりの退職給付を受け取らせて)

3 だめなら、承諾書を撤収する(「退職勧奨」の証拠を隠滅し、後日の紛争の際に、「会社は労働者を嫌悪・忌避し、退職させたがっていた」などと援用されないようにする)

ということが推奨されます。

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01823_理解しているつもりでも、全く成立していない「弁護士との対話」

クライアントが弁護士に不満を募らせることがあります。

弁護士が対応しているにも関わらず、未だ解決していない、あるいは、解決に時間がかかりすぎている、と感じるような場合、弁護士の見ている風景と、クライアントが見ている風景が違うことがあります。

たとえば、弁護士が年単位で時間がかかるとみる一方で、数か月以内には解決するだろう、と考えるクライアントもいます。

たとえば、流れが変わったから作戦変更を唱える弁護士、他方で、何も変わりがないからと作戦続行を命令するクライアントもいます。

もっともやっかいなのが、弁護士の目的と、クライアントの目的がずれている場合です。

そもそも、当然の理として、何か問題を解決するためには、多くの段階を踏まなければなりません。

そして、それぞれの段階には、それぞれ目的があります。

弁護士はクライアントの課題を俯瞰しつつ、段階一つひとつを打破するための方法論をいろいろと披瀝しますが、クライアントには、弁護士さえ入れば一気呵成に解決できると信じて疑わない方が少なくありません。

弁護士がクライアントに披瀝するのは、まずは、圧力の契機、強制の契機となるようなものです。

クライアントに依頼されれば、その
「圧力の契機」なるもの
を実践していきます。

そこで、懸念されるのは、
「圧力の契機」の検討依頼
が、いつのまにか、
「絶対的に圧力として作用することを保証せよ」
という話にすりかわり、
圧力が機能しなかった場合、
「約束に違反した」
などと詰問されるような事態です。

さらに、
「圧力などではない。これは聖戦だ。絶対負けられない戦いである。負けたら許さない」
とエスカレートする場合です。

弁護士のいう方法論は、あくまで、目的に近づくための方法論として、合理的に考えられる
「圧力の『契機』」
であり、これがどの程度作用するかは、やってみなければわかりません。

それは、クライアントの望む確実な勝訴・勝利ではない、ということなのです。

このようなことを、クライアントにわかりやすく噛み砕いて説明する弁護士もいれば、ふわりとオブラートに包むようにして話す弁護士もいます。

たとえ話で説明する弁護士もいれば、判例を並べみせる弁護士もいます。

いずれにせよ、弁護士との対話を重ねなければ、望む目的に近づけないことは想像に難くありません。

不満を募らせるよりも、対話を重ねましょう。

そういう意味では、クライアントにとっては、弁護士の話すことを正しく理解することが、問題解決の肝、であるともいえましょう。

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01822_課題対処のためのリテラシーその3_訴訟を提起して大ごと化

訴訟を提起して、相手から出てきたミスやエラーや心得違いや違法行為を、増幅して、大事(オオゴト)にして、法的メッセージとして構築して、相手がもっともビビるような体裁でフォーマル化して、どんどんぶつけていきます。

このような前提にして、また、企業の取り組み哲学を明確にして、猫パンチをどんどん繰り出して、相手に負荷を与える、という形で、圧力を加え、その上で、対話の改善を目指すことが全般の戦略として考えられます。

弁護士に法務相談にくるクライアントのおかれた状況の多くは、相手との対話一辺倒になっていますが、猫パンチでもいいので、訴訟提起の圧力を加えることで、対話の状況が変わることが期待できるかもしれませんし、仮に対話ができなかったとしても、相手へダメージを与えられることができるのです。

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01821_課題対処のためのリテラシーその2_見て見ぬ振りをするか、訴訟でやり込めるか

相手のミスやエラーや違法行為を無視・軽視して、見て見ぬ振りをするか、それとも、鬼の首を取ったかのようにして誇張して、嫌がらせの武器として、訴訟でやり込めるか・・・。

「相手のミスやエラーや違法行為を無視・軽視して、見て見ぬ振り」
をして、そのままおざなりの解決をしたがために、不安に苛まれ、不満が募る方がいます。

「相手のミスやエラーや違法行為を無視・軽視して、見て見ぬ振り」
の態度決定は、熟慮の末に、というわけではなく、クライアント自身も気づかぬ間に、という傾向が多いように見受けられます。

そしてどうやらそれは、側にいる弁護士に少なからず影響を受けてのようです。

「訴訟で勝てないなら、やっても仕方がない」
という言葉を多用されるからです。

要するに、
「見て見ぬ振り」
の態度決定をするクライアントの側には、
「訴訟で勝てないなら、やっても仕方がない」
という先入観をもつタイプの弁護士が多いのは事実です。

ところで、本当に、
「訴訟で勝てないなら、やっても仕方がない」
のでしょうか?

前提として、
「訴訟は、必ず勝たねばならぬものか?」
という根源的問いに関わります。

訴訟は、もちろん、
「正当な権利を実現するために、ロゴス(論理)とパトス(妥当性)とエトス(証拠や反論処理を施して信用を勝ち取る)をすべて実装した上で、絶対勝つ」
というのが本来的な使い方です。

他方で、憲法で裁判を受ける権利が保障されており、どんなくだらない主張や、どんなに証拠が整っていなくとも、訴訟そのものは憲法上の権利として提起可能です。

そして、どんなにくだらない、証拠が乏しい訴訟でも、どうせ勝てるからといって手を抜いて対応すると、欠席判決として負ける可能性がありますので、被告となる相手方(訴訟を起こされた方)は、手を抜けず、時間と費用と労力をかけて対応せざるを得ません。

そして、相手方は、そうやって手を抜けず、時間と費用と労力をかけたところで、勝っても得るものはなく、訴訟費用を相手に請求することもできません。

すなわち、
「訴訟は、必ず勝たねばならぬ」
という使い方もあれば、相手に対して不快感をぶつけて相手に無駄な資源動員を強いる、合法的な嫌がらせとして使うことも可能、という言い方ができてしまう現実があるのです。

もちろん、まったく根拠のない訴訟を提起すれば、不当訴訟として、逆に損害賠償責任を負担することになりますが、(勝つだけの確実な証拠はなくとも)相応の理由と根拠があれば、ポンポン訴訟を提起しても、憲法上正当な権利として許容されます。

実際、
「負けても構わない、圧力として使えれば十分」
「話し合いの場を作れれば目的が果たせる」
「とにかく捨て置け無い」
「大事にして相手に負荷をかけたい」
という形で、日々、勝つ見込みのない訴訟がかなりの数起こされているのですから。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01820_課題対処のためのリテラシーその1_人は法を守れない

クライアントには、まず、前提として、課題対処のために必要な正しいリテラシーを実装していただく必要があります。

1 人は法を守れない

人間は、生きている限り、法は守れません。

これは歴史上証明された事実です。

つまり、誰しも、叩けばいくらでもホコリが出てきます。

詳細が必要であれば、

をご高覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01819_紛争法務戦略構築

紛争法務戦略構築は、法律知識だけでは対処できないもので、相手の心理や状況に対する想像力の豊かさがポイントになります。

この手のノウハウは、無論、東大でも司法研修所でも教えてくれませんし、法廷に立ったことがなく行政書士みたいな仕事だけで食べておられる予防法務専門弁護士の方々もあまりご存じない領域です。

この戦略構築能力は、修羅場での豊富な経験と、ユニークな経験を汎用的なロジックに昇華させる理論的頭脳の両方があってはじめて習得できるような極めて属人的なもので、弁護士の価値を決める根源的な能力といえます。

どんなスーパーカーもガソリンがないと走らないのと同様、どんな優秀な弁護士が近くにいても適正な報酬が支払えなければ、筋のいい事件でも解決してもらうことはできません。

ですので、勝訴できるだけの材料がなくても、不当訴訟とか難癖つけられないだけの材料さえあれば、カネのない相手にどんどんアクションをしかける、というのは有効な戦略となります。

「主張上はともかくも証拠上は勝ちが微妙な事案」
でも、裁判になった場合には、相手が優秀な弁護士を頼めず、降参して和解してくれた、なんてシナリオも十分描けるはずです。

裁判や弁護士などに縁のない個人が、弁護士名の内容証明や裁判所からの訴状を受け取ったら、かなり具合が悪くなることは想像に難くありません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01818_ステップ4:相手方への訴訟提起

弁護士は、クライアントからのファクトレポーティングをもとに、法的三段論法を用いて法的主張を構築し、相手方に対して、これをぶつけていきます

この圧力が契機になって、裁判外交渉の場ができて、そこで、圧力と対話を織り交ぜた解決に向けた協議が持たれる可能性も出てきます。

しかし、クライアントと相手方の利害対立がシビアで、裁判外交渉で妥結することが非常に困難な場合は、交渉は決裂します。

そこで、次に、裁判手続きを用いて、事態を大事(おおごと)化して、相手の資源動員負荷をかけて、事業資源を消耗させる営みに移行します。

ここで、重要なのは、目的は勝つことではなく、戦いを継続し、相手を戦場に引きずり込み続け、泥沼化させることです。

手数(てかず)は多ければ多い方がいいでしょう。

そして、相手方が、些細なミスやエラーをすれば、どんどん訴訟に持ち込んでいくのです。

場合によっては、この圧力が契機となって、今度は、裁判上での和解交渉という対話の場ができるかもしれません。

そして、裁判上の和解交渉は、生殺与奪を握る裁判所主導の和解となりますので、相手も頑なに拒否すると思わぬ敗訴を食らう、というリスクが出てきます。

要するに、相手は和解交渉という対話の場に出ざるを得なくなる、ということです。

こちらは、もともと負けても結構、相手の資源消耗さえできれば十分、というスタンスなら、強気にでることもできましょう。

そうして、解決に向けた協議へとすすんでいくのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01817_ステップ3:相手方への宣戦布告

弁護士は、クライアントからのファクトレポーティングをもとに、法的三段論法を用いて法的主張を構築していきます。

法的主張が完成したら、相手方に対して、これをぶつけていきます。

その際、
会社から内容証明を送りつけるのか、
監査役の監査を前置するのか、
株主として提訴要求通知を出して会社が賠償請求するのか、等
各種手法選択が考えられ、これらを定立した目的を前提に、戦理に最も適合した方法で、決定していき、実施していきます。

なお、この圧力が契機になって、裁判外交渉の場ができて、そこで、圧力と対話を織り交ぜた解決に向けた協議が持たれる可能性も出てきます。

尚、相手方への宣戦布告というと、
「相手方への訴訟提起」
だと、一足飛びに考える相談者がいますが、
「相手方への訴訟提起」
は、解決に向けた協議の、そのあとの問題です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01816_ステップ2:法的主張構築

弁護士は、クライアントからのファクトレポーティングをもとに、法的三段論法を用いて法的主張を構築していきます。

法的三段論法とは、
「規範があり、事実があり、その上で結論が出る」
というプロセスのことで、
大前提(法解釈)
小前提(事実認定)
結論
によって構成されます。

弁護士は、
1 クライアントからのファクトレポーティングを小前提とし
2 法規範(場合によっては裁判例等を手がかりにして)を大前提とし、
3 ズレを手当・修正しつつ、
4 結論づける
このような手順で、テーマ毎に法的主張を構築していくのです。

さて、企業法務において必要とされる三段論法は、弁護士資格があれば誰でもすぐに構築できるわけではありません。

というのは、企業法務において要求される三段論法と、弁護士資格を得るプロセスで学ぶ法的三段論法とは、ずれてしまっているのが実情だからです。

企業法務における大前提である、労働法(ヒト)・環境規制や表示偽装に関する不競争法等(モノ)・金商法や有価証券上場規程や銀行取引約款(カネ)・知財法等(チエ)、営業に関しての独禁法(B2B)や消費者保護規制(B2C)は、司法試験の必修科目とはされておらず、選択科目として1科目、個別で勉強する機会がある、あるいはロースクールで選択科目として学ぶ、という形でしか触れません。

そして、小前提は、日常の企業活動となりますが、サラリーマン経験があれば格別、社会人経験がないほとんどの弁護士は、企業活動や企業社会の実情は、まったく知見をもちません。

このようなことから、企業法務について相談するには、自ら会社を経営しているなどして企業経営に格別強い弁護士が適しているといえます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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