01622_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(13)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその8_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅳ)_(c)正しい目的の設定

おそらく、皆さんは、学校の先生や、お父さんお母さんから、
「努力は尊い。結果が全てではない。努力はいつか報われる。失敗をおそれるな」
といった類の話を聞いて育ったかもしれません。

しかし、これらは、ビジネスやプロジェクトマネジメントの世界(M&Aは、ビジネスの世界における、非常に高度で知的で失敗の多発するリスキーなプロジェクトマネジメントの話です)では、圧倒的間違いといっても過言ではないほど、愚劣で有害な妄想です。

ビジネスやプロジェクトマネジメントの世界においては、無駄な努力、無意味なガンバリ、というのは山程あることはすでにお伝えしているとおりです。

大事なことは努力することではありません。

ガンバルことではありません。

むしろ、目的から逆算した最小限の犠牲で十分なのであり、牛丼のキャッチフレーズではありませんが、早く、安く、それなりに、うまいことやった方がいいに決まっています。

方向性を誤って空回りしていても、努力は無意味です。

努力は無意味どころか、時間を失います。

時間があればカネは作れますが、カネがあっても時間は買えません。

もうすぐ受験の季節がやってきますが、受験も同様ですね。

たとえば、ここに東大を強く志望する高校生がいたとします。

この高校生が、一生懸命、走り込みや、筋トレをやっています。

曰く、
「ボクは、小学校の先生からも、中学の先生からも、公務員をやっているお父さんからも、専業主婦としてパートで頑張っているお母さんからも、ボクが大好きで尊敬する、善良を絵に書いたようなみんなから、こういわれて育った。
『努力は尊い。努力はいつか報われる。失敗をおそれるな』と。だからこうやって、走り込みや筋トレをして、体を鍛え、誰にも負けない運動性能と体力を身に着け、東大に合格するんだ。こんなに、体力を鍛え、努力しているんだから、神様はきっと見放さない。いつか、ボクは東大に合格するはずだ」
と。

しかし、残念ながら、この高校生は、10年浪人しようが、50年浪人しようが、東大に合格することはないでしょう。

理由はかんたんです。

東大の受験科目には、体育がないからです。

だから、どんなに走り込みをしたり、筋トレをしたりして、体育の点数を向上改善させても、それが、どんなに苦労を伴い、負荷がかかり、尊い、立派な努力であっても、その努力は、東大合格、という点に限っては、全く意味がありません。

なぜか。

努力が、目的に結びついていないからです。

努力が、目的から逆算された、合理的で有益なものではないからです。

もっといえば、そもそも、自分の適性や能力に見合った目的の設定がなされていなかったのかもしれません。

こんな話をすると、
「当ったりめえじゃねえか! 何をバカなことをいってやがるんだ! そんなアホなことをするわけねえだろ!」
という声が聞こえてきそうですが、M&Aもさることながら、国家規模のプロジェクトにおいても、狂った目的が設定されたり、目的と無関係で、むしろ目的達成に有害無益な壮大な努力が展開された挙句、自分の首を締めてエライ目にあった、ということは、かなりの数、存在します。

太平洋戦争という、日本史上最大の
「公共事業」
が失敗したのは、目的があいまいな上、目的を達成するための努力が目的と真逆のものだったからではないでしょうか。

太平洋戦争という
「公共事業」
の目的とされた、大東亜共栄圏? 鬼畜米英? 八紘一宇? なんすかこれ。

これって、まるで意味不明です。

「大東亜共栄圏のためにアジア各国に進出した」
などといわれますが、
「隣の家の住人と仲良くしたいので、凶器をもって、押し入って、居座りました」
って、意味がわかりません。

目的が不明確、目的とやっていることが違う、あるいはチグハグ。

こんなプロジェクト、失敗するに決まっています。

で、やっぱり、失敗しました。

無論、M&Aにおいても同様です。

ロックフェラーセンターを買収したり、コロンビア映画や、映画会社MCAを買収したり、ブラジルのビール会社を買収したり、などなど日本の名だたる企業も、M&Aプロジェクトとして壮大な努力を展開されていますが、いずれも目的があいまいだったり、努力の方向性が相当おかしい感じが否めません。

正しい目的を設定しないと、戦略の前提が整いませんし、結果は出ませんし、あらゆる営みが無駄になり、さらには、組織が崩壊するリスクを招来します。

正しい目的、達成可能で現実的で損得勘定において意味ある目的を定めることが、正しく合理的な戦略を構築する第一歩です。

「目的の設定なんて、簡単じゃねえか。そんなもん、どんなアホでもできるワイ!」
などという声が聞こえてきそうですが、そうでしょうか?

くどいようですが、
「太平洋戦争という『公共事業』の目的とされた、大東亜共栄圏? 鬼畜米英? 八紘一宇? って、まるで意味不明です。大東亜共栄圏のためにアジア各国に進出した、といわれますが、『隣の家の住人と仲良くしたいので、凶器をもって、押し入って、居座りました』って、意味がわかりません」
といいましたが、
「立派な教育を受けた高い受験偏差値を有するエリートといわれる方々」
ですら、こんなアホな目的をぶち上げ、挙句の果てに、国を滅ぼしたわけですから、凡人である我々も、日々、間違った目的を設定しがちです。

ところで、ビジネスにおける
「目的」
とは何でしょうか?

弱者救済や、世界平和実現や、人類社会の調和的発展や、生態系の健全な維持でしょうか?

無論、綺麗事として、そういうことを真顔でおっしゃる方もいますが、その種の善意のペテン師は別として、ビジネスの目的はもっと別のところにあることは間違いないはずです。

異論はあるかもしれませんが、
「東大文一に現役合格し、在学中に司法試験に合格し、20代の若造から知的プロフェッショナルとして認められ、世間から20年以上“先生”と呼んでいただいている、まあまあ、平均的かちょっとそれより上の知性を有している、といってもあながち間違いとは言い難い筆者の頭脳」
で理解するところによれば、ビジネスの目的は、
「てっとり早く、リスクなく、なるべくたくさんのカネをもうける」
ということだと考えます。

もう少し、穏やかで高尚な言い方をしますと、M&Aを含めたあらゆるビジネスの目的は、

A カネを増やす
B 出費を減らす
C 時間を節約する
D 手間を節約する
E 安全保障(リスクを減らす)

のいずれかに紐づくはずです。

いえ、紐づかないと、それは、ビジネスではなく、道楽か趣味です。

日本のホワイトカラー(管理系職種)の中には、
「こいつ、一体、何の仕事をしているんだ?」
という、意味不明な仕事を生業としている方がかなりの数いるように思います。

「意味不明な仕事」
というのは、管理系職種にいらっしゃる彼なり彼女なりの仕事が、前述のAないしEのどれに属するか、あるいは、どういう形で貢献するか、全く理解できない活動をされている、ということです。

無論、その種の
「意味不明な仕事」
の中には、あまりに高度で高尚で哲学で高邁過ぎて、
「東大文一に現役合格し、在学中に司法試験に合格し、20代の若造から知的プロフェッショナルとして認められ、世間から20年以上“先生”と呼んでいただいている、まあまあ、平均的かちょっとそれより上の知性を有している、といってもあながち間違いとは言い難い筆者の頭脳」
程度では理解できないような仕事をなさっているからかもしれません。

とはいえ、AないしEのいずれにも紐づかないような営みをなさっているということは、少なくともビジネスという活動に関していえば
「(仕事が高尚であることはさておき)彼なり彼女は、いてもいなくても差し支えない」
とも考えられます。

いずれにせよ、目的があいまい、不合理で意味不明な目的、達成不可能で非現実的な目的であったり、損得勘定ではなく主観や感情(嫉妬やコンプレックス解消)といった劣悪な動機を前提に、AないしEとの紐づきが疎遠な、経済合理性という点において間違った目的を設定しても、うまくいくはずはありません。

「そのM&Aをするとどんなことが達成されるの? カネが増えるの? 支出が減るの? 時間や手間の節約につながるの? 特定の具体的リスクが消えたり減少したりするの?」
という問いをなげかけることによって、
「目的の正しさ」への「ストレステスト」
を行うとともに、どんなにご立派な方が華麗で高尚なことをおっしゃろうが、狂った目的は、早期に排除しておくべきです。

そうでないと、ロックフェラーセンターを買収したり、コロンビア映画や、映画会社MCAを買収したりといった例のように、
「膨大な時間とエネルギーを費やした挙句、カネは減る一方で、最後には、企業が崩壊の危機を招く」
といった趣の
「何の目的のために行ったM&Aか、ワケがわからない」
という状況に陥る危険性が出来しかねません。

また、あいまいで、多義的な解釈を招く、目的というのも、NGです。

完成予想図、成功時の未来の姿を具体的にイメージすべきです。

そして、これを、しびれるくらいわかりやすく、
「どんなに理解力が不足し、身勝手な妄想力豊かな、アホでも、勝手な独自解釈をしでかしようがない」形で、
共有しておくべきです。

ゴールには、予備目標も設定・構築しておくべきです。

目的を作り上げるときには、楽観バイアスに侵され、すべてを自分に都合よく解釈しがちです。

成功者や達成した経験者の話をよくきいて、悲観シナリオやプランB(予備案、バックアッププラン)も含め、保守的で現実的で堅牢な目的を設定すべきです。

最後にゴールデザインの手法についてです。

1)「プロジェクトのゴール」を創出(あるいは発見ないし定義)しても、当該ゴールが言語化・文書化されない状況
2) 「プロジェクトのゴール」なるものが一応言語化・文書化されたとしても、非現実的で馬鹿げた妄想の域を出ない代物
3)「プロジェクトのゴール」なるものが言語化・文書化され、当該ゴールに一定の実現可能性があっても、抽象的で多義的で、期限設定等がなされていない代物

といった状況がしばしば観察されます。

これでは、プロジェクトをキックオフ(開始)する以前に、当該プロジェクトの失敗は決定的となります。

その意味では、プロジェクトのゴールをデザインし、言語化・文書化する作業は非常に重要です。

プロジェクトマネジメントのプロフェッショナルにおいては、ゴールデザインの際、一般的に、SMART基準を用います。

すなわち、「プロジェクトのゴールがが客観性と合理性を維持しているかどうかを検証するテストのための検証基準ないし指標」
として、
「SMART基準(法則)」
が指標ないしモノサシとして使われることがあります。

「SMART」とは、
“S”pecific(目的が具体的で客観的で明確であること)
“M”easurable(目的が、定量化・数値化されるなど計測可能となっていること)
“A”greed upon(達成を同意しうること。無理難題ではなく、達成可能であること)
“R”ealistic(現実的で、経済合理的な結果を志向したものであること)
“T”imely(期限が明確になっていること)
の頭文字を取ったものです。

ビジネスを真剣に考えないトップがいいかげんなプロジェクトをぶち上げ、その際に適当に設定される「事業目的」なるものは、SMART基準を充足しない場合が多いですが、そうならないように、常にSMART基準をにらみながら、ゴールを発見・定義・創出した上で、ミエル化・カタチ化し、さらに言語化・文書化していくことが肝要です。

初出:『筆鋒鋭利』No.113、「ポリスマガジン」誌、2017年1月号(2017年1月20日発売)
初出:『筆鋒鋭利』No.114、「ポリスマガジン」誌、2017年2月号(2017年2月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01621_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(12)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその8_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅲ)_(b)自分が置かれた客観的状況や環境を正しく認識する

自分のおかれた状況と、現実と、改善可能な範囲や相場観を知ることが、戦略的な思考の第一歩です。

「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」
ユリウス・カエサルが語ったとされる名言です。

「偏見等によって認知がゆがんでしまい、自分のおかれた状況が理解・認識できない」
あるいは
「不愉快な現実を直視しない」
なんてことは、生きていると、うんざりするほどやらかしがちです。

記憶の上書き、すっとぼけ、自己暗示などなど、言葉はいろいろありますが、これらは、自分にとって忘れたいほどこっ恥ずかしい黒歴史やみっともない事実によって自己の尊厳が蹂躙されることを忌避するため、
「自分にウソをついて自己を保存する」
という本能としての行動です。

特に、失敗の原因が自身にある場合、自己保存のため、自分にウソをついて、あるいは事実を意図的に誤解し、自己の尊厳を守り、現実を受け入れることを徹底して拒絶する、ということは、よくあります。

また、改善不能なことや達成が不可能なことを想像したり、現実的・実務的な相場観を拒否し、
「テレビやドラマで見知ったファンタジーを前提にした身勝手な成功プロセスがすべて達成され、最後に、自分にとって都合のいい結末が劇的に実現すること」
を妄想する、なんてことは、老若男女、皆、日々やっています。

このような傾向は、社会経験とか知的レベルとか学歴の高低とかは、関係ありません。

太平洋戦争において、日本軍の作戦指揮の現場において行われていた状況認識や作戦立案等の低劣っぷりを想像すると、立派なエリートといえども、議論の前提たる事実認識がかなり危ういレベルであったことは推定されます。

また、破綻したリーマン・ブラザーズの首脳陣や、その他リスキーな挽回策を重ねた挙句に会社を倒産に至らしめた経営者たちの脳内において
「自分の取り巻く状況や環境に関する事実をどのように認識していたか」
をイメージすると、戦略云々以前に、事実の認知レベルにおいて、かなり歪みがあったものと思われます。

去る2016年に行われた、ヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏が争ったアメリカ大統領選の予測についても、立派な大学の立派そうに見える先生が、
「ヒラリーに決まっている。トランプなんて、なるはずない」
と大見得切っていましたが、結果は、ヒラリー・クリントンの惨敗。

立派な大学の教員ですら、事実と妄想を区別する、ということが困難である以上、そこらへんの企業経営者の認知能力のレベルって、歪みまくっていると推定されます。

むしろ、我々は皆、認知能力に問題を抱えている認知症罹患者であり、それが重篤化して、社会生活に支障がきたすと、
「認知症患者」
といわれるのであり、一般の健常者と認知症患者との区別は、相対的な症状レベルの問題である、とも思えます。

我々の脳内に巣食っている偏見の中で、もっとも強固に作用するものが、
「常識」
です。

入手したデータを観察したり、認識したり、解釈したりして、最終的に
「自分のおかれた状況や環境はこうだ」
という判断をする際、学校の先生やサラリーマンの父や専業主婦の母が刷り込んだ
「渡る世間に鬼はなし」
「頑張ればきっとうまくいく」
「神様は誠実な人間を見放さい」
といった誤った偏見が、脳を間違った方向に回転させ、致命的な判断ミスを誘う、ということも事例としてよくあります。

無論、日常生活はこれで差し支えありません。

ですが、今、議論されているのは、
「イレギュラーでアブノーマルなビジネス案件」
をとりまく状況や環境の問題です。

にもかかわらず、迷ったら、常識という
「偏見のコレクション」
で、憶測し、思い込み、たくましく想像してしまうのが、失敗しがちな経営者の脳内で起きていることです。

「アブノーマルで刺激的な状況を、陳腐で退屈な常識で推し量って、正しい情報解釈に至る」
というのは、フツーに考えてうまくいくはずがありません。

初出:『筆鋒鋭利』No.112、「ポリスマガジン」誌、2016年12月号(2016年12月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01620_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(11)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその7_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅱ)_(a)正しい戦略リテラシーを実装する

学校教育では、
「努力は尊い。結果がすべてではない。努力はいつか報われる。失敗をおそれるな。とにかく我武者羅に突き進め。考えるな、感じろ。熱いハートにしたがえ。ダメでも次がある」
という趣旨のリテラシーが洗脳(そもそも学校教育というのは、未熟の脳に特定の思想や価値観を植えつけるものであり、社会的なコンセンサスを背景にした、合法的な洗脳です)されます。

しかしながら、ビジネスや事業戦略を構築するうえで実装しておくべきリテラシーは、
「無駄な努力、無意味なガンバリ、というのは山程ある。目的から逆算した最小限の犠牲で十分。方向性を誤って空回りしていても、努力は無意味。結果がすべてであり、目的は常に手段を正当化する。必要であれば、明確な痕跡が残らない範囲で、あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、反則技、すべてを駆使しても差し支えない」
というものです。

外資系企業など
「M&Aを成功するスキルを有するマネージメントチーム」
においては、もちろん、後者を当然の前提として思考・準備・計画・実行を冷厳に進めます。

他方で、
「M&Aで失敗して痛い目に遭う日本の多くの企業」
は、学校教育で培ったリテラシーを墨守しているように見受けられます。

初出:『筆鋒鋭利』No.111-2、「ポリスマガジン」誌、2016年11月号(2016年11月20日発売)

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01619_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(10)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその6_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅰ)_総論

「戦略が大事だ」
「戦略的に考えよう」
「チミには戦略というものがないのかね(怒)」
「ウチの上司はバカで、戦略センスとかナッスィングで、ホント、困っちゃうよ~」
とかなんとか、という形で、この
「戦略」
という言葉、本当に巷でよく耳にします。

しかし、また、この
「戦略」
という言葉ほど、曖昧で、無内容で、誤解されているものはありません。

私なりの理解ですが、
「戦略」
というものは、
「様々な環境要因や制約条件のなかで、現実的に達成可能な目的を決め、合理的に筋道を立てて、最小限の犠牲で、目的を段取り良く、達成するための方法論」
というものです。

戦略論の大家・ビッグネームといえば孫子(孫武)ですが、その
「孫子イチオシの最強の戦略」
は、
「三十六計逃げるに如かず(三十六計逃げるが上策なり)」
といわれるものです。

要するに、
「逃げるが勝ち」
「逃げて逃げて逃げまくれ」
ということですが、
「意識高い系の自信過剰な方々が多用する『戦略』という言葉のもつ、中世ヨーロッパの騎士道のようなヒロイックでロマンチックなイメージ」
とは、真逆の、
「姑息で卑怯で下劣でリアルな方法論」
が、軍事思想の大家の壮大な思索の結果の最終解、というのも、皆さんにとっては違和感があるかもしれません。

しかし、私個人としては、多いに納得しますし、とくに、投資や金儲けについていえば、この
「逃げることをベストとする戦略」
が最強であることは疑いようもありません。

すなわち、投資でカネを増やすコツは、
「勝ち逃げ」と「損切り」
につきるのです。

「意地やプライドや沽券で勝負を続けるのではなく、勝っているあいだにとっとと戦果を得て退却し、負けたらボロ負けしないうちに逃げちまえ」
という身もフタもない方針です。

逆に、勝ちに慢心していつまでも戦場に残っていると、想定外の事態に見舞われ制御不能のまま元本割れという憂き目にあうことになりかねませんし、損切りのタイミングを逸すると、特に信用売買や先物をやっていると、最悪、全財産を失い破産することもある、というのも経験上理解されている現実です。

M&Aも同様であり、
「いかにして逃げるか」、
すなわち
「出口戦略」
がもっとも重要な戦略の根幹を形成します。

まあ、いってみれば、M&Aも、企業を取引対象物とする金儲けのための取引の一種に過ぎませんし、株取引や不動産売買と同様、
「安く買って、とっとと高く売りつけ、しこたま儲ける」
という経済活動の手法の一種に過ぎません。

ところが、日本の多くの残念な企業がM&Aでやっていることは、出口戦略を描かず、うまくいかなかった場合の想定(ストレステスト)すらおこなわず、
「妄想満載のバラ色の未来が永遠に続くこと」
だけを身勝手に思い描きつつ、無警戒に、エントリーし、出口のない閉塞状況に追い込まれ、貴重な時間とカネとエネルギーを消耗し続ける、という愚劣極まりないことです。

では、具体的にどういう戦略にもとづき、M&Aという
「イレギュラーでアブノーマルな取引」
を遂行することが、推奨されるのでしょうか。

初出:『筆鋒鋭利』No.111-1、「ポリスマガジン」誌、2016年11月号(2016年11月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01618_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(9)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその5_(B)PMI(ポストマージャーインテグレーション。M&A後の統合実務)による円滑な経営統合作業(ⅲ)

01617に引き続き、
(B)PMI(ポストマージャーインテグレーション。M&A後の統合実務)による円滑な経営統合作業
に関する日本企業の失敗やしくじりのメカニズムを解説させていただきます。

06167では、M&Aを結婚になぞらえながら、
「結婚が、結婚後の生活について現実的な生活設計がないまま、若気と霊感の赴くまま、ノリで結婚に突入する、と失敗することが多い」
のと同様、M&Aも
「現実や打算や計算を抜きに、天啓や霊感や神のお告げだけでM&Aを猛スピードで敢行すると失敗する可能性が高い」
という趣旨のことを申し上げました。

ところで、戦後以来、離婚率がものすごい勢いで増加しているようです。

熟年離婚がテレビ等で取り沙汰されていますが、若い世代の離婚に比べれば、熟年離婚の数自体、必ずしもしびれるくらい多いとはいえないと思われます。

といいますのは、離婚には、相当エネルギーが必要で、年を取って、くたびれきっている世代には、過酷なプロジェクトとなるからです。

加えて、離婚をすると、家計単位が分割されるので、経済的には両者にとってマイナスになります。

2人で暮らしていれば、1つで足りていたテレビやクーラーや冷蔵庫やアパートが2つ必要になる、ということを考えれば明らかに想像できます。

しかも、熟年世代は、年金暮らしあるいは年金支給待機という方も多く、要するに、
「カネ」
がありませんので、不倶戴天の仇敵という関係でもない限り(そんな関係だったら、そもそも結婚したこと自体摩訶不思議というべきです)、理想的なシェア・エコノミーが成立し、効用面でメリットのある生活関係をわざわざ不合理かつ不経済に変更する必然性は乏しいはずです。

で、若い世代の離婚率が一貫して増加傾向にあることについてですが、この理由について、私は、
「特に、女性にとって、悪い方向での想定外が連続するから」
という状況によるもの、と推察します。

シンデレラというお話をご存じでしょうか?

作者は、ウォルト・ディズニーというアメリカのオッサンではありません。

ディズニーさんは、擬人化されたネズミとその一派たち以外、実はあまり純粋オリジナルコンテンツはありません。

シンデレラも、白雪姫も、人魚姫も、ムーランも、いってみれば全部合法的に余所からパクったものです。

だからといって、ディズニーのコンテンツをパクったら、タダでは済みません。

ディズニーは、自分は結構余所から(合法的にですが)パクっていますが、自分のものをパクられるのは厳しい、という
「自分に優しく、他人には厳しい」
という経営という点で立派というかシビアな企業なのです。

脱線しましたが、シンデレラの作者は、ディズニーではなく(アメリカの方々の多くはディズニーがオリジナルで作ったと誤解しちゃっているかもしれませんが)、グリム兄弟というドイツの童話作家です。

で、このシンデレラというお話、かいつまんで説明すると、

・ボロを着て、カネも余裕もなく、炊事・洗濯・ムカつくガキの世話等、毎日毎日家事全般させられ、休む間もない赤貧生活をしていた不幸な女性が、
・やがて、悲惨な現実の世界」から「ロマン満ち溢れる世界」へ段階的に移行していき、
・最後は、壮大な結婚式を挙げ、皆の祝福を受け、幸せの頂点に到達する、

という話です。

ところが、日本の若い女性が体験する一般的な結婚生活というのは、この
「シンデレラ・ストーリー」
の、見事なまでの逆回転バージョンです。

すなわち、

・出会ってまもなく、壮大な結婚式を挙げ、皆の祝福を受け、幸せの頂点に到達した女性が、
・やがて、「ロマン満ち溢れる世界」から「悲惨な現実の世界」へ段階的に移行していき、
・何年か後には、ボロを着て、カネも余裕もなく、炊事・洗濯・ムカつくガキの世話等、毎日毎日家事全般させられ、休む間もない赤貧生活に陥る

という、悪い意味での想定外の連続のストーリーを経験します。

こういうことがあると、離婚したくなるのも、うなずけます。

M&Aも、同様の傾向にあります。

M&Aという取引が成立する時点においては、あらゆる不愉快な想定が度外視され、
「この取引が成立しさえすれば、バラ色の未来が訪れる」
というロマンと希望とファンタジーに満ちた想定を関係者全員共有し、取引実現というその瞬間だけを目指して、そこに、カネと労力とすべての勢力を注ぐ熱狂が先行します。

しかしながら、M&A取引が成立し、熱狂が過ぎ去り、
「宴の後」
となった時点以降のプランやシナリオは、なんとなくおざなりになっています。

一応、その種の計画は想定されてはいるものの、華々しい、夢のようなシナジーシナリオを描き、熱狂して神輿を担ぎ、横で声援を送り、脇で踊り狂っていたM&A支援プロフェッショナルは、祭りが終わるといなくなって(別の祭りに行っている)、残ったのは、
「M&A当時は素晴らしく魅力的にみえたものの、よくみりゃ、たいしたことのない、あるいは、お荷物として足を引っ張るしか能が無い、どうしょうもないガラクタ企業」
という状況だったりします。

結婚はともかく、M&Aについては、あまりアホな失敗が続くと、東芝やパナソニックや丸紅のように、企業そのものが傾きます

ノリや熱狂も大事ですが、そんなことより、M&Aが終わった後、その後、長く、長く、長~く続く、投資回収までの道のりを、どういう現実的な方法で達成していくのか、ということを、ドライに、クールに、スマートに考えるべきといえます。

ただ、M&Aが下手くそな企業の幹部のメンタリティーは、
「将来的な生活設計も乏しいままノリとアツさだけで結婚に突進した挙句、神の速さで破綻する若いカップル」
のそれとあんまし変わらないせいか、前記のようなドライかつクールでスマートな思考を完全に欠如しているがゆえに、失敗し、失敗し、失敗しまくるのです。

初出:『筆鋒鋭利』No.110、「ポリスマガジン」誌、2016年10月号(2016年10月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01617_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(8)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその4_(B)PMI(ポストマージャーインテグレーション。M&A後の統合実務)による円滑な経営統合作業(ⅱ)

引き続き、
(B)PMI(ポストマージャーインテグレーション。M&A後の統合実務)による円滑な経営統合作業
に関する日本企業の失敗やしくじりのメカニズムを解説させていただきます。

よく、芸能人が、出会ってまもなく結婚に至る、という例をみかけることがあります。

いわゆるスピード婚といわれるものです。

中には、すでに妊娠しており、早く結婚しないとお腹から出てきた子供の立場が不安定になる、という切羽詰まった状況で結婚を決定し、公表する、ということもあるようです。

企業のM&Aでいえば、M&Aの交渉前に、経営統合が現場レベルではじまって、ジョイント・ベンチャーの子会社までできて、今更、知らん顔もできない、という趣の状況です。

中には、特段、結婚前の妊娠とか、そういう差し迫った事情が見受けられないにもかかわらず、電撃婚、スピード婚に至るような例も見受けられます。

企業のM&Aでいいますと、守秘義務契約を取り交わし、お互い裸になった付き合いが始まってから、デューデリ(買収前監査)をほとんど時間をかけず形骸化したまま進めていき、値段交渉や買収後の取り決めもおざなりにして、一気呵成にM&Aを完遂する、という趣のものです。

電撃婚であれ、スピード婚であれ、ビビっと婚であれ、そういう迅速果断な結婚を行った芸能人が、レポーターから経緯や動機を尋ねられると、
「会った瞬間、ビビッときた」
「すぐにわかった、この人しかいない、と」
という直感なり霊感を重要な根拠として挙げることが多いようです。

しかし、その後、だいたい3年くらいしてからひっそりと離婚する、という例も多いようであり、
「直感とかインスピレーションとかってのもあまりアテにならない」
という例も少なくないようです。

企業も同様で、
「現実や打算や計算を抜きに、天啓や霊感や神のお告げだけでM&Aを猛スピードで敢行するような会社」
で、投資回収がうまくいき、しびれるくらい儲かっている、といったところはあまりないようで、たいていは、
「やんなきゃよかった」
「なんで、こんな企業買ったんだろ」
と後悔することの方が多いようです。

考えてみればそうかもしれません。

俳優の高島政伸氏がいい例です。

高島氏は、あるタレントの方と、交際まもなく、
「この人しかいない、とすぐわかった」
とかなんとかいう直感だか霊感だかにしたがって、スピード結婚しましたが、その後、すぐに離婚したくなってしまいました。

ところが、相手が離婚に応じてくれず、膨大な時間とコストとエネルギーを費やし、ワイドショーでいじられまくられる、“離婚トラブル”に見舞われた、とのことです。

「結婚は自由だが、離婚は不自由」という私が作った格言がありますが、高島氏は、これをまさしく地でいくような地獄の経験をなさいました。

やってみるとわかりますが、結婚なんて、実はそんなに難しくありません。

結婚式とか披露宴とか二次会とかって、別に法律上必要なわけではありません。

双方が合意し、役場に届け出さえすれば、結婚なんて非常に簡単にできちゃいます。

逆に、結婚式とか披露宴とか二次会とか盛大にやって、その後、ヨーロッパに新婚旅行に出かけ、帰国後、婚姻届け出を出す段取りで、新婚旅行中に仲違いして
「別れる」
という話に至った場合、たとえ、結婚式や披露宴とか二次会とかが終わり、カタコト日本語を話す外国人神父の前で永遠の愛を近い、バッカ高い指輪を交換したとしても、
「この結婚式を挙げたカップル」
は法律上は結婚していないので
「アカの他人」同士
です。

「別れる」「別れない」
といっても、
「離婚」
という話ではなく、もともと無関係のものを、無関係のままとするだけです。

厳密にいえば、婚約不履行の問題にはなり得ますが、まあ、カネの清算の問題であり、身分関係は
「無関係の男女」
のままであり、清算も解消も何も必要ありません。

このように、結婚は、本当にあっさり、というかサックリというか、驚くほど簡単にできます。

結婚は、結婚することそのものより、結婚した後が大変なのです。

したがって、
「結婚するかしないか」
「いつ、誰と、どのような生活設計を想定して結婚するか」
という問題は、もっと、冷静に考えるべきなのです。

この観点からすると、
「ビビっときたので、すべてをなげうって、出会って間もない、素性も不明な相手の胸に飛び込む」
なんてことをいきなりやるのは、無謀でリスキーでしびれるくらいヤッヴァイ行動といえます。

無論、企業間の結婚(ないし養子縁組)であるM&Aも同様です。

統合後、投資回収が成功するまでの苦労や困難、あるいは出口戦略を描かず、うまく行かなかった場合の想定(ストレステスト)を行わず、
「妄想満載のバラ色の未来」
だけを身勝手に思い描きつつ、無警戒に、入り口に飛び込んで、うまくいくはずなどありません。

まず、M&Aを行うほとんどの企業は、当該買収対象企業を、
「買った後どうやって使うべきか」
についてあまり考えていません(出口戦略・シナジーシナリオの不在)。

結婚生活になぞらえると、結婚生活について現実的な生活設計がないまま、若気と霊感の赴くまま、ノリで結婚に突入する、という趣向に近似する傾向です。

あと、企業の立ち上げから現在まですべての歴史や詳細を把握しているわけではなく、また、企業の全てを知っているわけでもなく、
「企業独自のルールややり方や“黒歴史”や裏マニュアルや密約やヤヴァイ機密」
などはそもそも文書化・記録化すらされておらず知りようもなく、M&Aの後で、各種瑕疵や想定外に見舞われる、ということも、M&A買い手企業がPMIに失敗する理由として挙げられます。

結婚生活になぞらえると、
言えない過去がある、
多額の借金がある、
実は年齢や身長や体重を誤魔化していた、
重い病気がある、
潔癖症過ぎて共同生活無理、
子ども大嫌いで生むのヤダ・育てるのマジ勘弁、
とか考えておりすでに家庭設計において致命的な意見の隔たりが内在していた、
などによる結婚生活の破綻です。

そして、このようなことをあまり突き詰めて考えないまま、霊感と神のお告げにしたがい、ノリと勢いでM&Aに突入するものですから、買った後経営統合が出来ない(結婚生活になぞらえると、性格の不一致、方向性が違う、夫婦喧嘩が絶えない、イヤな面が見えてきてしまい生理的に無理といった、結婚当時とは真逆の見解が双方から表明されるなど)、という悲喜劇に見舞われるのです。

初出:『筆鋒鋭利』No.109、「ポリスマガジン」誌、2016年9月号(2016年9月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01616_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(7)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその3_(B)PMI(ポストマージャーインテグレーション。M&A後の統合実務)による円滑な経営統合作業(ⅰ)

まず、
(B)PMI(ポストマージャーインテグレーション。M&A後の統合実務)による円滑な経営統合作業
の失敗事例やしくじり話といった、残念な状況をお話したいと思います。

M&Aは突き詰めれば単なる
「買い物」
であるということができますが、本稿においては、
「人生におけるそこそこ重要な決断で、かつ決断し、セレモニー自体も大変だが、むしろ、セレモニーを行った後の話の方がより重要かつ大変」
という意味において、状況が近似する
「結婚」
になぞらえて、その難しさや、失敗の根源的原因を探っていきます。

「M&A」
という
「結婚」自体
もそこそこ大変です。

散々苦労して取引にこぎつけたのだから、もうこれで、バラ色の未来が描けるだろう、というのが、まあ、普通のM&Aの買い手の認識です。

ところが、結婚もそうですが、結婚するまでに、いろいろな障害や苦労や、あるいは結婚相手に群がる競争相手との競争に競り勝った困難を乗り越えて、さんざん時間とエネルギーを(と場合によってはコストも)費消することがあります。

ただ、そのように、結婚するまでに散々苦労したから、といって、そのような
「結婚に至る苦労の大きさ」

「結婚後の生活が楽しく、愉快で、幸せになる」
ということを保障する、というものでもありません。

ちなみに、2013年という古いデータですが、日本における一般の夫婦の離婚率は31%、とのことです。

これは、恋愛破綻率ではありません。

結婚がぶっ壊れる確率です。

結婚を決めて、結婚式を挙げて、入籍に至るまで、相当な時間とエネルギーとコストを費やしたはずです。

その、膨大な時間とエネルギーとコストの結晶としてのつながりが、3割も解消される、ということです。

離婚に至らないまでも、
「仮面夫婦」
などのような離婚に近い状態の破綻夫婦が、膨大な
「暗数」
として存在する、ということも考えれば、これはこれで、衝撃的な話です。

まあ、一般の方の婚姻となると、気持や感情も入りますし、
「ソロバン勘定」
だけで計算づくでやるすべてをなげうって、
「出会って間もない、素性も不明な相手の胸に飛び込む」
などという合理的に考えて高度の蓋然性を以って破綻が見込まれるリスキーな関係構築もあるわけですから、仕方がない、とも考えられます。

ですが、
「経済合理的な頭脳を有する企業経営者が、プロや優秀な部下を交えながら、純ビジネス的な判断として、熟考の末、行ったM&A」
は、流石に、そんなことはないだろう、と思い、これまた統計データを確認してみました。

ところが、同じく2013年に大手監査法人のトーマツが調べたデータによると、M&Aの成功基準達成企業は、全体の36%に過ぎず、M&Aを行った企業のうち、実に、64%もの企業が、やってみたM&Aは失敗、
「やらなきゃよかった」
と考えている、ということが判明しました。

「仮面夫婦」
のように、本当は、大失敗しているのだけれども、
「このM&A、よかった、成功した、うまくいっている」
と強弁している企業が暗数として相当数存在していると思われる、という経験上の事実も併せ考えると、まあ、M&Aは、ほとんどのプロジェクトが失敗に終わる運命にある、ということがいえるほどです。

そういう、
「仮面夫婦のような形で、破綻状態で存続するM&A」
という代物ですが、1つには、見栄っ張りで意固地なオーナー経営者が暴走して推進させたM&Aなどにおいて、
「素直に、潔く負けと失敗を認めることができず、損切りするタイミングを逸し、傷口を広げ、あるいは泥沼化する」
という事例です。

もう1つは、例えば、上場企業などにおいては、下手に、自分たち経営陣が自信満々に進めたM&Aが失敗して大コケしたことを、あっさり認めると、株主総会で突き上げを食らったり、最悪、代表訴訟を提起され、自分の立場が危うくなります。

さらに、先代経営者や先輩・OB経営者のM&Aで、失敗してゾンビ状態になっているものを、失敗したとして終わらせると、どのように文句をいわれるかもしれません。

そんなこともあって、
「夫婦仲が冷えきっても、努力によって維持継続する結婚生活」
を続ける夫婦のように、
「論理的に正しくない選択をしてしまったあと、選んだ選択肢を正解にする努力」
というものを尽くして、M&A失敗の表面化を先送りする企業も相当数存在するのです。

初出:『筆鋒鋭利』No.108、「ポリスマガジン」誌、2016年8月号(2016年8月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01615_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(6)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその2_(A)現実的な投資回収シナリオが機能する適正な買収価格あるいはこれを達成するためのハードな交渉

まず、
(A)現実的な投資回収シナリオが機能する適正な買収価格あるいはこれを達成するためのハードな交渉
です。

M&Aは、いってみれば、買い物と同じです。

専業主婦が、大根や肉や魚を買うのと大差ありません。

とにかく、
「良い物を安く」
というのが買い物における賢い戦略です。

ところがM&Aを行うほとんどの日本企業は、賢い企業の買い方をしていません。

外資系で訓練を受けて独立した百戦錬磨のM&Aのプレーヤーがやるような
「『1万円札を3000円で買える』といった、しびれるくらい安い買い物の提案が見つけてきて、それを、相手の無知につけ込み、足元をみて、2000円に値切って買う」
という買い方ができる日本企業は皆無です。

買い物慣れしていいない日本企業のM&Aプレースタイルは、
「買いたい」
という強い願望が先行し、この願望が強力なバイアス(認識の歪み)となって
「価格の合理性に関する検証」
を怠らせ、
「買いたい気持ちがある以上、多少高くても、値段は安いと信じる」
といった愚劣なジャッジの末、経済合理性に反する買い物を敢行して、大損害を被る例がほとんどです。

すなわち、M&Aを行うほとんどの日本企業は、
「感情で決めて、理屈で正当化し、相手のペースに振り回され、引くに引けず、最後は意地になってどこまでも高値交渉に付き合う」
という、
「買い物では、もっともやってはいけない、愚かな購買行動」
に走るのです。

といいますか、M&Aを行う日本企業の大半は、買い物に参加する前提として、
「適正な買収価格」
なるものを把握しておりませんし、さらにいうと、そもそも、マガイモノとホンモノを見分ける鑑定眼すら欠如しています。

企業に持ちかけられるM&A取引の中には、
「生きている企業」
ではなく、
「死にそうになっている企業」
の買収話もあり、これを前提としたファイナンス(DIPファイナンス)、などという
「ちょっと聞いただけで、うまくいかなさそうな代物」
もあります。

DIPファイナンスの
「DIP(debtor in possession)」
とは、即ち経営再建中の会社、さらに具体的にいうと
「実質的に倒産状態にある会社」
のことをいいます。

DIP企業の買収とは、たとえていうなら、
「金持ちで若くて健康な人間」
と結婚するのではなく、
「赤貧にあえぎ、かつ今にも死にそうな病人」
との縁談話であり、DIPファイナンスとはそんな縁談に多額の結納金(ファイナンス)を出すという話です。

したがって、DIP企業買収やDIPファイナンスなどという技法は、普通に考えておよそうまくいくとは期待できない代物です。

よほど企業を見る目があれば格別、こういう話に踊らされている企業は後で大きなケガを負う羽目になりかねません。

にもかかわらず、M&Aの経験のなさそうな企業に限って、ブローカーやコンサルタントの
「最先端のM&A! 今、グローバル企業がこぞって採用する、DIPファイナンスを用いた、DIP企業買収戦略!」
などといった、無内容で有害な煽り文句に踊らされ、
「ババつかみ」
をさせられてしまいます。

ここまで酷い買収話ではないにせよ、日本の一般的事業会社の買収条件の交渉のスキル、なかんずく、価格交渉については、その下手くそっぷりは、非常に際立っております。

日本企業が買収に参加すると、まず、どの企業も、
「物欲しそう」
にしています。

何時でも席を立って破談させるようなポーズをみせながら、
「大阪のおばちゃん」
のようななりふりかまわぬ値切り交渉を行うような日本企業は皆無です。

「骨付き肉を前に、空腹で死にそうになっている、素直な子犬」
のように、ヨダレを垂らして、尻尾をふりながら、1分でも早く
「食らわされているお預け」
が1分でも早くなくなるよう、相手の意のままに全ての条件を呑み、ぼったくられている。

これが標準的な日本の事業会社のM&Aスタイルです。

無論、契約書をギチギチ詰めていけば、ある程度のリスクはヘッジできます。

しかし、そこまで、時間と労力をかけて契約書を詰めなければならない、というのであれば、座組自体を考えなおした方がいいかもしれません。

すなわち、
「『市場価格1万円で新品を調達できる商品』について、5万円を払って中古品を購入する」
といった趣の愚劣極まりないM&A取引については、どんなに優秀な弁護士に契約書をつくってもらったところで、そもそもの取引の前提が狂っているわけですから、うまくいくはずもありません。

かくして、狂った取引条件のまま、狂った取引内容を正確に反映した狂った契約書が作成され、多大な時間と費用とエネルギーをかけて、始まる前から失敗するようなM&Aプロジェクトが完遂されてしまうのです。

初出:『筆鋒鋭利』No.107、「ポリスマガジン」誌、2016年7月号(2016年7月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01614_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(5)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその1_概説

1989年に行われたソニーのコロンビア・ピクチャーズ・エンターテイメントをターゲットとするM&A(約5000億円で買収するも業績は振るわず)

2002年5月ころから開始されたウォルマートの西友をターゲットとするM&A(買収価額は非公表ながら、業績低迷)

2003年10月17日に完了したテスコのシートゥーネットワークをターゲットとするM&A(2012年6月18日 には、イオンが同株式の50%を1円で取得する予定であることを発表する形で、撤退)

2006年1月ころから6月ころまでに行われたセブン&アイホールディングスのミレニアムリテイリング(西武百貨店、そごうやロフト等)をターゲットとするM&A(当初1311億円で株式の大半を買取、さらに株式交換で追加取得した際、890億円相当の株式を発行し、投資総額2201億円で買収したが業績不振 )

2006年10月16日に行われた東芝のウェスチングハウスをターゲットとするM&A(6600億円で買収後、赤字続きで巨額損失を出したが、粉飾決算し、後に判明。損失判明後は、東証一部から東証二部への降格指定替え)

2007年8月14日に行われたHОYAのペンタックスをターゲットとするM&A(944億8200万円で買収するも、最終的には減損処理、デジカメ事業をリコーに売却)

2012年2月27日に行われた三井倉庫ホールディングスの三洋電機ロジスティクスをターゲットとするM&A(242億円で買収。その後、255億円の減損処理と、会長・社長の引責辞任)

2013年に行われた丸紅のガビロンをターゲットとするM&A(2800億円で買収し、1000億円もののれん代を計上するも、業績不振で、2020年3月期には最終的に500億円の評価損を計上し、丸紅は、連結最終損益が1900億円の赤字〔過去最大の赤字〕に転落〔2019年3月期は2308億円の黒字〕。)

2009年12月21日に行われたパナソニックの三洋電機をターゲットとするM&A(米国独占禁止法〔反トラスト法〕クリアランス等の各種課題クリアランスを経由して、予想以上に買収プロセスが長期化し、苦労の末、約6600億円で買収し、5180億円という巨額ののれん代を計上するも、2013年3月期には前期と併せて約5000億円の減損処理し、同期に7650億円の赤字を計上し、63年ぶりに無配転落)

その他、
キリンのスキンカリオールをターゲットとするM&A(1400億円の減損を計上)、
LIXILのグローエをターゲットとするM&A(グローエの中国子会社ジョウユウ社長の巨額横領が発覚し660億円の減損計上)、
NTTグループのディメンション・データをターゲットとするM&A(3000億円で買収するもいまだテコ入れ中)、
日本郵政のトール・ホールディングスをターゲットとするM&A(4000億円の減損計上)、
富士通のICLをターゲットとするM&A(1900億円で買収後、2900億円の減損計上)、
古河電工のルーセント・テクノロジーをターゲットとするM&A(1000億円の評価損計上)、
第一三共のランバクシーをターゲットとするM&A(買収後、3500億円の損害が発生)、
日立のIBM社のハードディスク事業をターゲットとするM&A(毎年100億円単位の損失垂れ流しが続いた)、
グリーのポケラボをターゲットとするM&A、
DeNAのiemoをターゲットとするM&Aなどなど

M&Aという営みは、
「吉本新喜劇でよくみる、全員コケる芸」
のように、面白いように、失敗し、失敗して、失敗し倒しています。

「M&Aの失敗例は、芸能人の離婚率とだいたい同じ比率なのではないか(おそらく90%近くが失敗)」
という私の感覚値もふまえて考えると、M&Aプロジェクトは、成功することが稀有で異常で例外な営みで、デフォルトでは、ほぼほぼ失敗するのが普通、ということになります。

しかしながら、この買物、どの企業も面白いように失敗します。

対象が
「企業」
ということであっても、突き詰めれば、卵や大根やカップラーメンや缶コーヒーと同様、単なる
「買い物」
に過ぎないM&Aです。

逆に、M&Aという営みを成功に導くためには、どのようなポイントをケアすることが必要なのでしょうか。

M&Aを成功させるためには、
(A)現実的な投資回収シナリオが機能する適正な買収価格あるいはこれを達成するためのハードな交渉
(B)PMI(ポストマージャーインテグレーション。M&A後の統合実務)による円滑な経営統合作業
(C)全体的な戦略の合理性
のすべてが必要です。

しかし、これらはいずれも日本企業にとって
「不得意中の不得意項目」
なのです。

不得意以前に、前記3つの成功要因を無視または軽視し、少なくとも、当該要因を逸脱した行動をしています。

だからこそ、日本企業は、M&Aという
「たかが買い物」
如きを、びっくりするくらい、アホみたいに、失敗し続けてきましたし、今後も失敗し続けるのだと思います。

初出:『筆鋒鋭利』No.0106-2、「ポリスマガジン」誌、2016年6月号(2016年6月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01613_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(4)_単なる「買い物」に過ぎないM&Aがモメる状況・経緯

1 「究極の一品モノ」でオーナーの「愛着」が半端ない「売買対象物としての『企業』」

企業は、そこらへんの市場に
「日用品」
として転がっているわけではなく、経営者が丹精込めて作り上げ、育て上げた、
「究極の一品モノ」
です。

当然ながら、手放す方は、愛着がありますし、ちょっとやそっとでは手放してくれません。

絵画や彫刻などの美術品なら、持っているだけで、たいしたメンテナンスをしなくても傷んだり、減価したりしません。

しかし、企業は、経営者がものすごい労力や精神力を投入して生かし続けないと、たちまち、市場から見放され、赤字をまきちらし、社会のお荷物になります。

経営者も若い間はいいですが、歳をとって、体が大変になってくると、企業メンテナンスするだけでも大変になってくる。

こうやって、
「愛着はあるが、持っているのは大変」
という状況をズルズル続けているうちに、企業が客からも市場からも見放され、劣化していき、最後は、倒産という恥さらしを回避するため、身売りを選択する状況に追い込まれます。

2 身売りのための「売り物」を安値で買い叩く側面をもつM&A

M&Aという取引の手段ないし方法は、まともな使われ方をする場合もありますが、現在においては、ほとんどの場合、廃業回避や事業承継や、さらには倒産処理方法の1つとして機能しています。

ある企業が倒産しそうになっており、完全に死ぬ前にどこかに安値で引き取ってもらいたい。

「身売り」
というと聞こえが悪いし、
「企業を産み、育ててきた、愛着というか執着というか怨念じみた感情」
に支配されたオーナー経営者が
「倒産」
という恥さらしの終わり方では納得しないし、話が進まない。

じゃあ、
「M&A」
というハイカラな言葉でごまかしてしまえ。

行き詰まっている企業にM&A話が出てくるとすれば、こんな状況が考えられます。

とはいえ、
「便所」
のことを
「お手洗い」
と言い換えたのと同様で、品のいい言葉を使ったからといって、便所で行う行為が、華麗で美しいものになるわけではありません。

いろいろ外来語でごまかそうとしても、やっていることの本質は、
「身売り」
を前提とした買いたたきと、買いたたきを前提とした実地調査です。

買いたたこうとしている側は、対象企業の社長が
「バカで舞い上がり易いタイプ」
であると見ると、華麗な言葉で、当該社長が調子に乗るようにし向けていきます。

そして、バカが舞い上がっている間に隙をついて、情報収集し、値踏みし、選択肢を巧妙に減らしていき、精神的に支配していきます。

そして、にっちもさっちもいかなくしてから、徹底的に買いたたき、身ぐるみ剥ぎにかかるのです。

見たこともない連中(たいていは偏差値が高そうで、いいスーツを着こなし、バカ高いネクタイをぶら下げている)がうろちょろして、書類をコピーしていき、社長がやたらとM&A用語を使いだすときは、
「M&A」
という名の
「身売り」
が進んでいると見ていいかと思います。

3 買う側としても失敗の可能性が高いM&A

また、企業がM&A話をもちかけられている場合も問題です。

M&A(合併・買収)が、失敗例が相当数あることはあまり知られていません。

正確な調査をしたわけではありませんが、私の感覚では
「M&Aの失敗例は、芸能人の離婚率とだいたい同じ比率なのではないか(おそらく90%近くが失敗)」
と思います。

ちなみに、古いものですが、日経新聞(2011年4月28日朝刊)によると、世界の歴代金額上位3件は、いずれも買収成立から数年以内に数兆円単位の損失が生じている、とのことです。

また、同記事によると、特に、加工型製造業やサービス業といった川下産業の大型M&Aは、 川上産業に比べて買収後の経営統合作業が複雑になる面があり、失敗する場合が多いそうです。

初出:『筆鋒鋭利』No.0106-1、「ポリスマガジン」誌、2016年6月号(2016年6月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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