01635_法律相談の技法1_相談者からサポート要求メッセージを受けた際の初動(相談実施前に行っておくべき、事前の「前提状況確認」)

1 前提

まず、相談者が何やらサポートメッセージを言語として発していてもこれを素直に受け付けるべきではありません。
法律や事件対処の素人である顧客・相談者が、正しい理解と認識の下、正しいことを要求しているとは限りません。
相談者(素人)が言語として発しているメッセージが、正しいものなのか、それとも正しくないもの(間違ったもの、不合理なもの、狂ったもの、「前提において致命的な誤りがあり、当該前提から矯正すべきもの」等)かを見定める必要があります。
そして、後者、すなわち、相談者が
「正しくないもの(間違ったもの、不合理なもの、狂ったもの、「前提において致命的な誤りがあり、当該前提から矯正すべきもの」等)」
をサポートリクエストメッセージとして申し出てきている場合、当該メッセージ の解釈・補正が必要となります。
といいますか、
「正しく状況認知ができ、正しく状況評価・解釈ができ、正しく合理的な支援要求できるような相談者」
は稀、というか、まずそんな素人いません。
デフォルト状況として、
「素人であり、ただでさえ知識も経験もないのに、事件の当事者であり、トラブルの渦中にいて、パニックになって認知能力も知性も精神的安定性も欠如している相談者」
は、
「『欲によって曇った目』と『都合の悪いことが聞こえない耳』で認知・認識した歪んだ状況を、自己保存のバイアスで自己に都合よく評価・解釈し、間違った考えの下、間違った内容として構成した話」
を、自信たっぷりに語りだすため、普通に観察すれば、
「息を吐くように嘘を付く」
ようになってしまっていることが、経験則上、多く見受けられます。

2 相談者に対する気構え

したがって、
性「愚」説
に立ち、
「相談者は、常に間違ったこと、事実と違うこと、おかしなこと、不合理なこと、誤ったことを、ときに本人として嘘や間違いを話しているという意識もなく、語っている」
という前提に立つべきであり、そのような気構えをもって接することとなります。

3 「相談者が求める『相談内容そのもの』や『そもそもの相談の前提』が致命的に間違っており、一見して狂ったものである可能性」がありうることを常に念頭におく

例えば、相談者が契約書を持参し、
「契約書をチェックしてください」
と依頼してくる場合があります。
ところが、相談者は、「フォーマルな文書」に対する識字能力が欠如しており、契約書の記述内容をまともに読解できておらず、
「契約書のチェック」
といっても、実際は、代読の要請、すなわち、
「ブックリーディングレベル(字が読めない子供に絵本を読み聞かせるようなレベル)の支援要求」
であることが判明することもあります。
また、契約書により記述されたビジネスモデル自体に不合理性や欠陥が顕著に存在しており、契約書作成以前に課題があり、
「相談者が直面している真の課題」
は、
・ビジネスモデルのストレステスト

・ビジネスモデル変更に伴うタームシートレベル(契約条件設計書)の内容変更に関するカウンセリング
であり、
「契約書起案や構成」
のはるか以前の前提段階の支援要求であることが判明することもあります。
さらに言えば、相談者には、取引構造自体の意味やポイント把握が必要な知的レベルすら欠如しており、
「契約書で記述された取引構造やビジネスモデル」
を読解して整理すると、現実には、
「1万円札を1万2000円で買い、当該1万円札は、ほとんど売れず、8000円でも売れない状況である可能性が内包する、という構造的欠陥が存在する」
という構造的欠陥が存在しており、にも関わらず、相談者において当該欠陥に気づいておらず、事態をシンプルに表現すれば、
「相談者は、詐欺師に騙されて、詐欺の内容の契約を提案され、これを受諾しようとしている」
というお粗末な状況が判明することもあります。
このような状況が判明した場合、必要なことは、
「契約締結を所与として、提案された契約書を緻密に査読して、そのテニヲハを緻密に修正して、文書を完璧にチューンナップすること」
ではなく、
「(詐欺師から提案された内容が詐欺の)契約そのものをしない」
ように助言することとなります。
このような本質的状況や前提を理解せず、
「契約書の査読とありうべき修正をされたい」
という
「状況を理解していない素人の相談者」
が当初要求する課題を馬鹿正直に字義通り受け取り、
「契約締結を所与として、提案された契約書を緻密に査読して、そのテニヲハを緻密に修正して、文書を完璧にチューンナップし」
て 契約を取り交わした場合、
「『契約書の記述・表現』の前提となったビジネスモデルの構造的欠陥」
が原因で、相談者が大きな損害を被ることとなり、弁護士は、そのような危険を見抜けなかった自体を責められることになりかねません。

4 相談者の要求メッセージを実行する前の事前カウンセリング

たいていの新規相談については、相談者から発せされた要求メッセージに着手する前に事前のカウンセリング(前提状況把握)が必要なことがありえます。
医療(病気の治療)のアナロジーで解説しますと、患者が医者に
「私はインフルエンザA型なので、早く、インフルエンザA型に効く薬を出してくれ」
と訴えて来たとしても、その訴えどおりにいきなり
「インフルエンザA型に効く薬」
を渡すような医者はいません。
そんなことをやれば医者は医療過誤で訴えられます。
普通の医者は
「何、あんた、勝手に病名語ってんの? 病名はこっちが決定するから。あんたに聞いてんのは病名じゃなくて、病状。とっとと、病状話してくれよ」
とたしなめるものです。
これと同様、相談者の当初要求メッセージは、
「素人の戯言」
程度に認識するにとどめ、少なくとも、話を深掘りしたり、前提を推察して、前提や構造における、欠陥や異常性や不合理性を見つけ出すべきであり、そのために、事前のカウンセリングを実施すべき場合があります。
経験のある弁護士がこの種の事前カウンセリングを行うと、
「前提が不合理あるいは狂った、全体として間違った支援要求」
は、必ず、ボロが出ることになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01634_企業法務におけるリーガルマインド

「法律の実際の適用に必要とされる、柔軟、的確な判断」

一般に
「リーガルマインド」
などという趣旨不明、意味不明な言葉が使われることがありますが、これって何なのでしょう?

1 具体的な社会的事実や問題から、法的に重要である事実を選び出し、 法律問題として把握し、分析すること。
2 関係者の言い分を公平に聞くこと。
3 各問題について、法原則や条文を根拠とする合理的な推論によって論理的に考え、きちんとした法的理論構成を行うこと。
4 自分の結論が社会の常識や良識からかけ離れていないか、またその結 論をとった場合に社会的に不都合が生じないか、生じるとしても許容 範囲といえるかどうかをチェックすること。また、その際、正義・人権・自由・平等などの法的な価値を重視すること。
5 各問題から導き出した結論を、条文によって根拠づけ、思考の過程とともに関係者へ示し、説得すること

具体的事件から法的な抽象化をなして法的結論を導く論理を駆使できる、法律家集団の集団精神(the group-mind)

法律を使って適切に問題を解決する能力

などなど、ネットを探すだけでも、様々な定義が発見されますが、私としては、どれも意味不明ですし、何を言っているかさっぱりわかりません。

25年弁護士として仕事をしてきた実務家としても、まったくしっくりきません。

法律家といっても、弁護士に裁判官に検察官、弁護士といっても、人権派弁護士、ビジネス弁護士、マチ弁、ブル弁、都会の弁護士、田舎の弁護士、不動産事件中心の弁護士、破産村の弁護士、刑事事件専門の弁護士等々、実に雑多に存在し、それぞれもっているマインドは違います。

検察官の「リーガルマインド」

刑事弁護人の「リーガルマインド」
とは、まったく別物だと思われます。

検察官のリーガルマインドとは、
「人間はすべからく犯罪者であり、この世には2種類の人間、すでに罪を犯した人間か、これから罪を犯す人間のいずれかしかいない。そして、目の前にいる被告人は、前者である」
という信念ですが、刑事弁護人はまた別の信念があるのだと思います。

また、
「司法研修所を修了した裁判官になりたてホヤホヤの若手(というか未熟な)刑事裁判官」の「リーガルマインド」
と、
「件数をビシバシ稼ぎ、最高裁事務総局の覚えめでたく、田舎に左遷させられる回数も少なく、『花のお江戸の旗本暮らし』よろしく、東京地裁か東京高裁で、肩で風を切って、闊歩するようなベテラン民事裁判官」の「リーガルマインド」
も違うでしょう。

前者(「司法研修所を修了した裁判官になりたてホヤホヤの若手(というか未熟な)刑事裁判官」)の「リーガルマインド」
は、
「予断と偏見で、被告人を罪人と決めつけてはいけない」
という謙抑的で慎重な物事の観察態度かと思われます。

他方で、
後者の「リーガルマインド」
とは、
「滞留事件をスピーディーに処理するべく、圧倒的な思考経済、訴訟経済を機能させるべく、予断と偏見だけで、事件を観察して、とっとと結論と筋書きを決めてしまう。『結論と筋書きを破綻させるような、矛盾する事実や証拠』を『敗訴させる予定の当事者』を小生意気にも提出してきたら、有害なノイズとして、断固として無視する」
というような、大胆にして苛烈な思考の働きかもしれません。

このように、人生いろいろ、法律家もいろいろ、リーガルマインドもさまざま、といったことがいえるかと思います。

ここで、
「企業法務弁護士としてのリーガルマインド」
とは何か、という点について、
「畑中鐵丸としての矮小な経験と独断と偏見により形成された満ちた、『企業法務におけるリーガルマインド』」
を定義してみたいと思います。

「企業法務におけるリーガルマインド(※ただし、畑中鐵丸が勝手に作ったものです)」とは、

1 ズルは正義、
2 相手は常にズルをする、
3 無知な奴、ズルをされた奴、ズルをされることに気が付かない間抜けな奴が常にかつ一方的に悪い、
4 無知で無警戒な善人がズルの被害に遭って、破産して、地獄をみる羽目に陥ったとしてもそれは自業自得・自己責任・因果応報の帰結として捨て置かれるほかない

というゲーム状況を所与として、あらゆる仕事を設計し、構築し、遂行すること

というものです。

誤解がないようにいっておきますが、
「 1 ズルは正義、
2 相手は常にズルをする、
3 無知な奴、ズルをされた奴、ズルをされることに気が付かない間抜けな奴が常にかつ一方的に悪い、
4 無知で無警戒な善人がズルの被害に遭って、破産して、勝手に死んだとしてもそれは自業自得・自己責任・因果応報の帰結として捨て置かれるほかない」
という考え方を心得て実践せよ、と言っているわけではありません。

また、私個人としても、
「1 ズルは正義、
2 相手は常にズルをする、
3 無知な奴、ズルをされた奴、ズルをされることに気が付かない間抜けな奴が常にかつ一方的に悪い、
4 無知で無警戒な善人がズルの被害に遭って、破産して、勝手に死んだとしてもそれは自業自得・自己責任・因果応報の帰結として捨て置かれるほかない」
なんてあまりに世知辛い考え方については、反吐が出るほど嫌悪します。

他方で、

「世の中は平和で、善人に満ちていて、渡る世間には鬼がおらず、
『1 ズルは正義、
2 相手は常にズルをする、
3 無知な奴、ズルをされた奴、ズルをされることに気が付かない間抜けな奴が常にかつ一方的に悪い、
4 無知で無警戒な善人がズルの被害に遭って、破産して、勝手に死んだとしてもそれは自業自得・自己責任・因果応報の帰結として捨て置かれるほかない 』
などという思考回路の人間などいるはずがないし、少なくとも目の前の人間がそういう人間であるはずはない」
という理解・認識を前提に、あらゆる仕事を設計し、構築し、遂行する

と確実に地獄をみます。

なぜなら、
「1 ズルは正義、
2 相手は常にズルをする、
3 無知な奴、ズルをされた奴、ズルをされることに気が付かない間抜けな奴が常にかつ一方的に悪い、
4 無知で無警戒な善人がズルの被害に遭って、破産して、勝手に死んだとしてもそれは自業自得・自己責任・因果応報の帰結として捨て置かれるほかない」
という
「世知辛い考え方」こそ
が、グローバルスタンダードであり、世界標準だからです。

「そんな世知辛い思考回路の人間などいるはずがないし、少なくとも目の前の人間がそういう人間であるはずはない」
を所与とする日本人の考え方は、世界標準からすると、
「どローカル」のガラパゴス的思考の極地
といえます。

確かに、ビジネスは信頼関係、相互互恵、ウィンウィンが基本にあります。

ですから、ビジネスネゴにおいて、そのような牧歌的な考え方で話をまとめるのはもちろんあり得ますし、実際世界では普通に行われています。

他方で、
「ビジネスマター」
から
「リーガルマター」
に移行するとき、すなわち、ビジネスパースンから案件がリーガルパースンにバトンタッチされ、ビジネスネゴによる成果を
「ミエル化・カタチ化・数字化・具体化・言語化・文書化・フォーマル化」契約文書
に落とし込むという
「法務としての仕事」
が遂行される際には、
「企業法務におけるリーガルマインド」
を機能させて、仕事を設計・構築・実践しなければなりません。

もちろん、すべてが思い通りに運び、想定した結果が100%実現するのであれば、ウィンウィンの楽観論だけで十分です。

しかしながら、人間は皆、オールマイティではありません。

世の中、将来どうなるか、次に何が起こるか、なんてわかるはずもありません。

だから、約束した事柄を思い通りにコントロールする、なんてことはできるはずもありません。

したがって、ウィンウィンゲーム・プラスサムゲーム(拡大均衡して相互互恵の結果となる)のはずが、想定外の事態に直面して、ゼロサムゲーム、マイナスサムゲームに陥るなど日常茶飯事です。

そうなると、責任やダメージを相手になすりつけ、相手を地獄の底に突き落としてでも、自分の身の保全を図って、生き延びなければなりません。

その際、不愉快な想定外が生じた場合に備え、企業法務におけるリーガルマインド、すなわち、

「1 ズルは正義、
2 相手は常にズルをする、
3 無知な奴、ズルをされた奴、ズルをされることに気が付かない間抜けな奴が常にかつ一方的に悪い、
4 無知で無警戒な善人がズルの被害に遭って、破産して、地獄をみる羽目に陥ったとしてもそれは自業自得・自己責任・因果応報の帰結として捨て置かれるほかない」
というゲーム状況を所与として、あらゆる仕事を設計し、構築し、遂行する

という観念ないし思想に支えられた、契約文書が身を守る盾となるのです。

法曹界で、
「あいつは本当にいいヤツ」
「あいつみたいないいヤツはみたことない」
と言われる御仁がいます。

これは、いってみれば、
「あいつには『企業法務におけるリーガルマインド』が欠落しており、(小さい事件や地味な事件は各別)あいつには絶対大きな事件を任せられない。任せたら、必ず失敗して、こちらも被害を受ける」
「あいつは、弁護士としてはヤブだ」
という
「最大限の蔑みの言葉」
を意味します。

もちろん、
「あいつは約束を守らない」
「あいつはよく人を騙す」
「あいつは平気で嘘をつく」
「あいつは汚い」
というのもよくありません。

法曹界において
「企業法務におけるリーガルマインド」
を有している法律家というのは、

「『1 ズルは正義、
2 相手は常にズルをする、
3 無知な奴、ズルをされた奴、ズルをされることに気が付かない間抜けな奴が常にかつ一方的に悪い、
4 無知で無警戒な善人がズルの被害に遭って、破産して、勝手に死んだとしてもそれは自業自得・自己責任・因果応報の帰結として捨て置かれるほかない』という思想を実践する悪人」

というわけではなく、かといって、

「『そんな世知辛い思考回路の人間などいるはずがないし、少なくとも目の前の人間がそういう人間であるはずはない』を所与とする牧歌的なヌケサクの甘ちゃん」

というわけでもなく、

「『1 ズルは正義、
2 相手は常にズルをする、
3 無知な奴、ズルをされた奴、ズルをされることに気が付かない間抜けな奴が常にかつ一方的に悪い、
4 無知で無警戒な善人がズルの被害に遭って、破産して、勝手に死んだとしてもそれは自業自得・自己責任・因果応報の帰結として捨て置かれるほかない』というゲーム状況を所与として、あらゆる仕事を設計し、構築し、遂行すること」
を旨とする、
「したたかな奴」
「抜け目ない奴」
「疎漏がない奴」
「食えない奴」
などと評価をされる、グローバルスタンダードの思考と感性を有する人間

を指すものと思います。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01633_契約書チェック術_建物賃貸借契約

1 契約の性質:普通賃貸借か、定期賃貸借か
2 適用法令:借地借家法が適用されるか、同法が適用されず民法が適用される賃貸借契約(駐車場や借家以外の構築物やケース賃貸やスペース賃貸)か
3 賃貸借期間
4 期間更新:自動更新条項の有無
5 賃借人による中途解約の可否・制約:違約金規定の有無と違約金額
6 賃料等:賃料のほか共益費等。売上歩合方式の場合等における固定額(最低保証額)の有無や計算方法
7 賃料改定条項:改定メカニズムやロジック。定期賃貸借における賃料減額請求排除条項の有無
8 敷金・保証金:金額と償却割合。返還までのメカニズム。建設協力金や金銭消費貸借としての性格の有無
9 借地権の譲渡や転貸の可否・チェンジオブコントロール条項の有無:チェンジオブコントロール条項に関連して、「資本構成の変動、上場廃止、会社分割」がトリガーイベントとなって解除される場合など
10 建物買取義務や買取に関する優先交渉権の有無
11 修繕や改装:修繕義務の負担帰属。修繕や改装についての許可制の場合のメカニズム
12 賃貸目的変更の可否
13 解除後明渡しが遅れた場合の損害金条項
14 管轄条項

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01632_M&Aにおけるデューディリジェンス実務の意味と価値

「デューディリジェンス(Due Diligence。「デューディリ」あるいは「DD」と略されることもあります)」
という言葉が、よくM&A業界界隈で聞かれます。

M&A実務の世界では、
「買収対象である企業の調査」
とほぼ同義のものとして使われています。

M&Aを
「結婚」あるいは「養子縁組」
になぞらえると、
「お嫁さんあるいは養子にもらう予定の女性ないし子女(買収対象企業)が、健康体か、過去の妙な男性関係をひきずっていないか、変な感染症に罹患していないか、前科前歴や盗癖や虞犯傾向がないか、妙な宗教に入信していないか、粗暴な性向や奇天烈な性癖がないか」等、
「円満な結婚生活等にとって障害となるべき事項」
の有無や範囲や程度(重篤さ)を調査することがデューディリジェンスに相当します。

この話から透けて見える、常識では考えられない、異常ともいえる取引ルールがあり、これを踏まえていないと、
「デューデリ」
をなぜ、そんなに御大層に取り上げるのか、いまいちピンとこないと思いますので、この辺も含めて解説します。

すなわち、M&Aの取引の大前提として、
「よく調べず、漫然と相手を信頼して、『これはそれなりに良い企業だ』と思ってある企業を買ったところ、実際の中身は、ボロボロで、ほとんど価値がなかった」
という場合、120%、良く調べずに買った方がアホ、騙される方が悪い、というのが、この種の取引の基本中の基本中の基本ルールだからです。

さらにいえば、そもそも、車や不動産等とは違い、企業の値段には相場というものが観念しがたく、企業の値段自体、いってしまえば
「あってないようなもの」
であり、よく調べずに、適当な値段をつけてしまうと、大損することもあります。

そして、このような
「大損」
の事態は、すべて買い手1人の全責任となるのです。

古代ローマ以来の
「買い手は常に注意せよ(caveat emptor〔ラテン語〕。英語は、Let the buyer beware。)」すなわち
「買い物に失敗したら、すべて買い手が悪い。買主の不注意がすべての原因」
というルールが極めてシンプルかつ劇的に作用するのがM&A取引、というわけです。

だからこそ、この
「デューデリジェンス」
「デューディリ」
「DD」
という称するプロセスが、M&Aにおいて非常に重要、といわれるのです。

すなわち、M&Aの買い手が、そもそも買収対象企業を買うかやめるか、買うとしてどのような方法(ストラクチャー)や条件(価格、支払方法、表明保証〔瑕疵担保〕、付帯条件等)で買うかの意思決定をするに際して、対象会社の問題点を、調査・発見・ミエル化・カタチ化・言語化・数字化・文書化して検討を行う手続きを、
「デューディリジェンス」
と呼称します。

そして、このデューディリジェンスですが、一切、決まりはありません。

範囲、程度、対象、予算、動員資源たるプロフェショナル、かけるべき時間やコストやエネルギー等も、特にこれといった決まりはなく、広汎な冗長性を持っています。

もちろん、デューディリジェンスをしない自由もあります。

デューディリジェンスをやらずにM&Aを行って、企業を買う買い手のことを、私の知るごく限られた範囲では、
「チャレンジャー」
と呼んだりしますが、もちろんこれも買う側の自由。

前述のとおり、
「買い手は常に注意せよ」
という法格言はありますが、
「わーってるわ。余計なお世話だバカヤロウ。いちいち、うっせーんだよ」
といって、法格言をシカトして、買い手が自ら無視して冒険的な取引をやる自由まで否定されるものではありません。

ところで、このデューディリジェンスですが、どういう文脈で語られるか、という点ですが、米国の証券取引紛争における訴訟実務において、
「証券発行について、目論見書(registration statement)に誤りがあっても、発行主体が一定程度の合理的注意(デューディリジェンス)を尽くして作成し開示したものであれば、その過誤の責任は問われない」
という、防御側の免責抗弁として登場したもののようです。

要するに、
「いや、たしかに、間違いがあったかもしんないけど、自分は自分なりに、必死こいて一生懸命やって、相当な注意を尽くした(デューディリジェンスを果たした)んだから、多少の間違いは勘弁してよ」
という、
「なんとも志の低い、見苦しい責任逃れのための言い訳のための道具概念」
として出てきたものです。

そもそも論ですが、もともと、買収対象となる会社は、何らかの問題を抱えています。

あなたが
「売上もぐんぐん伸びて、利益もさらに伸びていて、市場も環境もよく、さして経営に手がかからず、四六時中『チャリンチャリン』の音が鳴り止まず、課題や障害もなく、長期的に成長を継続することが約束しているような会社」
のオーナーであれば、まず、この会社を売ってカネに替えてしまうより、
「金の卵を生み続ける雌鳥」
を永遠に保持し続けるはずです。

したがって、売りに出ている会社というのは、何かしらの問題や課題やリスクや面倒を抱えているはずであり、叩けばホコリが大量に出てくるようなシロモノです。

他方で、M&Aは、たいてい急ぎます。

急かされます。

M&Aを5年かけてやりました、10年がかりでやり遂げました、なんて話は聞きません。

もちろん市場の変化の速さや経済の展開スピードということもあるのでしょうが、売る方はなるべく瑕疵や欠陥や粗が見つかる前に売り逃げしたいでしょうし、買う側もぼんやりしていると厳しい競り合いになるので早くまとめたい、という双方の思惑もあって、尋常じゃないスピードでまとめる買い物(しかも、対象はあいまで、かつ高額な買い物)、となります。

このため、どんなに眼力のあるプロが鑑定しても、間違いや見逃しや漏れや抜けの1つや2つ、10や20、100や1000は普通に出てしまいます。

その際、さんざん急がされた担当者(プロジェクトマネージャー)が、あとから、スポンサーやプロジェクトオーナーから
「なんで見つけられなかった。お前の目は節穴か、責任とれ」
などと詰め寄られたらたまったもんじゃありません。

そこで、この妥協の産物として、
「デューディリジェンス」
というプロセスを差し挟むことによって、仮にあとから
「間違いや見逃しや漏れや抜けの1つや2つ、100や1000は出てしまった」
ということがあっても、
「いや、たしかに、間違いがあったかもしんないけど、自分は自分なりに、必死こいて一生懸命やって、相当な注意を尽くした(デューディリジェンスを果たした)んだから、多少の間違いは勘弁してよ」
という、なんとも志の低い、見苦しい責任逃れのための言い訳(デューディリジェンスの抗弁)を機能させて、神の御業ならぬ欠陥と疎漏だらけの人間の所業を寛解して、営みを前にすすめていくということになるのです。

当然ながら、
「デューディリジェンスの質や程度や疎漏の無さ(準完全性)」

「デューディリジェンスに費やす時間とコストとエネルギー」
は見事な比例関係に立ちます。

このあたりは、損害保険の付保とよく似ています。

すなわち、ありとあらゆる事態に備えてより保険でカバーする範囲を増やして保険をかけようとすると、保険金はどんどん高くになります。

他方で、保険金をケチりすぎると、いざ事故が起こったら保険がおりず大損害を被る、ということになる。

要するに、ディールサイズやリスクのレベル等を勘案しながら、
「オプティマム(ちょうどいい塩梅)」
なプロジェクトサイズを決定して、この範囲で、効率よく調査を行って、各種意思決定にフィードバックしていく、というマネジメントが求められるのです。

なお、デューディリジェンスと表明保証条項設計も緊密な関係に立ちます。

すなわち、デューディリジェンスの対象外とされた範囲については、売主側に
「この(デューディリジェンスでカバーされなかった)範囲については問題や課題やリスク等はないことを表明し、保証します。万が一、嘘ついていたら賠償責任を果たします」
と約束させることで、M&A取引の安全性を確保していく、というわけです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01631_簡素な守秘義務契約書サンプル(条文見出しのみ)

以下、契約書起案の参考としていただく趣旨で、契約書として盛り込むべき条項のみ記しておきます。

※1 契約書式全文のリクエスト
なお、本契約書全文を書式として提供ご希望の「弁護士法人畑中鐵丸法律事務所の顧問先企業」や、「一般社団法人企業法務機構の法人会員の登録担当者及び個人会員の方」については、「契約書式リクエスト」を「指定メールアドレス」宛いただければ 、「無償あるいは所定のメンバー向け提供手数料」にて、下記契約書全文をwordファイル形式にてご提供させていただきます。

※2 契約書に関する法律相談・依頼
約を締結することになり、交渉相手方から契約書案を受け取ったり、あるいは当方がドラフトを作成する前提で、契約書式を入手して契約書起案等に着手したものの……
(1)【代読の依頼】取引相手方から契約書案を提示されたが、適正な機能的識字能力を有する人材がなく、当該契約書案の意味や内容や展開予測について理解・把握できず、企業サイドにとっては、象形文字で書かれた呪文か暗号文のようにしかみえないので、機能的識字能力を有する企業法務専門弁護士に、内容を読解・把握して、その意味する内容を、平均的知能と読解能力を有する一般人でも理解できるように、咀嚼して教えてほしい
(2)【ビジネスモデルや取引条件の構築・設計に関する相談 そもそも、ビジネスモデルや取引条件そのものについて、
・経済合理性があるか、
・安全保障上の致命的なリスクがないか、
・他にスマートで安全な取引構築・設計方法がないか
といった点について
企業法務専門弁護士に意見を聞きたい
(3)【契約書作成の依頼構築したビジネスモデルや取引条件については全く不安はないが、時間がない、スキルがない、法務責任者が不在、マンパワーがない、といった理由で、契約書作成を企業法務専門弁護士に外注したい
(4)【契約書校正の依頼】 構築したビジネスモデルや取引条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、特定のリスク管理課題について条項の具体的作成を企業法務専門弁護士に依頼したい
(5)【契約書最終チェックの依頼】構築したビジネスモデルや契約条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、「構築したビジネスモデル・契約条件」と「作成してみた契約書案」との間に齟齬矛盾がないか(整合性が取れているか)・疎漏がないか、企業法務専門弁護士に最終的な確認を依頼したい
(6)【英文契約書の取扱の依頼】海外の取引相手等と英文での契約書を取り交わすことになったが、時間がない、スキルがない、法務責任者が不在(顧問弁護士が国際ビジネスに対応できない)、マンパワーがない、といった理由で、対処不能の事態に陥っているので、国際業務のできる企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
(7)【契約交渉その他の依頼】交渉に関する支援(「主張ロジックや対抗ロジックや想定問答等の創出・作成・校正・確認といった交渉支援」の依頼や、「交渉代理」プロセス全般の依頼)や、決裁立会等その他契約成立に至るまでの課題対処について企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
といったリクエストをお持ちの「弁護士法人畑中鐵丸法律事務所の顧問先企業」や、「一般社団法人企業法務機構の法人会員の登録担当者及び個人会員の方」については、「契約書相談リクエスト」を「指定メールアドレス」宛いただければ、「無償あるいは所定のメンバー向け提供手数料」にて契約書完成や調印、さらには決裁(弁済、履行、引渡し等。代理方式のほか、立会支援方式を含む)までフォローアップさせていただきます。

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所 / 一般社団法人企業法務機構

========== 以下、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

契約タイトル:秘密保持契約書

【前文】

【本文】
主要条項(契約書本体部分・ビジネスモデルや取引条件の記述)
第1条(定義)
第2条(主要目的)
第3条(秘密保持・守秘年限)
第4条(例外)
第5条(アクセス)
第6条(返却)

一般条項(契約書付随部分)
N/A

【後文】

【契約締結日】

【署名項】

========== 以上、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01630_デザイン業務等の業務請負契約書サンプル(条文見出しのみ)

以下、契約書起案の参考としていただく趣旨で、契約書として盛り込むべき条項のみ記しておきます。

※1 契約書式全文のリクエスト
なお、本契約書全文を書式として提供ご希望の「弁護士法人畑中鐵丸法律事務所の顧問先企業」や、「一般社団法人企業法務機構の法人会員の登録担当者及び個人会員の方」については、「契約書式リクエスト」を「指定メールアドレス」宛いただければ 、「無償あるいは所定のメンバー向け提供手数料」にて、下記契約書全文をwordファイル形式にてご提供させていただきます。

※2 契約書に関する法律相談・依頼
契約を締結することになり、交渉相手方から契約書案を受け取ったり、あるいは当方がドラフトを作成する前提で、契約書式を入手して契約書起案等に着手したものの……
(1)【代読の依頼】取引相手方から契約書案を提示されたが、適正な機能的識字能力を有する人材がなく、当該契約書案の意味や内容や展開予測について理解・把握できず、企業サイドにとっては、象形文字で書かれた呪文か暗号文のようにしかみえないので、機能的識字能力を有する企業法務専門弁護士に、内容を読解・把握して、その意味する内容を、平均的知能と読解能力を有する一般人でも理解できるように、咀嚼して教えてほしい
(2)【ビジネスモデルや取引条件の構築・設計に関する相談 そもそも、ビジネスモデルや取引条件そのものについて、
・経済合理性があるか、
・安全保障上の致命的なリスクがないか、
・他にスマートで安全な取引構築・設計方法がないか
といった点について
企業法務専門弁護士に意見を聞きたい
(3)【契約書作成の依頼構築したビジネスモデルや取引条件については全く不安はないが、時間がない、スキルがない、法務責任者が不在、マンパワーがない、といった理由で、契約書作成を企業法務専門弁護士に外注したい
(4)【契約書校正の依頼】 構築したビジネスモデルや取引条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、特定のリスク管理課題について条項の具体的作成を企業法務専門弁護士に依頼したい
(5)【契約書最終チェックの依頼】構築したビジネスモデルや契約条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、「構築したビジネスモデル・契約条件」と「作成してみた契約書案」との間に齟齬矛盾がないか(整合性が取れているか)・疎漏がないか、企業法務専門弁護士に最終的な確認を依頼したい
(6)【英文契約書の取扱の依頼】海外の取引相手等と英文での契約書を取り交わすことになったが、時間がない、スキルがない、法務責任者が不在(顧問弁護士が国際ビジネスに対応できない)、マンパワーがない、といった理由で、対処不能の事態に陥っているので、国際業務のできる企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
(7)【契約交渉その他の依頼】交渉に関する支援(交渉に関する支援(「主張ロジックや対抗ロジックや想定問答等の創出・作成・校正・確認といった交渉支援」の依頼や、「交渉代理」プロセス全般の依頼)や、決裁立会等その他契約成立に至るまでの課題対処について企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
といったリクエストをお持ちの「弁護士法人畑中鐵丸法律事務所の顧問先企業」や、「一般社団法人企業法務機構の法人会員の登録担当者及び個人会員の方」については、「契約書相談リクエスト」を「指定メールアドレス」宛いただければ、「無償あるいは所定のメンバー向け提供手数料」にて契約書完成や調印、さらには決裁(弁済、履行、引渡し等。代理方式のほか、立会支援方式を含む)までフォローアップさせていただきます。

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========== 以下、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

契約タイトル:業務請負契約書

【前文】

【本文】

主要条項(個別取引内容):
第1条(目的)
第2条(本件業務について)
第3条(本件業務への指示)
第4条(業務発注書)
第5条(業務により生じた権利の取扱)

第12条(請負代金支払方法)

第15条(契約期間)

一般条項:
第6条(再委託等の禁止)
第7条(権利及びクレーム処理等)
第8条(資料の提供など)
第9条(資材の調達・管理等)
第10条(業務遂行に必要な物品の供与)
第11条(報告義務)

第13条(秘密の保持)
第14条(危険負担)

第16条(委託者による契約解除)
第17条(受託者による契約解除)
第18条(解約)
第19条(解除、解約後の取扱)
第20条(第三者への譲渡等禁止)
第21条(損害賠償)
第22条(提出書類)
第23条(担保の差入)
第24条(内容の追加・削除)
第25条(協議事項)
第26条(仲裁条項)

【後文】

【契約締結日】

【署名項】

========== 以上、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01629_業務委託および物流システム構築請負契約書サンプル(条文見出しのみ)

以下、契約書起案の参考としていただく趣旨で、契約書として盛り込むべき条項のみ記しておきます。

※1 契約書式全文のリクエスト
なお、本契約書全文を書式として提供ご希望の「弁護士法人畑中鐵丸法律事務所の顧問先企業」や、「一般社団法人企業法務機構の法人会員の登録担当者及び個人会員の方」については、「契約書式リクエスト」を「指定メールアドレス」宛いただければ、「無償あるいは所定のメンバー向け提供手数料」にて、下記契約書全文をwordファイル形式にてご提供させていただきます。

※2 契約書に関する法律相談・依頼
契約を締結することになり、交渉相手方から契約書案を受け取ったり、あるいは当方がドラフトを作成する前提で、契約書式を入手して契約書起案等に着手したものの……
(1)【代読の依頼】取引相手方から契約書案を提示されたが、適正な機能的識字能力を有する人材がなく、当該契約書案の意味や内容や展開予測について理解・把握できず、企業サイドにとっては、象形文字で書かれた呪文か暗号文のようにしかみえないので、機能的識字能力を有する企業法務専門弁護士に、内容を読解・把握して、その意味する内容を、平均的知能と読解能力を有する一般人でも理解できるように、咀嚼して教えてほしい
(2)【ビジネスモデルや取引条件の構築・設計に関する相談 そもそも、ビジネスモデルや取引条件そのものについて、
・経済合理性があるか、
・安全保障上の致命的なリスクがないか、
・他にスマートで安全な取引構築・設計方法がないか
といった点について
企業法務専門弁護士に意見を聞きたい
(3)【契約書作成の依頼構築したビジネスモデルや取引条件については全く不安はないが、時間がない、スキルがない、法務責任者が不在、マンパワーがない、といった理由で、契約書作成を企業法務専門弁護士に外注したい
(4)【契約書校正の依頼】 構築したビジネスモデルや取引条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、特定のリスク管理課題について条項の具体的作成を企業法務専門弁護士に依頼したい
(5)【契約書最終チェックの依頼】構築したビジネスモデルや契約条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、「構築したビジネスモデル・契約条件」と「作成してみた契約書案」との間に齟齬矛盾がないか(整合性が取れているか)・疎漏がないか、企業法務専門弁護士に最終的な確認を依頼したい
(6)【英文契約書の取扱の依頼】海外の取引相手等と英文での契約書を取り交わすことになったが、時間がない、スキルがない、法務責任者が不在(顧問弁護士が国際ビジネスに対応できない)、マンパワーがない、といった理由で、対処不能の事態に陥っているので、国際業務のできる企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
(7)【契約交渉その他の依頼】交渉に関する支援(交渉に関する支援(「主張ロジックや対抗ロジックや想定問答等の創出・作成・校正・確認といった交渉支援」の依頼や、「交渉代理」プロセス全般の依頼)や、決裁立会等その他契約成立に至るまでの課題対処について企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
といったリクエストをお持ちの「弁護士法人畑中鐵丸法律事務所の顧問先企業」や、「一般社団法人企業法務機構の法人会員の登録担当者及び個人会員の方」については、「契約書相談リクエスト」を「指定メールアドレス」宛いただければ、「無償あるいは所定のメンバー向け提供手数料」にて契約書完成や調印、さらには決裁(弁済、履行、引渡し等。代理方式のほか、立会支援方式を含む)までフォローアップさせていただきます。

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========== 以下、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

契約タイトル:業務委託および物流システム構築請負契約書

【前文】

【本文】

主要条項(個別取引内容):
第1条(目的)
第2条(業務内容)
第3条(契約期間)
第4条(対価および支払方法)

一般条項:
第5条(秘密保持)
第6条(契約解除)
第7条(再委託・権利譲渡)
第8条(成果保証)
第9条(成果物の帰属)
第10条(協議事項)
第11条(合意管轄)

【後文】

【契約締結日】

【署名項】

========== 以上、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01628_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(19・終)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその12_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅹ)_(i)正しくプロジェクトの結末を総括する

皆さん、お手洗いに行ったら、必ず、拭くべきところを拭き、流すべきものを流し、手を洗い、身だしなみを整えてからお手洗いから出てこられると思います。

たとえ、用足しの途中に、重要な電話がスマホにかかってきて、一時中断となったとしても、この手続を省略して、何も体裁をほどこさずに、電話をしながらお手洗いを出て、歩きながら電話をしている人はまずいらっしゃらないと思います。

もし、そういう方がいれば、間違いなく警察か、精神病院のご厄介になっているはずです。

このように、何か着手して、それを、本来の形で終わる場合はもちろんのこと、不本意あるいは想定外の形で失敗が確定したり、一定期間休止することになったりといった形で、プロジェクトの進行が見込めなくなった場合、結果であれ、途中経過であれ、きちんと総括しておくのは、お手洗い後にきちんと後処理ないし身だしなみを整えるのと同様、非常に重要なことです。

ところが、実際の産業社会には、かなりだらしない行動が横行しており、
「お手洗いに行っても、そのまま放置し、手も洗わず、身だしなみも整えないで出てくる」
といった形で、プロジェクトを放置する方がかなりの割合でいらっしゃいます。

プロジェクト終了想定期限がきたら、あるいは見極めをすべきタイミングとなったら、まずは、総括をすべきです。

目的全部達成、一部達成、修正された目的達成であれ、
失敗・諦め・撤退という無様なものであれ、
結末を総括しなければなりません。

よくいわれる、
PDCAサイクル(plan-do-check-act〔ion〕 cycle)、
すなわち、
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act〔ion〕(改善)の、
C(評価)項目の実施をきちんとすべき、というお話です。

このPDCAサイクルが重要であるというメッセージは、業務を継続的に改善していくというルーティンにもあてはまりますが、M&Aのような
「ルーティンの要素がない、チャレジングな新規プロジェクト」
も同様です。

もちろん、目的が想定どおり、期限内に全部達成されれば、総括など不要です。

しかし、世の中そう甘くありません。

M&Aや新規事業立ち上げのような
「ルーティンの要素がない、チャレジングな新規プロジェクト」
については、想定通りの完全なゴール達成に至る方が稀で、
一部しか達成できなかったり、
当初想定と全く違った奇形的な形でなんとか採算が取れるようになったり、
失敗・諦め・撤退という悲惨な結末を迎えることになったり、
というミゼラブルな状況に陥る割合の方が圧倒的に高いものです。

特に、プロジェクトの責任者や担当者は、失敗の露顕を恐れ、失敗が露顕するにしてもなるべく遠く遅くしようという組織人としての防衛本能に抗えず、失敗が現実のものとなることが確定してもとりあえず、総括せず、ずるずると続ける、そんなバイアスが強烈に働きます。

その結果、泥沼に引きずり込まれても、
「そのうち天佑がある」
という意味不明で身勝手な妄想で、事態打開を神に祈りつつ、損害を拡大します。

日本の組織の構成員のメンタリティーは、先の大戦におけるインパール作戦の頃から、あまり変わっていません。

いずれにせよ、良き結果に限らず、失敗やデッドロックといった無様な帰結であれ、重要な中間事象であれ、適時適切に、バイアスを交えず、正しく総括をして、無駄な追加資源投入を阻止し、プロジェクトの正式なギブアップや、より状況に合理的に即応したゲーム・チェンジを行うタイミングを早めるべきです。

M&Aにとどまらず一般のプロジェクトについて適用される範囲にまで話が広がったため、長くなりましたが、以上が、
「M&A成功のための必須アイテム(A)~(C)」
の最終項目である
「(C)全体的な戦略の合理性」の全容
です。

そして日本の企業の多くは、M&Aが下手くその中の下手くそで、その理由が、
(A)現実的な投資回収シナリオが機能する適正な買収価格あるいはこれを達成するためのハードな交渉
(B)PMI(ポストマージャーインテグレーション。M&A後の統合実務)による円滑な経営統合作業
(C)全体的な戦略の合理性
という知見ないしスキルの欠如に基づくことが原因である(あるいはそもそもこのような知見ないしスキルの存在すら知らないので、無知ゆえに実装の前提を欠くことも含む)、と申し上げました。

「人的資源(相応の知識と経験をもつ経営トップ及び実務遂行部隊)を含むリソースが十分な企業が、『1万円札を3000円』で買うような有利なディールに取り組む」
といった形で合理的で戦略的に行うならともかく、
「知識も経験もなく、本業自体がうまくいかず、苦境に喘いでいる企業」
が、アドバイザーという名の
「ブローカー」
の口車に乗せられて、一発逆転を狙いM&Aマーケットという
「鉄火場」
に乗り込み、身ぐるみ剥がれて死期を早める例が多くみられます。

「知識も経験もなく、本業自体がうまくいかず、苦境に喘いでいる企業」
というのは、ほぼ100%、これら(A)~(C)の知見ないしスキルがないわけですから(このようなスキルがあれば、そもそも、本業不振といった鈍臭い状況に陥らないと思われます)、
「そのような知見ないしスキルが成功に必須のアイテムであるM&Aというプラクティス」
をおっぱじめて、これで挽回しよう、という考え自体がかなり常軌を逸しているのです。

初出:『筆鋒鋭利』No.127、「ポリスマガジン」誌、2018年3月号(2018年3月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01627_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(18)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその11_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅸ)_(h)正しく試行錯誤する

01626において、
「(g)命令の達成状況を確認する」
というビジネス上のタスク・アイテムについて、
「正しい命令が、正しく、予定どおり実行され、成果が想定どおり達成される」
ということ事態が稀有である、という保守的な想定のもと、慎重に、臆病に、命令達成状況を細かく把握し、確認することが、プロジェクト・マネジメントにおいて必須であり、また、そのために必要な人員やシステムも、きちんと整備構築しておく重要性をお話しました。

ところで、正しい命令が、正しく、予定どおり実行さえすれば、成果は
「必ず」
出る、といえるでしょうか。

前提として、ここでテーマにしているのは、M&Aのような、
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
の遂行についてです。

「電車で3駅先に辿りつく」
とか
「電話をかけてメッセージを伝える」
とかの雑用・ルーティンではなく、
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
の遂行です。

当然ながら、そんなご大層で面倒なものが、一発で想定どおりの成果が100%出るなんてことは、およそあり得ません。

仮に、成果が出たとしても、当初の想定よりずいぶん劣化したものであったり、成果は出るには出たがとんでもなく時間や労力やコストがかかってしまい、経済的にはほとんど意味がなかった、という結果に終わることがほとんどです。

その意味では、プロジェクトの遂行責任者としては、まず、
「正しい命令が、正しく、予定どおり実行したとしても、想定外の事態や状況に陥り、一筋縄ではいかないか、さらに、無残なまでの失敗をするかもしれない」
という現実的で冷静な心づもりをしておくことが、致命的に重要です。

こういう言い方をすると、
「最初から負けるつもりでどうする」
「精神力が足りないぞ」
「相手は鬼畜米英だ。こちらには神がついている。不退転の決意で望めば、天佑があり、竹槍でB29が落とせるはずだ」
「我が国には、古来より、言霊思想というのがあってな、うまくいかないとか、失敗とか、不吉な将来を想起させる忌み言葉を口にすると、うまくいくものも、うまくいかないぞ」
などと、非難にさらされることがあります。

もともと、人間の脳内には、
「楽観バイアス」
という、
「しびれるくらい愚劣な、『思考上の偏向的習性』というか、『脳の予測機能における、絶望的なまでの構造的欠陥』」
が備わってしまっており、これに、
「忌み言葉」だの、
「精神力で負けるな」とか、
「メンタルを強くしろ」、
「熱くなれ」とか、
意味不明の集団内の同調圧力にさらされると、
「想定すべき病理的事態」
を考えること自体に罪悪感を感じてしまい、
「病理的事態」とか
「想定外」とか
「失敗」とか
「うまくいかない」とか
の思考を完全に封殺してしまいます。

ところが、そもそも、プロジェクト遂行責任者として、与えられているテーマは、
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
です。

責任者がどのような思考をするかどうかに関係なく、
「想定外」とか
「うまくいかない」とか
「そんなはずはない」とか
「あるべき姿と違う現実に直面する事態」
など、ゴマンと出てきます。

さらに、悲劇は訪れます。

想定外の事態に直面すると、人間から冷静な思考力を奪い去ります。

「当初想定」

「直面した病理的結末」
に齟齬が生じた場合、
「当初想定」
を前提とした
「当初戦略」
が機能しないわけですから、
「当初想定」
「当初戦略」
にこだわらず、さっさと、逃げて戦線を離脱し、
「現実に直面し、新たに把握し認知できた現実」
に即応した
「第一次修正戦略」
を練り直して、陣容を整えて再戦を期すべきです。

ところが、
「想定外」とか
「失敗」とか
「うまくいかない」とか
の思考を完全に封殺してしまった挙句、想定外に直面して冷静な判断力を喪失した(言葉を選ばないとすると、「アホ」になった)責任者は、混乱したまま、愚劣に当初戦略にこだわり、すべての資源を無駄に消失(戦争で言えば、戦果なく部隊全滅)という愚劣な帰結を招きます。

まるで、
「かつて、愚劣な精神状態の指揮官によって、敗戦に次ぐ敗戦という醜態を晒し、最終的には無残な敗戦の結果を招き、国民を地獄の底に突き落としたどこぞの国の、どこぞの軍事組織」
の話のようですが、いずれにせよ、プロジェクトの遂行責任者としては、まず、
「正しい命令が、正しく、予定どおり実行したとしても、想定外の事態や状況に陥り、一筋縄ではいかないか、さらに、無残なまでの失敗をするかもしれない」
という現実的で冷静な心づもりをしておくことが、致命的に重要であることは、ご理解いただけると思います。

以上のとおり、正しく試行錯誤する前提として、
「正しい命令が、正しく、予定どおり実行したとしても、想定外の事態や状況に陥り、一筋縄ではいかないか、さらに、無残なまでの失敗をするかもしれない」
という現実的で冷静な心づもりをしておくことが、致命的に重要である、ということをお話しました。

すなわち、常に想定通りにいかないこと、想定していない事態に見舞われ、足を引っ張られたり掬われたりすることを警戒しておくことが、まずは大事である、ということになります。

想定が外れたからといって、パニックに陥って、すでに無意味になっている当初の段取りに固執するのではなく、冷静に、目的を達成するための二次的・補完的手段を構築したり、当初目的が維持できない場合には現有資源を動員して達成される二次的目的に修正したり、ということをしなければなりません。

この繰り返しによって、何らかの結果が出るか、資源が枯渇するまで、資源運用を継続する。

これが、正しい試行錯誤です。

ところが、実際、ビジネス・プロジェクト遂行の現場で起きているのは、かなり愚劣で悲惨な事態です。

一度やってダメなら、ジタバタしたりあがいたりせず、潔くあっさりと、やめたり休んだりする。

あるいは、失敗や想定外が生じたら、それで思考停止に陥り、行動を停止し、神風や都合のいい天変地異や外的事象によって状況が改善することを夢想する。

こんなことをしても、悲惨な結果(あるいは莫大な資源動員の挙句、何らの結果も出ていないという悲惨な現実)はビタ1ミリ変化しません。

そのうち、実施組織は、どのような行動に出るか。

悲惨な結果から目を背け、なるべく忘れるようにする。そして、失敗という結果のみ、組織で共有し、
「皆の失敗だから、誰の失敗でもなく、故に、誰も責められない」
という状況を作り出し、組織のタブーとして、触れないようにする。

これが、外部の受託組織となると、死活問題になります。

プロジェクトが終了してしまうと、報酬がもらえなくなったり、お払い箱になるので、結果が出ていなくとも、活動を維持継続する正当性を創出する。

独断で、コミュニケーションなく、勝手に目的を書き換え、別のことを始め、
「何か仕事をしている」
という外形を作って、状況を引き延ばす。

これは、試行錯誤とはいえ、
「仕事を継続すること自体を自己目的化したもの」
であり、事業の目的、すなわち
「少ない資源でより多くの富を創出する」
というものとは根本的に異なるものです。

なお、先程、
「すでに無意味になっている当初の段取りに固執したりせず、冷静に、目的を達成するための二次的・補完的手段を構築したり、当初目的が維持できない場合、現有資源を動員して達成される二次的目的に修正したり、ということをしなければなりません」
と申し上げましたが、手段の改変や目的の変更といった、プロジェクトにまつわる重要な変更が生じた場合、プロジェクト実施を委ねられている責任者たるマネージャーは、修正提案を命令発令者に意見具申することが求められます。

意見具申はおろか、報・連・相すらなく、独断で勝手なことをするのは強く戒められます。

以上を前提とすると、優秀なプロジェクトマネージャーとは、物事が想定どおりにいかないことを常に念頭におき、多岐にわたる悲観想定をしつつ、想定外に直面した場合、手段の変更や目的の再設定といった、現実的な補完策を繰り出すとともに、これを独断で実施せず、プロジェクトオーナーと報・連・相を維持しつつ、柔軟に対応できる人間、ということになります。

高学歴で高い事務処理能力を有しつつ、失敗経験が豊富で、かつ、打開手段を構築するための創造性に富んでおり、さらに、スタンドプレーと無縁な、上司と緊密な連絡を取ることのできる、
「可愛気と愛嬌」
のある奥ゆかしい組織人、ということになります。

圧倒的知性と業務遂行能力がありながらも、思考の柔軟性、経験の開放性、新奇探索性、謙虚な自己評価をもち、知ったかぶりをせず、謙虚にたゆまぬ知的努力を重ねる好漢、快男児、女傑というイメージの人間、
さしづめ、
「東大卒でありながら、そんなことをおくびにも出さず、謙虚な努力家で、上司に可愛がられる、若き日の木下藤吉郎といった、企業人」
といった趣でしょうか。

初出:『筆鋒鋭利』No.125、「ポリスマガジン」誌、2018年1月号(2018年1月20日発売)
初出:『筆鋒鋭利』No.126、「ポリスマガジン」誌、2018年2月号(2018年2月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01626_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(17)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその10_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅷ)_(g)命令の達成状況を確認する

01625では、
「正しくデザインされ、策定され、発令した命令」
が、
「漫然と成果を待っていただけでは、永遠に正しく実行されないまま放置されるか、あるいは、本来の方向とは違った方向に進みだして、有害な結果をもたらすリスクが増殖する」
ということを指摘し、
「正しい命令が、正しく実行されるためのスキル」
をご紹介しました 。

そして、
「正しい命令が、正しく実行されるため」
には、この前提として、命令の達成状況が適時適確にモニタリングされる必要があります。

人間は、ウソをついたり、ごまかしたり、すっとぼけたり、言い訳を考える習性を有する動物です。

もし、
「私はウソをついたことがない」
「ごまかしたことはない」
「すっとぼけたりしたことは生まれたこの方一度たりともない」
「人生一度も言い訳をしたことはない」
という方がいたとしたら、その方は、人間ではないか(人工知能か何かが脳に入っているか)、あるいは病的な嘘つきのはずです。

ちなみに、アメリカのある大統領、ウィリアム・フリントン(関係者のプライバシーに配慮し、仮名とさせていただきます。以下、同じ)氏は、記者会見で、
「もう一度言います。私はあの女性、フリンスキーさん(仮名)と性的関係を持っていません。

私は誰にも嘘をついたことがありません。いまだかつて一度もありません。この申し立ては虚偽です」(西川賢『ビル・クリントン 停滞するアメリカをいかに建て直したか』中公新書より)
と、のたまったそうです。

世の中、いろいろウソはありますが、
私は誰にも嘘をついたことがありません。いまだかつて一度もありません
というのは、もっともミエミエ・スケスケ・ギンギン・ギラギラの額縁付きの、ひっどい、ウソですね。

こんなウソを堂々と言い切れる、フリントン(仮名)氏のメンタルもダイヤモンド級です。

なお、その後、フリンスキー(仮名)さんが体液の付着した
「青いドレス」
を含む物証を提出し、当該体液が、DNA鑑定の結果、フリントン氏(仮名)の提出した血液サンプルと一致したことから、フリントン(仮名)氏も観念し、ウソをついていたことと認め、謝罪しました。

脱線しましたが、人間は、ミスをし、誤解し、エラーをし、さらに、これが露見しそうになっても、ウソをついたり、ごまかしたり、すっとぼけたり、苦しい言い訳を考える習性を有する動物です。

このような現実的前提をふまえると、正しい命令を誤解したり、理解してもサボったり、サボるつもりはなくとも迷走したり、あるいは勝手な判断で暴走したりする可能性は十分あり得ます。

そのような失態を犯した挙句、自己保存のメンタリティから、
「自ら招いた結果とはいえ失敗を指摘され非難される」
という不名誉な事態の発覚を先延ばしにして有耶無耶(うやむや)にしてしまおうという、姑息で卑怯な魂胆のもと、報告連絡相談を意図的に懈怠したり、責任者や上層部が積極的に突き回さない限り報告を忌避したり、報告をするにはするが、抽象的で曖昧で
「どうとでも解釈されるような、しかも、現場は努力して頑張っている、というメッセージが入った」
無内容な報告に終始して、事実上、事態の露見を隠蔽する、ということも、実際の企業社会ではよくみられる状況です。

いずれにせよ、
「線表(せんぴょう)」
を策定し、線表に基づく達成状況の監視は必要です。

また、遅滞や懈怠に対するペナルティーを定め、これをシビアに運用することは必須です。

進捗状況すら管理せずに、丸投げしたり、ブラックボックスを作ったままの遂行体制を放置容認したり、現場からの抽象的で無内容な報告を鵜呑みにするのは、NGです。

「現場を信じて、任せる」
「(線表による達成状況の監視とペナルティーのシビアな運用などは)部下を信頼していないと思われ、却ってやる気をそぐのでそこまで細かいことはしない」
などと命令の達成状況や進捗を細かく管理することを放棄すると、撤退のタイミングすら見失い、泥沼の状況に陥り、果てしない資源喪失を招きかねません。

「正しい命令が、正しく、予定どおり実行され、成果が想定どおり達成される」
ということ事態が稀有である、という保守的な想定のもと、慎重に、臆病に、命令達成状況を細かく把握し、確認することが、プロジェクト・マネジメントにおいて必須であり、また、そのために必要な人員やシステムも、きちんと整備構築しておくべきです。

初出:『筆鋒鋭利』No.124、「ポリスマガジン」誌、2017年12月号(2017年12月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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