01515_「市場の変化に適応できない企業(=オペレーションしかできない企業)」と「適応できる企業(=イノベーションができる企業)」

冷戦時代においては、日本は、西側世界の工場機能を一手に引き受け、
「作ったら売れる」
という環境においてひたすら右肩上がりの成長をしてきました。

冷戦が終結し、世界中が一つになった市場に向かって能率競争(価格と品質による競争)を行うようになりました。

その結果、世界中で、供給過剰になり、モノがあまり、だぶつき始め、低成長時代に突入することになりました。

日本は、
「便利な品を安く、早く生産できる、効率的な世界の工場」
から
「生産コストが高く、規制や言語や文化の特異性による障壁が高く、使いづらい老朽設備だらけの古びた辺境の工場」
に変化していきました。

倒産に瀕した企業などでは、盛んに高度成長時代の思い出が語られます。

曰く
「昔は全員残業してフル稼働しても生産が追いつかなかった」
「ちょっと前は、人がたくさんいたんだよな」
「あんときは、どんどん設備を更新していたよなあ」
「昭和時代は、たくさんの下請けを使っていたんだよ」
「高度成長期は、メーカー主導で価格交渉していたんだよなあ」
などなど。

しかしながら、先程述べたように、市場におけるゲームのルールが劇的に変化してしまいました。

企業を運営する方向性としては、オペレーション(業務遂行)とイノベーション(業務改革)のつがあります。

経済が膨張(インフレーション)し、市場にモノやサービスが足りない状態のときは、オペレーションに比重がおかれます。

そして、オペレーションにおいては、余計なことを考えずにひたすら目の前のルーティンをこなすことが重要となります。

ところが、供給過剰になり、市場が小さくなり、価格競争・品質競争が激化すると、環境適応のためのイノベーションが重要となり、これができない企業は淘汰されることになります。

「環境が激変する現在において、生き残ることができる企業」
とは、イノベーションができる企業、すなわち、過去を振り返らず、ひたすら現在の状況に適応できる企業といえます。

そして、そういう未来を志向する企業は、上から下まで過去を偲ぶ暇がなく、逆に過去を偲ぶタイプの人間は、はるか昔に解雇されています。

社長以下幹部が過去の栄光を振り返るだけで現在の挫折を改善しようとせず、また、中間管理職もそういうタイプの人間ばかりで、社内全体に過去に執着するような文化が蔓延しているような企業に未来はありません。

また、現状において売り上げをそれなりの水準を維持している企業であっても、成功体験に固執し、変革や環境適応の努力を怠った場合、栄光の日々の終焉に気付かないまま、ある日突然、命脈を絶たれる場合があるのです。

ある小説にこういう一節があります。

「過去の栄光とやらは、いつでも、いまの挫折に結び付くのさ。女々しくすがりついていないで、とっとと忘れちまえ。いいか。過去の栄光ほど再出発を邪魔するものはない。過去の栄光ほど惨めったらしいものはない。栄光の条件を教えてやろうか。栄光は、常に現在形でなくてはならんのさ。過去形の栄光は、正しくは、挫折と呼び慣わすんだよ」

これは芥川賞作家の花村萬月氏の書いた
「新宿だぜ、歌舞伎町だぜ」
という短編小説における主人公のセリフですが、このことは企業にもあてはまります。

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01514_オーナー企業でみられる「社長の個人的趣味が現れた豪華な本社社屋」が完成したとき、企業は衰退を始める

オーナー系中小企業を見ていると、本社社屋に、娯楽施設とかフィットネスクラブとか茶室とか業務に関係のない施設も併設されていたりする光景が見られます。

そして、こういう企業に限って、社長室が無駄に広く、動物の剥製、著名人とのスナップ写真、有名絵画、高級酒がおいてあり、さらに本社玄関には創業者の銅像がおかれていたりします。

無論、企業もその規模に応じて、相応の相場感をかもしだす必要はあるでしょう。

しかし、企業施設の豪華さが企業の社歴や規模と比較してあまりに違和感がある場合、その企業の長期的存続はやや厳しいと思われます。

本社社屋は、事業という戦争において指揮命令を司るところであり、機能性と効率性が追求されるべきであり、何よりも私的空間と決別していなければなりません。

たとえば、こんな例を考えてみましょう。

ある高校生の勉強部屋を見ると、アイドルの写真やスポーツ選手のポスターがベタベタ貼ってあり、また、マンガの本やプラモデルなど成績や勉強に貢献しないものが目立っている。

この高校生は学業において優秀な成績を修めているでしょうか?

無論、そういう環境でも勉強が出来て成績も優秀な高校生が絶対いないというわけではないかもしれません。

しかし、現実には、
「そういう環境で勉強している高校生は、成績もやっぱり残念な結果になっている」
ということの方が圧倒的に多いと思われます。

要するに、社長室に
「効率的な事業運営を行うための指揮所」
としてふさわしくないような私物がやたらと置いてある企業は、
「勉強のできない高校生の部屋」
と同じで、
「そういう環境においてまともな経営ができているか、非常に疑わしい」
ということになるのです。

なお、
「あまりに殺風景だとそれはそれで仕事の効率が落ちる」
というのも理解できますし、そのためにある程度調度品を置くという行為も理解できないわけではありません。

とはいえ、動物の剥製や銅像や美術品や骨とう品や日本刀や兜など、高価なというだけで特定の趣味・嗜好が感じられない品々が、一貫性もなく、無秩序に羅列されているような場合、会社のオーナーの感性が
相当「イタい」、
ということを端的に表していることになります。

そして、
「そのようなオーナーの『イタい』感性の発現がそのまま放置されている」
ということは、
「社内で誰も注意する人間がいない」
ということを意味しており、こういうガバナンスと無縁な企業は何かの拍子であっという間に消えてなくなってしまうものです。

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01513_豪華で立派な本社ビルが出来ると、企業は傾き始める

1 パーキンソンの法則

イギリスの歴史学者・経営学者であるC.N.パーキンソンは、その著書
「パーキンソンの法則(1958)」
の中で
「ある組織のりっぱな建造物の建設計画は、その組織の崩壊点に達成され、その完成は組織の終息や死を意味する」
と述べています。

この法則からすると、豪華な本社ビルが出来上がった後は、どの企業も成長が終わり、終息に向かう、ということになるようです。

論理的裏付けはともかく、経験則からいって、これは真実に近いような気がします。

2 「 豪華な本社ビルを自前で作る」という会社の方向性の前時代性

現在の会社の事業戦略の方向性は、
「利益という指標への盲目的奉仕とこれに向けられた徹底した効率化(スピード化、スマート化、シンプル化、ソフィスティケート化)」
であり、
「大きいことはいいことだ」
という単純なスケール追求指向の昭和の時代の企業の方向性とは一線を画しています。

そして、
「よい会社」
というのは、総じてケチであり、お金の使い方に一切無駄は見られません。

ここで、注目されるべきは
「本社ビル」
という点です。

本社ビルは、製造活動を行うわけではなく、特殊な小売形態を除き、営業活動をメインで行うこともしません。

本社ビルは、中枢管理を行う機能が集中します。

たしかに、
「中枢管理」
といえば聞こえはいいですが、いってみれば、収益に直接貢献しないことをやっているところであり、間接費をダラダラ流し続けるところです。

工場設備や店舗にカネを使うならまだしも、間接費の塊に無駄にカネを使うのはあまりに経営センスがなさすぎます。

その意味では、
「豪華な本社ビルで築造して社容を誇る」
という発想の会社は、収益との関係のないところにカネを使っていることを誇示している会社であり、今の時代、そんな経営を指向する経営陣の頭脳は、やや知的水準に問題があるといえます。

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01512_「情報弱者」企業のしくじりと末路

無論、情報技術(ICT、DX、AI、RPA等)は必要条件であっても、十分条件ではありません。

「情報技術(ICT、DX、AI、RPA等)を導入すれば、わが社もすぐに売り上げ倍増!」
などと考えている(イタい)企業があれば、それはそれで危険な兆候です。

このような
「情報弱者」
の中小企業を狙って、情報技術(ICT、DX、AI、RPA等)関連企業が食い物にするケースもあります。

一昔、二昔前の話になりますが、
「内部統制バブル」
というものに便乗して情報弱者の企業を狙った悪質なICT関連商法が流行ったことがあります。

すなわち、
「日本版SOX法が施行されるので、内部統制を構築しないと大変なことになる。内部統制構築のため、このシステム一式2億円をお買い上げください。細かいことは考えなくて結構です。とにかくこれを装備してください。そうじゃないともう手遅れです。早く、早く」
などという言い方で中小企業に用途のよくわからないものを売り込む商法です。

ちなみに、背景をいいますと、日本版SOX法は、金融商品取引法24条の4の4で定められる内部統制構築義務を指しますが、これは株式公開企業が履行すべき義務であり、株式を公開していない中小企業は一切関係のない法律です。

ですので、上場していないそこらへんの中小企業に
「日本版SOX法に関するホニャララ」
を売るというのは、認知症の老人に不要なリフォーム工事を売り込むのと同様であり、極めて問題のある商法です。

とはいえ、購入する側の知的水準もどうかしていると思いますが。

その次のトレンドとしては、これは一昔前くらいですが、
「IFRS(国際財務報告基準)が襲来するぞ!今から備えよ!」
という似たような話もありました。

IFRSも株式公開企業の、しかも国際的な事業活動を行っている企業に限定された話で、非上場の中小企業には一切関係のないものです。

「IFRS関連グッズ」
を買おうと検討していた、非上場のマルドメ(まるでドメスティックな)中小企業の社長さんの中には、少なからず無駄なカネを費消された方がいるようです。

いずれにせよ、パソコンの機種やソフトウェアというものは、きちんと活用していれば、法定耐用年数のはるか以前に陳腐化していくものです。

その意味で、5年以上も何らの更新もなくこれらのハードやソフトが使われているとなると、
「当該企業は情報弱者ではないか」
との高度の推測が働きます。

実際、倒産する企業の現場に行きますと、情報環境がおそろしく遅れています。

古びたパソコンに無秩序にファイルが羅列しており、また、紙媒体の情報とパソコンに格納された電子情報が混在し、さらに、ランダムに保存された数種類の保存媒体(CDであったり、USBメモリであったり、外付ハードディスクであったり)上の情報も併存しています。

社長は紙媒体で情報を確認しているが、経理部長はパソコン上のファイルを完成情報と見ており、経理スタッフは各々勝手にファイルを更新している、といった混乱した状態なのです。

これでも、ある程度の期間、一貫して情報を把握している人間がいればいい方です。

人の入れ替わりが激しく、辞めていったり、補充されたり、を繰り返していると、何が何だかわからなくなります。

アタマが混乱している人間は自分の行動を制御できないのと同様、会社の中枢の情報がこのように混乱していて、健全に企業として存続できるわけはありません。

いずれにせよ、所属企業や取引先企業が、情報弱者であったり、あるいはその兆候がある場合、注意が必要となります。

そして、
「情報弱者」企業
は、
「情報弱者」状態
を脱しようと、情報技術(ICT、DX、AI、RPA等)導入を企図するのですが、そこでも、
「情報弱者」
という知的脆弱性がアダとなって、悲惨な形で食い物にされてしまいます。

そして、情報弱者の企業は、情報技術(ICT、DX、AI、RPA等) 導入で躓いて、そこから企業自体がおかしくなってしまうこともあるのです。

日本の多くの企業において、情報技術(ICT、DX、AI、RPA等) 導入で大失敗してしまう最大の原因は、
「要件定義」
と呼ばれる作業ができないからです。

「要件定義」
とは、システム開発において、ユーザーが、どのような機能を求めているのかを明確にする作業のことです。

そして、通常、この
「要件定義」作業
は、ベンダー側とユーザー側の双方の協力によって(といっても実際は、ベンダー側が主導しますが)行われます。

しかし、これも考えてみればおかしな話です。

たとえば、普通の知的水準の方であれば、食事をしたいとき、
「どんな食事を、いくらくらいで、どんなお店で食べたいか」
ということを明確に定義することはできるはずです。

もし、毎度毎度の食事で、
「『どんな食事を、いくらくらいで、どんなお店で食べたいか』が全くわからないので、この点いちいち誰かに決めてもらわなければならない」
とすれば、その方の認知レベルは相当問題がある状態であり、どこか適切な施設で暮らした方がいいかもしれません。

「要件定義ができない企業」
というのは、まさしくこれと同じで、要するに
「自分たちは、一体、何のために、どのようなシステムを、どのくらいで購入すべきかわからないので、教えてくれ」
といっているのです。

そして、当該企業は
「何のために、どのようなシステムを、どのくらいで購入すべきか」
を教えてもらうために、システムを販売する会社に何百万何千万円単位のお金を平気で払っています。

「お金はあるが、何がほしいかわからないので、それも含めて教えてくれ。教えてくれたらそれを買う」
という人間が店先に現れたとしましょう。

これは、一般に
「カモが、ネギと鍋と出汁(ダシ)を背負ってやってきた」
といわれる現象であり、
「食い物にするな」
という方が無理かもしれません。

かくして、情報技術(ICT、DX、AI、RPA等) 導入に際し、情報弱者の中小企業が徹底的にボられるケースが多発するのです。

とはいえ、これはボられる方が圧倒的に悪い。

株式会社は、会社法上
「商人」
すなわち
「商売のプロ」
とみなされるわけですから、認知症の状態で取引社会の鉄火場をフラフラする方が問題です。

いずれにせよ、情報弱者の企業は情報技術(ICT、DX、AI、RPA等)導入についても常に高いリスクにさらされている、といえます。

運営管理コード:YVKSF078TO084

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01511_スピード経営の時代に必須の経営アイテムとしての情報技術(ICT、DX、AI、RPA等)

経営にスピードと効率が求められる現在においては、情報と時間を大胆に効率化しあるいは節約してくれる情報通信関連技術(ICT、DX、AI、RPA等)の活用は必須の前提となります。

すなわち、情報の生成、加工・活用、共有が瞬時にかつ正確無比に行え、無駄な業務プロセスや会議や出張を激減させてくれるインターネットやコンピューティングプロセスや各種デジタル技術はそのまま経営のスピードに直結することになります。

逆にいえば、先端情報技術を活用していない企業や、活用以前に理解すらしていない企業があるとすれば、そのような企業はスピード経営に背を向けているのと同様です。

現在の経営環境において、そういう姿勢で企業が生き残れるほど甘くありません。

情報技術の強みを生かしている企業とそうでない企業には顕著な差が生じます。

パソコンやネットワークの最大の強みは、計算機能であり、データ共有機能です。

数値管理を徹底すべく、数値を瞬時に共有し、これをもとに各現場において次の行動に結びつける環境を形成している企業は、ICTの強みを理解し、これを生かしている企業といえますし、今後も生き残っていくものと推測されます。

他方、パソコンの使い方として、計算機能による数値管理やネットワーキングによる情報共有機能ではなく、ワープロや描画機能に特化した使い方をする企業は、長期的な企業存続にやや不安が看取されます。

大胆な言い方をすれば、
「情報共有に関して、メールやグループウェアを多用している企業」
は将来がありそうな気がしますが、
「パワーポイントで印刷したペーパーを配布している企業」
の将来には不安が感じられる、ということになるでしょうか。

社長とか特定の幹部がそこそこ高価な端末機器を使っているのに、グループウェアがなくホワイトボード、なんて会社もNGかもしれません。

いまだに、カビ臭い中小企業では、ホワイトボードと電話と紙の回覧とハンコ決裁という情報技術からすると歴史上の遺物ともいうべき代物が幅を効かせておりますが、そういう企業で、素晴らしい経営成績を挙げているというところは、寡聞にして知りません。

運営管理コード:YVKSF075TO078

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01510_事業経営において最も高価で貴重な経営資源は「時間」。次に「情報」。

「企業にとって最も重要な経営資源は何か?」
という経営に関する古典的な問題があります。

これに対する答えは、よくいわれるように、
「ヒト(労働力)」
「モノ(物資)」
「カネ(資金)」
などといわれます。

情報化社会が進んだ現代では、これに加えて
「チエ(情報、ノウハウ、知的財産権、ブランド)」
が重要などといわれます。

しかしながら、経営者の中には、
「時間こそが、もっとも重要な経営資源である」
と答える方も多くいらっしゃいます。

確かにそのとおりです。

スピード経営が求められる現代において、時間は最も重要です。

ところで、時間とカネは、相互補完の関係に立ちます。

時間をかけるとカネを節約できますし、時間を節約しようとすると、多額の出費を要求されます。

東京から大阪に行くのにお金がない時は、青春18キップで丸1日かけて行くしかありませんが、5倍ほどお金をかければ、新幹線に乗って2時間半で大阪に行くことができます。

飛行機も早めに予約すればかなりの割引を受けられますが、その日に突然搭乗するとなるとバカ高い正規運賃を支払う羽目になります。

現代の企業にとって時間やスピードは生死を分けるほど重要であり、どの企業も僅かな時間を節約するために、信じられないぐらい多額の投資を行います。

企業がなぜ活発にM&Aを行うか。

「企業は、M&Aによって、『企業を買っている』のではなく、『時間という最も重要な経営資源を買っているのだ』」
といわれます。

すなわち、
「企業が規模を大きくしたり、新規事業を立ち上げたりする際、試行錯誤を行いつつ自前で行うよりも、すでに出来上がっているものを企業が買い上げた方が、時間が節約できる」
というわけです。

運営管理コード:YVKSF072TO075

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01509_仕事の効率性向上にもっとも重要な環境整備

経営にスピードが求められる現代の企業活動においては、活動の効率性はもっとも重要な課題となります。

そして、仕事ないし作業の効率性を改善するのにもっとも必要なのは、環境の改善です。

仕事ないし作業の環境が低下し、しかもこれを放置しているということは、
「企業が効率を意識していない経営を行っている」
という意味であり、今の時代、そういう経営が許されるのはお役所くらいです。

かの有名な織田信長は、大変なきれい好きで、部下に徹底的に掃除と整理・整頓をさせ、自分のゆくところ、塵一つない状態を要求したそうです。

また、M&Aによる企業再建の名手と呼ばれる日本電産の永守会長も、再建のため乗り込んだ企業には、トイレを素手で掃除させるなど徹底した掃除をさせ、環境整備を改善するところからはじめるそうです。

さらに卑近な事例を挙げますと、
「飲食店でトイレの清掃を怠っていて不潔なところはすぐつぶれる」
という経験則がありますが、このルールは結構な確率で当たっています。

このように、成長する組織のリーダーほど、仕事の環境整備が事業効率に直結することを理解しており、整然として清潔な職場を徹底して追求します。

逆に、仕事場の環境整備や整理整頓をいい加減にする企業の未来は極めて貧弱である、と言えるのではないでしょうか。

特に、机の上や書類棚というのは机の主のアタマの中をそのまま投影します。

社長室が雑然としているというのは、社長のアタマが混乱しているということを示しています。

こういう汚いオフィスで仕事をしている社長は、必ず
「忙しい」
を連発します。

「忙しい」
とは、
「心」を「亡くす」
と書きます。

汚れたオフィスで仕事している社長は、
「ゴールもマイルストンもロードマップも明確にみえており、儲けるための算段も段取りも完璧に整っているが、ただ時間だけがない」
という状況ではありません。

混沌としたオフィスで仕事をして
「忙しい」
を連発する会社は、単に思考整理ができず、精神が混乱しているだけなのです。

会社の行く末を決定するトップの頭脳が混乱した状態(いわば、殿が「ご乱心」の状態)で会社が生き残れるわけはありません。

運営管理コード:YVKSF066TO070

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01508_諸事整然としておらず、清潔感や秩序感のない、小汚い会社が傾く理由

まず、生産現場が雑然としていて汚いのは、企業が合理化の努力を長らく行っていないことを端的に示しています。

すなわち、設備を更新せず、生産方法も古いままのやり方を踏襲していて、QC活動などもせず、安全管理などもしていない、ということです。

設備も生産方法も古いままでいいのは、新しい商品を作っていないからであって、デフレでモノが売れない時代で、
「10年以上も前の商品を同じ時期に購入した設備で、同じくらい古い方法で作っている」
などという企業は確実に淘汰されます。

また、倉庫が雑然としていて汚いというのは、商品が売れず、不良在庫が滞留し、新規在庫と混在しはじめているからです。

さらに、オフィスが雑然として汚いのは、紙が氾濫しており、情報が分散しているからであり、ICT化や情報戦略が遅れている証拠を端的に示しています。

運営管理コード:YVKSF065TO066

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01507_倒産間際の会社で整然としたところはない

経営再建を依頼された経営コンサルタントや、(もはや再建が不能となって)企業の破産や民事再生の申し立てを依頼された弁護士が、書類レビューのあと、本格的に作業着手するに際して、まず実施するのは、当該会社の訪問です。

むろん、現場視察によって会社の事業内容や活動の実際を把握しておくということが主たる目的ですが、倒産手続などを申し立てる弁護士においては、各種法的手続きに必要な書類を直接探してもってくる、ということも会社訪問の重要な目的です。

そして、実際、倒産間際の会社に行って必要な書類を探そうとしても、どの会社も整理整頓が全くできておらず、大変な目に遭います。

工場を持っている会社に行くと、
「よくこれで事故が起こらないな」
と感心するくらい設備や仕掛品や工具・器具が散らばっていますし、倉庫を見ても、出荷されるものと不良在庫と返品されたものがぐちゃぐちゃバラバラになっていて、まさしく
「カオス」状態
なっています。

またオフィスに赴いても、全体的に雑然としています。

とくに、紙やファイルがそこら中に氾濫しており、各スタッフのデスクやキャビネットを見ても仕事に関係なさそうなものやどういう使い方をしているかわからない事務用品や文具が混在し、
「ごみ屋敷」
の様相を呈しています。

倒産間際の会社の社長室などの経営幹部の個室に行くと、これがまたひどい状況になっています。

書類やファイルは、キャビネットに整理されておらず床に平置されていて、検索効率が悪くなっています。

そしてキャビネットを開くと、書類が無茶苦茶なツッコミ方をしていて、その中に、会社の定款や税務申告書類や各種契約書原本や手形帳といった重要書類が無秩序に混在しています。

また、倒産間際の会社の社長室などに至っては、
「重要書類が段ボールに入れて管理されている」
という特異な状況も見受けられます。

逆に、儲かっている会社や成長している会社には、上記のような雑然な状況とは一切と無縁で、きれい好きが行き届いているのか、商品も器具も書類も整然と整理されています。

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01506_どの会社も、予告や告知をせず、ある日突然、いきなり倒産するのはなぜか

倒産を計画する会社は
「わが社は1月後に倒産します」
などというようなことを発表しません。

こんなことをすれば、腐肉に殺到するハイエナのように債権者たちがおそいかかり、まともな管理ができなくなるからです。

むしろ、倒産を考える会社は、倒産を発表する前日まで、
「ピンピンした健康体」
であるかのように装います。

また、倒産を計画していない会社の場合であっても、社長をはじめとした経営幹部自身が、
「『会社がもう死んでいる状態』であることを認識しようとしない、あるいは認識できない」
ということもあります。

太平洋戦争における終戦前日の日本国民が
「大日本帝国の存続が永遠である」
と思い込んでいたように、認識不足で現実的思考に乏しい社長が、
「会社が永遠に存続する」
というゴーイン(強引)なコンサーンを信じ、
「実質債務超過であろうが、多少資金繰りが大変でも、一発逆転の奇策で、絶対立ち直る」
という根拠のない信念を抱き、これを内外に喧伝する、という状態です。

いずれの場合であれ、
「会社のご臨終の場面」
というのは、
「危篤の知らせが親類縁者に発信され、関係者が『そろそろ逝くな』と明確に認識し、時間が来て、皆に囲まれて、天国(か地獄)に旅立っていく」
というものでありません。

むしろ、企業が死ぬ場面というのは、サドンデス(突然死)という形で終焉を迎えます。

企業は社長とごく一部の人間以外は一切秘密にされたまま死んでしまうのですから、何も知らされていない周囲の者からすると、
「真夏のゴルフ場でいきなり心筋梗塞で死んだ」
「風呂に入っていたらそのままポックリ逝った」
「愛人宅で、年甲斐もなく、無茶な行為をして、あっけなく逝った」
という類の無様で失笑されるような不幸話と同様、意外性のある死に方をしてしまうのです。

とはいえ、死ぬ直前までどんなに健康そうにみえても、経験豊かな医者が見れば、突然死の兆候が判るものです。

その昔、ぽっくり病や突然死と言われた心筋梗塞や脳梗塞も、医学の発展で、原因が解明され、さらに発症前の徴候が明らかにされるようになってきました。

弁護士は、監察医と同じく、企業の死ぬ場面をもっとも多く、かつ客観的に観察する立場にあるプロフェッショナルです。

また、企業経営者の真横にいて経営の中枢情報に触れる機会のある経営コンサルタントも同様です。

したがって、ある程度の経験を積んだ弁護士や経営者や経営陣から信頼を得て活動する経営コンサルタントには、倒産する企業に共通する特徴がわかるようになるのです。

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