01324_債権管理・回収法務>債権管理・回収法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境と法令管理

1 法令環境

企業が売掛債権を管理し、あるいは回収する場面においては、民法(弁済、相殺、代物弁済、債権譲渡)や、民事訴訟法・民事保全法・民事執行法、非訟事件手続法、弁護士法、仮登記担保法、工場抵当法、企業担保法、建設機械抵当法、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律、債権管理回収業に関する特別措置法といった法令が関係してきます。

また、債権回収の場面では、債務者の財産帰属や資産隠蔽行為をめぐって、複数の債権者や破産管財人による激しい争奪戦が行われることから、民法(詐害行為)、破産法(否認権)さらには刑法(強制執行妨害罪)といった法令が関わってきます。

2 法令管理

債権回収に関しては、民事訴訟弁護技術と極めて密接に関わっており、法廷や保全・執行経験のある現場に強い弁護士の独壇場となっています。

債権回収の場面で強引な行為に及ぶと、債権者の行為は窃盗・強盗(商品引揚げ)、恐喝(弁済の強要)として問題されることもなり、債権の回収事故よりもさらに別の大きなトラブルに発展する場合もあります。実際、下記のとおり、回収のプロである弁護士ですら、行き過ぎた使命感から大きな失敗を犯す例があります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

このあたりは、法律書で書かれたものを前提に、机の上で構築したものを実行に移すのではなく、法令の調査や事案遂行方針の立案にあたっては、プロの弁護士の実務感覚もうまく取り入れて、慎重に行っていくことが推奨されます。

運営管理コード:CLBP458TO459

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01323_債権管理・回収法務>債権管理・回収法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>課題と対応の基本

支払を遅滞する債務者にも、様々なタイプがありますので、タイプごとに対応を検討する必要もあります。

1 単純引き延ばし型債務者への対応

支払原資を欠くわけではないにもかかわらず、
「支払いの決裁権者が不在」、
「上司から請求書が下りてきていない」
といった言い訳をする債務者の場合、支払の優先順位が相対的に下げられている可能性があります。

対応法としては、支払期日が近づくごとに、ファクシミリ等で支払期限の確認を行うなどしてプレッシャーを与えるべきです。

また、
「アメ」と「ムチ」
を使い分ける方法も有効です。

すなわち、
「アメ」
としては、金銭債務を前倒しで支払う場合に割引等のインセンテイブを付与したりして、支払の優先順位を上げさせる工夫をするのも有効な手段です。

他方、
「ムチ」
としては、支払遅滞した相手については、次回取引を留保したり、値引きその他で不利に処遇するなどの方法があります。

さらに、相手が優越的地位に立ち、この立場を濫用しているような状況であれば、公正取引委員会に相談してみることも有用です。

2 “因縁つけ”型債務者への対応

支払期限の直前になって
「注文と異なる」「品質が悪い」
といったクレームをつけ始めるケースです。

債務者が、いわば
「因縁をつける」
ことで、支払いを引き延ばそうという場合です。

これについては、注文スペックと違う点や、品質に関する先方の主張を、文書で提出させるべきです。

そして、その際、クレーム提出期限を明確に区切り、
「期限内に文書にてクレームが出なければ、異議なく検収・納品されたものと考えます」
と付記しておくことも重要です。

虚偽のクレームを文書にできるほど腹の据わった債務者は稀であり、期限内に、
「分割払いにして欲しい」「値引きをお願いしたい」
といった形で真の意図を開示し、円満に話し合いをする環境が形成できる場合もあります。

3 不当応訴型債務者の場合

中には、訴訟等の民事手続を行わない限り支払いを行わない債務者も存在します。

このような場合、支払督促や訴訟等の手続を実施せざるをえませんが、実際上は、回収までに多大な費用と時間と労力を要することになりますし、勝訴判決を獲得したところで、既に資産が散逸してしまっていたり、巧妙に隠匿されてしまっていれば強制執行による回収もできません(なお、このような単なる債務不履行事案を詐欺罪で立件することも、法理論上可能ですが、現在の警察実務を考えると、実際問題としては、告訴の受理・立件の可能性は極めて乏しいといえます)。

このような場合、金銭債権の回収不能を理由とする損金経理等、税務上の利点を確保する方向にシフトチェンジすることも検討すべきです。

運営管理コード:CLBP456TO457

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01322_債権管理・回収法務>債権管理・回収法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>概説、課題と対応の基本

1 概説

ヒト、モノ、カネ、チエといった経営資源を調達・活用して企業内に付加価値を創造した企業は、これら内部に形成された付加価値である商品在庫や提供可能状態となった役務を営業活動により収益として実現します。

しかし、ここで実現した収益は、いまだ売掛債権の段階に過ぎません。

企業は、適切な債権管理・回収活動によって債権を現金として回収することができてはじめて、事業活動の原資として循環利用させることができるのです。

収益をスムーズかつ確実に現金として回収するためには、債権管理・回収に関する法務の理解が必須となります。

なおこの場合の収益とは、売掛金の回収に限らず、貸付金の回収、知的財産許諾等の対価の回収、フランチャイズにおけるロイヤルティの回収など、様々な場面が想定されますが、本章では、支払遅滞・不能を避けるために平時から実施しておくべき債権管理・回収に関する法務を中心に解説します。

債権管理・回収の基本対応は、債務者の観察に始まります。

2 課題と対応の基本

支払を遅滞する債務者には共通した特徴がありますので、金銭債権の回収を担当する部署は、常日頃から取引先を観察し、支払遅延や破綻のわずかな兆候も見逃さないことが重要です。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01321_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>特殊な課題・新たな課題>特定商取引法・割賦販売法改正と消費者庁発足

「特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律」
の施行(2009年12月1日)により、特定商取引法及び割賦販売法の規制態様が以下のように変わりました。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

2009年9月1日、
「消費者基本法第二条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にのっとり、消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に向けて、消費者の利益の擁護及び増進、商品及び役務の消費者による自主的かつ合理的な選択の確保並びに消費生活に密接に関連する物資の品質の表示に関する事務を一体的に行わせるため」(消費者庁ウェブサイトより)、
内閣府の外局として消費者庁が発足しました。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

これまで、いわゆる
「縦割り行政」
により複数の省庁に分割・細分化されていた消費者関連の業務が消費者庁の下に統合されることにより、消費者行政の一元的・包括的運営が可能となり、一般消費者の安心・安全に資するものと期待されています。

今後しばらくは、消費者関連の法改正等の動向から目が離せないでしょう。

消費者庁の発足に伴って、表の各法律が新たに消費者庁の所管となりましたので、確認してください。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

なお、行政は、法令違反に対して行政処分を実施した場合に、処分内容を公表することがあります。

消費者庁も、最近では、景品表示法違反行為などについて措置命令を発した場合に、処分された会社の社名を含めて、内容を公表しています(いわゆるポイントオークションについて、2011年3月、株式会社DMM.comに対する措置命令が公表されています)。

運営管理コード:CLBP450TO453

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01320_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>特殊な課題・新たな課題>最近の事件>特定商取引法関連

2009年5月、経済産業省は、学習教材等の訪問販売・学習指導等を行うゼンケン教育システム株式会社(東京都新宿区)に対し、特定商取引法に違反するとして、訪問販売について3ヶ月間の、特定継続的役務提供について6ケ月間の、それぞれ一部業務停止を命じ、かつ、不実告知の点について特定商取引法違反である旨を購入者に通知することを指示しました。

同省によれば、同社は、消費者宅を訪問して
「今回、紹介するものは、重要ポイントをプリント3枚くらいにまとめてあり、テスト問題はここから出ることが多いと示してある」
などと根拠のない説明で勧誘を行ったり、
「解約はできない。そんなのは自己責任でしょ」、
「クーリングオフ期間は過ぎたのでできるわけがない」
などと虚偽の事実を述べて契約の解除を妨害していたとのことです。

2012年6月、消費者庁は、
「必ず値上がりする」
などとウソの説明で、二酸化炭素(CO2)の排出量取引を勧誘していたとして、特定商取引法違反(不実告知など)に基づき、訪問販売業者「やよいトレード」(東京)に一部業務停止命令(期間は1年間)を出しました。

消費者庁によれば、同社は2011年1月ごろから、CO2排出量取引の訪問販売を開始し、営業担当者が顧客に
「これから火力発電に頼るようになる。CO2排出量の値段は必ず上昇する」
などと断定的な表現で勧誘するなどしていたようです。

なお、CО2の排出枠取引は、ロンドンの欧州気候取引所(ECX)で売買されていますが、同社が実際に取引した形跡はないということです。

2013年9月、消費者庁は、
「選ばれた作品」
などとうそをついて小説などを自費出版するようしつこく勧誘したのは特定商取引法違反(不実告知など)に当たるとして、出版社の日本文学館(東京・新宿)に新規勧誘などの業務停止(期間は3ヶ月)を命じました。

同庁によれば、同社はホームページや月刊誌で小説や詩を募集したり、応募者に電話をかけ
「選び抜かれた作品」
などと優秀作であるかのように装って自費出版を勧め、断っても
「印税を出版費用に充てられる」
としつこく誘うなどしていたようです。

また、契約した人が負担した出版費用は63万~約100万円であったのに対し、 1千冊以上売れても印税収入は数万円であった、とされています。

一部業務停止命令自体の損害も大きいですが、こうした具体的な事実認定とその公表等による企業信用の毀損は非常に大きいものと言えます。

運営管理コード:CLBP449TO450

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01319_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>特殊な課題・新たな課題>最近の事件>景品表示法関連

2009年4月、公正取引委員会は、
「エコ冷蔵庫」
としてリサイクル原料の使用(実際にはほとんど使っていない)や製造工程でのCO2排出量の大幅な削減(4年前の製造工程との比較では約48%削減されているが、直近の新しい工程との比較ではわずか数%削減された程度)について消費者を誤認させる表示をしたなどとして、日立製作所子会社の日立アプライアンス(東京都港区)に対し、景品表示法違反(優良誤認)で排除命令を行いました。

2009年5月、公正取引委員会は、テレビ通販最大手のジュピターショップチャンネル(東京都中央区)に対し、同社が販売する保存容器について、テレビ番組内の映像や音声で
「軽量で重ねて収納できる抗菌保存容器」、
「抗菌性が優れている」
などと表示していたことが、景品表示法違反(優良誤認)であるとして、再発防止を求める排除命令を行いました。

当該容器は韓国製で、国内の卸売業者の説明を確認せずに販売したことが当該違反行為につながったとのことで、同社は商品を自主回収して代金を返還した模様です(販売額は約2億3,000万円)。

2009年6月、公正取引委員会は、和食ファミリーレストラン「庄屋」を運営する株式会社庄屋フードシステム(長崎県佐世保市)に対し、同レストランのメニューで契約農家の米を使用している旨表示しているにもかかわらず、実際にはほとんど使用していなかったことについて、景品表示法違反(優良誤認)で再発防止などを求める排除命令を行いました。

2011年3月、消費者庁は、いわゆる
「ペニーオークション」
を運営する事業者3社に対し、
「最大99%オフで落札できるチャンス!」
等と表示をしたにもかかわらず、実際には入札ごとに多額になった入札手数料が発生するために必ずしも商品を著しく安価に手に入れることができるわけでもなかったとして、景品表示法違反(優良誤認及び有利誤認)に基づき措置命令を行いました。

2013年8月、消費者庁は、株式会社秋田書店に対して、紙面上で実施した懸賞企画において、
「ワンセグポータブルプレーヤー2台」
などと、あたかも誌面上に記載された当選者数と同等の景品類が提供されるかのように表示したにもかかわらず、実際には誌面上に記載された当選者数を下回る数の景品類を提供していたとして、景品表示法違反(有利誤認)に基づき措置命令を行いました。

運営管理コード:CLBP448TO449

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01318_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>消費者法実務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>民事訴訟、適格消費者団体による介入

1 民事訴訟

民事訴訟においても、争点は、企業側の違反事実の有無となります。

この場合、企業側が反論する証拠を提出することができなければ、和解においても有利な和解を勝ち取ることができません。

「お客様からクレームが来た以上、誠心誠意お詫びすべきであり、争うなどもってのほか」
などの態度だと、実際には違法行為とされる事実が存在しなかったにもかかわらず、自ら、違法行為の存在を認めることになり、
「あの会社は消費者の敵、悪徳企業である」
との悪評を固定化することになりかねません。

また、和解で処理することができれば、和解条項に互いの守秘義務条項を入れることも可能な場合があり、企業のレピュテーションリスクを管理することができます。

裁判所が一方的に消費者側の言い分を全て認めて判決に向かってしまわないよう、合理的な証拠をもって、徹底的に争っておくべきです。

2 適格消費者団体による介入

これまで、企業としては、消費者からの様々な訴えに関しては、消費者自身の情報力・交渉力・経済力の問題から、あまり真剣に取り合って来なかった一面もあったと思われます。

しかしながら、消費者団体制度が確立したことにより、上記のような企業の姿勢にとって大きなけん制機能が働き始めました。

無論、消費者団体の介入といっても、
「交渉や話し合いもなく、即座に差止請求訴訟が提起される」
という類のものではなく、書面による請求が前置されます。

とはいえ、よほど訴訟に耐えうる状況であれば格別、このような書面が来た際には、事態を甘くみず、適正な和解を視野に入れて誠実に話し合うことが企業にとってリスクやロスの発生の効果的回避につながるかと思われます。

ちなみに、携帯電話会社が中途解約の場合に違約金を請求する旨を契約条項に含めている点について、京都の適格消費者団体が、大手携帯電話会社3社に対して、違約金請求を契約条項に含めることを差し止める訴訟を、2010年と2011年に提起するなど、消費者団体が企業のコンシューマーセールス(消費者向営業)のあり方に積極的に異を唱える活動を開始しており、企業としても十分な注意と警戒が必要です。

運営管理コード:CLBP446TO447

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01317_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>消費者法実務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>行政処分

例えば、特定商取引法の
「電話勧誘販売」
において、企業側が
「毎月〇%の配当がつきます」
との
「不実告知」
を実施したことを理由として行政処分が下される際、行政側は、事業者による違反事実(「業務停止命令等の原因となる事実」)の摘示(処分理由の附記)において、被害に遭った消費者のプライバシーを保護する観点から、
「同社は、2011年1月、X県Y市に在住する女性に対して、『この先物オプション取引は絶対に儲かります。』等の虚偽の説明を行って消費者を勧誘した」
などのように、
「誰が」
「いつ」
「どこで」
などの点について、匿名のまま摘示内容を主張することがあります。

このような場合、企業側としては、当該事実の存否について調査の機会や可能性を奪われた状態に置かれ、事実上反論すらできないまま、処分を受けることになります。

そこで、勧誘内容については、可能であれば全件録音するか(ICレコーダを用いれば十分に可能です)、最低限、日報等を作成して、
「いつ」
「どこで」
「誰が」
「どのくらいの時間」
「どのような方法で」
「どのような勧誘をしたか」
を記録しておいたものを証拠として提出し、行政処分が下される前の告知・聴聞等や、行政処分が下された後の不服申立手続、さらには行政訴訟において、徹底的に争っておくべきです。

なお、匿名性を維持したまま処分が行われることがあるため、競争関係にある他社が、根拠に乏しい通報を監督官庁に対して行う可能性も否定できず、その意味では、消費者保護規制と緊張関係のある営業活動を行う企業は、常に自らの立場の正当性を立証できるよう、証拠の確保や内部統制に意を払わなければなりません。

運営管理コード:CLBP445TO445

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01316_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>消費者法実務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>関係法令遵守の徹底

消費者契約法5条は、
「媒介の委託を受けた第三者」
による行為についても、取消しの対象とすると定めています。

すなわち、企業が営業活動等を他者に事業委託した場合であっても、消費者から契約を取り消されるリスクがあります。

自社の従業員であっても
「強引な勧誘」
を行ってしまうリスクがあるのですから、他社の従業員においては、さらに
「強引な勧誘」
がなされるリスクが高まると考えるべきです。

営業部分について外注する必要がある場合には、この点を十分に理解した上で、外注先との契約において、
「営業担当者に対して、具体的に別冊のマニュアルを用いて、1人あたり3時間の講義を受けさせ、理解度判定テストを実施し、合格者のみに営業を実施させる」
「万一、乙の営業担当者において違法な勧誘行為がなされ、それを理由として発注者である甲が行政処分等を受けた場合には、乙は、違約罰として1件あたり金○万円を、甲に対して直ちに支払う」
などの条項を入れることを検討する必要があります。

コンシューマーセールス(消費者向営業)においては消費者保護の法令が多数存在していますが、現場の営業担当者は、法令を知らず、あるいは知りつつ、自らが安全ないし適法と判断するレベルの営業行為を実施してしまうことがあります。

その結果、消費者から取消しなどの請求を受けるにとどまらず、行政からは営業停止等の行政処分が下されることもあり、その場合に企業が蒙る損害は計り知れません。

営業担当者においては歩合によって給与が決定されることも多く、結果、
「強引な勧誘」
がなされるリスクも高くなります。

企業側においては、違法とされる行為について、営業担当者に対して徹底的な教育を行い、違法行為を抑止することが必要となります。

運営管理コード:CLBP444TO444

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01315_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>消費者法実務(フェーズ2)>経営政策・法務戦略構築フェーズ

1 一般法の大幅な修正

民法では、意思表示の取消しをすることができるのは、詐欺や強迫の場合など、非常に限られています。

ところが、消費者契約法においては、
「断定的判断」(「これを買えば10万円儲かります」との告知も、これにあたるとされています)
が事業者から提供された場合、
「不利益事実の不告知」(別荘の景観の良さを宣伝しつつ、景観が開発によって破壊される予定があることを告知しない等が、これにあたるとされています)があった場合、
「事業者側が、消費者の退去要請に従わなかった結果、消費者が困惑すること」
などの場合には、消費者は契約の申込み又はその承諾を取り消すことができます。

このように、従来は
「やや強引」、「ややお行儀が悪い」
が、必要悪レベルの勧誘として社内的に許していた行為については、消費者から契約を取り消されるリスクがあることになります。

2 消費者団体訴訟制度

企業と消費者との間の紛争は、一般的に、各消費者の蒙る被害額が少額であるため、各消費者が訴訟の提起に消極的とならざるをえず、企業の違法行為について法廷の場で是正される機会が少ないという状況でした。

そこで、消費者契約法(12条以下)だけでなく、特定商取引法(58条の4以下)、景品表示法(10条)が、消費者団体訴訟制度を認めています。

消費者団体訴訟制度とは、内閣総理大臣の認定した一定の団体(適格消費者団体)に消費者全体の利益を守るための差止請求権を付与し、企業の消費者の利益を害する活動に対して、同種かつ多数の消費者の被害の拡大を防ごうとする制度です。

すなわち、企業が消費者を害する営業活動をしても、個々の消費者が個別に事案解決を図ろうにも情報力・交渉力に圧倒的な差があるため、現実的には泣き寝入りするケースがほとんどです。

他方、消費者団体が企業に直接働きかけをしようとしても、消費者団体は当該事件の当事者ではないので、活動に法的限界が生じます(企業としては事件の当事者ではない消費者団体の申入れに取り合う法的義務はありません)。

そこで、消費者の利益を代弁することが客観的に期待でき、組織的にも堅実な基盤を有すると認められる適格消費者団体に、消費者に代わって、不当な活動を行う企業に対して、直接、当該活動を差し止める権限を付与したのがこの制度です。

現在、適格消費者団体は、以下の9団体が認定されています。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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