00965_企業法務ケーススタディ(No.0285):フランチャイズ事業で、消費期限偽装をやらかしてしまったぞ!

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年12月号(11月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」五十七の巻(第57回)「フランチャイズ事業で、消費期限偽装をやらかしてしまったぞ!」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
同社グループ 洋菓子チェーン 甘々(アマアマ)

相手方:
脇甘商事株式会社グループ 洋菓子チェーン 甘々(アマアマ) の加盟店

フランチャイズ事業で、消費期限偽装をやらかしてしまったぞ!:
子会社が展開するフランチャイズにて消費期限偽装が、メディアにすっぱ抜かれました。
社長としては、当社と資本関係があるにしても子会社の自主的な判断によって引き起こされた子会社の出来事にすぎず当社事業とはまったく関係ないことから、子会社の社長にすべての責任を取ってもらい、謝罪会見を開かせ、速やかに子会社社長を含め経営陣を刷新することで、消費者の信頼を回復を目論見ます。
しかし、偽装が発覚して以降、ジー(加盟店)のなかには売上げが激減して潰れたところもあるようで、あるジー(加盟店)が損害賠償を請求してきました。
損害賠償はグループ子会社が具体的に負担するものですが、子会社は当社の連結対象でもあるため、当社への影響も出てきそうです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:フランチャイズ・システムとは
フランチャイズ・システムとは、フランチャイズを展開している本部・フランチャイザー(以下「ザー(本部)」)において、ノウハウや著名ブランドをフランチャイジー(以下「ジー(加盟店)」)に利用させる一方で、その利用料を徴収する等の仕組みをいいます。
ザー(本部)側は、自らの多大な資本を投下することなくブランドを今以上に広げられ、また、雇用や物品の調達といった法的リスクから免れる点にメリットがあります。
一方で、ジー(加盟店)側としても、すでに世に出て一定のプレゼンスを形成しているノウハウやブランドを利用することで事業を成功させる可能性が大幅に高まります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「ザー(本部)」と「ジー(加盟店)」との関係
ザー(本部)とジー(加盟店)との関係は、両者の間に締結されるフランチャイズ契約の内容によって規律されますが、一般に、当該契約は、準委任契約、賃貸借契約や売買契約などの民法上の契約が混合している非典型契約とされており、かつ継続的な契約であるとされています。
ザー(本部)もジー(加盟店)もいずれも自ら事業を行う事業者であり、BtoB取引であることから自由に条項を定めることができると考えられていた時代もありますが、ジー(加盟店)には消費者に近い属性の人間が多数存在していたことから、甘い見込みで事業に参画し、損害を被った事例が多発するようになりました。
このようなことから、裁判例上、ジー(加盟店)に対する勧誘の際に十分な説明が行われていたのか(ビジネスモデルや収益予測等)が厳しく問われるようになり、半ば消費者問題の様相を呈することとなりました。
説明義務等が果たされ、瑕疵なくフランチャイズ契約が成立している場合、ジー(加盟店)は売上等に関する詳細な報告義務や営業秘密を遵守すべき義務、さらには競業避止義務といった重い責任を課される一方で、ザー(本部)が保有するノウハウやブランドを自らの利益のために用いることができる、ということになります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:ブランド価値維持義務
東京地裁平成22年7月14日判決は、「(略)本件フランチャイズ契約は、被告(註:「ザー(本部)」)が原告(註:「ジー(加盟店)」)に対し、商標、サービス・マーク等を使用し、経営ノウハウ及び商品等の継続的な提供を受ける権利を付与するとともに、被告が開発したシステムによる(略)チェーン店の経営を行うことを許諾し、その対価として、原告が被告に対し、ロイヤルティー、加盟料等を支払うことを内容とするものというのであるから、被告は、原告に対し、その使用を許諾した商標、サービス・マーク等のブランド価値を自ら損なうことがないようにすべき信義則上の義務を負うものというべきである」と判示しています。

助言のポイント
1.ザー(本部)は、ラクして“アガリ”をせしめる、なんてオイシイことばかりではない。ザー(本部)には「ブランド価値維持義務」が課される。
2.ザー(本部)の不祥事も、ジー(加盟店)の不祥事も、フランチャイズ事業全体に対する影響が生じうる一大事と心得よう。
3.不祥事が発生したら、即座に火消しに動く。
4.ブランド価値が毀損している状況で事態を放置すると、加盟店から賠償請求の嵐を起こる。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00964_企業法務ケーススタディ(No.0284):訪問しなくても訪問販売!?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年11月号(10月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」五十六の巻(第56回)「訪問しなくても訪問販売!?」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
一般消費者

訪問しなくても訪問販売!?:
英会話を勉強し直そうという人を対象に、アメリカのテレビドラマのDVDを売り出そうとしています。
特定商取引法の規制に触れないよう、個人宅に訪問せずに、人の集まっているところに行って声をかけ当社の事務所へ連れてきて契約を締結、あるいは、レストランを貸し切ってスポーツイベントをやりながらの即売会で、販売することにしました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:訪問販売とは
家を訪問するから
「訪問販売」
というわけではありません。
自社の営業所以外の場所で契約を締結することおよび自社の営業所以外の場所で勧誘した人を営業所に連れてきて契約を締結することを
「訪問販売」
といいます(特定商取引に関する法律(以下「特商法」)2条1項)。
チラシ配布や呼び込み等は、これにあたりません。
「訪問販売」=「営業所以外の場所販売」
なのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:訪問販売に対する規制
訪問販売に該当する取引を行う場合は、消費者を保護する特商法上の、以下の規制を受けることとなります。
1.氏名及び勧誘目的の明示(特商法3条)
2.再勧誘の禁止(特商法3条の2)
3.書面の交付義務(特商法4条、5条)
4.不実告知等の禁止(特商法6条)
5.クーリング・オフ(特商法9条)
特商法によって課される事業者の義務を履行すれば訪問販売を行うことは可能ですが、訪問販売に該当すると気づかず、書面の交付を行わなかったり、クーリング・オフの規定を盛り込まないまま訪問販売に該当する業務を行えば、業務停止命令が下されるおそれもあります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:適用除外
事業者が営業所以外の場所で契約を締結する場合、すべての取引について特商法上の規制が及ぶわけではありません。
営業のためになされた契約や国や地方公共団体によって行われた契約、組合内の契約や企業内での従業員に対する契約等については、特商法上の規制が及ばないとの規定がなされています(特商法26条)。
「営業のために」
とは、事業・職務の用に供するために何かを購入したり、役務の提供を受けたりする場合を指します。
契約の相手方が事業者や法人であることをもって、一律に適用除外とするものではありません。

助言のポイント
1.「訪問販売」≠「訪問して販売する」、「訪問販売」=「営業所以外の場所で販売する」こと。「訪問しなくても訪問販売」。
2.訪問販売を行うには、か弱い消費者のために。手取り足取り確認させ、助ける「書面の交付」「クーリング・オフ」が必要。
3.「相手が消費者でなければ大丈夫!」ってわけでもない。特商法は、“事業者の着ぐるみを着た「か弱い消費者」”までも守る。
4.特商法は正義の味方! これに違反するとそのペナルティは重大! 散々悪者扱いされた挙げ句、コンシューマー向けビジネスは潰れる。

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00963_企業法務ケーススタディ(No.0283):社長権限で従業員の減給!?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年10月号(9月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」五十五の巻(第55回)「社長権限で従業員の減給!?」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
脇甘商事株式会社 従業員

社長権限で従業員の減給!?:
社長は従業員の減給を考えていますが、法務部長は
「社長の独断では従業員の賃金の削減はできません」
と苦言を呈しています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:個別合意による変更
労使間の合意があれば、賃金減額のような従業員に不利となる労働条件の変更も可能です。
しかし、従業員が使用者の提示した労働条件に同意さえすれば、どのような労働条件への変更も可能というわけではなく、
「労働保護法規や就業規則、労働協約に反しない」
必要があります。
最低賃金法で保障以下の賃金は労使者間の合意があっても認められませんし、労働契約も、意思表示の瑕疵・不存在がある場合は取消し無効の問題が生じます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:就業規則の変更
常時、10人以上の従業員を雇用している企業の場合、労働基準法89条による就業規則策定の義務がありますので、就業規則を定めることで、 就業時間や賃金、退職に関する事項等を定めた就業規則の制定し、その中で賃金の額の計算方法や支給条件などについて細かく定めることで、煩雑さを解消することができます。
減給に関する規定が就業規則に制定されている場合、当該規定に則って従業員の賃金を減給することはできますが、その規定がなく、就業規則に新たに賃金減額の規定を設ける場合、使用者のみの判断で就業規則を新しくすることはできません。
就業規則が拘束力を持つためには、就業規則を従業員に周知させていなければなりませんし、
「賃金は勤務成績によって降給することがある」
と規定するだけでは足りず、能力別の資格等級基準などを設けるなどして、どのような人事評価によれば、どのくらい
「降格」
になるのかを明確にしなければならないとされています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:周知性と合理性
就業規則の変更による労働条件の不利益変更が一切認められないというわけではありません。変更後の就業規則につき、
1.周知性
2.合理性
の双方が認められる場合には、従業員の合意がなくとも就業規則の不利益変更が認められることとなります。
従業員の賃金を減額する就業規則の変更が認められない場合、使用者は従業員に対し、減額後の賃金と減額前の賃金との差額を支払わねばならない上、遅延損害金といった利息の請求もされかねません。
また、適切な手続きを経ることなく使用者が減給し、既定の賃金を支払わないとすれば、
「給与全額払いの原則(労働基準法24条)」
に違反して罰金刑を食らう場合もありますので、無茶な減給は厳禁です。

助言のポイント
1.「社長命令で減給する」では、減給の合意があったとはいえない。
2.「就業規則を制定した」では安心できない。 減給の規定もしっかり埋め込もう。
3.「就業規則の変更」 というわけにもいかない。従業員にも知らせること。「減給も仕方ない」を誘い出そう。
4.下手に減給すれば、罰金刑を食らう。注意すること。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00962_企業法務ケーススタディ(No.0282):従業員の著作権はすべてわが社のもの!

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年9月号(8月24日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」五十四の巻(第54回)「従業員の著作権はすべてわが社のもの!」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
顧問弁理士 白瑠(ぱくる)

相手方:
脇甘商事株式会社グループ 脇甘出版 エンジニアリング部門 元アルバイト 茶狩(ちゃっかり)

従業員の著作権はすべてわが社のもの!:
このたび刊行するIT技術書は、アルバイトとして在籍していたエンジニアが勉強会にて配布したレジュメもとにつくりました。
当時、勉強会を当社主催ということで許可してやり、所属を当社の技術スタッフ、残業代まで払ってやったにもかかわらず、相手は、パクったら訴える、といってきました。
弁理士に相談すると、
「特許は厳しいが、著作は、指揮命令関係だけあれば従業員の成果はパクり放題」といいます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:職務発明と職務著作(法人著作)
企業の従業員が業務に関する発明をした場合、当該職務発明にかかる特許権は原則従業員のものとなります。
これに対し、企業の従業員が著作物を作成した場合には、その著作物の著作権は企業のものとなります。
違いが生じるのは、特許法と著作権法の規定に違いがあるからです。
企業が従業員の特許権を企業に帰属させようとするのであれば、企業が従業員に対し相当な対価を支払う必要があります。
これに対し、企業の従業員によって職務上作成された著作物については、その作成者が特定されない場合も多く、特定できたとしても、それを公表した責任は企業が取るものだからです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:アルバイトでも職務著作?
従業員の作成した著作物については企業が著作者となります(著作権法15条1項)が、これには著作物を作成した者が
「法人等の業務に従事する者」
であることが必要です。
非正規雇用者であったとしても、会社の指揮監督下において勤務し、勤務内容を基に作成し、発表に際し会社の会議室を利用し、残業代を得ていたのであれば、
「法人等の業務に従事する者」
といえそうです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:法人名義で公表
「法人等の業務に従事する者」
が作成した著作物の著作権が、無条件にすべて法人に帰属するというワケではありません。
従業員が職務上作成した著作物の著作権が企業に帰属するためには、
「その法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」
でなければならないのです。
したがって、設例では、元アルバイト従業員が作成したレジュメの表紙の記載が
「講師 茶狩(所属:脇甘商事エンジニア部門)」
となっているのであれば、その著作権は、当社のものではなく、元アルバイト従業員のもの、という裁判所の判断になりそうですね。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:差止めの場合と損害賠償の場合
著作者が著作権侵害で訴訟を提起した場合、侵害者に請求するものは
「著作権侵害行為の差止め」
および
「著作権侵害行為による損害の賠償」
と考えられます。
損害賠償請求は、民法709条に基づくものであり、著作権を侵害することにつき故意過失の場合に、初めて認められるものですが、著作権法112条1項に基づく差止請求は、著作権を侵害していることにつき、故意過失が要求されません。
たとえ損害賠償請求までは認められないとしても、差止請求は認められてしまう可能性が高いとなると、当該書籍を発行することはできず、印刷するために要したコストは補填されることなく、大きな損が出てしまうというわけです。

助言のポイント
1.特許権と異なり、企業の従業員が職務上作成した著作物の著作権は企業のものとなる。「オレのものはオレのもの、オマエのものもオレのもの」。世間は厳しい。
2.正社員も派遣社員もアルバイトもお手伝いも関係ない。会社の指揮の下に動く奴はみ~んな 「法人等の業務に従事する者」。やっぱり、会社は強い。
3.しかし、うっかり著作権をナメていると突然落とし穴があるぞ。法人の著作名義で公表するのがミソ。
4.著作権侵害に基づく差止請求と損害賠償請求は違う。差止めは「侵害している」と知っていても知らなくても関係ない。

著者:弁護士 畑中鐵丸
著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00961_企業法務ケーススタディ(No.0281):少しのつもりがまんまと全額もっていかれた・・・

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年8月号(7月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」五十三の巻(第53回)「少しのつもりがまんまと全額もっていかれた・・・」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
亀鎚(ガメツイ)木工

少しのつもりがまんまと全額もっていかれた・・・:
当社は、相手先に8年前の代金未支払分5000万を請求されました。
法務部長は、
「8年も前のことですから、とっくに時効は完成してます」
と返答しましたが、その報告を受けた社長は、
「50万くらい払ってやったらいいじゃないか。
相手にも感謝してもらえるし、どうせ税金でもっていかれてしまうんだから。
50万円支払ったって、4950万円も得しているじゃないか」
と、いいます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:時効の種類
「時効」
は、民法上
「消滅時効」
といい、
「債権は、10年間行使しないときは、消滅する」(167条1項)
と規定されています。
したがって、相手方から10年間請求されなければ、当該債権は消滅し、支払う必要がなくなる、というわけです。
時効が完成する期間は、すべて一律10年というわけではなく、労働者の退職金は5年(労働基準法第115条後段)、交通事故の慰謝料は加害者を知ったときから3年(民法724条)、退職金以外の労働者の賃金や災害補償は2年(労働基準法115条前段)、ホテルや旅館の宿泊料・キャバレーや料理店などのツケは1年(民法174条第4号)など、民法をはじめ、それぞれの法律で規定されています。
商人同士の契約の場合、商行為によって生じた債権は、5年間で時効が成立します(商法522条 )。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:時間の経過=時効の完成ではない
時間が経過すれば、自然と債務が消滅するわけではありません。
「時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判することはできない」(民法145条)
とされており、
「援用(時効の完成を主張)」
しなければ、つまり、
「時効が完成したのでお金を払うつもりはありません」
と相手に伝えなければ、時効は完成しません。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:時効のリセット
時効がリセットされてしまうことがあります。
その場合は、リセットされたときからさらに法律に定められた一定の期間が経過しなければ、時効は完成しません。
リセットには、次の3つがあります。
1.請求
2.差押
3.承認
裁判所では、当事者同士で借用証書を新しく書き換えた場合や、借りていたお金を少しでも返した場合、もしくは
「必ず払いますから」
「あと1週間だけ返済を待ってください」
と約束した場合が、
「承認」
にあたるとされています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:払っちゃだめな訳じゃない
契約時に時効の存在をナシにすることはできません(「時効の利益はあらかじめこれを放棄することができない」(民法146条))。
しかし、時効が完成したとしても、あくまでも自らの債務を弁済したい!という気持ちがあれば、お金を払うことはできます。
自分の債務を支払っちゃだめという訳ではないのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点5:時効成立後の承認
たとえ債務者が自己の債務に時効が成立していたことを知らなかったとしても、一度、債務の存在を認めた以上は、時効はリセットされてしまいます(最判昭和41年4月20日)。

助言のポイント
1.時効には様々な種類がある。時効期間には注意が必要。
2.時効にもリセットボタンがある。
3.時効が完成したら自分の債務を払っちゃだめという訳ではない。正直者が損をする。
4.時効が成立した後でも、リセットされることがある。時効の成立=ゲームオーバーではない。ロスタイムまで気を抜かない。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00960_企業法務ケーススタディ(No.0280):金払わない奴はどこにでもいいから訴えろ!?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年7月号(6月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」五十二の巻(第52回)「金払わない奴はどこにでもいいから訴えろ!?」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
韓国 京城商事
韓国 ハムニダ銀行 福岡支店

金払わない奴はどこにでもいいから訴えろ!?:
社長は、ある韓国企業の預金債権を譲り受けました。
しかし、韓国の銀行の福岡支店は、当社に対して預金債権の払戻しに応じません。
日本で裁判を起こすことができるのでしょうか?
裁判を起こせたとして、その裁判によって当社は韓国の銀行から払戻しを受けられるのでしょうか?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:日本で韓国企業を訴える?!
「法人その他の社団又は財団に対する訴えについて、その主たる事務所又は営業所が日本国内にあるとき…」
は、日本での裁判が可能と規定されており(民事訴訟法3条の2第3項)、 主たる営業所が日本国内にない場合は、日本での裁判はできないようにも思われます。
しかし、規定には多くの例外が認められ、たとえ外国企業であっても、その事務所が日本にあり、その日本の事務所が行っている業務に関するものであれば、日本の裁判所で裁判することができるのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:日本の裁判所=日本法というわけではない
日本で裁判するからといって、必ず日本の法律に従って裁判する、というわけではありません。
本来、契約にどの国の法律を適用するかは、契約当事者間で自由に決められます。
日本企業同士の契約でも、準拠法を韓国法にすることは可能ですし、海上保険の分野では、日本企業同士の契約であっても、イングランド法が準拠法となっていることも多くあります。
当事者間で契約の準拠法を定めていない場合は、裁判で適用される法律を決める法律があります(「法の適用に関する通則法」以下「通則法」) 。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:預金債権の譲り受け
債権譲渡契約において国際的な問題が発生した場合、
「譲渡に係る債権について適用すべき法」
を適用すると規定されています(通則法23条)。
「譲渡に係る債権」
というのは、設例でいえば、京城商事のハムニダ銀行に対する預金債権です。
京城商事がハムニダ銀行に対し預金する際に韓国法に従うことに合意していれば、
「譲渡に係る債権について適用すべき法」
は韓国法ということになります。
しかし、当社が、京城商事と債権譲渡契約を締結するにあたり、
「問題が発生したら日本法を適用するようにしましょう」
としていれば、こんなことにはならなかったでしょう。

助言のポイント
1.日本の裁判所は「どんな事件でもウェルカム」ではないから注意が必要。 管轄が違うと“門前払い”を食らわされる。
2.日本で裁判できるからといって、当然に日本法が適用されるわけじゃない。
3.外国企業との契約においては、「ケンカの際は自国のリングで勝負だ」ときちんと前もって決めておくこと。裁判に関して、アウェーでの勝負はやる前からコスト面で不利が大きく、敗北と同じ。

※運営管理者専用※

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00959_企業法務ケーススタディ(No.0279):労働審判には即座に対応を!

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年6月号(5月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」五十一の巻(第51回)「労働審判には即座に対応を!」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
顧問弁護士 千代凸 亡信(ちよとつ もうしん)

相手方:
脇甘商事株式会社 元社員

労働審判には即座に対応を!:
リストラした社員が解雇は無効だと労働審判を申し立ててきたので、顧問弁護士に相談すると、
「労働審判は、基本的には訴訟と変わらない。
予定が合わないから、第1回期日を変えてもらおう。
慌てたら負け。
第1回期日は相手の出方をみるためにあるようなものだから、ちゃんとした反論は2回目以降にすれば十分」
とのことでした。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:「労働審判」って何?
平成18年に労働審判法が施行され、労働審判手続が新しくスタートしました。
「労働審判」
とは、時間がかかる等の訴訟のデメリットを解消し、労使間紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的とした制度で、裁判官と労働問題の専門家(労働審判員)が事件を審理し、調停による解決の見込みがある場合には、これを試み、解決に至らない場合には、事案の実情に即した解決案を定める手続です。
当事者は審判の内容に不満があれば異議を申し立てることができ、訴訟手続との連携も図られています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「通常訴訟=鈍行列車、労働審判=ジェット機」というスピード感
労働審判手続で最も特徴的なのは、非常にスピーディーな点です。
期日は原則3回以内しか設けられず(法15条2項)、実際の運用では、事実関係の争いはほとんど第1回期日で決着がついてしまうほどです。
申立てから終局までの審理期間が2~3か月であることからも、訴訟とはまったく異なります。
第1回期日の冒頭で争点整理、裁判官・審判員による心証形成が行われてしまうため、答弁書の段階で、相手方から出されることが予測される反論も見据えた上で、相当充実した主張を行わなければなりません。
しかも、申立てがされた日から40日以内に第1回期日が指定され(規則13条)、原則として第1回期日の変更を認められませんし、第1回期日の指定から答弁書の提出まで、2~3週間程度で準備を進めなければなりません。
裁判官と審判員の心証形成は、フリートーキングで出席者に質問をする形で行われ、その中で和解が図られたり、調停案が示されたりします。
調停案を拒否しても、調停案とほぼ同内容の審判が出されることになります。
よほどの事情がない限り、訴訟でも
「審判」
の判断が尊重されます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:使用者からの申立ての活用
申立てをする権限は労働者に限られているわけではなく、使用者でもできます。
団体交渉を中断し、労働審判を申し立てれば、労使双方の主張にズレがあっても、手続の中で、主張が不明確な部分等は適宜裁判官・審判員が質問により補充しますし、心証が開示されることによって、落とし所が早く見つかる可能性が高いです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:使用者側の心構え
労働審判においては、第1回期日から手を抜くことなく十分な準備をし、裁判官・審判員には自己に有利な心証を持ってもらえるよう慎重に対応すべきですし、そのためには、申立後即座に対応できるよう、日頃から顧問弁護士との調整等を図っておくべきです。

助言のポイント
1.労働審判手続はとにかくスピーディー。訴訟と同じ感覚で対応していては間に合わない。
2.ソフトな手続だからといって気を緩めないこと。一挙手一投足が心証形成に響く。
3.調停案も無下に断らずに真摯に対応を。
4.労働審判は使用者にとってデメリットばかりではない。団体交渉の早期解決にも利用できる。

※運営管理者専用※

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00958_企業法務ケーススタディ(No.0278):その合併、待った!

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年5月号(4月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」五十の巻(第50回)「その合併、待った!」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
同社 米国子会社 WakiAma(ワキアマ)エレクトロニクス

相手方:
詰甘(ツメアマ)電機株式会社 米国子会社Tテクノロジー

その合併、待った!:
当社の子会社が、相手会社の子会社と合併することになりました。
合併するのは米国の会社同士ですから、日本法は関係ありませんので、すべて現地の者に任せています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:企業結合がもたらす競争制限効果
ある市場において、一定以上のシェアを占める企業同士が、合併や株式移転、事業の譲受等(以下「企業結合」)を行って企業規模や市場シェアを大きくすることは、市場全体の活性化、企業の競争力アップというメリットが生じますが、その分、競争相手が減る、あるいは消滅するという結果を生じさせることになり、結果、消費者は、その企業の商品を購入せざるを得ないこととなります。
このように、特定の企業がある程度自由に価格等を左右することができてしまう状態を、独禁法では
「競争が実質的に制限された状態」
といいます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:独禁法による企業結合規制
わが国においては、独占状態をもたらすような企業結合を禁止し、一定の
「国内売上高」
を有する企業同士が企業結合を行う場合は、公正取引委員会(以下「公取委」)に対し、30日前までに企業結合の概要を届け出なければなりません。
これに違反した場合、公取委から合併無効の訴えを提起され(独禁法18条)、合併の効力自体が否定されてしまう場合もあります。
企業結合はタイミングが重要ですし、当事者が上場企業の場合、せっかくの合併が無効にでもなれば、株価に悪影響が生じ、最悪の場合
「経営陣は経営責任を追及されて総退陣」
ということになりかねません。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:事前相談の廃止
平成23年に、公取委は、審査の期間短縮と透明化を狙って、
「届出がされた後の法定の審査」
を一本化することで、事前相談を廃止しました。
独禁法の企業結合規制に関しては、公取委が
「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」
等のガイドライン、さらにウェブサイトで各種事例等も公表しており、企業は、あらかじめ要件に該当するか調査可能な仕組みが整備されています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:グローバル化の中で
独禁法上の届出手続は、企業結合を行う当事者の一方又は双方が外国企業であっても、当事者の親会社等も含めた企業集団全体で日本国内における売上高が一定規模を超えていれば、適用対象となります(独禁法15条)。
このような事前届出手続の制度は、世界中の相当な数の国・地域で取り入れられ、同じような制度が定められています。
したがって、日本企業同士の企業結合であっても、海外における事前届出を検討しなければならない場合もあり、一定規模以上の企業が絡む企業結合においては、各国における売上高や資産規模等を洗い出し、各国の事前届出制度の要件に当たるかどうかの確認をしなければならないことになります。
そのうえ、事前届出の要否を判断するだけでもかなりの手間がかかるうえ、所要期間が各国でまちまちで、すべての期間が満了しなければ実行できませんから、一番時間のかかる国に合わせてスケジューリングする必要があります。

助言のポイント
1.企業結合の効果はメリットだけではない。競争制限効果という社会全体にとってのリスクもある。
2.企業結合する場合、公取委に事前に届け出なければならない場合があることも忘れない。
3.当事者が外国の会社だからといって安心するな、事前届出の適用対象になる場合がある。
4.複数の国で事前届出をする場合、余裕をもってスケジューリングをすること。

※運営管理者専用※

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00957_企業法務ケーススタディ(No.0277):製造していないのに「製造業者」?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年3月号(2月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」四十九の巻(第49回)「製造していないのに『製造業者』?」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
米国 健康食品メーカー ストマックス

相手方:
一般消費者

製造していないのに「製造業者」?:
当社は、ダイエット効果があるとされる人気健康食品を、倒産しかかっているアメリカの会社から、大量に安く買い、日本で販売しようとしています。
PL法というのは製造物責任のことですから、メーカーが責任を負うものであり、販売するだけで製造にはタッチしていない当社には一切関係ないはずです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:特別法としての製造物責任法
ある製品の欠陥が原因となって損害が発生した場合、その損害の賠償を請求するためには、民法の不法行為(民法709条以下)に基づいて、被害者が加害者である製造業者に故意・過失があること等を立証しなければならないのが原則です(過失責任)。
平成7年に製造物責任法(PL法)が施行され、故意・過失の有無に関係なく、被害者が製品に欠陥があることを証明すれば、製造業者に損害について責任を負わせることとしました。
対象となる
「製造物」
とは、製造または加工された動産であり、未加工の農産物や目に見えないサービス、土地・建物は対象外です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:メーカー以外は関係ないか?
消費者保護の観点から、製造物責任は決してメーカーだけの問題ではありません。
同じ販売業者であっても、国内製品の販売であれば製造物責任法は適用されませんが、輸入品の場合は適用されます。
次のいずれかに該当する者を
「製造業者等」
として、製造物責任法上の責任主体と規定されます。
1.「当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者」(1号)
2.「自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者」(2号)
3.「当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者」(3号)

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:「欠陥」とは
製造物責任法が無過失責任だといっても、
「欠陥」
がなければ、責任を負うことはありません。
「欠陥」
とは、
「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」(法2条2項)
とされ、次の3種類があります。
1.設計上の欠陥
2.製造上の欠陥
3.指示・警告上の欠陥
消費者の目に付きやすい態様で指示・警告内容を明確に理解できる形で表示しなければ、
「欠陥あり」
とされてしまいます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:輸入業者としての対策
輸入業者としては、海外製造者との間で事前に契約上、責任の所在を明確にしておくべきです。
「本件商品の欠陥により・・・(略)その全額を売主が負担する」
というような特約を結ぶことが推奨されます。
また、特約があっても海外製造者にすぐに100%責任を負わせるのは実際上困難ですから、被害者に対する損害賠償への早期解決策としてPL保険を付けることも検討すべきでしょう。

助言のポイント
1.製造物責任法上の「製造業者」には、輸入業者も含まれる。
2.設計や製造工程上だけでなく、指示・警告文での事故発生回避措置を取らなければ責任を問われることがある。
3.PL適用外だといっても安心するな。PLは立証責任を緩和しているだけで「無罪放免」というわけではない。PL適用外でも一般不法行為責任を負う場合がある。
4.リスクを想定し、契約上の予防措置やPL保険等で対策を怠らないようにすること。

※運営管理者専用※

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00956_企業法務ケーススタディ(No.0276):適格消費者団体

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年2月号(1月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」四十八の巻(第48回)「適格消費者団体」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
特定非営利活動法人 市民のハートをくすぐるネットワーク

適格消費者団体:
当社営業マンが行った契約解除(クーリングオフ)の妨害行為について、内閣総理大臣認定適格消費者団体を名乗る団体から、当社宛に通知文が届きました。
当社の社長は
「政府の名前を騙ったりして、儲かっているわが社に難癖をつけてくる連中が多くて困る。
法人でもない市民団体に訴訟なぞ起こせるわけがなかろう。
弁護士でもないものが一般市民から相談を受けて通知文を出すなど、弁護士法違反も甚だしい。
逆に、営業妨害で刑事告訴する」
と怒っています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:民事訴訟法における当事者能力・当事者適格
民事訴訟では、
「人」

「原告」
となって訴えを起こす必要があり、相手方となる
「被告」
は、自分の権利の実現を、実際かつ直接的に
「阻害している人(法人)」
を対象としなければなりません。
民事訴訟の当事者となれる
「当事者能力」
と、
「当事者適格」
を有することは、民事訴訟を適法に進めるための条件の1つです。
当事者能力や当事者適格を有さない者が
「原告」
となったり、当事者適格を有さない者を
「被告」
として訴訟を提起した場合、当該訴訟は不適法なものとして
「却下」
されるのが原則です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:当事者能力・当事者適格の例外
「人」
「法人」でなくても、
「代表者(管理者)」
の規定があり、その者によってきちんと管理されている社団や財団は、民事訴訟法上、例外的に当事者能力が認められています。
わかりやすいものとして、大学のサークルや町内会があります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:適格消費者団体制度
適格消費者団体制度とは、一般市民と企業との間の契約トラブル等により、1つひとつの被害額は少額でも、被害者が多数に上る悪質な営業などを行っている業者に対して、一定の要件を満たした消費者団体が被害者に代わって訴訟を起こすことができる制度をいいます。
「適格消費者団体」
として、認められるためには厳しい条件があります(消費者契約法13条3項) 。
1.特定非営利活動法人又は民法34条に規定する法人であること
2.不特定多数の消費者の利益擁護のための活動を主たる目的とし、その活動を相当期間継続して適正に行っていること
3.体制及び業務規程が適切に整備されていること
4.理事会の構成および決定方法が適正であること
5.消費生活の専門家および法律の専門家がともに確保されていること
6.経理的基礎を有すること
そして、このような条件を具備し、内閣府総理大臣から適格消費者団体として認定を受けた団体は、
1.消費者契約法に違反する営業行為に対して、書面をもってそのような営業行為をやめるよう請求する権利
3.当該書面でも是正されない場合に、民事訴訟の例外として、消費者に代わって、消費者契約法に違反する営業行為をやめることを求めて訴えを提起する権利
を付与されます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:適格消費者団体が訴訟を行った実例
平成20年、貸金に対して利息以外の違約金を定めていた消費者金融業者に対し、ある適格消費者団体が訴訟を提起し、京都地方裁判所は、
「被告は、被告が消費者と金銭消費貸借契約を締結するにあたって、貸付金の最終弁済期日前に貸付金を全額返済する場合に、消費者が返済する残元金に対し割合的に算出される違約金を負担する内容の契約条項を含む契約の締結を停止せよ」
といった概要の判決を下しています(平成21年4月23日)。

助言のポイント
1.聞いたこともない団体からの通知だからといって放置は禁物。
2.適格消費者団体制度の意味、その権限についてしっかり理解しよう。
3.いきなり訴訟を提起されることはないが、違反の是正を求める通知が届いたら、まずは、事実関係の徹底した社内調査を行うこと。
4.争う姿勢を示すことも大切だが、適格消費者団体との真摯な話合いを求めよう。

※運営管理者専用※

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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