00802_企業法務ケーススタディ(No.0228):降格・降給!これだけある準備すべきこと

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース35:降格・降給!これだけある準備すべきことをご覧ください。

相談者プロフィール:
アラタ商事 代表取締役社長 安良田 新太(あらた あらた、51歳)

相談概要:
降格され給料を減額された社員が、弁護士を立て内容証明を送ってきました。
人事部長に対応させていましたが、相手弁護士は、評価基準なしの基本給減額の撤回をしない限り裁判を起こす、とせっついてきます。
以上の詳細は、ケース35:降格・降給!これだけある準備すべきこと【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:降格・降給とは 
就業規則に
「昇格」
「昇給」
の規程があっても、
「降格」
「降給」
の規程がない企業があるのは、日本の伝統的な雇用慣行である年功序列制と無縁ではありません。
以上の詳細は、ケース35:降格・降給!これだけある準備すべきこと【降格・降給とは】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:降格・降給を行う上での前提環境
就業規則上、降格や降給の規程が盛り込まれていない場合は、就業規則の変更で対応するほかありません。
ただし、昇給あれど降給なし、という既定状態を一変させるべき、高度の必要性を会社が説明できる状況を整え、職場の労働組合等ときちんと協議・意見聴取を前置する必要があります。
そして、就業規則の定めというハード面が整備されていることを前提としてから、次に、個別の労働者についての降格・降給という措置を実施しうるか、という問題になります。
注意点は、評価基準の策定と周知により、労働者の予測可能性を担保しているかどうか、です。
以上の詳細は、ケース35:降格・降給!これだけある準備すべきこと【降格・降給を行う上での前提環境】その1ケース35:降格・降給!これだけある準備すべきこと【降格・降給を行う上での前提環境】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 降格・降給措置に関するトラブル例
企業側の一方的な賃金減額(新賃金体系導入後の調整手当支給停止)について、
「法令の定めや新たな労働協約の締結又は就業規則の改訂(変更)によらない限り、就業規則等の定めに反して」
実施することはできない、と判断された裁判例(東京地裁平成21年7月13日、T汽船事件判決)があります。
また、就業規則ではなく給与システムを改定して、役職・営業手当等の諸手当を減額をした企業は、減額を違法無効と判断されました(東京高裁平成8年12月11日、A証券事件判決)。
さらに、育児休業から復職した従業員に担当業務変更を行い、これに紐(ひも)づく形で降格・降給した企業については、担当業務の変更自体は有効としたものの、降給は人事権の濫用として違法・無効とし、さらに、降給と連動させて行った降格も無効とされた裁判例(東京高裁平成23年12月27日、Kデジタルエンタテインメント事件)もあります。
そして、降格と役職手当の減額と基本給の減額を行った会社の措置が争われた大阪地裁平成25年2月1日判決(C合同会社事件)では、就業規則の整備とこの運用が適正な手順で行われていることが評価され、降格と役職手当減額措置は有効とされたものの、職務グレードに対応する基本給減額の具体的金額・幅・適用基準が労働者サイドに周知されていなかったため、基本給減額は許されない、という判断がなされました。
以上の詳細は、ケース35:降格・降給!これだけある準備すべきこと【降格・降給措置に関するトラブル例】その1ケース35:降格・降給!これだけある準備すべきこと【降格・降給措置に関するトラブル例】その2をご覧ください。

モデル助言:
まずは、就業規則の見直し、評価基準の策定と運用です。
相手方の弁護士のいっていることももっともですし、乗らない手はないでしょう。
「訴訟も辞さない覚悟だが、今後の勤務姿勢を改善していただくことを期待し、今回だけは特例として基本給の減額は見送る」
として、早急に評価基準の策定・周知をしましょう。
それでも改善しなければ、すべての前提と環境を準備万端に整えた上で、訴訟も視野に入れつつ、基本給減額措置を検討したらいいでしょう。
以上の詳細は、ケース35:降格・降給!これだけある準備すべきこと【今回の経営者・安良田社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00801_有事(存立危機事態)対処プロジェクトを遂行する上でのマインド・セット(心構え)とフィロソフィー(対処哲学)10:参考にしてはいけない考え方や対処

1 基本的な考え方
学校の先生やサラリーマンや専業主婦の親の教えてくれた常識で推し量る。
迷ったら、常識という
「偏見のコレクション」
で、憶測し、思い込み、たくましく想像する。

2 間違った状況認識
偏見等によって認知がゆがんでしまい、自分のおかれた状況が理解認識できない。
不愉快な現実を直視しない。
特に、失敗の原因が自身にある場合、自己保存のため、自分にウソをついて、あるいは事実を意図的に誤解し、自己の尊厳を守り、現実を受けいれない。
改善不能なことや、達成が不可能なことを身勝手に妄想したり、認知的不協和のため現実的実務的な相場観を拒否し、テレビやドラマで見知ったファンタジーを前提にした身勝手な結末が劇的に達成されることを妄想する。

3 目的があいまい、不合理、意味不明
達成不可能で、非現実的な目的であったり、損得勘定ではなく、主観や感情(正義や嫉妬やコンプレックス解消や報復感情)を前提に、現実性がなく、経済合理性のない目的を定める。
完成予想図、成功時の未来の姿が具体的にイメージできておらず、曖昧。
成功者や経験者の話を聞かない。
聞いても、自分に都合よく解釈する。

4 課題がよくわかっていない。課題がないと信じている
不安要素や都合の悪い事象や障害は、無視する。
不愉快な課題や障害は見て見ぬふりをする。
ネガティブで不愉快な未来を予測せず、目をつぶる。
細部の破綻から目を背け、異常値を見えないふりして、正常性バイアス、楽観バイアス、性善説や科学的合理性というバイアスを使って、全体を正常かつ健全に統合することに執念をもやし、自分たちの陳腐な常識に適合するように無理やり自己満足してしまう。
仮説に反する有害な現実は、異常値や誤差やバグとして、無視し、忘れる。

5 命令がデタラメで適当。あるいは具体的かつ現実的な観点で何を達成したいのか、理解不能
抽象的で、意味不明で、指示内容が一義的でない命令や、難解や高尚に書かれているが、何を期待し、何を義務付けられているか、さっぱりわからない正しくない命令が出されている。

6 命令が正しく実行されていない
準備が不十分、段取りが粗い。
チームで行う場合において、インセンティブ設計(残念賞や参加賞や努力賞)がなく、士気が低下し、厭戦気分が蔓延。
結果達成が可能性にとどまるにもかかわらず、ゲームロジックがなく、ルーティンとして適当に遂行される雰囲気になっている。
達成状況監視システムや体制もなく、丸投げされており、ブラックボックスがたくさんあり、何かやっている風ではあるが、何をやっているかわからない。
楽観バイアスに侵されているため、命令が達成できない場合の予備案(Bプラン)が欠如している。

7 命令の達成状況は確認しない
失敗や修正は考えないし、性善説に立つので、まさか、部下や命令を受けた者がサボったり、手を抜いたり、不注意で漏れぬけやらかす、とは想像すらしない。
線表による達成状況の監視とペナルティーのシビアな運用など、
「部下を信頼していないと思われる。やる気をそぐ」
という意味不明な理由で排除。
丸投げし、ブラックボックスがあちこちにでき、何がどうなっているかすらわからず、ただただ、時間とコストとエネルギーを消耗していくが、その経過すら不明。

8 試行錯誤を想定しない。一度やってダメなら、ジタバタしたり、あがいたりせず、潔く、あっさりと辞めたり、休んだりする
失敗や想定外が生じたら、それで思考停止に陥り、行動を停止し、神風や都合のいい天変地異や外的事象によって状況が改善することを夢想する。
というより、悲惨な結果から目を背け、なるべく忘れるようにする。
あるいは、プロジェクトが終了すると、報酬がもらえなくなったり、お払い箱になるので、独断で、コミュニケーションなく、勝手に目的を書き換え、別のことをはじめ、何か仕事をしている、という外形を作って、状況を引き延ばす。

9 結末を総括しない
目的全部達成ならいいが、少しでも達成できなかったり、失敗・諦め・撤退という悲惨な結末となったら、とりあえず、総括せず、ずるずる続ける。
その結果、泥沼に引きずり込まれても、
「そのうち天佑がある」
という意味不明で身勝手な妄想で、事態打開を神に祈りつつ、損害を拡大する。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00800_有事(存立危機事態)対処プロジェクトを遂行する上でのマインド・セット(心構え)とフィロソフィー(対処哲学)9:正しく結末を総括する(見極めを行う)

期限が来たら、あるいは見極めすべきタイミングとなったら、目的全部達成、一部達成、修正された目的達成、失敗・諦め・撤退という結末を総括すべきです。

撤退見極めをせず、ずるずる泥沼に引きずり込まれないようにすべきです。

どんなプロジェクトもそうですが、有事(存立危機事態)対処プロジェクトの場合も同様です。

ただ、あえて、引き伸ばし、延命を意図し、その間に、風向きが変わったり、救援者(ホワイトナイト)が登場したり、相手が疲弊して和解を申出たり、といったことも考えられます。

このように、
「とにかく、どんなに無様で、かっこ悪くても、ずるずる引き伸ばし、延命を画策する」
ということが目的であれば、別です。

実際のケースとして、倒産状態に至ったが、あえて破産も再生もせず、リスケや債務免除をお願いし続け、債権者もうんざりして何も行ってこなくなり、そのうち、時効がきて、債務が綺麗さっぱり消えて、見事に再生した、という冗談のような危機対策を実践した企業もあります。

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00799_有事(存立危機事態)対処プロジェクトを遂行する上でのマインド・セット(心構え)とフィロソフィー(対処哲学)8:正しい試行錯誤(ゲーム・チェンジ)をする

失敗や想定外が生じたら、マネージャーは、修正力を働かせ、修正提案を命令発令者に意見具申することが求められます。

意見具申はおろか、報連相すらなく、独断で勝手なことをするのは事態を悪化させるだけです。

そして、修正範囲は、命令の修正、課題の修正(再発見・詳細化・具体化)、目標の修正(再定義)等、あらゆる範囲に及びます。

有事(存立危機事態)対処プロジェクトは、誰も正解を知らない、誰も正しい対処法を知らない、誰も経験していない、正解や定石があるかすらわからない、未知未解明の世界ですから、想定外に直面し、命令、課題、目標を修正したり、再発見したり、再定義したり、ということは数多く起こります。

このような試行錯誤やゲーム・チェンジですが、これにも様々な手法やアプローチがあります。

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00798_有事(存立危機事態)対処プロジェクトを遂行する上でのマインド・セット(心構え)とフィロソフィー(対処哲学)7:受命したチーム(組織)の命令(指示)達成状況を確認する

何事も失敗や修正はつきものです。

人は怠惰の誘惑から逃れられません。

線表を策定し、線表に基づく達成状況の監視とペナルティーのシビアな運用等は必須です。

丸投げしたり、ブラックボックスを作ったままの遂行体制は、必ず失敗に繋がります。

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00797_有事(存立危機事態)対処プロジェクトを遂行する上でのマインド・セット(心構え)とフィロソフィー(対処哲学)6:受命したチーム(組織)が命令(指示)を正しく実行するよう環境を整える

命令の実行において大切なのは、結果指向・目的指向で、卑劣で非常識なものも含めて、合理的に準備を行ない、段取りを組むことです。

あらゆる想定外を想定し、悲観的に考え、命令が達成できない場合の予備案(Bプラン)をもっておくべきです。

お神輿をかつぐときにサボる人間が必ずでるように、集団で何かを行うとき、士気を高く維持することは困難であり、そんなことが自発的・自生的に起こり得ません。

チームで命令を遂行する場合、インセンティブ設計(残念賞・参加賞・努力賞も含めたもの)や、士気亢進システム(ゲームロジック)やペナルティが必要な場合もあります。

すなわち、アメとムチといた、受命したチーム(組織)が命令(指示)を正しく実行するような功利面で士気が維持・向上するような環境作りも必要です。

特に、外部の専門家や支援者を招聘する際、この種の条件設計は、プロジェクトの成否に直結するほど重要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00796_有事(存立危機事態)対処プロジェクトを遂行する上でのマインド・セット(心構え)とフィロソフィー(対処哲学)5:正しくチーム(組織)を動かすため、正しい命令(指示)を企画し、具体的に文書化し、しっかり伝わるように伝達する

命令(指示)は、受ける方より、発する方が大変です。

間違った命令を発すると、大きなロスやダメージが発生し、命令を行った者が罰せられます。

また、デリバリ(発令)も大事です。

命令はあくまで到達主義が基準原理になります。

受け手が理解してナンボです。

抽象的で、意味不明で、指示内容が一義的でない命令や、受け手が理解できない難解さや高尚さをもったものは、正しくない命令といえます。

企業法務においては、顧問弁護士という一種の
「外注業者」
に業務をアウトソースすることがままありますが、
「曖昧で、適当で、『あと、よろしくやっといて』的なヌルい発注」
は、時間とコストの無駄で、大概、ミスを誘発します。

なお、正しい命令(発注)とは、下記基準(SMART基準)を充足するようなものです。
◆要素1:“S”pecific(具体的に):誰が読んでもわかる、明確で具体的な表現や言葉で書き表す
◆要素2:“M”easurable(測定可能な):目標の達成度合いが本人にも上司にも判断できるよう、その内容を定量化して表す
◆要素3:“A”chievable(達成可能な):希望や願望ではなく、その目標が達成可能な現実的内容かどうかを確認する
◆要素4:“R”elated(経営課題をクリアしうる現実的な目標に関連した):設定した目標が職務記述書に基づくものであるかどうか。と同時に自分が属する部署の目標、さらには会社の目標に関連する内容になっているかどうかを確認する
◆要素5:“T”ime-bound(時間的な制約は必須):いつまでに目標を達成するか、その期限を設定する

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00795_有事(存立危機事態)対処プロジェクトを遂行する上でのマインド・セット(心構え)とフィロソフィー(対処哲学)4:正しく課題を見つける

正しい状況認識や相場観理解の下、正しい目標が設定されたら、
現状(スタート、AS IS)と目標(ゴール、TO BE)の間に横たわるすべての課題や障害を発見・抽出・特定してください。

発見・抽出・特定される課題や障害は、多ければ多いほど、具体的であれば具体的であるほど、
「ゴールに近いものから合理的に逆算される」
という意味で精緻であればあるほど、いいです。

そのために、1の不安要素から10のネガティブな未来を予測し、イメージできる能力をもちましょう。

プロジェクトマネジメントにおける知性とは、課題発見能力と同義です。

「細部の破綻に目をつぶり、異常値を見えないふりして、性善説や科学的合理性というバイアスを使って、全体を正常かつ健全に統合し、仮説に反する有害な現実は、異常値や誤差やバグとして、無視して、見て見ぬ振りをする」
というメンタリティや思考習性は危険です。

上記は、研究データを改ざんして研究成果を強引にでっち上げるような方の思考習性ですが、そのような
「猫の粗相隠し」
のようなことをしても、現実は改善されませんし、時間と機会を喪失し、事態は悪化するだけです。

「これは撤退ではない、転進だ」
「我が国は敗戦したわけではない、終戦だ」
「アメリカの軍隊が我が物顔でのさばっているが、あれは占領軍ではない、進駐軍だ」
といった、現実逃避をしても始まりません。

しっかりと、現実をみつめ、課題と障害をイメージしましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00794_有事(存立危機事態)対処プロジェクトを遂行する上でのマインド・セット(心構え)とフィロソフィー(対処哲学)3:現実的な状況認識・状況解釈の上、現実的な目標を設定する

有事(存立危機事態)対処を行う上で、最初に行うのは、正しい状況認知と状況解釈です。

自分のおかれた状況と現実と改善可能な範囲や相場観を理解すべきです。

おそらく、この認知と理解は、腹立たしく、不愉快なものだと思いますが、そういう感情を克服して、ドライかつクールかつ冷静に状況と相場を把握しましょう。

そして、正しい状況と正しい相場観を前提に、正しい目標を設定しましょう。

すなわち、達成可能で現実的で損得勘定において意味ある目的の設定です。

その際、努力が実って達成され実現した未来の姿を具体的に現実的にイメージします。

具体的であればあるほどいいです。

身勝手で、状況と相場観をわきまえない、妄想は無益であり、有害です。

たまに、目的を設定せず、闇雲も何かをおっぱじめて仕事をした気にになる方がいます。

「努力を継続すれば、いつかいいことがある」
というのは、小学校低学年までです。

真面目に中学受験を意識するような小学生は、小学校4年生くらいから、
「目的を定めて、目的から逆算して、合理的で現実的な努力を効率的に投入する」
ということを行わなうようになります。

闇雲に努力するのではなく、
真面目に中学受験を意識している小学4年生程度の知性をもって、
正しく自己の状況を認識し、
正しく目標を定め、
目的から逆算した努力を合理的かつ効率的に行う
ようにすべきです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00793_有事(存立危機事態)対処プロジェクトを遂行する上でのマインド・セット(心構え)とフィロソフィー(対処哲学)2:学校で教わったこと、親が教えてくれた常識や幻想はすべて忘れ去る

学校で教わったことと、社会の現実は、まったく違うものです。

特に、有事(存立危機事態)という非常識な状況に対向するための非常識な対処行動設計は、常識はまったく通用しません。

学校では、
「努力は尊い。結果がすべてではない。努力はいつか報われる。失敗をおそれるな。次がある」
と教わります。

ところが、有事(存立危機事態)という非常識な状況 においては、努力したところで、努力の方向性が間違っていたり、狂っていれば、状況はどんどん悪化します。

しかも、誰も指摘してくれませんし、修正もしてくれません。

不祥事等のしくじりをしたわけですから、対処を誤ったり、ミスを重ねると、世間は、バッシングをしたり、笑い者にしたり、足を引っ張ったりします。

また、関係先は、遠巻きにみたり、離れたり、債権回収に動きます。

学校の教えと違い、社会においては、
「無駄な努力、無意味なガンバリ」
というのは山程あります。

ビジネスの世界では、
「千里の道はジェット機で(制作/著作:井藤公量弁護士)」
行くものであり、目的から逆算した最小限の犠牲で十分です。

方向性を誤って空回りしていても、無意味な努力は誰も評価しませんし、怒られるだけです。

そのためには、ゴールを設定し、ゴールから逆算して、段取りを決め、効率的な手段を構築し遂行するべきですが、有事(存立危機事態)という非常識な状況においては、正解やゴールがまったく不明で、描けないので、呆然とするほかない、というところに特徴があります。

結局、正解ではなく、最善解、次善の結果、現実解を設定し、そのような
「あまり歓迎できない、喜べない、不愉快な未来予想図」
を全員が目指すゴールとして設定することを合意し決定しなければなりません。

「頑張ったらなんとかなる」
「努力によって未来は切り開ける」
「一生懸命やったら必ず危機は脱することができる」
「空けない夜はない」
といった、学校教育で習うようなファンタジーをとっとと捨て去り、
「がんばって、がんばって、がんばっても、この程度」
「無事にもとにもどるのは無理。せいぜい、大事を小事にするくらい。ただ、それすらも信じられないくらいの努力が必要」
「神には見捨てられた。そこは変わらない。せめて、悪魔に骨までしゃぶり尽くされないように、なんとか被害を食い止めよう」
といった、現実的な認識と考えを持つべきです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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