00622_企業法務ケーススタディ(No.0213):環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社なんでも完成団 代表取締役 一坂 浩二(いちざか こうじ、75歳)

相談概要:
相談者は、5年前、自治体から熱烈なオファーを受け新工場を作りました。
工場の労働者は地元から雇用し、月に一度は現場への視察をかかさず、市長への表敬訪問をするなど、地元自治体とは極めて良好な関係を作っている、と自負しています。
先月、定例視察にいくと、工場前で、
「環境破壊をやめろ」
と集団が騒いでいましたが、工場長はまったく意に介していません。
そのようななか、市議会の議員有志と称する団体から相談者宛てに告発文が届きました。
工場長は、無視するように、の一点張りです。
以上の詳細は、ケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 環境規制の認知と理解はハードルが高い
環境法は、憲法や民法や刑法のように、環境規制を総括した全般的な法体系が存在するわけではありません。
環境基本法に加え、廃棄物処理法、悪臭防止法、大気汚染防止法、土壌汚染対策防止法・・・、条例なども加えると多数の法が存在し、これらをひっくるめて
「環境法」
と便宜的に呼称しています。
このようなことから、多くの企業で、
「環境に関する法規制に違反すると、それなりにヤヴァイことになる」
という意識はあるものの、
「詳細な決まりごとがよくわからないため、課題が発見・特定できず、制御や管理がおざなりになり、結果、知らないうちに法令違反をしてしまい、強制捜査を受けたり、逮捕されたり、書類送検されたり」
と問題が多発するのです。
以上の詳細は、ケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!【環境規制の認知と理解はハードルが高い】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 行政からの助け船があれば、すぐに乗り込め
行政サイドとしては、
「企業が、法を知り、理解し、守れるよう、指導すること」
が行動原理の第一であることから、いきなり処分を科すわけではありません。
まずは、法令違反を指摘し、改善指導をします。
それでも法が守られない場合、過酷な処分を科す方向に突き進まざるを得なくなります。
行政当局から、
「早めに改善しなさい。さもないと大変なことになりますよ」
という改善指導(行政指導)があれば、それは一種の
「助け舟」
で、さっさと乗り込むのが賢明です。
以上の詳細は、ケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!【行政からの助け船があれば、すぐに乗り込め】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 現場の声を信じるな
人間には、危険な事象を過小評価して、正常なものをゆがめで認知するというバイアス(正常性バイアス)があり、このため、往々にして危険を過小評価し、回避する機会を逸することがあります。
また、想定外の変化の原因となるべき情報を得ても、楽観的に認識する心の作用もあります(楽観バイアス)。
工場長の立場を考えれば、仮に、法令違反の事態に直面した場合、自分の地位を脅かすことになりかねませんし、そのような悪夢よりも、
「こんなのたいしたことない」
と信じたいキモチが、自身の利害によって影響を受けることは想定され、最後の最後まで、事態を自分の手で制御し、上には見つからないように、あがいてあがいてあがきまくり、傷口を大きくする、ということもあり得ます。
以上の詳細は、ケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!【現場の声を信じるな】をご覧ください。

モデル助言:
異常事態には、漫然と現場を信じることなく、トップダウンで、直接、管理して乗り切るべきですね。
まず、工場長よりも格上の役員を派遣し、いったい、何が起きているか、特に、行政や反対派からどういうメッセージや要望がこれまで届いていたかを正確に把握してください。
また、環境規制を所管する担当部署を特定し、そこに直接話をしにいきましょう。
そのうえで、法令違反の事実ないし疑念があれば、きちんと調べ、直すべきは直し、謝るべきは謝り、
「当局の声に耳を傾け、自主的に改善する意欲と能力と組織体制」
が整った
「まともな企業」
である、とアピールすべきです。
違反事実が存在する疑いが濃厚な場合、早急に、第三者委員会を立ち上げ、外部から強制的な調査や過酷な処分が下される前に、自主的に事実を調べ、これに基づき、関係者のクビを差し出す、ということも考えておくべきでしょう。
以上の詳細は、ケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!【今回の経営者・一坂社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00621_企業法務ケーススタディ(No.0212):あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社サニー・ジャパン 代表取締役 柴 珍一(しば ちんいち、77歳)

相談概要:
相談者は、問題のあった従業員を解雇しました。
社労士の話を参考に、予告手当として1カ月分、さらに、手切れ金がわりに少しイロをつけた退職金を支払いました。
この件は終わったと思っていたところ、裁判所から労働審判申立書がきました。
労働訴訟の経験から、相談者は申立書を1ヶ月ほど放置してから裁判所に連絡したところ、その応対は思いのほか厳しかったようです。
労働審判というのは、労働裁判とは違うものなのでしょうか。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 労働審判とは
労働審判は、司法改革の一貫として、2004年から導入が始まった制度で、
「労働審判官(裁判官)と労働審判員(民間人)とで構成される労働審判委員会が、労働者と使用者との間の民事紛争に関する解決案をあっせんして、当該紛争の解決を図る手続き」
と説明されています。
手続きが行われる場所は裁判所で、裁判官も
「審判官」
という肩書で参加します。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【労働審判とは】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: “裁判所”街道の渋滞回避策が労働審判制度
規制緩和社会の到来と同時に
「訴訟社会」
の訪れを見越した裁判所は、民事訴訟法改正やそのほかのさまざまな訴訟運営効率化施策を打つと同時に、新たなシステムを導入しました。
その1つが
「労働審判制度」
です。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【“裁判所”街道の渋滞回避策が労働審判制度】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 労働審判とフツーの裁判の違い
裁判官以外に、
「民間の有識者」
も混在させて裁判官主導の独裁色を中和させつつ、他方で、
「民間の有識者」
に暴走させることなく
「審判官」
という立場で参加する裁判官が裏でしっかりと手綱を握って、
「後から本格的裁判で争うことも可能な、裁判モドキ。ちょいと雑で、スピーディーで、独裁チック」
みたいな風体で導入されたのが、
「労働審判」
です。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【労働審判とフツーの裁判の違い】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4: げに恐ろしき労働審判
労働審判手続きを経て労働審判が言い渡された後、その審判内容に不服であれば、本格的な労働裁判(労働訴訟)に移行可能となっています。
しかし、労働審判は、
「ダラダラ裁判」
を否定するために設計され導入されたものですから、
「時間的効率性を徹底して追求する」
という正義が根源的なものとして存在します。
それ故、まず、期日変更はできませんし、話を聞いてくれるのも最初の期日で終わり、という有様(制度上3回の期日で終了することになりますが、よほど複雑な事件でない限り1回ポッキリの期日で終了する運用、のようです)。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【げに恐ろしき労働審判】をご覧ください。

モデル助言:
期日変更は不可、第1回期日で、こちらのストーリープレゼンがすべて終了する、と考えておいた方がいいでしょう。
今から、すべての事実関係を整理し、証拠をそろえ、当日の事情聴取リハーサルをして、短い時間で、要領よく、こちらのスタンス、従業員の行動や態度の不当性と、こちらの措置の正当性が自然に理解されるようなエピソードをプレゼンしなければなりません。
労働審判では、かなりの確率で、強硬な和解勧告が行われます。
今回のケースで最重要の防衛ラインは、復職を認めさせず、労働関係を終わらせること。
復職されようものなら、社長のメンツは丸つぶれで、しかも、定年まで厄介者が居座る可能性もあります。
和解金をこれ以上払うのは悔しいかもしれませんが、職場から総スカン食らっている、常識の異なる人間を定年まで雇用し続ける耐え難さに比べれば、合理的ともいえます。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【今回の経営者・柴社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00620_企業法務ケーススタディ(No.0211):ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース18:ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社クイック・リアクト 代表取締役 手川 徹郎(てがわ てつろう、52歳)

相談概要:
美容院を経営する経営者は、サービスラインナップ広げるべく、まつ毛のエクステンション・パーマ・シャンプー・リンス、アイラインタトゥーなどの新しいサービスを考えています。
ところが、兄である専務は心配しています。
「美容師法に違反して業務停止とか食らわないだろうか。
入れ墨は、医療行為になりそう。
美容師免許をもっていないスタッフに仕事をさせてトラブルにならないだろうか」
相談者は、刑事裁判で争うことになったとしても実行する、と、腹をくくっています。
以上の詳細は、ケース18:ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: ノーアクションレターはお役所からの「お墨付き」
ノーアクションレターとは、役所からの
「お墨付き」
といった趣のもので、企業が検討している事業活動がはらむ許認可などの取得の必要性や行政処分・罰則などの適用可能性について、監督行政機関に事前に見解を求める手続です。
実施のガイドラインは、各省庁ごとに個別に定められています。
詳細は、電子政府の総合窓口を参照ください。
以上の詳細は、ケース18:ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!【ノーアクションレターはお役所からの「お墨付き」】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: ノーアクションレターは「規制ニッチ」での新規事業推進を後押し
先端的な事業を行う企業の多くが、この制度を活用して、
「規制ニッチ」
のビジネス分野における安全を確認し、積極的に新しい事業を起こしています。
各省庁のノーアクションレターについては公表されており、非常に参考になりますが、使う際には注意が必要です。
まず、時間と手間とコストがかかります。
また、すべての質問に明確な回答が得られるとは限りません。
最後に、回答は一般に公開されますので、競合他社には秘密にしておきたいような企業機密を前提にした照会をすると、いつの間にか、ダダ漏れしていて、パクられた、という悲惨なことにもなりかねません。
以上の詳細は、ケース18:ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!【ノーアクションレターは「規制ニッチ」での新規事業推進を後押し】をご覧ください。

モデル助言:
すでに公開されているノーアクションレターを参考に、また、明らかにリスクの高いものは自己判断で控えるような形で、無理せず、やってみられたらどうでしょうか。
しかし、タトゥーは、警察沙汰です。
入れ墨を行う行為は、たとえお客さんの同意があっても違法性阻却されず、犯罪成立するというのが伝統的な刑法解釈です。
以上の詳細は、ケース18:ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!【今回の経営者・手川社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00619_企業法務ケーススタディ(No.0210):不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社ファーストクラス 代表取締役 末狡 要逸(ますずる よういつ、67歳)

相談概要:
相談者の会社が性能データの偽装をおこなったことが暴露され、釈明の記者会見をしなければならない状況となりました。
記者会見乗り切りスキルを学べる本やマニュアル等は、ないのでしょうか。
以上の詳細は、ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: ありふれたことを滑稽なほどまわりくどく表現する霞が関言葉
経済学者の竹内靖雄氏が『日本人の行動文法』(東洋経済新報社)の中で、
「霞が関言葉」

「ありふれたことを滑稽なほどまわりくどく、もったいぶって表現する言葉」
と定義しています。

(出典:『中央公論』1995年5月号、イアン・アーシー著「『霞が関ことば』入門講座(前篇)」93ページ を元に筆者が作成)
(出典:『中央公論』1995年5月号、イアン・アーシー著「『霞が関ことば』入門講座(前篇)」93ページ を元に筆者が作成)

以上の詳細は、ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【ありふれたことを滑稽なほどまわりくどく表現する霞が関言葉】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 「無謬性」を本分とする日本一優秀な官僚の根源的なスキル
官僚や組織においては、ミスは絶対許されない一方でミスは避けられません。
そのためには、極力、抽象的で難解で、辞書を引かないと理解できないような言葉を常に使って
「目くらまし」
をし、さらに、どんなに明白なミスであっても特定の担当者や担当部署のチョンボとして謝罪をせず、不可避な外的事象によるものと説明することになります。
「霞が関言葉」
は、一朝一夕にできあがったものではありません。
「某国から発射されたミサイルを迎撃して撃ち落とす作戦命令」

「某国から飛来した“飛翔体”に対する破壊措置命令」
と言い換えたりするなど、長年の歴史的な伝統に基づき形成されてきた
「匠の技」
が見事に伝承されています。
以上の詳細は、ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【「無謬性」を本分とする日本一優秀な官僚の根源的なスキル】その1ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【「無謬性」を本分とする日本一優秀な官僚の根源的なスキル】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 官僚答弁や政府談話に学ぶ危機管理対処スキル
危機管理モデルの巧拙という視点で評価しますと、東日本大震災の直後、東京電力福島第1原子力発電所での爆発事故で、東北や関東地方に放射性物質がまき散らされたという悲惨な事件を国民に伝える記者会見などでみられた、
「福島第1原発で何らかの“爆発的事象”の発生が確認されました」
「直ちに人体に影響を及ぼすものではありません」
「微量です。心配要りません。落ち着いてください。念のためです」
「原子炉の堅牢性は確認されている、とのことです」
といった、霞が関文学の粋を集めた数々の名文句(迷文句)にもさることながら、情報を小出しにし、サンドバッグ役に適した真面目で誠実そうなキャラのスポークスマンを配置し、病気や疲労という名目でスポークスマンを入れ替えて、特定個人が注目されないような配慮をしていました。
また、状況説明においてもできる限り難解で高尚な専門用語を多用し、他律的で外罰的な印象操作を行いつつ、
「事態対処に向けて努力をしている」
という姿勢を前面に出して、それ以上突っ込んで批判されにくい雰囲気を演出するなど、芸術的とも言える姑息さが発揮されていました。
以上の詳細は、ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【官僚答弁や政府談話に学ぶ危機管理対処スキル】をご覧ください。

モデル助言:
この種のデータ偽装はあってはならないことですし、最近特に、世間の目が厳しくなっていますので、今後は、このようないい加減なことをしないよう、しっかりと経営管理をしてください。
とはいえ、目先の危機はなんとしてでも乗り切らなければなりません。
非常手段として、霞が関言葉や官僚答弁を参考に、バランスを取りながらなんとか窮地を脱する方法を考えましょう。
改善や解決の努力は、ひたむきに、謙虚に、継続する姿勢を示すことです。
他方で、時間的冗長性の確保が最優先です。
以上の詳細は、ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【今回の経営者・末狡社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00618_企業法務ケーススタディ(No.0209):どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース16:どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社スーパー・チアフル 代表取締役 安村 安雄(やすむら やすお、34歳)

相談概要:
相談者は、2年近くかかった裁判の末、一審は勝訴しましたが、相手の会社が控訴し、高裁で事件続行となりました。
そして裁判期日、裁判官は、
「一審で勝っているのは分かるが、証拠も十分でないし、我々としても不可解な点があると考えている。
解決金2000万円払って水に流すのはどうか、1億円の請求から考えればメリットがあるでしょ。
強くお勧めします」
と、和解を勧告してきました。
相談者は、 一蹴しようと、息巻いています。
以上の詳細は、ケース16:どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 日本の民事裁判はほぼ二審制、一般民事事件は高裁が最終審
実態に即した言い方をすれば、
「日本の司法制度は、一般的な民事・商事のトラブルを処理する裁判に関する限り、今や二審制となっており、最高裁はまず出てこない」
ということになり、 その意味で高裁の権威は飛躍的に高まりました。
また、事件の6、7割程度は第1回期日で即日終結し、新たな証人尋問や論点整理は行わない、という運用が定着しつつあります。
以上の詳細は、ケース16:どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!【日本の民事裁判はほぼ二審制、一般民事事件は高裁が最終審】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 和解勧告を蹴飛ばすと報復的な敗訴判決を食らう場合があるぞ!
高裁で第1回即日結審とならず、その後も審理する、ということは、
「高裁は一審の判決に懐疑的であり、ひっくり返す気持ちマンマン」
という状況が見てとれます。
また、高裁の裁判官の出してきたメッセージも重要です。
和解には、単に
「和解を検討せよ」
と、抽象的で漠とした感じで和解検討を指示するときと、
「これこれこの条件での和解を検討せよ」
と、具体的な条件を明示した和解検討を指示するときの2つがあります。
前者は拒否しても問題ありませんが、後者は明快な日本語に“翻訳”すると、
「和解をしろ」
という命令です。
以上の詳細は、ケース16:どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!【和解勧告を蹴飛ばすと報復的な敗訴判決を食らう場合があるぞ!】をご覧ください。

モデル助言:
高裁でシンネリコンネリ事件を審理したということ自体、地裁の判断をひっくり返す危険性が感じられます。
しかも、今回、和解を担当した裁判官は、2000万円、という具体的条件を明示して、検討を指示しました。
言葉は穏やかですが、これは、
「2000万円で和解しろ」
という事実上の命令です。
その命令を、空気を読まずに蹴り飛ばしたら、逆転敗訴し、遅延損害金まで食らいかねません。
以上の詳細は、ケース16:どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!【今回の経営者・安村安雄社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00617_企業法務ケーススタディ(No.0208):自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社ダンジリ電機 代表取締役 恐原 一博(きょうはら かずひろ、48歳)

相談概要:
資本金300万円の会社オーナーである相談者は、売れ残った商品を納入業者に大量返品したうえに仕入れの代金を大幅にカットしたところ、公正取引委員会から、独禁法に違反する疑いあるとのことで調査に回答するようにと連絡がきました。
無視していると、今度は、呼び出しがきました。
それも無視していたら、今度は、課徴金を払うようにと連絡がきましたが、よくわからないからと、とりあえず放置しています。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【事例紹介編】その1ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【事例紹介編】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 自由かつ公正な競争を促すための基本的ルール
独禁法(「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」の略称)は、フェアな競争を阻害する行為である
1)私的独占
2)不当な取引制限(カルテル)
3)不公正な取引方法等
を違法行為として禁止しています。
「下請法」(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)
は独禁法の子分格の法律で、大きなくくりでいうと、
「反競争法」
というグループの法律として整理され、大企業が中小零細企業をいじめる際に適用されるものです。
下請法という特別法(子分格の法律)の適用がなければ、本則・大元・親分格の法律である独禁法の問題となり、
「優越的地位の濫用」
といわれる規制の適否が問題となります。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【自由かつ公正な競争を促すための基本的ルール】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 「フェアな競争を阻害する行為」が禁止される理由
一企業が市場を独占し、あるいは、複数の企業が手を取り合い競争を回避するなどの行為をすることで、企業間競争がなくなり、ひいては、消費者が割高な値段で商品を購入せざるを得ないといった不利益を被ることから、禁止されている、と説明されます。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【「フェアな競争を阻害する行為」が禁止される理由】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 独禁法で禁止されている違法行為とは
1)私的独占(法2条5項、3条前段)
2)不当な取引制限(2条6項 3条後段)
3)不公正な取引方法(法2条9項、19条等)
不公正取引については、
「具体的にどのような行為がNGか」
を具体的かつ明確にされていることに加え、公正取引委員会が作成した
「ガイドライン」
が作られています。
企業は、ガイドラインを参照して自社の行為が独禁法違反にならないかどうかを判断していくことになります。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【独禁法で禁止されている違法行為とは】その1ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【独禁法で禁止されている違法行為とは】その2をご覧ください

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4: 優越的地位の濫用とは
「返品」・「減額行為」
は、
「3)不公正な取引」
の一類型である
「優越的地位の濫用」(法第2条9項5号)
と呼ばれる行為で、
(1)自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して
(2)正常な商慣習に照らして不当に
(3)濫用行為をすることを指します。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【優越的地位の濫用とは】をご覧ください

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点5: 独禁法違反を理由とした制裁
企業の行為が独禁法に違反した場合には、
1)排除措置命令
2)課徴金納付命令
が下され、さらに、
3)社名公表
され、公共工事やお役所の出入り業者等に関しては、
「指名停止処分」
を食らい、憂き目を見るリスクが生じます。
トイザらス事件(平成27年6月4日審決)では、
「取引の相手方にとって通常は何ら合理性のないことであるから」
という価値判断が中核となって、
(1) 大規模小売業者がした返品・減額行為はいずれも、濫用行為である
(2) したがって、この濫用行為は優越的地位を利用したものである
(3) このような独禁法違反行為は許されない
ことから、裁判所は、課徴金約2億円の支払いを命じています。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【独禁法違反を理由とした制裁】その1ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【独禁法違反を理由とした制裁】その2 をご覧ください 。

モデル助言:
企業としては、ガイドライン等を参照しつつ現場で用いることのできる
「マニュアル」
を整備し、それにしたがって個々の取引を精査し、問題点や改善点が見つかった場合には、ただちに社内で共有して是正していく努力が必要です。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【今回の経営者・恐原(きょうはら)社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00616_企業法務ケーススタディ(No.0207):取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社ススキノ探偵事務所 代表取締役社長 大泉 汁(おおいずみ じゅう、42歳)

相談概要:
相談者は、取締役を解任しました。
すると、元取締役は
「一方的にクビにしたんだから、カネを払え」
「残りの任期がまだある、その分の月額報酬を耳をそろえて支払え」
という内容証明を会社宛に出してきました。
相談者としては、創業者である相談者本人とその他の古参役員で100%株式はおさえていること、司法書士に相談したうえで臨時株主総会で解任したのだから手続き的には問題ない、 そもそも取締役は従業員と違い労働基準法で守られているわけでもないのだから金銭要求は無視する、と考えています。
以上の詳細は、ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【事例紹介編】その1ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【事例紹介編】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 取締役と会社との関係
会社法は、資本多数決の原則を採用しています。
会社の基本構造を左右できる大株主らにおいては、
「会社は株主のもの」
ということができ、株主総会において役員を大幅にすげ替えることは可能です。
これは、会社と取締役の関係が民法上の
「委任」
という法律関係によって定められているからといえます。
取締役は、会社から、特定の業務の遂行を委ねられており、その際、善良なる管理者の注意義務をもって業務を行うように、とされています(善管注意義務ないし忠実義務といわれるもので、会社法355条と民法644条に定められています)。
「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる」(民法651条1項)
とされていますから、取締役は、原則としていつでも解任され得るといえ、その地位は不安定といえます(会社法339条1項も同旨)。
以上の詳細は、ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【取締役と会社との関係】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 取締役に身分保障などというものがあるのか?
会社法は、取締役を株主総会の決議によっていつでも解任することができることを原則(会社法339条1項)としながらも、同2項において、
「前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる」
として、損害賠償請求という形で一定程度の身分保障を認めました。
「解任によって生じた損害」
というのは、残存任期分の報酬、という形で整理されることになります。
以上の詳細は、ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【取締役に身分保障などというものがあるのか?】その1ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【取締役に身分保障などというものがあるのか?】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 解任についての「正当な理由」
「正当な理由」
は、条文上は具体的には記載されておりませんので、裁判例等の具体的な事例によって相場観を把握していく他ありません。
最高裁判決昭和57年1月21日では、
「その取締役に経営を行わしめることが障害になる客観的な状況」
があってはじめて
「正当な理由」
あり、という判断が行われています。
したがって、正当な理由の存否が問題となっているような局面においては、病気等のよほど客観的な事情でもない限りは、裁判所において
「正当な理由なし」
と判断される危険性があるということを十分に認識した上で、交渉ないし訴訟対応をしていく必要があるというわけです。
以上の詳細は、ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【解任についての「正当な理由」】をご覧ください。

モデル助言:
「従業員とは違うんだから、解任し放題だし、なんの要求にも応じる必要ない!」
などと突っぱねるわけにはいきません。
解任を基礎づける相応の理由がある可能性がある、ということを前提として、これを十分に説明しつつ、慎重に対応していく他ありません。
具体的には、解任には
「正当な理由」
があった、ということを適時・適切に反論していくことになります。
対象となっている取締役が、取締役であり続けるとすれば、
「会社経営にどのような形で害悪をもたらすのか」
ということを客観的な事情とともに摘示していかねばなりません。
仮に裁判になったとしても残存任期分の報酬請求は認容される可能性が高いということを前提としますと、裁判外交渉の中で相手方から合理的な要求が出てくるようなら、和解に応じることも十分に選択肢としてはあり得るところです。
このように法律の構造を把握し、また、裁判例等における相場観を知っておくことで、無駄に裁判にまで流れていって、弁護士費用の負担も含め大負けするリスクを回避することができます。
以上の詳細は、ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【今回の経営者・大泉社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00615_企業法務ケーススタディ(No.0206):採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由をご覧ください。

相談者プロフィール:
ファイヤー・ソリューションズ株式会社 代表取締役社長 鬼田 厚史(おにた あつし、57歳)

相談概要:
相談者の会社では、中途採用した社員を持て余していました。
就業規則には、
「労働能力が劣り、向上の見込みがない」
場合には、普通解雇ができる、とあったので、相談者は、
「まさにあてはまるから、解雇に問題はない」
と、1カ月分の給料を手当てして、問題社員の解雇を決意しました。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【事例紹介編】その1ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【事例紹介編】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 「解雇権濫用法理」と労働契約法16条
労働契約法16条は、
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用(らんよう)したものとして、無効とする」
と明文で規定しています。
これは
「解雇の権利は、形式上・字面上、企業側に認められてはいるものの、そう簡単に使うことはまかりならん。
仮に、イージーに解雇の権利を振り回したら、濫用した、との理由で、一切その効力を認めてやらんからな」
という法理です。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【「解雇権濫用法理」と労働契約法16条】 をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 「オマエなんて今すぐクビ!」と言えるのはドラマの世界の中だけ
労働契約法16条、条文の基礎となった最高裁判決(高知放送事件、最高裁昭和52年1月31日判決)では、次のような事情についてすら、解雇が無効とされました。
ラジオ放送のアナウンサーが、
1)宿直勤務で寝過ごし、午前6時からの10分間のニュース番組を放送することができなかった。
2)その2週間後、再度寝過ごし、午前6時からの10分間のニュース番組を、5分間放送できなかった。
3)2回目の寝過ごしの際、上司から求められた事故報告書に、事実と異なる内容を記載した。
法律上の解雇理由があったとしても、労働基準監督署から解雇予告除外のための事前認定をもらわない限り、解雇は1カ月先にするか、1カ月分の給与(予告手当)を支払わないと、手続き上、
「即時解雇」(今すぐクビ)
をすることはできません。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【「オマエなんて今すぐクビ!」と言えるのはドラマの世界の中だけ】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 確実に解雇できるのは本人が有罪判決を受けたときくらい!?
日本の法令環境において解雇が認められるのは、殺人や傷害や強盗や窃盗や横領背任などの犯罪行為や、それに準じるような非違行為を従業員がやってしまった場合です。
しかし、
「無罪の推定」
という近代社会のルールがある以上、
「逮捕された」
「起訴された」
程度では、解雇は認められません。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【確実に解雇できるのは本人が有罪判決を受けたときくらい!?】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4: 会社の解雇権は有名無実化している
逮捕や起訴のような状況であってもなお、解雇は得手勝手にできるわけではありません。
「とりあえず、判決出るまで休職にすべき」
という法理が浮上するからです。
それほどに、労働者はシビれるくらい手厚く保護されており、半面、会社の解雇権は有名無実化しているのです。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【会社の解雇権は有名無実化している】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点5: 「著しく労働能力が劣り、向上の見込みがない」ことの立証が必要
東京地裁平成11年10月15日決定(会社側敗訴の裁判事例)では、
「平均的な水準」
に達していなかった従業員について、就業規則に規定されていた
「労働能力が劣り、向上の見込みがない」
にはあたらず、本件解雇は無効であるとの判断がなされました。
要するに、裁判所は、
1)「クビにしたい従業員の能力が平均以下」というだけではダメ
2)他の従業員と比べると成績が低い、という相対評価ではなく、絶対評価で「著しく労働能力が劣る」必要があること
3)「向上の見込みがない」にあたるためには、体系的な教育、指導を実施したのになお、向上しない、ということが必要であること(かつ、そのような教育・指導をした証拠があること)
を求めているのです。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【「著しく労働能力が劣り、向上の見込みがない」ことの立証が必要】その1ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【「著しく労働能力が劣り、向上の見込みがない」ことの立証が必要】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点6: 裁判に至る解雇トラブルにおいて、会社がやらかしたミス
上記の裁判例では、具体的に証拠をもって裁判所に説明できなかったことが、会社敗訴の原因の1つとなっています。
「過去数年間にわたる、従業員の傍若無人ぶりや、従業員に対する教育等」
について、会社が文書化して証拠としていなかった、というミスが、裁判での負けを導いたといえるでしょう。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【裁判に至る解雇トラブルにおいて、会社がやらかしたミス】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点7: 解雇不自由の原則(“解雇不可能”の原則)
東京高裁平成25年3月21日判決(会社側勝訴の裁判事例)では、適切な証拠が会社から提出された結果、普通解雇を認めた判決が下されています。
しかし、会社が勝訴するまでに費やした時間、労力、コストを考えると、
「企業経営として現実的に考える限り、解雇は、やっぱり“事実上”不可能」
というほかないと思います。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【解雇不自由の原則(“解雇不可能”の原則)】をご覧ください。

モデル助言:
辞めさせたい従業員と縁を切るには、相手に退職を納得してもらい、辞めていってもらうのがもっとも正しい方法です。
さらに言うと、忙しいからといって、能力や適性を考えず、だれでもかれでも採用する姿勢自体、考え直したほうがいいかもしれませんね。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【今回の経営者・鬼田(おにた)社長への処方箋】その1ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【今回の経営者・鬼田(おにた)社長への処方箋】その2をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00614_企業法務ケーススタディ(No.0205):ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!?

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!?をご覧ください。

相談者プロフィール:
河内(かわち)食品株式会社 取締役 仁柿 隆(にがき たかし、44歳)

相談概要:
会社で取り扱う冷凍食品に、日本の食品衛生法では未承認の添加物が混入していることがわかりましたが、取締役会で役員たちは楽観的な意見を出すばかりです。
「製造終了後すでに半年以上経ってるから、回収なんてできないぞ!」
「この添加物は中国だけでなくアメリカでも普通に使われているし、WHO(世界保健機関)の基準値を下回る濃度で使われていたんだから、健康被害の心配なんてナッシングだ!」
「1000万個以上出荷されてんのに、一切、クレームがないぞ!」
「ヘンに公表してみろ、マスコミやネットで叩かれまくるぞ! 今度こそ会社がつぶれるぞ!?」
「公表するとしても、世間の目が集中するような大事件とか大イベントがあるときにシレっと出すのが、会社の利益というモンだろう!」
「未承認添加物の混入、一旦、『聞かなかったこと』にしておこう」
「『自ら積極的には公表しない方針』の採用」
「D&O保険(Directors and officers保険;会社役員賠償責任保険)に入っているから、取締役の責任が問題になったとしても大丈夫!」
今年の4月から取締役に抜てきされたばかりの相談者は、発言できず、様子見をしています。
以上の詳細は、ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!?【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 誰でもなれる取締役
取締役になるためには、
「株主総会」
という通過儀礼を通過する必要はありますが、
「『取締役』として必要となる知識・技能を最低限身につけているかの確認」
がなされることはありません。
取締役は
「誰でもなれる」
という門戸の広さ、お手軽さの割には、重い責任が課せられています。
以上の詳細は、ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!?【誰でもなれる取締役】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 取締役に課される重い責任
法令上、取締役は、その職務を遂行するにつき、善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)を負います。
何か間違った行為だけではなく、
「この問題について、適時に、適切な対応策をとらなかった」
という不作為にも、善管注意義務違反とされることがあります。
違反した場合は、会社に発生した損害を賠償する義務を負います。
以上の詳細は、ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!?【取締役に課される重い責任】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 「経営判断原則」による責任軽減
会社の経営には、スピードと即応力が何より重要であり、不確実な状況で、迅速な判断が迫られることが多いのが実情で、後になってから判明した事実に照らせば
「あの行為は間違っていた」
ことは多々あるのが普通ですが、それでは、誰も怖くて取締役になどなれませんし、会社が積極的な経営をするスピリッツを喪失し、株主をはじめとした会社をとりまく利害関係者全員が迷惑を被ることにつながりかねません。
そこで、
「とりあえず、やってみなはれ」
という
「経営判断の原則」という法理が会社法には存在します。
以上の詳細は、ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!?【「経営判断原則」による責任軽減】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4: 善管注意義務違反をめぐる最高裁判例
「未承認添加物が混入している商品の販売終了から半年後に、未承認添加物が混入していたことを知った取締役ら」
について、
「その事実の公表や、会社の信頼喪失を最小限度に食い止める方策を積極的に検討する義務があったのに、それをしなかった」
として、当時の取締役11名に対し、1名は約5億3000万円、1名は約5億6000万円、残り9名については約2億1000万円の損害賠償を会社に支払う判決がくだされた裁判例があります(最高裁平成22年2月12日決定、大阪高裁平成18年6月9日判決)。
被告となった取締役らの代理人弁護士は、
「経営判断の原則」
を持ち出し免責のための弁解を試みましたが、裁判所は一蹴しました。
以上の詳細は、ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!?【善管注意義務違反をめぐる最高裁判例をご覧ください。

モデル助言:
連座させられることのないよう、 法律知識を正しくもってしっかりと対応すべきです。
とりあえずは、取締役会で、現状の取扱いについて異議を明確に述べ、会社の損害を最小限度に止める方策を積極的に検討するべきである、との発言を、議事録に書いてもらうべきですね。
取締役会がしばらく開催されないというのなら、取締役に与えられた権限である
「取締役会招集請求権」
を行使するべきです。
「D&O保険があるから大丈夫」
については、普通、約款には、
「法令に違反することを被保険者が認識しながら(認識していたと判断できる合理的な理由が存在する場合を含む)実施した行為については、保険金を払えない」
などと書かれています。
以上の詳細は、ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!?【今回の経営者・仁柿(にがき)取締役への処方箋】その1ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!?【今回の経営者・仁柿(にがき)取締役への処方箋】その2をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00613_企業法務ケーススタディ(No.0204):“金賞”認定偽装で、消費者だまして、大儲け!

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース11:“金賞”認定偽装で、消費者だまして、大儲け!をご覧ください。

相談者プロフィール:
大雪(おおゆき)酒造株式会社 代表取締役社長 升山 研一郎(ますやま けんいちろう、30歳)

相談概要:
相談者は、父親が急逝したため社長を継ぎ、世界マーケットに向けて新レーベル・新製品を立ち上げました。
ヨーロッパで権威ある
「世界醸造酒品評会」
に出品しようとしましたが間に合わず、次回開催までに間があることから、勝手に
「金賞認定」
と銘打って新製品を売り出したところ、バカ売れしました。
ところが、
「『金賞認定』って、本当かな」
「食品偽装だ、刑事事件になる」
という声が一部インターネットで出始め、同業社長が脅しをかけてき、社内の古参役員まで騒ぎ出す事態となりました。
以上の詳細は、ケース11:“金賞”認定偽装で、消費者だまして、大儲け!【事例紹介編】その1ケース11:“金賞”認定偽装で、消費者だまして、大儲け!【事例紹介編】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 不正競争防止法とは
商売において
「きちんとした秩序ある、フェアな競争をする環境」
をつくり、あるべき形で、日本の経済発展が達成されるようにするため、不正競争防止法という法律が制定されています。
商品やサービスの中身と全く異なる表示や広告をつけ、実態とかけ離れた
「イメージ」
を生じさせ、これによって利益を上げるといった不当な商売が横行することに対しては厳しく規制されていますし、表示偽装商品の販売禁止、著名なブランドの無断使用禁止、模倣品の販売規制から、営業秘密の侵害禁止、さらには外国公務員への贈賄禁止まで、いろいろな趣旨の規定があります。
以上の詳細は、ケース11:“金賞”認定偽装で、消費者だまして、大儲け!【不正競争防止法とは】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 商品やサービスについての「ほら吹き」はNG
「誤認惹起行為」
の禁止は、商品やサービスの原産地や、品質などについて誤解を招くような表示を行ってはならないという規制類型です。
これが最もクローズアップされる事例は、食品偽装問題です。
この規制を実効性のあるものにするための手段がいくつか定められており、その1つは、同業他社による民事上の請求で、具体的には、損害賠償請求権、差止請求権等です。
以上の詳細は、ケース11:“金賞”認定偽装で、消費者だまして、大儲け!【商品やサービスについての「ほら吹き」はNG】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 清酒特級事件判決の教訓
不正競争防止法の
「誤認惹起行為」
に該当するとして起訴された裁判例があります。
酒を製造、販売した事業者に対して、執行猶予付とはいえ有罪判決が下されました。
この裁判例の根底にある考え方は、商品を買う一般的な消費者の主観や認識やさらには情緒や印象等をも基準として、誤認が生じたかどうかを総合的に判断する、という点にポイントがあるかと思われます。
以上の詳細は、ケース11:“金賞”認定偽装で、消費者だまして、大儲け!【清酒特級事件判決の教訓】をご覧ください。

モデル助言:
受けてもいないのに、
「金賞認定」
としてしまったことは明確な法律違反で、表示はすぐにやめるべきです。
同業社長や古参役員の方がおっしゃるように、
「誤認惹起行為」
によって損害を被った事業者から損害賠償や差止請求を受ける可能性は十分考えられます。
この他にも、景品表示法などにも、このような
「商品の内容」

「表示」
が著しく異なる場合には、事業者の名称が公表され、行為の差し止めなどの行政処分なども予定されています。
以上の詳細は、ケース11:“金賞”認定偽装で、消費者だまして、大儲け!【今回の経営者・ 升山(ますやま)社長への処方箋】その1ケース11:“金賞”認定偽装で、消費者だまして、大儲け!【今回の経営者・升山(ますやま)社長への処方箋】その2をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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