00624_企業法務ケーススタディ(No.0215):「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社マルチ・シティズン 代表取締役 蓮田 紡(はすだ つむぐ、48歳)

相談概要:
数年前に開発した人工知能エンジンの特許技術を中堅広告代理店に流用、真似された相談者は、相手に内容証明郵便の警告書を出しましたが、逆に、先行技術について指摘され、
「こんなのエセ特許。それ以上騒ぐと、無効審判申し立てしますよ」
と脅されました。
早急に、裁判所に販売差止と損害賠償を申し立てようと意気込んでいます。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: チザイ(知財・知的財産権)って何?
産業技術や文化市場では、アイデアや表現が自由かつ活発に交換されることにより、高度化されていきます。
これは、自由な往来ができる整備された街道によって経済が発展するのと同様です。
知的財産権というのは、いわば、
「私人に関所を設けさせ、これを使って他者を威嚇したり、通行料をせしめたりすること」
を是とする制度です。
技術や表現(知的財産権)を自由に使って、産業社会や文化市場で自由な活動をしようとすると、いきなり、
「そなたは、当方が国からお墨付きを得て設置した関所を勝手に通行しておる」
と、いわれてしまうのです。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【チザイ(知財・知的財産権)って何?】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:知財ダークサイドと知財バブル
2002年12月4日に、
『知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を推進すること』
を目的とする知的財産基本法が作られました。
知的財産権は、
「(アイデアや表現の自由な往来における)公認関所」
のようなもので、産業社会や文化市場の発展を阻害する、というダークサイドの要素を秘めていますが、そのマイナス面を無視し、やたらと知的財産権をもてはやす風潮が蔓延しました。
この風潮を、もてはやしている人間の低劣さを揶揄する意味をこめて、
「知財バブル」
などといったりします。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【知財ダークサイドと知財バブル】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 知財ホルダーに対する冷徹な扱い
特許権があるからと、強気に訴訟を提起したとしても、
「『なんちゃって特許』ともいうべき代物」
にすぎない実体である場合は、逆に、裁判所から
「その程度の発明に特許は与えられない」
という“塩対応”を食らうことが、判例にもあります。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【知財ホルダーに対する冷徹な扱い】その1ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【知財ホルダーに対する冷徹な扱い】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4: 同じ奉行所(権力機関)でも特許庁と裁判所では大違い
「特許庁、すなわち行政という権力機関」
とは別の、
「裁判所、すなわち司法府という別の権力機関」
によって、徹底的に調べ上げられ、あっけなく裁判で負けたら、販売差止に失敗するだけではありません。
特許を製造委託先や他社に使用許諾(ライセンス)して、特許使用料(ロイヤルティー)でも取っていようものなら、
「特許が無効になった以上、これまで払わされたロイヤルティーを全部返せ!」
といわれる可能性もあります。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【同じ奉行所(権力機関)でも特許庁と裁判所では大違い】をご覧ください。

モデル助言:
訴訟をしてもいいですが、勝つとは限りませんよ。
裁判所が、特許審査過程の意見書などを前提に、包袋禁反言の法理で“領土”を削り取られる判断をしたり、最悪、特許権者であり被害者として訴え出た当方の特許自体の無効を宣言することすらあります。
あくまで市井のケンカとしてやり返してやりましょう。
競合誹謗にならないよう注意しながら、公式に特許違反であることをリリースして世間の判断を仰ぐという争い方は検討する価値があるかもしれませんし、先方のビジネスモデルをこちらの人工知能エンジンで実現して、よりパワフルなソフトにしてリリースする方法(その際、先方よりさらに大きな広告代理店とジョイントベンチャーを組んで、資本力にモノをいわせ、上から叩き潰すとか )もありでしょうかねえ。
以上の詳細は、ケース22:「生命より大事な虎の子の特許権」を踏んづけられた!【今回の経営者・蓮田社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00623_企業法務ケーススタディ(No.0214):貸せない額じゃないけど、情実融資を拒否したい!

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース21:貸せない額じゃないけど、情実融資を拒否したい!をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社ミセス・アツコ 代表取締役 具足 敦子(ぐそく あつこ、61歳)

相談概要:
本業は順調の相談者は、遠い親戚から事業資金を融資を頼まれ、1000万円を融資しました。
2年後、元本が半分以上残っている状態で、担保の代わりにと親戚20名全員で連名の決意表明書をつけて、あらたに8000万円の融資を頼まれました。
以上の詳細は、ケース21:貸せない額じゃないけど、情実融資を拒否したい!【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 情実融資には危険がいっぱい
銀行は、借主が合理的で健全で堅実で、その借主が作成する事業計画が合理的で健全で堅実で、確実に儲かって、カネを返してくれるなら、普通にカネを貸してくれます。
逆に、銀行がカネを貸してくれないとすれば、借主に問題があるか、事業計画に問題があるか、のいずれかまたは双方だからだと推測されます。
他人に迷惑を被らせている人間やこれから迷惑を被らせる人間に限って、眉一つ動かさず
「絶対迷惑をかけないから」
というウソを平然といえるようになるのです。
こういう人間の話をまともに取り合うと、カネを失い、対応するための時間とエネルギーが奪われ、最悪、身を滅ぼすことすらあります。
助けを求めてきた知人や友人を見放すのはどうも気が引けるという場合には、見舞金を出して追い返すべきです。
ビジネスでは、
「感情」

「勘定」
は峻別すべきであり、特に、
「かわいそうだから」
という理由で、安易に大金を貸すべきではありません。
以上の詳細は、ケース21:貸せない額じゃないけど、情実融資を拒否したい!【情実融資には危険がいっぱい】その1ケース21:貸せない額じゃないけど、情実融資を拒否したい!【情実融資には危険がいっぱい】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:どうしても貸さないわけにはいかない場合は
まずやるべきは、融資額を小さくする交渉です。
事業計画をみてみると、無駄な経費や、圧縮できるコストがいろいろ紛れ込んでいたり、事業所の賃料も土地勘がないばかりに業者の言い値で高値の粗悪物件を掴まされていたりする可能性もあります。
さらには、運転資金に、社長の報酬が冗談のような額で計上されていたり、というケースもあったりします。
あと、売れるかどうかわからないのに、単に
「ロットが大きい方が単価を下げられるから」
という理由で、冒険的というか無謀な初期ロットを注文する前提で資金計画を立てていたり、ということもあり、とにかく、細かくみるとツッコミどころ満載ということも考えられます。
以上の詳細は、ケース21:貸せない額じゃないけど、情実融資を拒否したい!【どうしても貸さないわけにはいかない場合は】その1ケース21:貸せない額じゃないけど、情実融資を拒否したい!【どうしても貸さないわけにはいかない場合は】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 一族郎党全員を連帯保証人に
それでも貸さざるをえない状況に至った場合は連帯保証を取ることはできるはずです。
連帯保証人の数や資格に法律上制限があるわけではありません。
以上の詳細は、ケース21:貸せない額じゃないけど、情実融資を拒否したい!【一族郎党全員を連帯保証人に】をご覧ください。

モデル助言:
まずは、御社のメインバンクを紹介して、そちらから融資を受けるよう助言するのが先決ですね。
銀行がすんなり貸してくれるなら、ビジネスモデルとしてそこそこイケてるってことですから。
他方で、銀行が融資を断るのは、まず、返ってくるアテのない案件であり、
「返ってくるアテのないカネを貸すこと」
を世間では
「ギフト」
といいます。
ですので、ギフト額を小さくする方向で交渉してみるのがいいでしょうね。
それも無理だったら、計画のずさんな部分を見直して、融資額を絞り、さらに、全員から連帯保証をとりましょうかねえ。
連帯保証の話を持ち出して、怒って帰ってくれるなら、それはそれでいいんじゃないですか。
シビアになれないのであれば
「8000万円」
のギフトと考えることです。
以上の詳細は、ケース21:貸せない額じゃないけど、情実融資を拒否したい!【今回の経営者・具足社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00622_企業法務ケーススタディ(No.0213):環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社なんでも完成団 代表取締役 一坂 浩二(いちざか こうじ、75歳)

相談概要:
相談者は、5年前、自治体から熱烈なオファーを受け新工場を作りました。
工場の労働者は地元から雇用し、月に一度は現場への視察をかかさず、市長への表敬訪問をするなど、地元自治体とは極めて良好な関係を作っている、と自負しています。
先月、定例視察にいくと、工場前で、
「環境破壊をやめろ」
と集団が騒いでいましたが、工場長はまったく意に介していません。
そのようななか、市議会の議員有志と称する団体から相談者宛てに告発文が届きました。
工場長は、無視するように、の一点張りです。
以上の詳細は、ケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 環境規制の認知と理解はハードルが高い
環境法は、憲法や民法や刑法のように、環境規制を総括した全般的な法体系が存在するわけではありません。
環境基本法に加え、廃棄物処理法、悪臭防止法、大気汚染防止法、土壌汚染対策防止法・・・、条例なども加えると多数の法が存在し、これらをひっくるめて
「環境法」
と便宜的に呼称しています。
このようなことから、多くの企業で、
「環境に関する法規制に違反すると、それなりにヤヴァイことになる」
という意識はあるものの、
「詳細な決まりごとがよくわからないため、課題が発見・特定できず、制御や管理がおざなりになり、結果、知らないうちに法令違反をしてしまい、強制捜査を受けたり、逮捕されたり、書類送検されたり」
と問題が多発するのです。
以上の詳細は、ケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!【環境規制の認知と理解はハードルが高い】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 行政からの助け船があれば、すぐに乗り込め
行政サイドとしては、
「企業が、法を知り、理解し、守れるよう、指導すること」
が行動原理の第一であることから、いきなり処分を科すわけではありません。
まずは、法令違反を指摘し、改善指導をします。
それでも法が守られない場合、過酷な処分を科す方向に突き進まざるを得なくなります。
行政当局から、
「早めに改善しなさい。さもないと大変なことになりますよ」
という改善指導(行政指導)があれば、それは一種の
「助け舟」
で、さっさと乗り込むのが賢明です。
以上の詳細は、ケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!【行政からの助け船があれば、すぐに乗り込め】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 現場の声を信じるな
人間には、危険な事象を過小評価して、正常なものをゆがめで認知するというバイアス(正常性バイアス)があり、このため、往々にして危険を過小評価し、回避する機会を逸することがあります。
また、想定外の変化の原因となるべき情報を得ても、楽観的に認識する心の作用もあります(楽観バイアス)。
工場長の立場を考えれば、仮に、法令違反の事態に直面した場合、自分の地位を脅かすことになりかねませんし、そのような悪夢よりも、
「こんなのたいしたことない」
と信じたいキモチが、自身の利害によって影響を受けることは想定され、最後の最後まで、事態を自分の手で制御し、上には見つからないように、あがいてあがいてあがきまくり、傷口を大きくする、ということもあり得ます。
以上の詳細は、ケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!【現場の声を信じるな】をご覧ください。

モデル助言:
異常事態には、漫然と現場を信じることなく、トップダウンで、直接、管理して乗り切るべきですね。
まず、工場長よりも格上の役員を派遣し、いったい、何が起きているか、特に、行政や反対派からどういうメッセージや要望がこれまで届いていたかを正確に把握してください。
また、環境規制を所管する担当部署を特定し、そこに直接話をしにいきましょう。
そのうえで、法令違反の事実ないし疑念があれば、きちんと調べ、直すべきは直し、謝るべきは謝り、
「当局の声に耳を傾け、自主的に改善する意欲と能力と組織体制」
が整った
「まともな企業」
である、とアピールすべきです。
違反事実が存在する疑いが濃厚な場合、早急に、第三者委員会を立ち上げ、外部から強制的な調査や過酷な処分が下される前に、自主的に事実を調べ、これに基づき、関係者のクビを差し出す、ということも考えておくべきでしょう。
以上の詳細は、ケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな!【今回の経営者・一坂社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00621_企業法務ケーススタディ(No.0212):あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社サニー・ジャパン 代表取締役 柴 珍一(しば ちんいち、77歳)

相談概要:
相談者は、問題のあった従業員を解雇しました。
社労士の話を参考に、予告手当として1カ月分、さらに、手切れ金がわりに少しイロをつけた退職金を支払いました。
この件は終わったと思っていたところ、裁判所から労働審判申立書がきました。
労働訴訟の経験から、相談者は申立書を1ヶ月ほど放置してから裁判所に連絡したところ、その応対は思いのほか厳しかったようです。
労働審判というのは、労働裁判とは違うものなのでしょうか。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 労働審判とは
労働審判は、司法改革の一貫として、2004年から導入が始まった制度で、
「労働審判官(裁判官)と労働審判員(民間人)とで構成される労働審判委員会が、労働者と使用者との間の民事紛争に関する解決案をあっせんして、当該紛争の解決を図る手続き」
と説明されています。
手続きが行われる場所は裁判所で、裁判官も
「審判官」
という肩書で参加します。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【労働審判とは】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: “裁判所”街道の渋滞回避策が労働審判制度
規制緩和社会の到来と同時に
「訴訟社会」
の訪れを見越した裁判所は、民事訴訟法改正やそのほかのさまざまな訴訟運営効率化施策を打つと同時に、新たなシステムを導入しました。
その1つが
「労働審判制度」
です。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【“裁判所”街道の渋滞回避策が労働審判制度】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 労働審判とフツーの裁判の違い
裁判官以外に、
「民間の有識者」
も混在させて裁判官主導の独裁色を中和させつつ、他方で、
「民間の有識者」
に暴走させることなく
「審判官」
という立場で参加する裁判官が裏でしっかりと手綱を握って、
「後から本格的裁判で争うことも可能な、裁判モドキ。ちょいと雑で、スピーディーで、独裁チック」
みたいな風体で導入されたのが、
「労働審判」
です。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【労働審判とフツーの裁判の違い】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4: げに恐ろしき労働審判
労働審判手続きを経て労働審判が言い渡された後、その審判内容に不服であれば、本格的な労働裁判(労働訴訟)に移行可能となっています。
しかし、労働審判は、
「ダラダラ裁判」
を否定するために設計され導入されたものですから、
「時間的効率性を徹底して追求する」
という正義が根源的なものとして存在します。
それ故、まず、期日変更はできませんし、話を聞いてくれるのも最初の期日で終わり、という有様(制度上3回の期日で終了することになりますが、よほど複雑な事件でない限り1回ポッキリの期日で終了する運用、のようです)。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【げに恐ろしき労働審判】をご覧ください。

モデル助言:
期日変更は不可、第1回期日で、こちらのストーリープレゼンがすべて終了する、と考えておいた方がいいでしょう。
今から、すべての事実関係を整理し、証拠をそろえ、当日の事情聴取リハーサルをして、短い時間で、要領よく、こちらのスタンス、従業員の行動や態度の不当性と、こちらの措置の正当性が自然に理解されるようなエピソードをプレゼンしなければなりません。
労働審判では、かなりの確率で、強硬な和解勧告が行われます。
今回のケースで最重要の防衛ラインは、復職を認めさせず、労働関係を終わらせること。
復職されようものなら、社長のメンツは丸つぶれで、しかも、定年まで厄介者が居座る可能性もあります。
和解金をこれ以上払うのは悔しいかもしれませんが、職場から総スカン食らっている、常識の異なる人間を定年まで雇用し続ける耐え難さに比べれば、合理的ともいえます。
以上の詳細は、ケース19:あな恐ろしや、ブラックの烙印押されかねない労働審判【今回の経営者・柴社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00620_企業法務ケーススタディ(No.0211):ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース18:ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社クイック・リアクト 代表取締役 手川 徹郎(てがわ てつろう、52歳)

相談概要:
美容院を経営する経営者は、サービスラインナップ広げるべく、まつ毛のエクステンション・パーマ・シャンプー・リンス、アイラインタトゥーなどの新しいサービスを考えています。
ところが、兄である専務は心配しています。
「美容師法に違反して業務停止とか食らわないだろうか。
入れ墨は、医療行為になりそう。
美容師免許をもっていないスタッフに仕事をさせてトラブルにならないだろうか」
相談者は、刑事裁判で争うことになったとしても実行する、と、腹をくくっています。
以上の詳細は、ケース18:ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: ノーアクションレターはお役所からの「お墨付き」
ノーアクションレターとは、役所からの
「お墨付き」
といった趣のもので、企業が検討している事業活動がはらむ許認可などの取得の必要性や行政処分・罰則などの適用可能性について、監督行政機関に事前に見解を求める手続です。
実施のガイドラインは、各省庁ごとに個別に定められています。
詳細は、電子政府の総合窓口を参照ください。
以上の詳細は、ケース18:ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!【ノーアクションレターはお役所からの「お墨付き」】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: ノーアクションレターは「規制ニッチ」での新規事業推進を後押し
先端的な事業を行う企業の多くが、この制度を活用して、
「規制ニッチ」
のビジネス分野における安全を確認し、積極的に新しい事業を起こしています。
各省庁のノーアクションレターについては公表されており、非常に参考になりますが、使う際には注意が必要です。
まず、時間と手間とコストがかかります。
また、すべての質問に明確な回答が得られるとは限りません。
最後に、回答は一般に公開されますので、競合他社には秘密にしておきたいような企業機密を前提にした照会をすると、いつの間にか、ダダ漏れしていて、パクられた、という悲惨なことにもなりかねません。
以上の詳細は、ケース18:ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!【ノーアクションレターは「規制ニッチ」での新規事業推進を後押し】をご覧ください。

モデル助言:
すでに公開されているノーアクションレターを参考に、また、明らかにリスクの高いものは自己判断で控えるような形で、無理せず、やってみられたらどうでしょうか。
しかし、タトゥーは、警察沙汰です。
入れ墨を行う行為は、たとえお客さんの同意があっても違法性阻却されず、犯罪成立するというのが伝統的な刑法解釈です。
以上の詳細は、ケース18:ノーアクションレターを使ってうまいこと攻めろ!【今回の経営者・手川社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00619_企業法務ケーススタディ(No.0210):不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社ファーストクラス 代表取締役 末狡 要逸(ますずる よういつ、67歳)

相談概要:
相談者の会社が性能データの偽装をおこなったことが暴露され、釈明の記者会見をしなければならない状況となりました。
記者会見乗り切りスキルを学べる本やマニュアル等は、ないのでしょうか。
以上の詳細は、ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: ありふれたことを滑稽なほどまわりくどく表現する霞が関言葉
経済学者の竹内靖雄氏が『日本人の行動文法』(東洋経済新報社)の中で、
「霞が関言葉」

「ありふれたことを滑稽なほどまわりくどく、もったいぶって表現する言葉」
と定義しています。

(出典:『中央公論』1995年5月号、イアン・アーシー著「『霞が関ことば』入門講座(前篇)」93ページ を元に筆者が作成)
(出典:『中央公論』1995年5月号、イアン・アーシー著「『霞が関ことば』入門講座(前篇)」93ページ を元に筆者が作成)

以上の詳細は、ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【ありふれたことを滑稽なほどまわりくどく表現する霞が関言葉】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 「無謬性」を本分とする日本一優秀な官僚の根源的なスキル
官僚や組織においては、ミスは絶対許されない一方でミスは避けられません。
そのためには、極力、抽象的で難解で、辞書を引かないと理解できないような言葉を常に使って
「目くらまし」
をし、さらに、どんなに明白なミスであっても特定の担当者や担当部署のチョンボとして謝罪をせず、不可避な外的事象によるものと説明することになります。
「霞が関言葉」
は、一朝一夕にできあがったものではありません。
「某国から発射されたミサイルを迎撃して撃ち落とす作戦命令」

「某国から飛来した“飛翔体”に対する破壊措置命令」
と言い換えたりするなど、長年の歴史的な伝統に基づき形成されてきた
「匠の技」
が見事に伝承されています。
以上の詳細は、ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【「無謬性」を本分とする日本一優秀な官僚の根源的なスキル】その1ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【「無謬性」を本分とする日本一優秀な官僚の根源的なスキル】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 官僚答弁や政府談話に学ぶ危機管理対処スキル
危機管理モデルの巧拙という視点で評価しますと、東日本大震災の直後、東京電力福島第1原子力発電所での爆発事故で、東北や関東地方に放射性物質がまき散らされたという悲惨な事件を国民に伝える記者会見などでみられた、
「福島第1原発で何らかの“爆発的事象”の発生が確認されました」
「直ちに人体に影響を及ぼすものではありません」
「微量です。心配要りません。落ち着いてください。念のためです」
「原子炉の堅牢性は確認されている、とのことです」
といった、霞が関文学の粋を集めた数々の名文句(迷文句)にもさることながら、情報を小出しにし、サンドバッグ役に適した真面目で誠実そうなキャラのスポークスマンを配置し、病気や疲労という名目でスポークスマンを入れ替えて、特定個人が注目されないような配慮をしていました。
また、状況説明においてもできる限り難解で高尚な専門用語を多用し、他律的で外罰的な印象操作を行いつつ、
「事態対処に向けて努力をしている」
という姿勢を前面に出して、それ以上突っ込んで批判されにくい雰囲気を演出するなど、芸術的とも言える姑息さが発揮されていました。
以上の詳細は、ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【官僚答弁や政府談話に学ぶ危機管理対処スキル】をご覧ください。

モデル助言:
この種のデータ偽装はあってはならないことですし、最近特に、世間の目が厳しくなっていますので、今後は、このようないい加減なことをしないよう、しっかりと経営管理をしてください。
とはいえ、目先の危機はなんとしてでも乗り切らなければなりません。
非常手段として、霞が関言葉や官僚答弁を参考に、バランスを取りながらなんとか窮地を脱する方法を考えましょう。
改善や解決の努力は、ひたむきに、謙虚に、継続する姿勢を示すことです。
他方で、時間的冗長性の確保が最優先です。
以上の詳細は、ケース17:不祥事記者会見をなんとか乗り切るための極意【今回の経営者・末狡社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00618_企業法務ケーススタディ(No.0209):どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース16:どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社スーパー・チアフル 代表取締役 安村 安雄(やすむら やすお、34歳)

相談概要:
相談者は、2年近くかかった裁判の末、一審は勝訴しましたが、相手の会社が控訴し、高裁で事件続行となりました。
そして裁判期日、裁判官は、
「一審で勝っているのは分かるが、証拠も十分でないし、我々としても不可解な点があると考えている。
解決金2000万円払って水に流すのはどうか、1億円の請求から考えればメリットがあるでしょ。
強くお勧めします」
と、和解を勧告してきました。
相談者は、 一蹴しようと、息巻いています。
以上の詳細は、ケース16:どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 日本の民事裁判はほぼ二審制、一般民事事件は高裁が最終審
実態に即した言い方をすれば、
「日本の司法制度は、一般的な民事・商事のトラブルを処理する裁判に関する限り、今や二審制となっており、最高裁はまず出てこない」
ということになり、 その意味で高裁の権威は飛躍的に高まりました。
また、事件の6、7割程度は第1回期日で即日終結し、新たな証人尋問や論点整理は行わない、という運用が定着しつつあります。
以上の詳細は、ケース16:どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!【日本の民事裁判はほぼ二審制、一般民事事件は高裁が最終審】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 和解勧告を蹴飛ばすと報復的な敗訴判決を食らう場合があるぞ!
高裁で第1回即日結審とならず、その後も審理する、ということは、
「高裁は一審の判決に懐疑的であり、ひっくり返す気持ちマンマン」
という状況が見てとれます。
また、高裁の裁判官の出してきたメッセージも重要です。
和解には、単に
「和解を検討せよ」
と、抽象的で漠とした感じで和解検討を指示するときと、
「これこれこの条件での和解を検討せよ」
と、具体的な条件を明示した和解検討を指示するときの2つがあります。
前者は拒否しても問題ありませんが、後者は明快な日本語に“翻訳”すると、
「和解をしろ」
という命令です。
以上の詳細は、ケース16:どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!【和解勧告を蹴飛ばすと報復的な敗訴判決を食らう場合があるぞ!】をご覧ください。

モデル助言:
高裁でシンネリコンネリ事件を審理したということ自体、地裁の判断をひっくり返す危険性が感じられます。
しかも、今回、和解を担当した裁判官は、2000万円、という具体的条件を明示して、検討を指示しました。
言葉は穏やかですが、これは、
「2000万円で和解しろ」
という事実上の命令です。
その命令を、空気を読まずに蹴り飛ばしたら、逆転敗訴し、遅延損害金まで食らいかねません。
以上の詳細は、ケース16:どんなに腹が立っても高裁の和解勧告は蹴り飛ばすな!【今回の経営者・安村安雄社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00617_企業法務ケーススタディ(No.0208):自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社ダンジリ電機 代表取締役 恐原 一博(きょうはら かずひろ、48歳)

相談概要:
資本金300万円の会社オーナーである相談者は、売れ残った商品を納入業者に大量返品したうえに仕入れの代金を大幅にカットしたところ、公正取引委員会から、独禁法に違反する疑いあるとのことで調査に回答するようにと連絡がきました。
無視していると、今度は、呼び出しがきました。
それも無視していたら、今度は、課徴金を払うようにと連絡がきましたが、よくわからないからと、とりあえず放置しています。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【事例紹介編】その1ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【事例紹介編】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 自由かつ公正な競争を促すための基本的ルール
独禁法(「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」の略称)は、フェアな競争を阻害する行為である
1)私的独占
2)不当な取引制限(カルテル)
3)不公正な取引方法等
を違法行為として禁止しています。
「下請法」(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)
は独禁法の子分格の法律で、大きなくくりでいうと、
「反競争法」
というグループの法律として整理され、大企業が中小零細企業をいじめる際に適用されるものです。
下請法という特別法(子分格の法律)の適用がなければ、本則・大元・親分格の法律である独禁法の問題となり、
「優越的地位の濫用」
といわれる規制の適否が問題となります。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【自由かつ公正な競争を促すための基本的ルール】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 「フェアな競争を阻害する行為」が禁止される理由
一企業が市場を独占し、あるいは、複数の企業が手を取り合い競争を回避するなどの行為をすることで、企業間競争がなくなり、ひいては、消費者が割高な値段で商品を購入せざるを得ないといった不利益を被ることから、禁止されている、と説明されます。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【「フェアな競争を阻害する行為」が禁止される理由】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 独禁法で禁止されている違法行為とは
1)私的独占(法2条5項、3条前段)
2)不当な取引制限(2条6項 3条後段)
3)不公正な取引方法(法2条9項、19条等)
不公正取引については、
「具体的にどのような行為がNGか」
を具体的かつ明確にされていることに加え、公正取引委員会が作成した
「ガイドライン」
が作られています。
企業は、ガイドラインを参照して自社の行為が独禁法違反にならないかどうかを判断していくことになります。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【独禁法で禁止されている違法行為とは】その1ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【独禁法で禁止されている違法行為とは】その2をご覧ください

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4: 優越的地位の濫用とは
「返品」・「減額行為」
は、
「3)不公正な取引」
の一類型である
「優越的地位の濫用」(法第2条9項5号)
と呼ばれる行為で、
(1)自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して
(2)正常な商慣習に照らして不当に
(3)濫用行為をすることを指します。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【優越的地位の濫用とは】をご覧ください

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点5: 独禁法違反を理由とした制裁
企業の行為が独禁法に違反した場合には、
1)排除措置命令
2)課徴金納付命令
が下され、さらに、
3)社名公表
され、公共工事やお役所の出入り業者等に関しては、
「指名停止処分」
を食らい、憂き目を見るリスクが生じます。
トイザらス事件(平成27年6月4日審決)では、
「取引の相手方にとって通常は何ら合理性のないことであるから」
という価値判断が中核となって、
(1) 大規模小売業者がした返品・減額行為はいずれも、濫用行為である
(2) したがって、この濫用行為は優越的地位を利用したものである
(3) このような独禁法違反行為は許されない
ことから、裁判所は、課徴金約2億円の支払いを命じています。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【独禁法違反を理由とした制裁】その1ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【独禁法違反を理由とした制裁】その2 をご覧ください 。

モデル助言:
企業としては、ガイドライン等を参照しつつ現場で用いることのできる
「マニュアル」
を整備し、それにしたがって個々の取引を精査し、問題点や改善点が見つかった場合には、ただちに社内で共有して是正していく努力が必要です。
以上の詳細は、ケース15:自由競争!弱肉強食!弱い者いじめして何が悪い!?【今回の経営者・恐原(きょうはら)社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00616_企業法務ケーススタディ(No.0207):取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社ススキノ探偵事務所 代表取締役社長 大泉 汁(おおいずみ じゅう、42歳)

相談概要:
相談者は、取締役を解任しました。
すると、元取締役は
「一方的にクビにしたんだから、カネを払え」
「残りの任期がまだある、その分の月額報酬を耳をそろえて支払え」
という内容証明を会社宛に出してきました。
相談者としては、創業者である相談者本人とその他の古参役員で100%株式はおさえていること、司法書士に相談したうえで臨時株主総会で解任したのだから手続き的には問題ない、 そもそも取締役は従業員と違い労働基準法で守られているわけでもないのだから金銭要求は無視する、と考えています。
以上の詳細は、ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【事例紹介編】その1ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【事例紹介編】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 取締役と会社との関係
会社法は、資本多数決の原則を採用しています。
会社の基本構造を左右できる大株主らにおいては、
「会社は株主のもの」
ということができ、株主総会において役員を大幅にすげ替えることは可能です。
これは、会社と取締役の関係が民法上の
「委任」
という法律関係によって定められているからといえます。
取締役は、会社から、特定の業務の遂行を委ねられており、その際、善良なる管理者の注意義務をもって業務を行うように、とされています(善管注意義務ないし忠実義務といわれるもので、会社法355条と民法644条に定められています)。
「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる」(民法651条1項)
とされていますから、取締役は、原則としていつでも解任され得るといえ、その地位は不安定といえます(会社法339条1項も同旨)。
以上の詳細は、ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【取締役と会社との関係】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 取締役に身分保障などというものがあるのか?
会社法は、取締役を株主総会の決議によっていつでも解任することができることを原則(会社法339条1項)としながらも、同2項において、
「前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる」
として、損害賠償請求という形で一定程度の身分保障を認めました。
「解任によって生じた損害」
というのは、残存任期分の報酬、という形で整理されることになります。
以上の詳細は、ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【取締役に身分保障などというものがあるのか?】その1ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【取締役に身分保障などというものがあるのか?】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 解任についての「正当な理由」
「正当な理由」
は、条文上は具体的には記載されておりませんので、裁判例等の具体的な事例によって相場観を把握していく他ありません。
最高裁判決昭和57年1月21日では、
「その取締役に経営を行わしめることが障害になる客観的な状況」
があってはじめて
「正当な理由」
あり、という判断が行われています。
したがって、正当な理由の存否が問題となっているような局面においては、病気等のよほど客観的な事情でもない限りは、裁判所において
「正当な理由なし」
と判断される危険性があるということを十分に認識した上で、交渉ないし訴訟対応をしていく必要があるというわけです。
以上の詳細は、ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【解任についての「正当な理由」】をご覧ください。

モデル助言:
「従業員とは違うんだから、解任し放題だし、なんの要求にも応じる必要ない!」
などと突っぱねるわけにはいきません。
解任を基礎づける相応の理由がある可能性がある、ということを前提として、これを十分に説明しつつ、慎重に対応していく他ありません。
具体的には、解任には
「正当な理由」
があった、ということを適時・適切に反論していくことになります。
対象となっている取締役が、取締役であり続けるとすれば、
「会社経営にどのような形で害悪をもたらすのか」
ということを客観的な事情とともに摘示していかねばなりません。
仮に裁判になったとしても残存任期分の報酬請求は認容される可能性が高いということを前提としますと、裁判外交渉の中で相手方から合理的な要求が出てくるようなら、和解に応じることも十分に選択肢としてはあり得るところです。
このように法律の構造を把握し、また、裁判例等における相場観を知っておくことで、無駄に裁判にまで流れていって、弁護士費用の負担も含め大負けするリスクを回避することができます。
以上の詳細は、ケース14:取締役なら、テキトーにクビを切ってもノープロブレム!?【今回の経営者・大泉社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00615_企業法務ケーススタディ(No.0206):採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由をご覧ください。

相談者プロフィール:
ファイヤー・ソリューションズ株式会社 代表取締役社長 鬼田 厚史(おにた あつし、57歳)

相談概要:
相談者の会社では、中途採用した社員を持て余していました。
就業規則には、
「労働能力が劣り、向上の見込みがない」
場合には、普通解雇ができる、とあったので、相談者は、
「まさにあてはまるから、解雇に問題はない」
と、1カ月分の給料を手当てして、問題社員の解雇を決意しました。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【事例紹介編】その1ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【事例紹介編】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 「解雇権濫用法理」と労働契約法16条
労働契約法16条は、
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用(らんよう)したものとして、無効とする」
と明文で規定しています。
これは
「解雇の権利は、形式上・字面上、企業側に認められてはいるものの、そう簡単に使うことはまかりならん。
仮に、イージーに解雇の権利を振り回したら、濫用した、との理由で、一切その効力を認めてやらんからな」
という法理です。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【「解雇権濫用法理」と労働契約法16条】 をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 「オマエなんて今すぐクビ!」と言えるのはドラマの世界の中だけ
労働契約法16条、条文の基礎となった最高裁判決(高知放送事件、最高裁昭和52年1月31日判決)では、次のような事情についてすら、解雇が無効とされました。
ラジオ放送のアナウンサーが、
1)宿直勤務で寝過ごし、午前6時からの10分間のニュース番組を放送することができなかった。
2)その2週間後、再度寝過ごし、午前6時からの10分間のニュース番組を、5分間放送できなかった。
3)2回目の寝過ごしの際、上司から求められた事故報告書に、事実と異なる内容を記載した。
法律上の解雇理由があったとしても、労働基準監督署から解雇予告除外のための事前認定をもらわない限り、解雇は1カ月先にするか、1カ月分の給与(予告手当)を支払わないと、手続き上、
「即時解雇」(今すぐクビ)
をすることはできません。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【「オマエなんて今すぐクビ!」と言えるのはドラマの世界の中だけ】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 確実に解雇できるのは本人が有罪判決を受けたときくらい!?
日本の法令環境において解雇が認められるのは、殺人や傷害や強盗や窃盗や横領背任などの犯罪行為や、それに準じるような非違行為を従業員がやってしまった場合です。
しかし、
「無罪の推定」
という近代社会のルールがある以上、
「逮捕された」
「起訴された」
程度では、解雇は認められません。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【確実に解雇できるのは本人が有罪判決を受けたときくらい!?】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4: 会社の解雇権は有名無実化している
逮捕や起訴のような状況であってもなお、解雇は得手勝手にできるわけではありません。
「とりあえず、判決出るまで休職にすべき」
という法理が浮上するからです。
それほどに、労働者はシビれるくらい手厚く保護されており、半面、会社の解雇権は有名無実化しているのです。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【会社の解雇権は有名無実化している】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点5: 「著しく労働能力が劣り、向上の見込みがない」ことの立証が必要
東京地裁平成11年10月15日決定(会社側敗訴の裁判事例)では、
「平均的な水準」
に達していなかった従業員について、就業規則に規定されていた
「労働能力が劣り、向上の見込みがない」
にはあたらず、本件解雇は無効であるとの判断がなされました。
要するに、裁判所は、
1)「クビにしたい従業員の能力が平均以下」というだけではダメ
2)他の従業員と比べると成績が低い、という相対評価ではなく、絶対評価で「著しく労働能力が劣る」必要があること
3)「向上の見込みがない」にあたるためには、体系的な教育、指導を実施したのになお、向上しない、ということが必要であること(かつ、そのような教育・指導をした証拠があること)
を求めているのです。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【「著しく労働能力が劣り、向上の見込みがない」ことの立証が必要】その1ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【「著しく労働能力が劣り、向上の見込みがない」ことの立証が必要】その2をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点6: 裁判に至る解雇トラブルにおいて、会社がやらかしたミス
上記の裁判例では、具体的に証拠をもって裁判所に説明できなかったことが、会社敗訴の原因の1つとなっています。
「過去数年間にわたる、従業員の傍若無人ぶりや、従業員に対する教育等」
について、会社が文書化して証拠としていなかった、というミスが、裁判での負けを導いたといえるでしょう。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【裁判に至る解雇トラブルにおいて、会社がやらかしたミス】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点7: 解雇不自由の原則(“解雇不可能”の原則)
東京高裁平成25年3月21日判決(会社側勝訴の裁判事例)では、適切な証拠が会社から提出された結果、普通解雇を認めた判決が下されています。
しかし、会社が勝訴するまでに費やした時間、労力、コストを考えると、
「企業経営として現実的に考える限り、解雇は、やっぱり“事実上”不可能」
というほかないと思います。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【解雇不自由の原則(“解雇不可能”の原則)】をご覧ください。

モデル助言:
辞めさせたい従業員と縁を切るには、相手に退職を納得してもらい、辞めていってもらうのがもっとも正しい方法です。
さらに言うと、忙しいからといって、能力や適性を考えず、だれでもかれでも採用する姿勢自体、考え直したほうがいいかもしれませんね。
以上の詳細は、ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【今回の経営者・鬼田(おにた)社長への処方箋】その1ケース13:採用は自由、されど解雇は不自由。それも、シビれるくらい不自由【今回の経営者・鬼田(おにた)社長への処方箋】その2をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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