00314_金融商品取引法の課徴金制度

課徴金制度とは、法令違反行為を行った者に対し、
「行政罰」
としての金銭的負担を課す制度ですが、金融商品取引法のほか独占禁止法においても定められているものです。

インサイダー取引など悪質な法令違反行為に対しては、従前から懲役や罰金など
「刑事罰」
による制裁システムが存在しました。

しかしながら、
「刑事罰」
を発動するためには、裁判手続において厳格かつ慎重な立証が必要で、最終的な解決までに何年もかかってしまいます。

金融商品取引法令違反行為の是正にこのように煩瑣で面倒な手続を逐一履践していては、適時に罰すべき行為が放置されることになり、日々発展し変化を遂げる証券取引におけるモラルハザードが助長されかねません。

そこで、違反行為に対して簡単かつスピーディーに金銭的なペナルティを課して金融商品取引秩序を維持すべく、2005(平成17)年の証券取引法改正(その後金融商品取引法に制度承継)により
「行政罰」
たる課徴金制度が導入されました。

「簡単かつスピーディー」
といっても、曲がりなりにも、企業に対し一定の不利益を食らわす制度ですから、いきなり
「何時何時までに課徴金としてX億円を支払え」
という命令を下すわけにはいきません。

適正手続を保障する観点から、金融庁での審判手続によって違反事実の有無が審理され、これに基づき、課徴金納付命令発令の是非が判断されることになるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00313_「特許を受ける権利」という制度のないアメリカでの、企業出願の注意点

発明者ファースト国アメリカでは、特許を受ける権利という考え方がなく、発明をした者しか特許出願できません。

この関係で、アメリカで特許を出願する者は、出願に際し、
「当該発明は自分こそが最初の考案者である」
という内容の誓約書を同時に提出しなければならないとされ、発明者と出願人の厳格な一致が要求されます。 

アメリカにおいて、これに反し発明者ではない者を発明者として出願した場合、当該特許の有効性が疑問視されるリスクが生じることになります。

経営者や管理者等、明らかに発明者ではない者が、アメリカで、発明者として特許出願し、特許権が付与された場合であっても、後日の裁判で特許が無効とされる危険が生じます。

アメリカで社内事情のことはわからないだろうからバレる危険性がない、と考えるのは危険です。

アメリカの訴訟でのディスカバリー(証拠開示)手続きにおいて、事実認定のための証言録取(デポジション)を実施し、磐梯さんが本当にこの発明を行ったかどうかを攻めたてることはアメリカの特許弁護士の十八番(おはこ)です。

特に、技術に関する何のバッググラウンドもない経営者や管理職が発明に現実的かつ具体的に携わったか否かという点も、相手方の弁護士の巧みな尋問にあえば、すぐにウソがバレてしまいますよ。

見栄のため発明者を気取ったばかりに、せっかくの特許権が使えなくなってはバカバカしい限りですので、発明者ファースト国アメリカで企業が特許出願する場合、現地の出願代理人とよく相談して、発明者の特定には細心の注意を払って出願すべきです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00312_「特許を受ける権利」と「発明者」

「特許を受ける権利」
すなわち、特許を出願し、特許権の付与を受けることができる者は、特許法上、
「産業上利用することができる発明をした者」
すなわち
「発明者」
であるとされています(特許法29条柱書)。

しかしながら、
「発明者」
とはどのような者を指すかについては明文の規定が存在しません。

学説上は、まず
「発明」

「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」
と定義した上で、
「発明者」
について、
「発明の創作行為に現実に加担した者だけを指し、単なる補助者、助言者、資金の提供者あるいは単に開発等の命令を下した者は含まない」
としています。

よく、発明や特許出願に関与した者へ名誉を与える趣旨で発明者の上司や所属企業の社長も発明者欄に記載して出願を行う慣行を持つ企業がありますが、後日、上司が発明者に該当するか否かが争われた事例において、東京地方裁判所2001(平成13)年12月26日判決は、研究開発環境を整備したにとどまる者や単なる後援者は発明者ではないと判断しています。

なお、日本では、発明者ではなくても、発明者から特許を受ける権利の譲渡を受けることで、出願人として、当該発明にかかる特許を出願することが可能です(アメリアではこのような出願はNGです)。

著者:弁護士 畑中鐵丸
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00311_パテントプールの具体的内容と独禁法抵触のリスク

パテントプールとは、特許権等の知的財産権を有する企業が
「仲良しグループ」
を作って、各自が保有している知的財産権を企業が合同で出資する特定の会社(ジョイントベンチャー会社とかコンソーシアムとかいわれます)に管理させ、メンバーの企業だけが知的財産権を使えるような仕組みのことをいいます。

例えば、音楽や映像を録音・再生するために必要な技術が標準化された場合、これに対応した製品を作ろうとすると、どうしても当該標準化に対応した技術を使う必要が出てきます。

しかし、標準化された技術には、標準化の前後に多数の知的財産権が取得されており、各権利者に支払うライセンス料が積み上がると合計のライセンス料は高額になりますし、また各特許権者と個別にライセンス契約交渉するのも面倒です。

このようなこともあって、パテントプールというシステムを作ることによって、単一のライセンス窓口から機器製造に必要となるライセンスを一括して安価で受けることが可能となる、というわけです。

パテントプールは前記のような建前で実施されますが、これは使い方によっては機器製造市場に参入しようとする新参企業をのけ者にする格好の道具として使えます。

独占禁止法では、新規参入者を市場から排除する行為を排除型私的独占行為として違法としております。

こういう新参者に対する陰湿なイジメ行為も、あからさまな排除や妨害ではなく、
「知的財産権は独占権だから、誰にライセンスしようがこっちの勝手でしょ」
という理屈の下、パテントプールのライセンスを拒否する(あるいは新参者にだけ不合理なライセンス料を吹っかける)という形を取れば、スマートは私的独占行為が行えます。

このように、パテントプールは、公正且つ自由な競争を阻害することに使われるケースもあり、東京高等裁判所2003(平成15)年6月4日判決も、
「パテントプール自体が直ちに独占禁止法に違反するというものではないが、当該パテントプールの運用の方針、現実の運用が、特許権等の技術保護制度の趣旨を逸脱し、又は同制度の目的に反すると認められる場合には、特許権等による権利の行使と認められる行為に該当せず、独占禁止法違反の問題が生じることがある」
と述べています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00310_反社会的勢力にまとわりつかれた状況における、企業ないし取締役個人としての対処法

ある株式公開企業が反社会的勢力により
「株付け」
され、これをきっかけとして、総会対策名目で接点を作ってしまい、その後は、
「指示に従わないと生命に関わる脅威」
をちらつかせ、言うなりになるよう、恐喝が始まったケースを考えます。

そもそも、企業が株式を公開している以上、自社株式が誰の手に渡ろうが、会社にとっては無関係な話です。

教師も警察官もヤクザも、みんな株を買える。

これが株式公開というものですから。

もっとも、金融商品取引法に違反する違法な買い占めなど買い集め段階での違法行為があったり、株主総会でルールを無視した進行妨害をするなど株主権行使段階での違法行為があれば、それは別途法律違反になります。

好ましくない方が株主になったからといって慌てる必要などそもそもなく、平常心で日々の経営にあたり、株主からの必要なご要望は株主総会で聞けばいいだけです。

株主から身の危険が迫るほど脅されたのであれば、それは経営問題ではなく刑事事件です。

刑事事件の対処法は、取締役会で何時間話し合っても答えなど出ませんので、早急に警察に行くべきです。

警察に行くのも怖ければ、極論とはなりますが、取締役を辞めてしまえばいいだけです。

取締役はいつでも辞任できますので、特段の手続が必要なわけではありません。

辞任届を提出してしまえば、それで関係は切れますし、
「カネの切れ目や役職の切れ目は縁の切れ目」
とばかり、反社会的勢力もそれ以上付き合っても何の得にもならず、自然と離れていってくれることも期待できます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00309_総会屋の撃退に失敗したことが企業危機に発展した事例:蛇の目ミシン事件

ある仕手集団が88年から90年にかけて蛇の目ミシン工業株式を買い占め、同社の経営陣(当時)に対して高値引き取りを要求し、融資名目で約300億円を脅し取ったり、蛇の目ミシンに子会社の債務保証をさせる等した事件が発生しました。

仕手集団元代表自身は恐喝等の罪で懲役7年の実刑判決が確定しましたが、その後、
「この事件が原因で会社が巨額の負債を抱える等の損害を被った」
などとして、蛇の目ミシン工業の株主が、当時の社長ら旧経営陣5人に対して、同社へ939億円の損害賠償をなすよう求めた株主代表訴訟が提起されました。

東京地裁(1審)も東京高裁(2審)も、金員の要求が生命に関わる暴力的な脅しであった点を重視し、
「やむを得なかった」
として旧経営陣らの責任を否定しました。 

ところが、最高裁判所は
「経営陣には株主の地位を乱用した不当な要求に対し、経営者は法令に従った適切な対応をする義務があった。恐喝行為について警察に届けず、会社が巨額の損失を被るような理不尽な要求に応じた」
旨判示し、取締役の責任を認めました(東京高裁に差戻しされた後、損害賠償額は約583億円で確定)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00308_株主の権利の行使に関する利益供与罪

日本の企業社会では古くからの悪習として、株主総会の進行の補助や妨害を行わないことの見返りとして金品を要求する特定の筋の方々(いわゆる総会屋。法曹業界用語では「特殊株主」などといいます)に対する利益供与が繰り返されておりました。

この悪習は、
「自社の体面を保ち、株主総会をトラブルなく済ませたい」
という経営者側の意向と、
「株主総会のスムーズな進行に協力することを収入源のひとつとしたい」
という特殊株主の意向が見事に合致し、これに
「どうせ、サイフを痛めるのは会社だから」
という経営者の無責任な姿勢が融合して産まれた、世界にあまり誇れない日本の企業文化です。

しかしながら、1981年の商法(現会社法)改正以来、このような利益供与行為は罰則をもって禁止されるようになり、その後さらに処罰範囲が広げられ、現会社法は、特殊株主が企業に対して利益供与を要求した段階で犯罪とする(会社法970条3項)仕組を設けるに至っています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00307_残業代不払問題が刑事事件化して、処罰される危険性が生じ得ること

従業員と前述の36協定を締結することなく、従業員を週40時間以上勤務させた場合違法残業になりますし、週40時間を超える勤務時間につき法定の割増賃金(残業代)を支払わない場合、36協定締結の有無に関わらず、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられる場合があります。

この場合、割増賃金の支払いを懈怠している人事部長等の担当者のみならず、当該不払いを放置し、必要な措置を講じなかった役員も同罪に問われる可能性があるので注意が必要です。 

実際、2005年2月に、時間外賃金を支払わずに従業員にサービス残業をさせていたことを理由として、家電量販店大手Bカメラ社長ら役員8人らが労働基準法違反(割増賃金不払いなど)容疑で書類送検(刑事事件として立件する方法のひとつ)される、といった事件も起きていますので十分な注意が必要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00306_残業代不払問題が「取締法規としての労働法に基づくコンプライアンス・リスク」を生じる場合

会社と従業員との関係は、労働契約という民事の契約関係で成り立っていますので、残業代不払い等も単に民事上の問題と思われがちです。

しかしながら、労働者の生活を保障する観点から労働基準法により最低限の労働条件を定められており、国が会社と従業員との契約関係に介入し、罰則の制裁を以て、企業側一定の労働基準の順守を強制しています。

一口に労働法といっても民事、行政、刑事といったさまざまな問題があります。

懲戒処分の有効性や解雇理由の有無・解雇権濫用等が純粋な民事上の問題であり、また、労働安全衛生法違反や労災隠しが取締法令順守の問題であることは明白です。

ところが、残業不払いの問題は、残業代支払い義務の存否という一見民事上の問題だけでなく、他方で取締法令遵守の問題もはらむので、やっかいです。

すなわち、労働基準法36条において義務付けられた労働協約を締結することなく法定労働時間を超えて残業させたような場合には同条違反の問題が生じますし、また法的に明らかに発生したと考えられる残業代の支払いを拒否した場合には賃金全額払原則違反(労働基準法24条違反)が生じるなど、残業問題は労働取締法令コンプライアンスも含むのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00305_国際合弁事業をキックオフする際、注意・警戒すべき法的リスク

ビジネスを展開していく上で、新規分野に参入したり、海外進出するような場合が出てきます。

もちろん、会社の新規事業部門が、
「事業環境や会社の経営資源等から考えて、参入してうまくいくかどうか」
「うまくいくとして、どのくらいのタイミングで投資回収できるか」
等について事前検証(フィージビリティスタティ)をした上で、
「イケる」
と判断したら、そのまま新しい分野や外国市場に突入するというシンプルな戦略もアリです。

しかし、新規事業分野については調査では分からない妙な業界慣行やマーケット特有の不文律があったりしますし、海外市場進出の場合、文化や商慣習の違いによる苦戦や、外国企業参入に対する忌避感による猛烈な抵抗に遭遇することもあります。

そこで、事業進出リスクの分散・低減や既進出企業や現地企業との協力を得る目的で、複数の企業の資による新たな会社(合弁企業)を設立し、その会社に経営資源を投入して、新しい事業分野への進出が図られることがあります。

これが、合弁事業あるいはジョイントベンチャーと呼ばれるものです。

以上のような話を聞くと、合弁事業は非常に素晴らしいビジネス手法のように思われがちですが、実際は結構大変で、無残に失敗する例も相当存在します。

そもそも、合弁事業では、複数の企業が、複数の思惑で、ヒトやカネやエネルギーを投入しますが、
「同床異夢」
の状況が生じがちです。

加えて、海外の現地企業との合弁の場合、合弁そのものの難しさの上に、言語や文化、契約慣行等の乖離の克服という課題がのし掛かり、合弁契約締結まで参加企業の思惑の調整と文書化にエラい苦労しますし、契約をしてからも、日々文化的ギャップ克服の苦労が絶えません。 

苦労が実らず、国際合弁事業が失敗した場合、その事後処理はさらに大変で、
「国際結婚破 綻後の離婚紛争」
と同じような、かつ面倒くさい修羅場になることもあります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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