00101_企業法務ケーススタディ(No.0055):アメリカで懲罰的賠償判決を食らってしまった!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社スターダスト・ブレイカーズ 専務 武下 大五郎(たけした だいごろう、30歳)

相談内容: 
先生、チョリース。
てゆーか、ぶっちゃけ、オレ、ガチで困っちゃってんすけど。
ウチの会社、バブル絶好調だったおじいちゃんの代に、アメリカに進出しようとしたんすよ。
現地のコンサルタントから、
「その州で工場とか建てると、州の税金が無税になる」
とかノリノリなこと言われて、それで、おじいちゃんもノリノリになっちゃって、デカい土地を借りる仮契約結んだんですよ。
このコンサルタントは完全インチキで、税の優遇の話は最初からナッシングで、あと、工場近辺の道路がシャビーで、製品が港まで運べなかったらしいンすよ。
で、土地賃貸借契約をキャンセルしたら、今度は、地主から
「詐欺だ」
とか言われて訴えられちゃって、現地の弁護士に依頼してがんばったんですけど、裁判ではボロ負けしちゃって。
判決ではキャンセルとかで迷惑掛けた10億円のほか、懲罰的賠償つうんですか、そんな余計な債務が30億円もくっついてきちゃって、それで、おじいちゃん、今は会長になってんすけど、超ブルー入っちゃって、寝込んじゃって動けないんすよ。
今、相手の弁護士から、
「日本で強制執行して、お宅の本社ビルとか根こそぎ取り上げてもいいけど、いろいろ手間がかかるから、40億円だけ払ったらあとは負けてやる」
とか手紙が来て、それで、孫のオレに、
「鐵丸先生に交渉してもらって、分割とかにしてもらってくれ」
って伝言ことづかって来たんすよ。
てゆうか、ぶっちゃけどうなんすか、これ。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:懲罰的損害賠償
懲罰的損害賠償(punitive damages)とは、アメリカやイギリス等のコモンロー体系の国の法制度で、不法行為に基づく損害賠償請求事件において加害者側の非違性が強い場合に、一般予防目的(加害者に懲罰を与えて、将来の同様の行為を抑止する目的)の観点から、実損害の塡補としての賠償(補償的賠償)に上乗せして支払うことを命じられる高額の賠償のことです。
懲罰的損害賠償は、日本企業のアメリカ進出が盛んだった頃、アメリカの法体系の不気味で恐ろしい部分として企業関係者の間で有名なものでした。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:日本の最高裁はアメリカの懲罰的賠償判決を完全無視
アメリカの裁判で敗訴して損害賠償債務が確定した場合、無論、判決に基づいて強制執行され、これに基づいてアメリカ国内の被告企業の資産が取り上げられてしまいます。
ところが、被告企業が既にアメリカを引き揚げ同国内にまったく資産を持たない場合、原告側としては、日本まで追っ掛けていき、日本国内の被告企業資産に強制執行しようとしますが、これが実は一筋縄ではいきません。
アメリカで獲得した英文の判決書を、裁判所の執行受付に持ち込んで、
「すぐに強制執行してくれ」
とわめいたところで、何が書いてあるか不明な英語の紙切れを片手に強制執行を求める人間など、裁判所は一切相手する必要はありません。
裁判所は、
「外国判決に基づき日本国内で強制執行したいのであれば、当該判決を承認し、これを執行する旨の判決を日本の裁判所で取ってきてから、出直してこい」
と冷たくあしらうだけです。
アメリカの判決が日本で無条件に承認・執行されると考えるのは、大間違いです。
裁判も国家主権の行使である以上、日本の裁判所としては、外国の裁判所の判決で気に入らない部分があれば、一切無視できます。
実際、懲罰的賠償責任を含むアメリカの判決の承認・執行の是非が争われた事件(萬世工業事件)で、最高裁は、
「見せしめと制裁のために被上告会社に対し懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分は、我が国の公の秩序に反するから、その効力を有しない」
として、
「補償的賠償責任を超える懲罰的損害賠償責任に関しては、日本での強制執行は認めない」
旨判断しています。

モデル助言: 
相手方代理人の法律事務所は、多国籍展開しており、日本でも提携の事務所があるようですから、当然萬世工業事件判決を知っているんでしょうね。
だから、もし、本気で我が国で強制執行しようとしても、せいぜい10億円部分の賠償部分しか強制執行できないことは重々分かっている。
その上で、こちらの無知につけ込み、
「40億円にまけてやる」
とのオファーを出してきているんでしょうが、こんなの慌てて応じる必要はない。
取りあえず、先方の弁護士には、当事務所が交渉代理人に就任したことを知らせ、その手紙で、萬世工業事件判決を引用しつつ、
「貴国の裁判で負けたとはいえ、日本での承認・執行裁判でリターンマッチの機会がありますので、当方としては徹底的に戦うつもりです。
東京地裁でお会いしましょう」
とカマしておきます。
日本の裁判がそこそこ時間がかかることは相手も知っているはずですから、そのうち音を上げて補償的賠償10億円前後での早期解決を内容とする和解条件を受諾するかもしれません。
ま、思っているよりも安く解決できるかもしれませんので、ブルーになっちゃっているおじいさんにも元気を出してもらってください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00100_企業法務ケーススタディ(No.0054):カルテルの疑いを晴らせ!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社名倉化学 名倉 懸壱(なくら けんいち、56歳)

相談内容: 
この前、
「原油高を考えるケミカル業界トップの会」
という新しく設立された業界の会合に出てきました。
当社は独自路線でやって参りましたし、私は業界の重鎮とは反りが合わないので、これまで業界のお付き合いはあまりしてこなかったのでが、このところの原油高はかなりひどい状況でして、業界全体としても何らかの取組が必要と考え、参加することとしたんです。
会合に来ていたのは10社程度。
参加者は社長クラスで、外資系証券会社の方のお話を聞くという程度のものでした。
無駄だったかな、と思っていたところ、反省会という名の食事会に誘われ、そこで、話題が価格カルテルの話になってきて、しかも、
「カバンの素材として使われる高品質のポリプロピレン材料の価格を一斉に値上げしよう」
なんて話になってきた。
ま、そりゃ、
「和を以て貴しとなす」
も重要ですが、今のご時世、カルテルが違法行為であることくらい、私でも知っていますよ。
こりゃいかん、と思い、早々に抜け出してきました。
そしたら、後日、会合参加企業が続々と値上げを始めたんです。
取締役会では、副社長が
「わが社は協定を結んでいないから、カルテル参加企業ではない。
『原油高で苦しかったので、かねてから値上げを考えていた』という理由で、わが社も便乗して値上げしましょう」
なんて言い出し、役員全員賛成しています。
とはいえ、心配なんで、取締役会では継続審議として、先生の意見も聞いてみようと思った次第なんです。
大丈夫でしょうかねえ。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:不当な取引制限行為(カルテル)
独占禁止法2条6項は、
「事業者間の共同行為で、相互に当該事業者の事業活動を拘束するものであって、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限する行為」
を禁止しています。
要するにカルテルや談合はイカンということですが、この
「イカンとされる理由」
がピンと来ないため、多くの企業がカルテルや談合に安易に手を染めてしまいます。例を用いて説明します。
オリンピックの100m競争をイメージしてください。
ある国が何がなんでも確実に金メダルを取りたいという場合、
(A)最終ランナー全員を当該国の国民にしてしまう
(B)最終ランナー同士の話し合いで当該国のランナー がトップでゴールできるよう競争をやめる
(C)当該国のランナーが自分の前を走る選手の足を引っ張ったりつかんだりして転ばせてしまう
ことが考えられます。
こんなことは競技の意味をなくしてしまうので、ダメに決まっていますが、独占禁止法も、同じ理念の下、市場での公正な競争を促すため、
(A)を私的独占とし
(B)をカルテルとし
(C)を不公正取引として
それぞれ禁止しているのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:価格引き上げ追随行為の違法性
独禁法が禁止しているカルテルは、事業者間の
「協定」
であり、何らかの話し合いが想定されています。
逆に言えば、本ケースのように、
「話し合いが始まってすぐに逃げ出し、協定自体に参加せず、同業者が実施したカルテルに一方的に便乗する行為」
は問題なさそうにも見えます。
しかしながら、商品価格の協調的価格引上げにつき黙示の意思の連絡による共同行為が存在したか否かが争われた事件で、東京高等裁判所は、
「特定の事業者が、他の事業者との間で対価引上げ行為に関する情報交換をしたような場合には、特段の事情が認められない限り、事業者間に協調的行動をとることを期待し合う関係があり、『意思の連絡』があるものと推認される」
という趣旨の判断を下しています。
本ケースにおいても、会合に参加した名倉化学が価格引き上げに便乗したら、原則として違法と判断される可能性が高いと言えます。

モデル助言: 
予防的観点から言うと、
「李下の冠」
「瓜田の靴」
の故事のとおり、明らかにヤバそうな会合には参加しないことでしょうね。
正式な事業者団体の会合であっても、法律に
「事業者団体自体が独禁法違反主体となる」
に明記されている以上、油断は禁物です。
本件に関してですが、情報交換の途中から抜け出し価格引き上げに追随した場合であっても、ダメというのが裁判所の判断である以上、便乗値上げはやめといたほうがいいでしょうね。
「(カルテルがあったからではなく)原油高のため、値上げさせていただきます」
という言い訳も、
「じゃあ、なぜわざわざこの時期を選んで値上げをしたのか」
という問いには答えられないでしょうし、やはり言い訳にも限界がある。
いっそのこと、御社のみ価格を据え置いてみられてはどうでしょうか。
100m競争の例でいうと、他のランナーが一斉にダラダラ歩き始めたわけですし、こんな連中ほっといて、全速力で走り続け、先頭切ってゴールするのが正しい競争の姿です。
あと、公取委は密告大歓迎ですから、タレ込みを平行して行い、カルテル自体を排除してもらうのもいいでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00099_企業法務ケーススタディ(No.0053):販売価格を拘束せよ!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社メガ・フェロモン 好下 艶子(すきもと つやこ、39歳)

相談内容: 
当社が取り扱うフランス製輸入下着
「マダム・エロス」
シリーズは、大手百貨店や当社認定代理店にしか卸していません。
当社認定代理店は全国で80カ所ほど設けておりますが、いずれも各都市のファッション街といわれるところに出店し、当社のイメージに合った高級感あふれる店舗外観を備えていただき、フィッティング・コーディネーターと呼ばれる認定販売員を常時在店させられるところに限って、代理店として認定しております。
この下着は、超高級感を売り物にしているので、ディスカウントショップに並ぶと、ブランドイメージが崩れてしまい、事業モデルが崩壊してしまいますので、流通管理は非常に苦労しました。
苦労の末、全国的な流通がようやく出来上がったと思ったら、先月、大手ディスカウントショップ
「ドン・ドン・ドキュン」(「トリプルD」)がマダム・エロスを格安で販売し始めたんです。
トリプルDがどういう流通経路で入手したか不明ですが、パッケージが日本語での表記ですし、国内卸商や国内代理店のどこかがひそかに卸しているものと思われます。
当社としても、これ以上見過ごすことはできませんので、来月の代理店大会の際、代理店や卸業者との契約を
「値引き販売しない。
認定フィッティング・コーディネーターが常時在籍する店にしか卸してはらならない。
また、ディスカウントショップ等には卸さない」
という内容を盛り込んだものに変更させようと考えています。
先生、契約書の改訂をお願いしてよろしいかしら。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:価格拘束の禁止
自由で公正な競争状態を維持することによる健全な市場経済の発展を目的とする独占禁止法の理念から言うと、モノの値段というのは、市場参加者間のガチンコ競争で決まるものであり、特定の誰かが有無を言わさず一方的に値段を決めるのは競争制限的であり、実にケシカラン行為ということになります。
このような観点から、流通業者に一定の商品価格を順守させたり(価格拘束行為)、あるいは卸先のそのまた卸先の販売店の価格を拘束したり(再販売価格拘束行為)する行為は、独占禁止法上、違法とされています(一般指定12項)。
最近では露骨でドギツイ価格拘束行為こそ影を潜めましたが、価格拘束を守らない業者には取引量を制限したり値引きを拒んだり、あるいはきちんと守る業者だけにリベートを支払ったり、といったソフトな拘束行為は根強く残っています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:専門販売員による対面販売義務づけ
次に、販売の「方法」面についても
「ディスカウントショップに卸してはいけない」
する行為が、独占禁止法に抵触する場合があります。
例えば、高級化粧品卸販売する際、
「専門販売員による対面販売ができる店以外に卸してはいけない」
という拘束を課すことがありますが、これが独占禁止法に違反するか否かが裁判で争われました。
最高裁平成10年12月18日判決は
「義務付けられた対面販売は、付加価値を付けて化粧品を販売する方法であって、化粧品という商品の特性に鑑みれば、顧客の信頼を保持することが化粧品市場における競争力に影響することは自明のことであるからそれなりの合理性がある」
という趣旨の判断をしています。
この判例を、
「対面販売は完全自由」
と言い切ったと解釈するのは早計であり、
「『それなりの合理性』がない対面販売の強制は独占禁止法に違反する」
との前提で取引構築すべきと思われます。

モデル助言: 
確かに、下着なんて、
「布キレ一枚にバカ高い値段を付けて売る、高付加価値商品の最たるモノ」
ですから、安売りされたらたまったもんじゃないですね。
とはいえ、独占禁止法を無視して川下の流通をがんじがらめに規制すると、これまた問題になる。
いずれにせよ、慎重な取引設計が必要です。
販売価格を拘束したり、
「ディスカウントショップなんて理由の如何を問わずNG。こんなところに卸したら理由を問わず即ペナルティ」
という仕組みは、販売方法の不当な拘束に該当する可能性があります。
他方、
「ブランドイメージの保持や正しいサイズや着用法を伝えるため」
という大義名分の下、専門販売員による対面販売を義務付けることは合理的な拘束と言えなくもありません。
ですので、
「合理的対面販売を拘束条件として契約設計し、結果として、対面販売条件をクリアできないトリプルDに卸せなくなった」
というシナリオはアリでしょうね。
と言いますか、完璧な価格統制をしたいのであれば、委託販売に切り換えればいいのです。
委託販売だと価格決定権は委託者が掌握しますし、現に委託販売と直営販売による販売展開をする高級アパレルメーカーは強力な価格統制を実現しています。
今まで
「売り切り・在庫なし」
の現在の身軽な経営スタイルからすると、無論、面倒な管理が増えますが、長期的課題として取り組まれてはいかがでしょうか。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00098_企業法務ケーススタディ(No.0052):アメリカの特許を侵害してしまった!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社チャーミング製靴 社長 江藤 晴美(えとう はるみ、44歳)

相談内容: 
先生、海外から大変な手紙来たんです。
英語だったので、最初、何かしらと思ったんですが、海外の企業からで、
「Patent Infringement」
とか何とか書いてあって、辞書を引きながら読んでいくと、どうやら特許権侵害を理由に商品製造の差止めと賠償を要求する通知書だったんです。
当社は、一昨年から、ダンス用のシューズで、ポーズが決まる度に
「グー」
「グー」
という音が鳴る
「グーグーシューズ」
を発売しているのですが、通知書によると、この音が鳴る仕組みがアメリカの
「サリバン社」
が10年前に取得した特許権を侵害しているというんです。
何でこうなったのか調べたところ、サリバン社の社長が日本に遊びにきたときにたまたまグーグーシューズをみて、
「この商品で使われている技術は、わが社の特許権を真似ているだけではないか。
すぐに法的措置を取れ」
という話になったようなんです。
グーグーシューズを企画・開発した商品開発部の部長に聞いたところ、彼は、アメリカで売っていたサリバン社が販売していた商品で、手を上げる度
「コー」
「コー」
と奇音を出すおもちゃのブレスレットにヒントを得てつくったということなんです。
ですので、パクリといえば、パクリであり、当社としても悪いことをしたことに間違いありませんので、来週にでもサリバン社のところに菓子折り持参で謝りに行こうと思っているんです。
とはいえ、私と商品開発部長だけでは不安なので、先生もついてきてもらえませんか。
戦ってもらわなくて結構なんです。
ほんと、私が謝るので誠意が伝わるよう通訳してもらい、最後にみんなで一緒に土下座するのに付き合ってほしいんです。
きちんと報酬は払いますから。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:国際特許など存在しない
飲み屋等でよく、
「ウチの特許は国際特許だぞ」
などということを自慢気に語る中小企業の社長さんがいらっしゃいますが、
「世界万国通用する特許権」
などは存在しません。
そもそも、特許権については当該権利が取得された国の領域内においてしかその効力が認められません。
すなわち、ある国で取得された特許権は、登録等を行って別途権利化の手続を取らない限り、他国では特許権としての効力が認められないのです(特許権における属地主義の原則)。
無論、ある特許を簡易な出願手続で、複数の国で出願した扱いにする便宜的な方法は存在しますが、これは出願についての仕組であり、最終的に特許権を取得するには、特許権を取りたい国ごとに登録等の手続を行わなければなりません。
さきほどの社長さんは、国際出願をしているというだけのことを大袈裟に言っているにすぎません。
本気で世界中の国で特許権を主張するのであれば、各国ごとに費用をかけて登録手続きをしなければならず、莫大な費用がかかることになります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:海外特許はパクリ自由
逆の言い方をすれば、日本国で効力をもたない海外の特許は、パクリ放題ということになります。
この点、米国特許法(271条(b)項及び283条)では、
「米国特許権を侵害する商品が米国外から輸入された場合、当該商品の輸出国での製造を差し止めることができる」
旨の規定があります。
かつて、米国特許権のみ行ない、日本には出願しなかった者が、米国特許権の技術範囲に属する日本の商品製造を差し止めるべく、
「オレの米国特許権を日本国内でパクるのはイカン!
米国特許法に基づき、日本国内での製造を差し止めよ!」
という訴訟を日本で提起したのですが、結果は、惨敗。
最高裁は、
「我が国においては、外国特許権について効力を認めるべき法律又は条約は存在しないから、米国特許権は、我が国の不法行為法によって保護される権利に該当しない。
したがって、米国特許権の侵害に当たる行為が我が国においてされたとしても、かかる行為は我が国の法律上不法行為たり得ず」
という趣旨の判断をしています(平成14年9月26日判決)。

モデル助言: 
菓子折りとか、土下座とか冗談よしてくださいよ。
こんなの全く無視でいいですよ。
海外の特許だからといって、無闇に慌てる必要はありません。
サリバン社が日本国内で特許権を取得していない限り、米国の特許権は、日本では全く効力がありませんし、アイデアのパクリは自由です。
特許が国際出願されていたとしても、成立後10年も経っていて日本国内での特許権が取得されていないということは、今後、日本国内で特許権が取得される可能性はほぼないとみていいでしょう。
「パクリ」
ということにずいぶんネガティグなイメージを持っておられますが、文化も産業も模倣を前提に発展していくもであり、知的財産権法も
「模倣は原則自由とした上で、例外的に模倣を不可とする範囲を限定的に定めたもの」
といえます。
ですので、パクリ呼ばわりされたからと言って、焦る必要はなく、むしろ
「アイデアをパクって悪いか。
何を根拠に文句ゆうてんねん。
根拠があんねやったら、具体的にゆうてみんかい!」
とカマすくらいの気持ちを持っていた方がいいですね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00097_企業法務ケーススタディ(No.0051):裁判所は権利実現に勤勉な者がお好き

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社ホース&ディアー 社長 スーザン・ヤマモト(スーザン ヤマモト、22歳)

相談内容: 
先月、突然、
「砂糖田はどこや?
どこにおるねん?」
とかいって大きな声でわめきながら、ウチのショップにコワイ人が来たんです。
パンチパーマで、剃り込み入ってて、ジャージ着てて、大きい声で、それで関西弁なんですょー。
砂糖田って、かなりバカで、日本語も怪しいので、ちょっと前に辞めさせたんですけどぉー、変なホストに貢いでたらしく、借金が相当あったようなんです。
私も店にすぐ駆けつけて、
「砂糖田は辞めました。
ウチは関係ありませんから帰ってください」
と言ったんです。
そしたら、この縞田っていう関西人は、余計に大きい声で、
「アンタ社長やろ。
従業員ゆうたら、子供と同じやんけ。
ちゃんとケツ拭いたらんかい。
ナメたことぬかしてたら、イてまうぞ、こら」
とか騒ぎだすんです。
こっちも
「警察呼ぶわよ」
と言ったら、途端に泣きだして、
「社長はん、たのむわ。
警察は勘弁してくれ。
ゆうたら、オレも必死やねん。
この借金とりっぱぐれたら、ワテ、指なくなんねん。
とりあえず、今日のところは、形だけでえーから、この紙にサインして判子押してくれへんか。
細かいこと書いてあるけど、まあ、ゆーたら、砂糖田に、ようゆうてきかせて、あんじょうやらせます、ゆう内容や。
な、たのむわ。
後生やさかい」
とか言い出すんです。
私も可哀相になって、言われるがままにサインして判子押したんですよ。
そしたら、先週、縞田が裁判を起こしたみたいで裁判所から呼び出しがありました。
そのときの私のサインした文書が証拠で出て来てるんですけど、
「確認書」
「連帯保証」
とか書いてある。
そりゃよく見なかったかもしれないけど、まるでインチキじゃないですか。
あのパンチパーマの関西弁を裁判所に呼んだら、絶対、裁判官もわかってくれるはずです。
私を騙した悪いヤツだって。
先生、絶対勝てますよね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:裁判では、人柄ではなく、文書が全て
一般の人が裁判でイメージするものといえば、サスペンスドラマでの刑事裁判で、検察官と弁護人がずらっと並んだ傍聴人をギャラリーに丁々発止のやりとりがあり、最後には、弁護人が鋭い反対尋問で証人を切り崩し、真実が明らかになり、正義が勝つ、といった内容です。
しかし、設例のような民事の事件の場合、ドラマの刑事裁判とは全く異なった様相を呈します。
まず、傍聴席は関係者が1人か2人いるだけで閑散としてますし、本件のような単純なケースの場合、尋問と言ってもせいぜい当事者本人2人を1時間前後で聞く程度。
尋問も丁々発止といった趣はなく、双方の弁護士が地味にダラダラと話を聞き、裁判官も眠気を押さえるのに必死と言った様子です。
というのは、民事では、文書がモノを言うからであり、こういう事件ではすでに勝敗が見えているからです。
民事訴訟法では
「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」(228条4項)
とされ、スーザンさん側が
「この確認書に書いてある字は私の字で、押されている判子は私がもっている判子を押したものです」
と言った趣旨の事実さえ認めれば、スーザンさんの敗訴は確定してしまうのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:自らの権利保全に勤勉な人
なるほど、裁判所がパンチパーマの味方をして、スーザンさんのようなか弱き女性を助けてくれない、というのは奇異な印象を受けます。
しかしながら、
「法は自らの権利保全に勤勉な人間を保護する」
という法諺があり、裁判所も、この原則を忠実に実現しようとします。
すなわち、
「パンチパーマで、剃り込み入ってて、ジャージ着てて、大きい声で、関西弁で、民事訴訟法や裁判実務をよく勉強し、ありとあらゆる手練手管を用いて、文書を徴収する」
縞田さんような人こそが、
「自らの権利保全に勤勉な人間」
として民事裁判上保護すべき、ということになります。
逆に、スーザンさんは、可哀相といえば可哀相ですが、言ってみれば
「ロクに文書を読まずにサインや押印をするようなだらしない人間」
なのであり、自己責任の原則を徹底して厳しい責任を課すこともやむを得ない、ということになるのです。

モデル助言: 
気持ちはわかりますが、必要性もないのに文書にサインして押印したスーザンさんがバカでしたね。
とっとと警察を呼べばよかったんですよ。
裁判所は
「通常の知性があれば、用もないのに、自分に不利なことを書いてある文書に判子押すヤツはいない」
という前提に立っており、逆に、債務を負担する内容の自署押印文書があれば
「よほどしっかりした合意の下、債務を負担したはず」
という思考を働かせます。
判子一発で高い授業料になってしまいましたが、仕方ないでしょう。
とはいえ、むざむざ引き下がるのも癪ですから、ちょっと応戦しましょう。
縞田が貸金業登録をしているとは思えないし、まともな金利で貸しているとも思えないし、手数料名目で相当なカネを差っ引いた上で貸している場合だってもある。
さらに言えば、恐喝の前科くらい持っているかもしれない。
砂糖田を探して金利条件や借入時の状況を聞くとともに、貸金業登録の有無を調べて業法違反の点を問題にしましょう。
さらに、裁判所の調査嘱託命令を得て前科情報を照会し、今回の縞田のやり方を非難する際の根拠として利用しましょう。
こうやってジタバタしているうちに、いい条件で和解できるかもしれませんから。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00096_企業法務ケーススタディ(No.0050):大手企業との共同開発に気をつけろ!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社明石水産 社長 杉本 高史(すぎもと たかし、52歳)

相談内容:
先生、今回の件は当社の社運がかかっておりまっさかい、よろしゅうたのんますわ。
昨年、当社が生きたままの秋刀魚を海水パックに入れて家庭に届ける技術を開発し、関西で大ヒットになったのは、先生も覚えたはりますでしょ。
あれですねん、あれですねん。
いえね、水産大手の森田水産はんが、
「当社も、魚の寿命が3倍に伸びすことのできる水を開発中です。
お互いの技術を持ち寄って共同開発し、配達地域を全国に拡大できるようにしませんか」
と持ち掛けてきはったんです。
ゆうてみたら、当社は、関西の小さな企業。
天下の森田水産はんと組めるちゅうのは、夢のような話でっせ。
来週にも森田さんとこ訪問して、NDAちゅうんですか、要するに守秘義務契約ですわ。
あれを結んで、お互い技術を公開して、仲良うやりましょ、みたいな話になっとるんですわ。
でもね、ウチの専務がですな、まあ、ゆうたらコイツは商社マン出身ですねんけど、
「森田水産さんとこはエゲツナイことしはりまっさかい、よう注意しとかなあきませんで。
あそこは、ニコニコしながら、有望な中小企業に近づいて、ええもん全部かっさらっていきよるんですわ。」
とか、言いますねん。
そやさかい、話進める前に、先生に注意せなあかん点を聞いてからにしょう思いましてな、ちょっと寄させてもろたんですわ。
どんなことに注意したらええんでっしゃろか。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:共同開発
共同開発とは、複数以上の企業(主にメーカー)の間において、得意な技術分野を持ち合ったり、不得意な技術分野を補完しあい、あるいは既存技術を出し合って新たな技術を生み出す目的で行われる企業間の技術交流・人的交流をいいます。
共同開発の一般的な流れで言いますと、まず、NDA(non-disclosure agreement、守秘義務契約)を取り交わし、保秘を前提として非公開の技術情報を相互開示し、共同開発の是非を互いに検討します。
共同開発がお互いの利益となるべきことが確認されれば、予算、人員、プロジェクト期間、開発ターゲット、成果物の取扱い、投資回収シナリオ等を決めていきます。
お互いの合意内容は、共同開発契約書として文書化し、取り交わすことになります。
共同開発契約の内容としては、開発段階の取り決めとして、開発費用、役割分担、既存技術の利用のルール等が、開発が成功した場合の取り決めとして、開発成果の帰属及び成果の利用・収益方法等が、それぞれ定められます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:共同開発契約における注意点
大きなメーカー同士における共同開発契約であれば、互いの法的武装力に格差はなく、不平等な契約になったり、騙したり、騙されたり、といったことはまず起こり得ないかと思われます。
問題は、設例(大企業と中小企業)のケースのように、契約当事者間に格差がある場合です。
中小企業においては、
「雲の上の存在とも言うべき大企業と共同開発できることで舞い上がっており、この種の経験値もなく、法的武装力ないし法的武装センスは皆無」
という企業も少なくありません。
他方、大企業においては、アホな中小企業が舞い上がっていて脇が甘くなっている状況を完璧に見抜き、
「共同開発」
という美名の下、事実上の技術収奪を図るケースがあったりします。
例えば、共同開発契約において、
「共同開発の成果については共有とし、相互に通常実施が可能。
共同開発の成果を実施する過程において必然的に利用すべきこととなる基礎技術については相互に無償で許諾」
などという条項を入れてしまえば、森田水産は
「共同開発成果の実施」
という大義名分の下、明石水産の開発技術を無償で利用できることになります。
こうなると、資本力に勝る森田水産は、技術優位性を喪失した明石水産など容易に駆逐することができようになります。

モデル助言:
まず、森田水産の
「魚の寿命が3倍に伸びすことのできる水」
ですが、仮にこんな水があったとして、御社の事業展開上、本当に必要なんですか。
そりゃ、確かに魚の寿命が伸びると、御社の技術と一定のシナジーは生じるでしょうが、今の日本の物流環境を前提とすれば、別に魚の寿命を3倍に延ばさなくとも御社の現状の技術で日本全国カバーできるでしょ。
海外への配達なんてこともあるでしょうけど、そんなのまだ先の話ですし、いずれにせよ、国内も満足にケアできていない御社にとっては不要不急の話のはずです。
御社が全国展開できないのは、資金と信用がないからであって、技術の問題ではないはずです。
舞い上がった状態で無目的に共同開発契約を取り交わすと、これが仇となって最後は森田水産に技術を収奪されるだけです。
森田水産は、御社の技術を使いたいだけであり、特殊な水の話は
「疑似餌」
だと思われます。
ですので、最初から、ライセンスなり販売提携なりという方向で話を進めた方がベターでしょ。
とにかく、共同開発という言葉に踊らされず、ゼロベースで冷静に検討し直すべきでしょうね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00095_企業法務ケーススタディ(No.0049):世間体の問題で破産できない場合の裏技!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社ペンタゴン 社長 周恥 雄介(しゅうち ゆうすけ、29歳)

相談内容: 
いや、恥ずかしい。
先生、当社の子会社がどうにもこうにもなんなくて。
いえね、当社の子会社で、株式会社テトラゴンってのがあるじゃないすか。
あの会社、海外からコンテンツ買い集めるためにつくって、常務の都留野に任せていたのですが、この都留野、顔はいいけど、頭はメジャー級のバカで、コンテンツ買い付けを現地のエージェントに丸投げして、いいように騙されたり、あちこちでチョンボをしでかして、ろくに売り上げも立っていないのに既に8億円を超える負債を抱え込んでいて、破綻状態です。
監査法人からは
「テトラゴン社みたいな不健全な会社は、とっととつぶしてしまえ」
と矢のような催促が来るのですが、子会社とはいえ、
「破産」
となると、いかにも見た目が悪く、ただでさえ低迷している株価は一挙に急落します。
幸い、テトラゴン社の債権者のほとんどは取引先や知人社長で、ある程度話がつけられる先で、当社との新規取引とのバーターで債権の一部免除に応じてくれるところも相当ありそうです。
ただ、子会社とはいえ、そこそこの規模なので、任意整理みたいなグレーな処理だとかえって説明が必要になりますので、ある程度透明な処理が必要です。
とにかく、当社の子会社が
「破産」
とか
「民事再生」
とかになったら、大騒ぎになるので、こういうレッテルだけは回避したいんです。
なんとか、なりませんか?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:会社の解散・清算
かつて、上場企業の株式を買い集めた某ファンドのトップが
「土地やカネをため込んで株主に還元しないなら、とっとと解散して、株主に分配しろ」
と主張しましたが、会計上は永遠の生命を持つとされる会社といえども、法律上は株主の都合で何時でも解体することができます。
すなわち、株主が会社を解散することを決めれば、清算手続が開始され、負債をすべて弁済した後に残った財産(残余財産)が株式数に応じて山分けされ、会社は消滅します。
この清算手続には、裁判所の監督は行われず、通常の事業活動と同様、会社関係者のみで自主的に進めることができます。
しかし、このような清算手続(通常清算)を取れるのは、債務超過ではない会社に限られます。
設例のような破綻会社の場合、債務弁済の過程で債権者間の不公平が生じる危険がありますので、裁判所が目を光らせる必要が生じます。
債務超過会社の破綻処理として一般的に考えられるのは、破産や民事再生ですが、裁判所から管財人や監督委員というお目付役が派遣され、強い監督や指導を受けなければならないほか、周恥社長の懸念のとおり、
「破産」

「民事再生」
というレッテルが貼られると、極めてネガティブなイメージが付きまとうことになります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:特別清算の妙味
ところで、会社法には、清算と破産のハイブリッド型の手続が用意されています。
会社法510条には、
「債務超過(清算株式会社の財産がその債務を完済するのに足りない状態)の疑いがある」
場合には、特別清算手続が可能とされています。
この特別清算手続ですが、裁判所の監督はあるものの後見的な監督にとどまり、破産手続のように管財人が派遣されて会社運営権が取り上げられるものではなく、会社が選定した清算人により自主的に清算手続を進めることができます。
そして、債権者と自主的に話し合い、ネゴが成立すれば、裁判所のお墨付きを得て、スピーディーに清算手続が完了します。
特別清算のおいしいところは、この
「債権者とのネゴOK」
というところです。
ある債権者は債権をとっとと全部放棄して税務上償却してしまうことを考えるかもしれませんし、ある債権者は親会社との何らかの取引とバーターで一部放棄するかもしれませんし。
このようなさまざまな思惑を、清も濁も全部ひっくるめ、ネゴが成立すれば、債務超過会社でも
「破産」
ではなく、
「清算」
という形で会社を解体してしまえるのです。

モデル助言:
要するに、特別清算っていうのは、
「債権者との談合による破産回避策」
という点で、非常に妙味のある手続なんです。
裁判所の監督を受けるので、外見上、透明性ある手続のように見えますし、対外的には、
「破産なんて、とんでもない。当社は、役割を終え、円満に清算したんですよ」
という取ってつけたような弁解も可能になります。
協定案は債権額の3分の2以上の債権者の同意が必要になりますが、裁判所のお墨付きを得るということも考えると、実務上はほぼ全員の同意が必要と考えていただいたほうがいいと思います。
少額債権者でキーキーわめくところには、保証なり連帯債務扱いなりして、親会社から全額払うこともアリですね。
清算人ですが、通常は清算法人の代表取締役が就くのですが、都留野さんが
「メジャー級のバカ」
だと不安でしょう。
適当な人がいなければ、当職が就任しても結構ですよ。
債権者のプロファイル付リストを早急に作っていただき、債権者対策の検討を開始しましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00094_企業法務ケーススタディ(No.0048):大口注文が突然キャンセルされた!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社欧米商事 社長 鈴本 鷹(すずもと たか、32歳)

相談内容: 
当社は、キャラクターの衣料を企画・販売していますが、昨年春に、飲み友達の若手芸人のためにオリジナルのトラのTシャツを製作したところ、その芸人の人気が出て、当社にもいろいろと引き合いが来るようになりました。
そうした中、大手子供服メーカーが、人気の出たトラの図柄の乳児用エプロンを作ってほしいと言ってきました。
担当者は、三浦という若いヤツでしたが、相手が大手ということもあり、社内プレゼン用にサンプルをいくつか作らされました。
三浦は、数ヶ月前に
「大々的に売り出す準備ができたので、量産に入ってくれ」
「欠品出すとメーカーの信用にかかわるのでそれなりの量が必要」
とか言い、大量の初期在庫を作るよう指示してきました。
いよいよ納品という段階で、三浦がそのメーカーを辞めたという噂が入りました。
何だか胸騒ぎがしたので三浦の上司と面談したところ、
「当社は高級ベビー用品を取り扱っており、お笑い芸人のTシャツと同じ柄などブランド戦略に反する。
彼は社内プレゼンはしていたようだが、商品化しないことは既に決定済みだった。
三浦だが、先月、本人から辞職の申し出があった。
とにかく、お宅にエプロンを発注した覚えはないので、持ち込んでもらっても困る」
と冷たく言われ、追い返されました。
エプロンにはメーカー名を入れてあり、他に転用できませんし、頭を抱えています。
相手が大手企業ということで信用しており、契約書や発注書は一切要求していません。
この損害、ウチが丸抱えしなきゃならないのでしょうか?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:口頭契約の危険性
ベンチャー企業の中には、大手企業からの指示で、大きな売り上げの見込みをエサにさんざんパイロット商品を作らされた揚げ句、担当者の
「やっぱ、やめた」
の一言で、突然、契約の締結を拒否され、その結果、莫大な損害を被るところが少なくありません。
こういう場合、大抵の大手企業側は、一切ペーパーを出さず、言質を取られず、責任者と言ってもペーペーの担当者がうろちょろするだけで、社長や役員は出てきません。
ベンチャー企業サイドは、売上が欲しいばかりに、米つきバッタのように、頭を下げ、大手企業からの発注を期待し、ありとあらゆる無理難題をのみ、発注書や依頼書等の書類の裏付けが一切ない状態で、お金や人的資源をつぎ込み、テストを実施し、サンプルを作り、さらには、設例のように、初期在庫まで作らされます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:口頭契約をドタキャンされた場合の対処法
とはいえ、設例のケースで
「ドタキャンされたまま泣き寝入りをしろ」
というのも酷といえば酷です。
そこで、ドタキャンされた後の話として、大手企業に何らかの責任を負担してもらう方法を検討してみます。
まず、
「契約準備段階の過失」
という法理です。
これは、契約締結に至らない交渉段階であっても、契約締結の見通しがなくなった段階で相手方に告知するなどの義務があり、これに違反したら、相手方の損害を賠償すべし、という判例上の理屈です。
また、設例の三浦の行動に、契約締結が困難となった状況を故意に知らせなかった等、違法とされるべき行動があった場合には、三浦氏の使用者たる所属企業に使用者責任(民法715条)を追及するということも考えられます。
さらに、欧米商事も相手企業も法律上
「商人」
とされますから、
「商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる」(商法512条)
の活用も考えられます。
最後に、この件は
「下請けイジメ事例」
とも考えられますので、下請代金支払遅延等防止法の活用も検討してみる価値があります。

モデル助言: 
大手企業がペーパーを出さず、言質を取られないようにするのは、最後までドタキャンする権利を確保しておきたいからです。
逆に、お付き合いをする側としては、こういうリスクを常に念頭に入れておかなければならないんですよ。
と言いますか、こういう大手企業のやり口を理解しておき、貴重なリソースをつぎ込む前に発注書を要求する対応をすべきだったんでしょうが、鷹社長はあまりに世間知らずでしたよね。
この種のトラブルは起こってからでは遅く、予防できるか否かで勝負が決まってしまいます。
とはいえ、泣き寝入りするのも癪に触るでしょうし、和解狙いで訴訟を提起しましょうか。
先程申し上げた法的手段ですが、いずれも確度の高い方法ではありません。
と言いますのも、裁判所からすると
「契約締結や発注書の徴収などの当たり前の法的予防措置を取らないで、代金支払いを拒否されるなんて、自業自得もいいところ。
賢く行動した相手先企業に文句垂れるのは筋違い」
という見方をされてしまいます。
ですので、法理を大上段に振りかざすのではなく、大手企業のひどいやり口を丁寧に説明し、裁判所に積極的にアピールすることが必要です。
あと、怒りを抑えて、当該担当者の三浦氏と接触し、彼をこちら側に取り込んで、相手先企業のやり方の不当性を証言してもらう証人として活用する方法もアリですね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00093_企業法務ケーススタディ(No.0047):海外取引先相手の素姓を確認せよ!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社トラブルバスター 社長 虎部 龍(とらべ りゅう、49歳)

相談内容: 
先生、ヨーロッパの有名な大学教授が開発した画期的なアンチウイルスソフトのライセンスが受けられそうです。
いえね、副社長である家内の美加が、ヨーロッパの視察旅行、といっても実際はファッションショーと買い物に行ったんですが、その際、知り合った現地のご婦人がアンチウイルスソフトの開発で有名なハックバスター教授の奥様だったんです。
家内が自分はソフト会社の副社長だと言うと意気投合したそうです。
そんなこんなで、ハックバスター教授を東京にお招きし、社を挙げて歓待させていただき、つい昨日帰国されたんです。
滞在中色々接待したのが効いたのか、ハックバスター教授も上機嫌になり、研究室に寄付をすること等を条件に、教授主導で運営しているコンソーシアム(企業連合体)が開発した、これまでにない画期的なウイルス対策ソフト
「ウィルス・ターミネーター」
の日本における独占販売権を当社に設定してくれる、というところまで話が進んだのです。
もっとも、求められた寄付額は日本円で8千万円ほどで、それ以外にも様々な条件があり大変なのですが、
「ウィルス・ターミネーター」
の独占販売権を手中にできれば、わが社も大きな飛躍が見込めます。
早速、明日にでも寄付金振込の手続をしようと思うのですが、全く、問題ないですよね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:海外取引先企業の素姓確認の重要性
海外企業との取引についてですが、一般に、株式市場で上場しているような著名な企業を取引の相手とするような場合、逐一素性を確認するような野暮なマネをする必要は乏しいといえます。
他方、あまり著名でない未公開の法人と取引する場合、著名法人自体ではなくその子会社や関連会社と取引するような場合、さらにはコンソーシアムとして運営されている企業連合体と取引するような場合、取引相手の法的素姓を正確に確認することは非常に重要です。
こんなことを言うと、
「はあ?
会社の素姓なんて確認する必要ねえよ。
実際、現地に行って担当者とか社長と会っているわけだし」
なんて声が聞こえてきそうです。
しかし、著名企業と提携したりする場合でも、実際契約相手として指定されたのは親会社の関係法人とはいえ「ホニャララLLC」という名の別法人だった、なんてケースがあったりします。
「LLC」とは、Limited Liability Corporation(有限責任会社)という意味ですが、法律概念における「有限責任法人」とは社会通念上「無責任法人」という意味にほかなりません。
それなりの資産や経済実体をもっている親会社と取引するならともかく、「無責任法人」とも言うべき関連法人と組まされて莫大な投資をさせられた挙げ句大失敗し、当の親会社を問い詰めても、
「ホニャララLLCは、当社とは別法人なので、関係ありません」
などスットボケられることがあったりします。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:コンソーシアムの素姓確認
本件で取引相手と目されるコンソーシアム(ある目的のために形成された複数の企業や団体の集まりのことを指します)ですが、法人格があるのかないのか、一体誰がどのような責任を持って運営しているのか、法的には素姓は明らかではありません。
そして、コンソーシアムの法的正体がハッキリしない場合、そこで開発された成果物の権利の帰属もハッキリしないこととなります。
すなわち、この種の法的な素姓が定かではない団体を相手に取引を進めるということは、法人格があるのかないのか、そこで生じた権利の帰属や譲渡・ライセンスはどうなっているのか、誰が代表でどのような機関決定に執行が拘束されるのか、という基本的取引条件が不明のまま、時間、カネ、リソースをつぎ込むことにほかならず、何も得られず徒労に終わるリスクを負う可能性があります。

モデル助言: 
8千万円を寄付するのは結構ですが、この投資をドブに棄てないようにするためには、事前に確認するべきことがあります。
まず、教授主宰のコンソーシアムなる団体の素姓確認です。
団体が法人格を有する場合、Certificate of Incorporation、Corporate Charter等日本の登記簿謄本に相当するものが存在するはずですし、法人格のない組合等の場合も規約等があるはずですから、まず、ハックバスター教授にお願いしてこれらのコピーを送ってもらい、コンソーシアムなる団体の運営の法的仕組をきちんと確認してください。
万が一、ハックバスター教授が当該コンソーシアムの代表権限を有していない場合や、教授が代表者であっても排他的ライセンス設定に必要な機関決定が得られる見込みがない場合、教授にいくらカネをつぎ込んでもソフトの権利を取得する見込みはゼロです。
やる気になっておられるところ、水を差すようで恐縮ですが、こういう基本を確認することもなく、舞い上がった状態で8千万円の寄付を実行しても、何も得られず惨めな思いをするだけですから、もうちょっと冷静になられて、事前にやるべきことをやってから取引に着手されたらいかがでしょうか。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00092_企業法務ケーススタディ(No.0046):従業員のネットワーク利用状況は監視できるか?

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社クィーン通販 社長 西岡 須磨子(にしおか すまこ、33歳)

相談内容: 
この間、ウチのお取引先のお客さんから、
「そちらの従業員の方で、ネットの掲示板で社長の悪口書いている人いるみたいよ」
と言われので、書き込みを指摘されたネットの掲示板を見てみたんです。
そしたら、まあ、あること、ないこと書いてあって、腹が立って、腹が立って。
社内のことを事細かに書いてあって、犯人が社内の人間であることは明らかです。
犯人を探そうとしたんですが、犯人につながる特定情報は巧妙にぼかしてあって、誰がやったか分からない。
さらに腹立つのは、書き込みされた時間帯が午前11時とか、午後2時とかの勤務時間中ということなんです。
当社は、従業員1人に付きPC1台を持たせており、常時インターネットに接続できますが、勤務時間中個々の従業員がPCをどう使っているかまでは管理していません。
従業員のPCのアクセス状況やどんなメールをしているか調べようと思い、中途採用したネットワーク管理の責任者に調べさせようとしたら、
「プライバシー侵害になりませんか?」
と言われ、そういう覗き見のようなことをしていいかどうか迷い始めました。
大体、PCもネットワークも言ってみたら、会社の資産であって私物じゃないでしょ。
会社が会社の資産の運用状況を調べるのは当然だと思うんですが、他方、プライバシー侵害と言われると、そんな気もしますし。
あ”―――――、もう先生、どうしたらいいんですか。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:従業員によるネットワーク利用状況のモニタリング
従業員によるネットワーク利用状況のモニタリングについては、
「会社の資産であって私物じゃないから、会社が会社の資産の運用状況を調べるのは当然」
という論理も成り立ち得ます。
しかし、モニタリングの可否については裁判例で結構争われており、
「会社による利用状況のモニタリングが無条件、無限定に可能」
というわけではない、というのが一般的見解です。
裁判例(フィッシャー事件、東京地方裁判所平成13年12月3日判決)では、
「監視目的、手段およびその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益を比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となること解することが相当である」
とされており、判例上従業員によるネットワーク利用状況のモニタリングがプライバシー権侵害となり得ることのルールが採用されています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:従業員から徴収すべきモニタリング受諾書 
とはいえ、前記裁判例では、
「従業員による電子メールの私的使用の禁止が徹底されたこともなく、従業員の電子メールの私的使用に対する会社の調査に関する基準や指針等、会社による私的電子メールの閲覧の可能性等が従業員に告知されたこともない・・(中略)・・ような事実関係の下では」
ということも述べられています。
つまり、何の前触れも告知もなく、いきなり、興味本位で覗き見するようなタイプのモニタリングはプライバシー権侵害の問題となり得る、ということです。
以上からしますと、従業員からあらかじめ
「必要かつ相当な範囲においてネットワーク利用状況をモニタリングを了解する」
旨の文書を徴収しておくと、不祥事調査にまつわるプライバシー権侵害云々のクレームを逓減させることが可能となります。
受諾書の文例としては、
「私は、貴社が機密情報の保護・雇用管理その他貴社の経営の都合上、私に断りなく、私の発信しあるいは受信する電子メールや私が保有するパーソナルコンピュータその他の端末から社内外のサーバにアクセスしあるいは操作した状況等をモニタリングすることをあらかじ予め異議なく承諾し、同意します  X月Y日 従業員氏名」
のようなものが考えられます。

モデル助言: 
先程申し上げたような受諾書を準備し、従業員から一斉に徴収を求められたらどうでしょうか。
とはいえ、受諾強要するのは御法度。
あくまで、誓約内容と会社経営における重要性を十分理解認識してもらった上、自主的に提出してもらう、というスタンスでいてください。
万が一、誓約書の徴収を拒むような方々がいたからといって、それで一切モニタリングができないか、というとそうではありません。
前掲判例のとおり、受諾書は
「あれば、モニタリング実施のハードルが低くなる」
という程度のもので、
「受諾書がなければ、絶対モニタリングできない」
という関係には立ちません。
ネットでの誹謗中傷の具体的内容を見せてもらった上でないと判断できませんが、当該書き込み内容が企業価値を損ねるような誹謗中傷であって、公益目的も推認できず、また、手段方法面においても、私用のデータを含む地引き網的な探索ではなく、犯人特定の範囲で必要かつ合理的な範囲のモニタリングや調査であれば、
「受諾書や事前の告知がなくともプライバシー権侵害なし」
とされる可能性は高いと言えます。
本来は、パソコンやネットワーク環境を導入する際に、ルールを作っておくべきだったんでしょうけど、ま、大きな問題が起こる前で良かったですね。
早急に受諾書作成、徴収の準備に入りましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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