01492_「ちょいマケてよ」と値切って債務問題の解決を志向する任意整理とは

任意整理は
「債務の減免」
を狙う場合や担保不動産処理を行う際に取られる手段です。

任意整理には、元本が減る、利息が減るなどさまざまなメニューがあります。

リスケとの違いは、時間をいじる(返済額は変わらないが、返済期間だけ先延ばしする)だけでなく、額や担保等をいじらないとどうしょうもない場合、任意整理が検討されます。

平たくいいますと、
リスケが
「ちょいタンマ(Time out=待って)」
という時間猶予を求めるリクエスト
であるのに対して、
任意整理は
「ちょいマケてよ」
という、値切りを言い出すリクエスト
である。

そんなイメージです。

リスケはビジネスマターになりますが、任意整理はリーガルマターになります(ただし、必ず弁護士が介在する、というわけではありません)。

普通、最初に契約したとおりの約定金利を払えなくなると、遅延損害金という非常に高額な利息が発生し、これがものすごい勢いで増えていくことになります。

しかし、任意整理の場合、そこをなんとか落ち着けるという方向での回収プランを練ります。

稀なケースではありますが、スポンサーが借金の一部を支払うから、残債免除ということもあります。

つまり、
「返済できなくなったのなら仕方がない」
という現実的な前提をもとに、今できる範囲で最良の着地点を見出すことを任意整理というのです。

「任意整理法」
という法律があるわけではなく
「和解」
すなわち、妥協と互譲による話し合いのひとつです。

法律上の和解とは、お互い条件を譲歩して合意をするということです。

任意整理は、債務者側の弁護士から金融機関への打診になります。

「民事再生や破産などになってしまうと、銀行の取り分がなくなりますので、お互い痛み分けでいかがでしょうか」
というイメージです。

銀行から提案してくることは、まずありません。

銀行からすると、任意整理は自分たちが持っている債権を放棄することになるので、それを口にするということは
「会社の大事な商品を、自己判断で、廃棄する」
と同じになってしまうからです。

ただ、銀行はなかなか任意整理に応じてくれません。

なぜかというと、例えば
「お金がないから」
といわれても、本当にお金がないのか確認できないからです。

極端な話、庭に穴を掘って金塊を隠しているかもしれません。

債務者にいわれるがまま任意整理していたら、モラルハザードになってしまいます。

ですから、特定調停や再生、破産などの手続きによらずに強引に応じるだけの複雑な事情がなければ、易々と任意整理をしてくれません。

ただし、サービサー(委託ではなく買い取ったもの)の場合は例外的です。

例えば、会社と個人連帯保証人付きのバブル期の不良債権(10億円)あったとします。

それを中小企業の経営者が返せなくなりました。

ただ、銀行のバランスシートに乗っていると、いつまでたっても自己資本比率が改善しないので、銀行経営の足を引っ張ることになってしまいます。

そのとき10億円の債権をサービサーが買うのです。

銀行からすると、すでに引き当てが済んでいるので、10億円の債権は経済実態では安く売り払っても問題ない、という立て付けとなります。

そこで、名実ともに債権の本来の所有先もサービサーに変えるということです。

このとき債権を買い取る金額が、元本が数億円単位の債権が、50万円、100万円とかいう投げ売り価格で取引される世界なのです。

これを称して、業界では
「ポンカス債権(ポンコツで、カスの債権)」
などと呼んだりします。

もともと値段がつかないので1円でもいいわけですし、銀行としては放置しておくと毎期資産勘定になってしまい、会計士の手間とコストがかかるので早く持っていってほしいわけです。

そういう意味では、銀行内部に貯めておくと管理の手間がかかるような、お荷物なわけですから、50万円、100万円でも高いといえるでしょう。

サービサーからのアプローチは最初、サービサーが債権譲渡通知を送付し、また、
「今後は、銀行ではなく、当社(サービサー)が債権者なので、当社に返済してください」
という督促状を出してきます。

ちなみに、お金がないので、督促されても払えないので、そのままにしておき、とうとう5年超経った、という例がありましたが、これは、事業用の債権ということもあり、5年の時効が完成し、チャラになる、とう結末となったそうです。

サービサーに
「こんな額、払えない。絶対無理です」
と、相変わらず
手元不如意の抗弁
で対抗すると、今度は、サービサーから
「いくらなら払えますか?」
という返しが出てくることもあります。

そのとき、
「10億円のうち1000万円なら」
などといわれたら、サービサーとしては900万円の儲けになります。

ですので、そういうときは
「10億円ということで、あんまり失礼なこといってもあれですから、でも1万円とか無理ですよね。本当にお金がないんですよ。いくらなら、いいんですか。ほんとカツカツです」
などといいながら、相手から条件を出させる方向で打診してみるのがポイントです。

明確な着地点が決まっていない交渉では、先に条件を言ったほうが損ですから

任意整理では、
「全額支払うのは難しい。でも、お金持ちの取引先にスポンサーになってもらってちょっと援助してもらえる」
などというと、銀行はとても喜びます。

スポンサーは、無理して正常弁済をするために登場してもらうのではなく、手元不如意の後、トラブって、任意整理になって、銀行がギブアップしはじめた、というタイミングで登場してもらうのがベストです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01491_「ちょいタンマ(Time out=待って)」と時間猶予を求めて債務問題を志向する「債務のリスケジュール(リスケ)」とは

リスケジュール(リスケ)は、
「借金の返済のタイミングや返済計画そのものを見直す」
という方法です。

リスケとは、いわば、
「ちょいタンマ(Time out=待って)」
といった趣きで時間猶予を求めるリクエストです。

なぜこんなことができるのかというと、銀行は破産されるくらいだったら無理のない計画に引き直して返済してもらったほうがダメージは軽く済むからです。

リスケは、本人が相談できる場合もありますし、銀行から提案されることもあります。

もちろん弁護士が指導して行うケースもあります。

いずれにせよ、リスケは交渉であり、下手に回ってしまうと良い結果は出せません。

リスケとは支払い時期を延ばすことですから、その分の金利も銀行側は取れるわけです。

銀行側にとっても悪い話ではないので、堂々と臨むことが大切です。

こちらが強気でいったとしても、銀行側から恐ろしい返答がくるわけではありません。

ですから、むしろ
「なんとかしてくださいよ」
「条件を緩くしてくれないなら、こちらも考えがありますよ」
くらいのカジュアルでイージーな気持ちで、ダメ元でいってみる、という感じでプロポーズしてみる、という考え方で差し支えないとも考えられます。

とはいえ、返済しきれないほどの多額の債務を抱えた債務者の場合、いわば、末期の癌の治療と同じです。

「根治する」
わけでも
「寛解」
するわけでもありません。

末期の癌と同様、返済しきれないほどの多額の債務は、改善したりするものではありませんから。

「返済しきれないほどの多額の債務のリスケ」
は、
「『末期の癌の治療』と称する営み」
と同様、
「治療」
という名の
「実質的・実体的にはただの延命措置」
をとっているだけです(癌の延命にも、多額の債務者の時間稼ぎにも相応に意味と価値があることは否定しません)。

リスケの際は、無理なく、調整された新しい返済計画を現実的に履行できるかがポイントです。

より正確にいうと、返済原資、すなわち
「無理なく、持続可能な形で続けられる、通常の事業経営から生じる余剰資金」
で長期間、将来にわたって返済していく、ということが続けられるかどうかが焦点になります。

なお、リスケは銀行から提案をされた場合でも普通に断ることができます。

「無理です」
と答えれば、銀行として、ソフトランディングを前提とする限り、大人しく引き下がり、譲歩を考えるほかありません。

このように銀行が弱腰にならざるを得ないのは、お金がない債務者、すなわち、
「『最強・最凶の抗弁である手許不如意の抗弁』をもって支払を停止してくる債務者」
に対しては、債権者が凄腕の弁護士を何人揃えても歯が立たないからです。

したがって、お金がない債務者相手の債権回収は、
「相手の任意の弁済にすがるほかない」
というほかなく、債務者が圧倒的に有利な立場で
「借金問題解決ゲーム」
を支配する、という形で革命的にルールが変わるからです。

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01490_法律実務の世界における「最強・最凶の抗弁」としての「手元不如意の抗弁」

借金は
「必ず返さなければいけない」
ものなのでしょうか?

この点、債務者側に立って、債務者側の弁護活動として、事件の構築を考えてみたいと思います。

ローン返済や貸金返済ができず悩んでいる大半の債務者は、多額のローン返済を抱えて月々の支払いが負担なとき、
「払わなければならない。だけど、今後は払えそうにない。万一の場合どうなってしまうのか……」
と不安に思うものです。

今のところ毎月のローンは、貯金や給与や賞与のやりくりで何とか返済できていても、このまま続けば別のところから借金して対応しなければならず、そうなると金銭的な負担が重くのしかかり地獄に落ちそう……そんな状況です。

しかし、そもそも
「生活を犠牲にして、あるいは別のところから借金をしてまで対応すべきなのか?」
という前提を疑う必要があります。

多くの方は、子供の頃から
「借りたものは必ず返さなければならない。それが最低限のモラル」
という教育を受けてきたと思います。

しかし、債務者から返済地獄を上手に助け出すためには、その
「モラル」という名の「偏見」や「思い込み」
を疑うことから始めなければなりません。

借金というのは生活を切り詰めたり、消費者金融から借りたり、家族や友人に頼るなど“無理”をしてまで支払う必要はありません。

無理をすること自体が間違っているのです。

不動産ローンを抱えた債務者(いわゆる「サラリーマン大家さん」など)で返済に苦しんでいる人などにとっては、返済不能状態に陥りつつある不動産ローンは、日本がものすごいインフレに見舞われ、不動産価格が大幅に上昇して大金持ち(といっても重篤なインフレとなると貨幣価値自体がないので、貨幣を持っていてもあまり意味がないのですが)になったとしても、全額返すのは難しいかもしれません。

お金を借りるときに
「支払える」
と判断しても、実際に払える状況になければ、逆立ちをしても、現実的にお金は返せません。

返せる可能性はほぼないのに金策に走り、友人や家族まで
「必ず返すから!」
とお金を無心するのは、友人や家族に嘘をついて騙すことになります。

そうなると家族の仲が引き裂かれ、友人も失い、取り返しがつかなくなります。

実に多くの方は、そこまでして借金を返すために頑張ってしまいます。

しかし、借金問題を解決する弁護士の常識からすれば、
「“(到底返せない)借金であっても、無理をして周囲に迷惑をかけてまで返さなければならない”というのは誤った固定観念であり、捨て去るべき偏見です」
ということになります。

昔から
「手元不如意」
という便利な言葉がありますが、これは
「家計が苦しくお金がない」
という意味なのです。

「生憎、手元不如意でな、払えぬものは払えぬ」
「不如意で支払いもままならぬ」
というセリフをテレビの時代劇で視たことがある方もいらっしゃると思いますが、これは
「借りたお金を返したいのは山々だが、お金がないので返せない」
という、なんとも志の低い、卑劣で、下劣で、呆れ返るしかない、開き直りの言い草です。

このように
「払いたいが、カネがないので払えない」
という弁済拒否理由を
「手元不如意の抗弁」
といい、法曹界という業界に限定すれば非常にメジャーな言葉です。

この抗弁ですが、法律実務においては
「最強・最凶の抗弁(支払請求に対抗するための拒否理由)」
といわれています。

この
「手元不如意」
が債務者から主張され始めると、どんなに恐ろしい暴力団や、どれほど優秀な弁護士であっても、手も足も出なくなります。

なぜなら、いかに強硬な債権者や優秀な弁護士でも、法律実務上では
「ないところからは取れない」
という、過酷な現実には立ち向かう術がないからです。

ちなみに、
「今から手元不如意の抗弁出します」
と宣言する必要はありません。

何もしないで大丈夫です。

放置です。

無視です。

ほったらかしです。

もちろん借金を返済せず、あるいは返済用の引き落とし口座に十分な資金がないまま入金もせず、ほったらかしにしていたら銀行は慌てますし、ほっといてはくれません。

この場合、銀行から
「どうされました?」
と聞かれます。

それでも、知らないフリをすればいいわけです。

といいますか、知らないフリしかできません。

なぜなら手元不如意だから。

話してもどうしょうもありません。

「話してもどうしようもないからといって、電話にも出ず、ガン無視する」
のは、たしかに
「人としてのモラル」
には反しますが、法に反することは考えられません。

将来、
「債権者無視罪」
とかが刑法典に加えられれば別ですが。

無視に、無視に、さらに無視をし続けて、しばらくすると、何度か銀行から
「どうされました?」
と聞いてきます。

とはいっても
「払えませんが何か?」
と答えるしかありません。

このようなやりとりが続くと、ようやく銀行の方で
「こいつ、手元不如意の抗弁で支払いを止めてきやがったな」
と認識するわけです。

これが、実務上の
「手元不如意の抗弁による支払停止方法」
なのです。

次に、ローンを提供した銀行等の債権者側からこの事態を観察してみましょう。

「訴訟」
にも
「コスパ」
という考え方があります。

例えば、皆さんが1億円を貸していた知人が、落ちぶれてホームレスになったとします。

この場合、どうされますか?

裁判を起こしますか?

訴訟を提起すると、弁護士費用に、裁判所に納める印紙代(裁判所利用料)、その他もろもろ、100万円はかかるかもしれません。

もちろん相手は争いません。

貸付は事実ですし、返済していないのも事実です。

争わない以上に、そもそも裁判にすら出頭しないかもしれません。

当然、欠席したことで、事実を争わず自白が成立したことになり、当該自白に基づき、1億円プラス延滞金利の支払いを命じる勝訴判決(欠席判決)が手に入ります。

でも、相手はホームレスです。

差押をしようにも、差押さえる財産そのものがありませんし、さらに十数万円の費用をかけて強制執行に赴いても、居住用資材として使っているダンボールとか、賞味期限切れのカップラーメンなど、処分するのに却って費用方がかかる廃棄物しかありませんので、強制執行は不能です。

とすると、
「期待値ゼロ円」
のプロジェクトに、100万円超を投じたことになります。

弁護士費用に加え、銀行内部の資源動員として費消した時間や労力、さらには機会損失等を考えると、サンクコスト(埋没費用)は、数百万円に上るかもしれません。

このように、訴訟といっても、
「コスパ」
を考えないと、さらなる大損をする危険性があるのです。

これが、
「お金がない人を取り立てても意味がない」
ということであり、
「手元不如意が債権回収実務において最強・最凶の抗弁」
と言われる理由でもあるのです。

「借りたものは必ず返さなければならない。それが最低限のモラル」
という固定観念(プロの債務整理弁護士からすると誤解ないし偏見)に支配され、生活を破壊せんばかりに無理し、別のところから借金をし、家族や知人に迷惑をかけてまで自主的に返済してくれる真面目で義理堅い人は、銀行からするとありがたい存在ではあります。

しかしながら、
・「手元不如意の抗弁を武器にしぶとく、したたかに対応していき、銀行と戦ってでも生き残りと再生を考えて死地や窮地を脱する」という行動の価値と有用性を深く知り、
・そのためにこそ味方になってくれる弁護士を見つけ出し、常識やモラルや固定観念ではなく、法律知識や「手元不如意の抗弁」や「訴訟のコスパ」といった、業界内の特殊なゲームルールを武器に生き残り策を考える、
といった
「クレバーな債務者」
に遭遇すると、銀行はひとたまりもありません。

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01489_法的トラブルに遭遇したとき、「ネットで弁護士の書いた情報を探しても、事件がうまく解決できない現象」のメカニズム

法的トラブルに遭遇し、行き詰ってくると、ほぼ全員といっていいほど認知能力が下がり、正しい思考ができなくなるようです。

「不安やストレス、焦り、緊張、パニックは、人を愚かにする」
ということは、経験上ご理解いただけると思います。

「ヤバい! これは、訴訟が起こされ、大変なことになりそうだ……」
という危機感を抱いた時点で、大半の人がすることはインターネットの情報収集です。

このとき、インターネット記事の中で、根拠があって信憑性が高そうなものを選んでいくと、自然と弁護士の先生が書かれたサイトに行き着くことになると思います。

しかし、高等教育を受けた人であっても、ネット上の記事を読んでも、弁護士の方々が
「何をいっているのかさっぱりわからない!」
という現象に陥ります。

弁護士の先生方は会話の水準を下げたり、話の目線を下げるスキルが不足しています。

また、間違った説明を書いてしまうことを恐れるあまり、自然と記事の中は、専門用語だらけとなります。

「正しい説明」=「親切でわかりやすい説明」
とは限りません。

「法律的に正確無比な説明」=「腹が立つくらいわかりにくく、何を言っているのかさっぱりわからず、まるで役にたたないクズ情報」
という公式が成り立つ関係に立つ、といえます。

その結果、一般の人(しかも精神的に追い込まれている)にとっては理解が難しい……いえ、端的にいうと
「言葉もわからない、話も見えない、いったい何を言いたいのか意図も不明な暗号文」
のような代物になってしまいがちです。

法的トラブルに遭遇し、危機感を抱き救済を求めて、ネットを何時間も彷徨(さまよ)っても、そこに出てくるのは古文か漢文、英語かドイツ語のような、僅かな手がかりはあるものの、読んでもさっぱり理解できない呪文か暗号文でしかない、という状況に直面する。

これが
「法的対処でしくじりそうになって、ヤバいトラブルに陥った一般的な方々」
の一般的状況です。

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01488_非欧米国際法務>特殊な課題・新たな課題>中国における知的財産問題

1 中国における知的財産権侵害状況

中国では、
「コピー天国」
といわれるほど海賊版が横行し、著作権侵害や商標権侵害等が多発しています。

2001年の世界貿易機関(WTO)加盟・知的財産権に関するTRIPS協定が適用されたことに伴い、中国でも知的財産権保護に関する国内法の整備が進められましたが、状況はなかなか改善されません。

これは、問題の背景に、

・一般市民には正規品の値段は高すぎるので、安い模造品が好まれる
・「物を盗るのは悪いが、作り方を真似することは盗みとは違い、許されることだ」という考え方が中国社会に根ざしているから

等といわれています。

被害国は、日本、アメリカ、 ドイツ、フランス、イタリアなどの多くの国に及んでいます。

このような現状から、米国通商代表部(USTR)は、知的財産権侵害に関して、中国をスペシャル301条(米国通商法における知的財産権侵害国に対する対外制裁規定)の優先監視国に指定しています。

2 日本の著名商標の無断登録

日本企業が被害を受けるケースも多く、従前から、著名ブランドのコピー商品やドラマやアニメの海賊版DVDの製造販売といった被害を受けています。

最近では、以上のような単純な模倣被害から、
「日本の著名標章が中国内で無断商標登録される」
といった知的財産権法を巧妙に利用した事件も発生しています。

この対応策に関しては、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所知的財産権部が
中国商標権冒認出願対策マニュアル
を作成しており、このようなものを参照しながら対策を取っていくことになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01487_非欧米国際法務>特殊な課題・新たな課題>中国における労働関連法令

中国においては、労働者としての権利意識が強まりつつあり、これに並行して、労働関連法規の整備が急速に進んでいます。

具体的には、従来から存在していた
「労働法」(1995年1月1日施行)
が労働者保護という点で不十分であったとして、労働契約の詳細を規制した
「労働契約法」
が制定され、2008年1月1日から施行されています。

「労働契約法」
では、労働契約の長期化と安定化を狙って、労働契約解除の場合のみならず、労働契約が期間の満了を理由に終了する場合も、使用者は原則として、経済補償金を支払わなければならないと定められています。

経済補償金は、原則として労働者の勤続年数満1年につきその1ヶ月分の賃金に相当する金額とされ、また、労働契約終了後に使用者が労働者に競業避止義務を課す場合には、競業避止義務が課される期間中(最長2年間)、毎月、経済補償金を支払わなければならないとも定められています。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

また、2008年9月18日には、さらに労働者保護を強化した実務上の運用方針である
「労働契約法実施条例」
が施行されています。

以上のとおり、従前は
「安い労働力を提供できる世界の工場」
であった中国ですが、労働者保護が強化され、これに伴い賃金が上昇していくことになると思われます。

「労賃が安いから」
という安易な理由だけで中国進出を検討している日本企業は、以上のような現実をふまえて戦略を再構築する必要があるといえます。

運営管理コード:CLBP697TO697

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01486_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>二国間協定(他国間協定)を利用する仲裁方法・第三国を利用する方法

1 仲裁に関する二国間協定(他国間協定)を利用する方法

仲裁判断を執行する国・地域がニューヨーク条約の加盟国ではない場合でも、仲裁判断を行った国・地域(「A国」とします)と仲裁判断を執行する国・地域(「B国」とします)が、個別に締結している
「仲裁判断の承認に関する三国間の協定」
又は、多国間協定などを利用することで、仲裁判断に基づいた執行を行うことが可能となります。

後者の例として、アラブ連盟に加盟する国・地域が締結している
「司法協力に関するアラブ条約」
が挙げられます。

2 第三国を利用する方法

第三国(「C国」とします)を通じて、A国で行った仲裁判断に基づきB国にて執行を行う方法です。

(1)B国がニューヨーク条約に加盟していない場合

A国及びC国がニューヨーク条約に加盟している場合で、B国とC国が個別に
「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」
を締結している場合には、
ア まず、ニューヨーク条約に基づき、C国の裁判所に対し、「A国で行った仲裁判断」の承認を求め、
イ 次に、上記C国の裁判所が行った「A国で行った仲裁判断の承認」をふまえて、C国とB国間の「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」に基づき、B国にて執行する、
といった方法が考えられます。

(2)A国がニューヨーク条約に加盟していない場合

A国とC国が個別に「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」を締結している場合で、B国とC国が個別に
「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」
を締結している場合には、
ア まず、C国の裁判所に対し、A国とC国間の「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」に基づき、「A国で行った仲裁判断」の承認を求め、
イ 次に、上記C国の裁判所が行った「A国で行った仲裁判断の承認」をふまえて、C国とB国間の「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」に基づき、B国にて執行する、
といった方法が考えられます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01485_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>「仲裁条約非加盟国の企業」を相手とする仲裁手続

外国仲裁判断の承認及び執行に関する国連条約(いわゆる「ニューヨーク条約」)に加盟している国で行われた仲裁判断については、いずれの加盟国でも当該判断は、当然に承認し執行されます。

しかしながら、ニューヨーク条約に加盟していない国(リビア、ミャンマー、モルディブなどの非欧米諸国)の企業や法人を相手に仲裁を行う場合、苦労して仲裁判断を得ても、当然には執行できず、現地にて再度訴訟を提起するなど
「仕切り直し」
が必要となってしまいます。

「仕切り直し」
訴訟についても、ニューヨーク条約非加盟国においては、法制度や裁判制度の整備が未熟なところも多くあり、結局、
「泣き寝入り」
となってしまう結果になる可能性が少なくありません。

次のようなニューヨーク条約非加盟国・地域の企業や法人との間で仲裁を行う場合、特別な方法を構築する必要があります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01484_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>仲裁手続の活用

非欧米圏の企業や法人と取引する場合、現地の裁判制度が信頼できないケースがあるため、紛争解決手段として、現地裁判所による裁判を忌避し、仲裁手続を活用することが好まれます。

仲裁手続では、自ら仲裁人を選ぶことも可能ですし、仲裁判断は最終的なものとして扱われますし(仲裁においては上訴手続がない)、非公開であることから企業秘密や事件プライバシーを保持することもでき、さらには、海外でも比較的迅速に仲裁判断に基づく強制執行が行えるからです。

ここで、非欧米各国の仲裁手続の状況を概説しておきます。

1 中国

中国の裁判所(人民法院)は自国民保護の偏向傾向があるといわれており、中国企業との間で紛争が生じた場合、外国企業に対し不利な判断を行う危険性があります。

中国もWTO加盟とともに外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)に加盟することになりましたので、中国の企業・法人と取引する際は、契約上仲裁条項を定めておき、契約紛争が生じた場合には仲裁手続による紛争解決をすることが適切と思われます。

中国国際経済貿易仲裁委員会が北京、上海、深圳等にあり、中国企業と外国企業との間の紛争のほとんどは、これらの地域で仲裁に付されています。

また、中国では、合弁会社の解散は、法律上、中国側の同意が必要とされていますが、仲裁判断をもって解散が認められた場合には、当該法律にかかわらず解散が認められており、ジョイントベンチャー契約において、デッドロック解消手段とともに、仲裁による解決を定めておくメリットは極めて大きいといえます。

2 シンガポール

シンガポールの仲裁機関としては、シンガポール政府機関である貿易発展局と経済開発庁の協力により設立されたシンガポール国際仲裁センターがあります。

旧宗主国であった英国の進んだ弁護士文化があることから、国際取引に豊富な知見を有する有能な仲裁人候補を多数抱えており、スムーズな仲裁が期待できます。

3 香港

香港における仲裁ですが、1985年に設立された非営利の公益法人香港国際仲裁センターが仲裁解決を担っています。

同センターは、アジア地域の国際商事紛争解決の中心となることを日指し、紛争解決インフラの整備に努めるとともに、
「事案誘致」
にも積極的です。

同センターの事案処理実績ですが、2004年の国際仲裁申立件数が280件、2009年では309件、2011年には502件と、その申立件数は確実に増加傾向にあります。

運営管理コード:CLBP692TO694

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01483_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>相手先を訴える際の弁護士の選定

非欧米圏の企業や法人との契約が反故にされ、協議も整わない場合、日本企業サイドとしては、裁判や仲裁に訴えて被害を回復していくことになります。

ここで問題になるのは、どのように弁護士を探すか、です。

現地企業と取引を行う際に現地企業に同行する弁護士は、相手方の利害を代理する立場にありますので、当該弁護士を起用するわけにはいきませんし、当該弁護士に紹介を依頼することもできません。

ジョイントベンチャー会社の会計・税務面をサポートする税理士や監査法人も当然ながら、今や敵となった現地パートナー企業の
「息がかかった」者
ですので、彼らに紹介を依頼することも不適切です。

結局、取引先ないしジョイントベンチャーのパートナーである現地企業を訴えるには、独力で弁護士を探すことになります。

大使館や、現地に進出している商社、あるいは現地の弁護士会組織等に英語を解する現地弁護士の紹介を依頼することになります。

そもそも、有事に至ってから弁護士を探すとなると訴訟提起が遅れることになりますし、新しく起用することとなった弁護士にこれまでの取引の経過やジョイントベンチャーの内容等をレクチャーするための時間を要することも考えると、有事対応アクションがますます遅延していきます。

したがって、現地に進出することを決定した時点において、現地パートナーと利害関係から独立した弁護士を探して顧間として起用しておき、取引経過やジョイントベンチャーの状況を伝えて情報共有の上、万が一現地パートナーが契約違反をした場合、スピーディーに有事対応アクションがとれる体制を整えておくことが推奨されます。

運営管理コード:CLBP692TO692

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