00182_企業法務ケーススタディ(No.0137):ドライバーに仕事させ過ぎて、事故になったけど、流石に、「社長が逮捕」とかないでしょ!?

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
ゼブラー運送株式会社 代表取締役 相加 鷲男(あいか わしお、50歳)

相談内容: 
先生、何だか納得いかないことがあるんですよ。
確かに俺は、若い頃やんちゃしていましたけど、今では、故郷の徳島県を中心に、大型トラック5台使って、真面目に運送業を営んでいるんです。
でも、この前、ウチの若いのが、東京まで建築資材を運んでいる時に、東名高速で高速バスや乗用車と玉突き事故を起こしちゃいましてね。
まぁ、幸い、死者は出なかったものの、そいつが自動車運転致傷罪で逮捕されてしまったから、お陰で、そいつの“穴”を埋めるために、俺も含めて残った連中で運転シフトを倍にしなければならなくなったし、みんな、今まで以上に睡眠不足ですよ。
で、最悪なことに、そいつ、警察の取り調べで、
「シフトがきつく、いつも睡眠不足でトラックを運転させられていた」
とか余計なことをしゃべっているみたいなんです。
この前なんか、俺が警察署に呼ばれて、
「運転手の業務管理は一体どうなっているんだ!」
とか
「無理やり運転させていたんだろう!」
とかって思いっ切り怒られたし、マスコミに叩かれるは、クライアントからは大目玉を食らうは、もう踏んだり蹴ったりです。
運転中の事故の責任ったって、使用者責任とかっていう民事責任なんてのは知ってますが、刑事事件に問われるのは、事故った本人だけでしょ?
会社がとばっちり受けるはずないですよね!?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:過労運転の禁止
道路交通法は、
「何人も、(中略)、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」
と規定し、これに違反した者に対しては、
「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」
を科すなどして、過労運転等を禁止しています(道路交通法第66条、第117条の2の2第5号)。
「自動車」
というものは、時には数トンもの荷物を積んで、時速100キロ超で移動する鉄の塊なわけですから、ちょっとした体調不良や疲れがその運転に及ぼす影響は大きく、その影響が招来する事故の規模も、時としてトンデモナイ大事件となります。
そこで、法は、罰則を設けてまで、このような
「正常な運転ができないおそれがある状態」
での運転を禁止し、トンデモナイ大事件を未然に防ごうとしているのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:過労運転の下命
ところで、便利とはいえ、存在自体に危険をはらむ自動車ですから、その運転者だけに
「運転するときは体調管理をしっかりせよ」
といった義務を課しても、自動車の運転が会社の業務として行われているような場合には業務命令を拒否することもできませんので、これでは実効性を欠いてしまいます。
そこで、道路交通法は、自動車を実際に運転する
「運転者」
だけではなく、運送会社など、業務上、自動車を使用する(させる)者などに対しても、
「その者の業務に関し、自動車の運転者に対し、『過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転すること』を命じたり、これらの行為をすることを容認したりしてはならない(道路交通法75条4号)」
ことを義務付け、いわゆる
「過労運転の下命」
を禁止しているのです(これに違反した場合、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられます〈道路交通法117条の2の2第7号〉)。
実際に、昨年の6月、大阪府茨木市の名神高速で2人が死亡するなどした玉突き事故で、
「大型トラックの運転者が、過労で正常に運転できない恐れがあると知っていたにもかかわらず、愛知県豊橋市から兵庫県たつの市への建材の運搬などを命じた」
として、勤務先である運送業者の所長らが、道路交通法上の
「過労運転の下命」
を理由に逮捕されるといった事件が発生しております。
この事件では、大型トラックの運転者は、週のうち6日間は1日約700キロの運転をし、車内での寝泊まりを余儀なくされていたとのことで、業務管理上の問題も指摘されております。

モデル助言: 
「過労運転の下命」
は、2007年9月の道路交通法改正によって、それまでの
「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」
から
「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」
に一気に厳罰化されていますし、もはや、
「運転の際の体調管理は自己責任。事故を起こすのも自己責任」
として言い逃れすることはできません。
ゼブラー運送さんも、随分、無茶な運転シフトを組んでいたようですね。
確かに、長距離トラックの運転手が体力商売だということも、他の運送業者との競争に勝ち抜くためにはやむを得ないということも理解できます。
しかし、今回の件はこっぴどく怒られただけで済んだからいいものの、逮捕された従業員の“穴”を埋めるために、さらに運転シフトを倍になんかしたら、今度こそ、ホントに
「過労運転の下命」
を理由に逮捕されますよ。
早く、新しい従業員を募集するなどして、業務体制を改善してください。
それと、あまり過酷な業務体制を継続していると、今度は、労働災害の防止のための危害防止などを怠ったとして、労働安全衛生法違反として、労働基準監督署にもにらまれてしまいますよ。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00181_企業法務ケーススタディ(No.0136):この作品の著作権は会社のもの? 制作者個人のもの?

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社ジャンルブレイカー 代表取締役 本川越 龍也(ほんかわごえ たつや、35歳)

相談内容: 
数年前までは地味なイタリアンのオーナーシェフだった私も、先生も知ってのとおり、深夜番組に出るようになってから、
「辛口の評価と芸人とのカラミができる料理人」
としてブレイクし、現在では、新しく立ち上げた会社で、さまざまな商品をプロデュースするようになってんだよね。
ちなみに、どう?
その
「コーラ&プリン」。
プリンの甘さの中にコーラの刺激を閉じ込めながら、コーラのカラメルをも利用しようって意欲作。
そうそう、今日は、プロデュース商品の上に、唐がらしをベースに俺のイケてる顔をデフォルメしたキャラクター
「ピリ辛たっちゃん」
の著作権について相談しに来たんだ。
このデザインは、日本で仕事を探していた中国人デザイナーに会社の手伝いをさせたときに作らせたものなわけ。
多分そいつが、俺が売れるようになったのを知って、コンビニとかで商品を見つけたんだろうね。
「“ピリ辛たっちゃん”は、昔私がデザインしたもの。
著作権は私にあるから使うな。
使いたかったら、金払え」
なんて連絡が来たんだよ。
「正規の従業員なら著作権は会社のモノだけど、私は、観光ビザで訪日してただけだし従業員の訳ないんだから私のモノ!」
とかいってんだけど、著作権ってそういうものなんですか?
給料払ってたのに、そんな言い種ありなの?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:職務著作とは
職務著作(法人著作)とは、従業員が創作した著作物について、使用者である企業に
「著作者」
の地位を直接与える制度です(著作権法15条)。
特許法にも類似の制度(職務発明)がありますが、こちらはあくまでも
「発明者」
は発明を行った当該従業員であり、
「職務発明と認められる場合には会社が相当な対価を従業員に支払って特許を承継する」
にすぎず、法人がいきなり
「著作者」
となる職務著作とは大きく異なっています。
このように著作権法において、著作者が
「会社」
とされているのは、会社のコスト負担の下で著作物が創作されているという経済実態はもちろん、
「著作物をライセンスする等のさまざまな利用場面では、権利者を法人にしておくほうが権利処理を簡素化できるし、便宜である」
ということに理由を求められるでしょう。
さて、職務著作となる要件についてですが、著作権法第15条1項を整理すると、
「1 著作物が法人等の「発意」に基づいて作られたものであり、
2 これが「法人等の業務に従事する者」によって、
3 「職務上」作成された著作物であって、しかも、
4 法人等が「自己の著作の名義」の下に公表する
ものであること」
が要請されています。
もちろん、雇用契約等で著作権の帰属について別途の定めがあれば別ですが、基本的には、
「使用者である企業が『~を作れ!』と従業員に命じて作らせ、その著作物に企業名を付して発表する予定」
であれば、職務著作が成立し、著作者は会社となる、と考えることができます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「業務に従事する者」
本件では、
「観光ビザで来ていたんだし従業員の訳がない!」
などという文句が付けられているのですから、デザイナーが、
「業務に従事する者」
に該当するかどうかが問題となります。
一般的に当該要件は、雇用関係にある従業員や役員であれば問題なく該当するとされていますが、本件では明確な雇用契約の締結もないようです。
このような場合であっても、形式だけを見て職務著作の成否を考えるのではなく、前記の職務著作制度の意義から実質を検討しなくてはなりません。
実際、同種事例において最高裁は、
「指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを、業務態様、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して判断すべき」(最判2003年4月11日)
として、形式ではなく実質を見るべきであると判断しています。

モデル助言: 
確かに、雇用契約書もないし、観光ビザで来ていたデザイナーだし、雇用保険の手続も踏んでいないなどということですから、形式だけを見れば従業員とは言い難いでしょうね。
そのような形式的価値判断から
「業務に従事する者」
にはあたらないとしたのが上記判例における高裁の判断でしたが、最高裁は、
「どれくらい指揮監督が及んでいたのか?
業務内容はどうだったのか?
しっかり実態を見ろ!」
と一喝して高裁の判断を破棄しています。
本件でも実態を見てみると、キャラクターのデザインだけが業務内容とされていますし、それの対価として毎月給料を支払っていたんですよね?
今は、労働法が問題となっているわけではなく、著作権法が問題となっているのですから、最高裁に従う限り、デザイナーは
「業務に従事する者」
に該当する可能性が大いにあると思いますので、このあたりを意識しながら、最高裁判例を提示しつつ交渉してみましょうか。
しかし、観光ビザで来たデザイナーをそのまま雇った形にしておくなんて、不法就労として出入国管理法違反等に問われかねない話ですから、別の意味で注意が必要ですね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00180_企業法務ケーススタディ(No.0135):訴えを捨て置くと、株主から訴えられるぞ!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
スカーレットコミュニケーション株式会社 鍬形 恵理(くわがた えり、35歳)

相談内容: 
ITベンチャーのわが社も、ようやく年商20億円が達成できました。
ところが、最近、某大手企業グループに属する2部上場のメーカーさんに納入したソフトについて、
「ニーズに合わない」
とかイロイロ難癖を付けられて、代金を払ってもらえなかったんです。
その額なんと2億円。
ウチの年商の1割ですよ。
訴訟やるにしても、時間や弁護士費用も嵩むわで無理ですよ。
何より、相手が大手企業グループに属する会社さんですから、訴訟なんか起こすと、どこで仕返しが待っているかも分かりません。
それで訴訟は見送ろうとしていたその矢先に、今度は株主さんが文句を言い始めまして。
アメリカ在住のO’Haraさんという株主がいるんですが、激怒ですよ。
話をまとめると、
「裁判なんてやってみいひんとわからんのに、何、ハナから諦めんとんねん。『江戸の仇を長崎で討たれる』てか。何ぼけカマシとんねん。オマエがそこまで根性なしやったら、こっちが株主代表訴訟起こして、オマエら取締役全員から損害賠償搾り取ったるさかい、覚悟しとけ」
ゆうことですわ。
でも、勝てるかわからん訴訟ですし、相手が怒って、取引が生きている別のグループ企業から仕事干されたらどうするんですか!
一体、私はどうすればいいんでしょう!?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:会社財産を管理する義務
取締役は、会社と委任契約を締結した受任者としての立場をもちます。
この義務の内容・水準は、
「医者の患者に対する義務」

「弁護士の依頼者に対する義務」
と同様のものと理解されており、取締役は、
「経営の専門家」
として、プロフェッショナル水準にて会社の利益を守る義務を負っています(善管注意義務。会社法330条、民法644条)。
この義務のひとつとして、取締役は、会社の財産を適切に管理・保全する義務を負っているとされます。
会社の財産が債権である場合には、適切な方法によってこれを管理するとともに、回収を行う義務を負っているとされます。
O’Haraさんの主張どおり、会社がある債権を有しており、ある時期においてその回収が可能であったにもかかわらず、取締役が適切な回収を実施せず、かつ、そのことに過失が認められる場合には、取締役の善管注意義務違反として、会社に対して損害賠償責任を負担することになります(会社法423条1項)。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:不提訴が取締役の善管注意義務となるケース
では、具体的に、いかなる場合に、取締役が
「適切な回収を実施」
しなかったといえるのでしょうか。
「会社に債権があるが、債務者が支払わない場合にはとにかく訴訟を提起しなければならない」
というのでは、会社は勝訴する見込みもなかったり、あるいは、勝訴しても、相手が無一文で回収できない場合にすら訴訟を提起しなければならなくなり不合理といえます。
すなわち、
「訴訟を提起するか否か」
については、ビジネスジャッジメントとして、
「経営のプロ」
である取締役に、訴訟提起に伴うメリットデメリットを判断させる裁量(経営裁量)を与える必要性もあります。
この点、東京地裁2004年7月28日判決は、
「1 債権の存在を証明して勝訴し得る高度の蓋然性があったこと
2 債務者の財産状況に照らし勝訴した場合の債権回収が確実であったこと
3 訴訟追行により回収が期待できる利益がそのために見込まれる費用等を上回ることが認められること」
という要件を定立し、これらが充足されるにもかかわらず、取締役が提訴を放置した場合には、会社財産たる債権の適切な維持・管理を怠ったとして、善管注意義務違反を構成すると判示し、これは、東京高裁、最高裁でも支持されています。
つまり、
「勝訴が見込め、相手に財産があって回収でき、回収額が訴訟費用よりも上回る場合」
には、取締役は訴訟を提起すべきである、としているのです。

モデル助言: 
裁判例では、先の要件をすべて満たす場合には、訴訟提起は義務的であるが、そうでない場合は、取締役の胸三寸で決めていい、ということです。
とはいえ、
「勝訴の蓋然性」
等の判断の前提となる資料は、
「取締役が訴訟を提起しないとの判断を行った時点において収集可能であった資料」
を含む、とされていますから要注意ですね。
「経営のプロであれば通常集めることができたはずの資料」
を、取締役が怠慢によって集めなかった場合には、結果として
「提訴すべきものを放置した」
と非難されて、損害賠償責任を負担する結果になり得ます。
ロクな調査もせず、素人感覚で
「これでは確実には勝てない」
等と速断するのは危険です。
今回は売上の大部分を占める2億円もの額です。
株主の不満や怒りもごもっともですよ。
本件については、私のほうで勝訴可能性を調べてレポートします。
その上で、取締役会を開いて、訴訟提起の是非について議論して決議した方がいいですね。
株主もそう多くないので、臨時株主総会を開催して、説明や報告をしてもいいと思います。
なお、グループ企業が今どき
「江戸の仇を長崎で討つ」
なんて嫌がらせをしたら、それこそ独禁法違反の不公正な取引方法として訴えるべきです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00179_企業法務ケーススタディ(No.0134):会社私物化のリスク

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社林家ホールディングス 代表取締役会長 林 正蔵(はやし しょうぞう、48歳)

相談内容: 
ウチは、おじいちゃんの代で会社を立ち上げ、そこから、3代目の私で株式公開を果たし、そこそこの規模の企業グループにまで成長しました。
上場つっても、ま、会社の株の大半はウチのファミリーが保有しており、上場基準に抵触しない程度に浮動株がチョロチョロある程度。
ま、いったら、ウチは、文字通り、林ファミリーのオーナー企業みたいなもんです。
で、ですね。
私も調子に乗って、飲食業やら不動産業やらビル建設やら慣れないサイドビジネスに手を出しちゃいまして、これが、あっという間に全部失敗。
先祖伝来の屋敷についた担保が実行される状況に陥りました。
ま、負債といっても、わがファミリーがもっている弊社株の時価総額で十分賄える範囲のもので、カネがないというわけではありません。
そこで、急場をしのぐためにカネが余っている複数の子会社からカネを借り、ギャーギャーとうるさい債権者に返済しました。
そしたら、弊社株をほんのちょっぴり保有している弊社親戚のおじさんが、電話をかけてきて
「株主の1人として、物申す。お前のやってることは何から何まで違法だ! 刑事告訴をしてブタ箱にぶち込んでやる!」
なんてブチ切れてんですよ。
ま、分家筋で妬みやっかみもあるんでしょうが、ほんと言いたい放題でしたよ。
ただの借金に大袈裟なんですよ。
そりゃ今すぐ返せっていわれても、株式市場は今低迷していますから、無理ですよ。
でも、1年ばかし様子をみて、株を売却してきちんと返済するつもりですよ。
まあ、借り方はちょっと強引だったかもしれませんが、
「オーナーが会社からちょいと寸借したくらいで、ブタ箱行き」
なんて物騒な話はないですよね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:役員と会社との融資取引
取締役は、会社に対して善管注意義務を負っています。
これは、
「会社の利益を最大限にするように、取締役として全力を尽くすように」
という、会社と取締役との間の委任契約に根拠を有しています(会社法330条、民法644条)。
また、この義務は、別名、会社に対する
「忠実義務」
ともいわれるものであり、会社の利益を横取りするなどして会社を裏切るようなことは法令違反とされています(会社法355条)。
そして、役員が会社からの借り入れる取引については、
「有利な条件で融資を受けたい取締役の思惑」

「確実な担保を取り、高い利息を設定したい会社の利益」
とが矛盾・衝突する契約(利益相反取引)となります。
このような会社の利益を損ねる危険性のある取引を行うには、当該会社の取締役会等の法定機関で当該取引を承認する決議を経由すべきことが法律上要請されています(会社法356条、365条)。
本件では、
「借り方はちょっと強引だったかもしれません」
ということですから、この種の手続きを経由していない可能性もあり、取引の有効性自体に疑問が残るところです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:特別背任罪
オーナー役員が自分がコントロールする企業から融資を受けるという場合、民事上、取引の有効性が否定されることや、役員が損害賠償責任を負うことに加え、刑事罰を受けるリスクまで想定すべきなのでしょうか。
「会社を取り巻く多数の利害関係者を調整する」
という目的を有する会社法は、役員による会社の私物化行為について、民事的な責任に加え、刑事罰による制裁を予定しています。
すなわち、会社の役員が、
「自己もしくは第三者の利益や会社に損害を与える目的」

「その任務に背く行為」
をし、
「会社に財産上の損害を加えた」
とき、特別背任罪として、厳しい処罰される可能性があるのです。
その意味では、
「オーナーが会社からちょいと寸借したくらいで、ブタ箱行き」
という親戚のおじさんの話もあながち誇張ではない、ということがいえます。

モデル助言: 
特別背任罪ですが、犯罪構成要件は、刑法上の背任罪とあまり変わりませんが、会社役員の責任と権限の大きさに鑑み、刑罰を加重しており、10年以下の懲役、1千万円以下の罰金あるいはこれらの併科という重罪とされております。
また、未遂でも処罰されることになっており、想像以上に厳しい内容なっています。
林さんが通常の利息より好条件で融資を受けていた場合、その差額分が
「会社に対する損害」
と認定されるおそれは十分ありますし、想定外の事態が起こって、返済が滞ったり、返済そのものが難しい状況になったら、それこそ大問題です。
とにかく、大問題にならないうちに、金融機関と再度交渉するなりして外部からきちんと調達したお金で会社に対する借入全部を早急に返済しておくべきです。
それでも事態が沈静化しないようであれば、いったん取締役を辞任するなりして責任を取った形にするなどの処置を取っておいたほうがいいかもしれませんね。
100%オーナー会社から脱却し、株式公開したわけですから、公私混同はご法度です。
よく肝に銘じておいてください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00178_企業法務ケーススタディ(No.0133):定期賃貸借の罠

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
西塚食品株式会社 代表取締役 西塚 英彦(にしづか ひでひこ、49歳)

相談内容: 
先生、ウチの会社、今度、ファストフード業界に進出するんです。
え? 何? この不況下で外食なんて大丈夫かって?
それは、ご心配なく。
安い、大盛り、メタボ、を合言葉に、大盛りのご飯のどんぶりにカレーとトンカツと牛すきをのっけた
「メガメタボ丼」
ってのを主力にしたファストフード店をチェーン展開していくんですよ。
でも、なかなかいい物件が見つからなくって困っていたんですけど、友人の紹介でM&Aで買った
「メグミの大地」
っていう八百屋チェーンが都内に10店舗の店舗を持っているんで、そのうちの一部の店舗をリニューアルしてオープンすることにしたんです。
その名も
「命知らずのメタボ達!」
もともと、八百屋だったから、キッチンを作ったりして、結構、造作費用がかかったんですけど、まぁ、うまいもののためなら、背に腹は代えられません。
ところで、この前、店を改装する際、店のオーナーに挨拶に行ったら
「この店は定期賃貸借だから、あと1年で期間満了だよ。
ま、これまでメモ書きみたいな覚書でやってたけど、この機会に契約書もちゃんと作っておくから、これにサインしておいて」
なんつって、なんか契約書みたいなの、渡されました。
でも、これって、期間がきたら更新できるんですよね。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:借地借家法における契約期間更新のルール
賃貸借契約とは、当事者の一方が他方に物の使用等をさせ、これに対し相手方は使用等の対価を支払うことを約束する内容の契約です。
民法は、賃貸借契約の
「期間」
について、
「賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。
契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、20年とする(604条)」
と定めるのみで、あとは、当事者間で自由に決めてよいという建前をとっております(私的自治の原則)。
ところで、期間が満了する際、それまでと同一条件で、または若干の変更を加えた上で、賃貸借契約を継続させることを
「更新」
といいますが、この点についても民法は、更新が可能かどうかや、その際の条件等については、原則として当事者間の合意に委ねております。
とはいいながら、ふつう、物を貸す側(大家)と借りる側(店子等)とでは、前者の立場が圧倒的に強いわけで、貸す側としてみれば、もっと良い条件で借りてくれる候補者がいれば、借りる側が賃借物の造作等にどんなに費用をかけていたとしても、
「次に入る人が決まっているんで、契約が終了したら、とっとと出ていってくれ。
あん? 更新? そんなの絶対にだめ」
となってしまうことがままあります。
そこで、圧倒的に弱い立場の借りる側を保護すべく、借地借家法は、
「貸す側は、期間満了の6か月前までに、更新を拒絶する意思表示をしなければ、賃貸借契約は同一条件で更新されたとみなす(「みなす」とは、更新の効果を争うことは一切できないという意味です)」
「さらには、借りる側にカネをつんだり、どうしても自分で使わなければならない等、更新拒絶の正当事由の存在を証明しない限り、更新の拒絶はできない」
と定め、両者の力関係の調整を図っています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:定期賃貸借
ところが、前記の借地借家法の規定だと、何だかいつまでも更新が繰り返されてしまいそうですし、実際に、裁判例も、借りる側に有利になるよう、
「正当事由の存在」
についてとても厳しく判断しており、これでは、逆に不動産オーナーにとってあまりに不当な結果となりますし、これでは、優良不動産の有効活用ができなくなってしまいます。
そこで、借地借家法において、“例外の例外”ともいうべき
「定期賃貸借」制度
が設けられるようになりました。
これは、賃貸借契約期間を一定期間とする契約で、一定の要件を充足した定期借家契約は、どんな理由があっても更新は許されない、というものなのです。

モデル助言: 
オーナー(賃貸人)との間の契約が
「定期賃貸借」契約
であれば、どんなに高額の費用を投資して店舗を改装していたとしても、期間が満了すれば、契約は終了し更新はできません。
どんなに泣きついたって、
「定期賃貸借」契約
の場合の契約期間は絶対です。
したがって、せっかくオープンした
「命知らずのメタボ達!」
も、有無をいわさず閉店しなければなりませんよ。
もっとも、
「定期賃貸借」契約
は、強行的な内容になっていることとのバランス上、契約の成立が認められるためには、いくつかの条件があります。
ひとつは、
「必ず、契約の内容を書面にすること」
もうひとつは、
「この賃貸借契約は更新できません、といった文書を交付して説明すること」です。
西塚さんの場合、どうやら、契約書も上記の説明文書もないようなので、店のオーナーが勝手に、
「定期賃貸借契約だ!」
といっているだけの可能性が大きいです。
状況次第では、そもそも
「定期賃貸借」契約
は成立せず、更新が認められそうですので、大切なお店も継続できそうですね。
とはいえ、契約の内容が
「定期賃貸借」
か否かは、投資回収期間を考える上で大きな要因になりますので、これを機にきっちりと勉強しておきましょうね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00177_企業法務ケーススタディ(No.0132):粉飾決算の罪と罰

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
ビッグ・システム株式会社 代表取締役社長 中山 栄太(なかやま えいた、28歳)

相談内容: 
ウチは、5年前、新興市場に上場を果たしましたが、実は、ココだけのハナシ、今期、本当は数億円規模の赤字だったんです。
メーンバンクからは、
「黒字であり続けないと、新規融資はストップです。
既存の融資についても厳しい対応をしなければなりません」
っていわれてましてね。
これじゃ、今進めている一攫千金のプロジェクトがおじゃんになってしまうんです。
これが軌道に乗ったら、銀行だけでなく株主の皆さんにもジャンジャン還元してあげられるんですよ。
それで、IT企業仲間の末田隆平ってダチと助け合って循環取引をやったりしてイロを付けて、ちょっとだけ黒字になるようにしちゃいました。
そしたら、
「不況の中、着実に黒字を上げる優良企業」
ってゆう評価をもらっちゃって、融資も安泰。
新規の資本調達までうまくいきました。
それで喜んだのも束の間・・・一昨日、末田から電話があって、
「証券取引等監視委員会に、オマエとの循環取引のことを聞かれて、ゲロっちゃった」
って、いうんです。
さっき、僕にも証券取引等監視委員会から電話があって、
「末田さんの件でお話をうかがいたい」
って、いうんですよ。
まあ、ぶっちゃけ覚悟はしてますよ。
といっても、いってみりゃ、私が個人のカネを突っ込んで利益付けてやってもよかった程度の額で、たいしたことのない話ですよ。
ま、謝ったら済んじゃいますよね。
で、先生、どうやって謝ったらいいっすか?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:金融商品取引法の目的
数十年前までは、我が国の産業金融は、銀行の提供する間接金融が中心でした。
資本市場は
「一攫千金を夢見る相場師たちの鉄火場」
としてみられており、証券会社の地位や役割が低かったこともあり、直接金融、すなわち資本市場を通じた企業の金融システムはあまり重要視されていませんでした。
しかしながら、現代の資本市場は、
「限りある金融資源を効率的に配分するための重要な社会インフラ」
に様変わりしています。
このような観点から、証券取引法、さらにこれを引き継いだ金融商品取引法(以下、金商法)において、法規制は年々強化され、社会インフラにふさわしい厳しい運用がされるようになっています。
金商法の規制の大きな柱のひとつが、資本市場(株式・社債市場等)への正しい情報提供であり、
「資本市場を用いて金融を行う企業の価値が、必要十分な正しい情報に基づいて評価される環境」
をつくるため、さまざまな規制や罰則が設けられています。
金商法は、上場企業、すなわち
「資本市場という社会インフラを利用して多数の投資家らから資金を調達する株式会社」
に対しては、有価証券報告書等の継続開示書類の提出を義務付けるとともに、その内容の正確性を担保するために、不実の記載に関する民事上の責任(投資家が蒙った損害に対する賠償責任)・行政上の責任(課徴金)のみならず、重要な事項につき虚偽の記載をした者については、
「10年以下の懲役、1千万円以下の罰金、またはこれらの両方」
の刑事罰を定めています(同法197条1項1号)。
「法定刑の上限が懲役10年」
というと、窃盗や詐欺と同等ということですから、犯罪の相場としては、相当重い部類に入ります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:金商法違反に対する刑罰の状況
金商法違反となる粉飾決算に対する刑事罰については、非常に厳しい運用がなされており、報道を見ても、
「執行猶予が付かず、実刑となり、そのまま刑務所に収監されることになった事案」
が複数確認されます。
2011年4月には、粉飾決算したライブドア社の元社長に対する懲役2年6月の実刑判決が確定していますし、11年9月、循環取引によって売上高や経常利益を水増しして虚偽の有価証券報告書を提出したシステム開発会社の元会長に対する横浜地裁の裁判でも、懲役3年の実刑判決が下されています。
上場企業の経営者の中には
「ちょっとウソついたくらいだから、大目にみてくれよ」
などという考えをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、
「資本市場の金融インフラとしての重要性に鑑みれば、投資家の判断を損ね、市場への信頼を傷つけるような不心得者に対しては、厳しい処罰をもって臨む」
というのが今や常識になっていますので、注意が必要です。

モデル助言: 
上場企業として情報開示する局面においては、
「ウソも方便」
などという諺は忘れてください。
要するに、司法当局、行政当局は、
「資本市場は、上水道や道路や鉄道と同じく、社会運営上、必須の公共インフラである」
ととらえており、
「“資本市場において上場企業が粉飾決算や虚偽の報告を行うこと”は、“上水道に毒を流す行為”や“道路を破壊する行為”や“線路に置き石する行為”と同じ、一種のテロ行為であり、厳罰を以て臨むべきである」
という考え方を有しています。
事態を甘く見ていると、本当にムショ暮らしをする羽目になりますよ。
とにかく、決算修正と速やかな開示を行い、
「第三者委員会を立ち上げて、その調査報告書を受けて、中山さんが引責辞任する」
くらいのシナリオを描いて、うまく事態を収拾することを考えるべきでしょうね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00176_企業法務ケーススタディ(No.0131):暴対法の中止命令を活用せよ!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
八ッ津毛(ヤッツケ)建設株式会社 専務取締役 正狩 雅雄(まさかり まさお、59歳)

相談内容: 
いやぁ~、先生、まったくもって参ってしまいましたよ。
この前、中学校の時の同窓会に参加した時、あまり親しくなかった梅宮っていう奴と
「オレも土建屋だ。
仲良くしようぜ」
って話になって、2次会から意気投合しました。
その後も、すっかり仲良くなり、私の知らないいろんなところに連れて行ってもらって、あれやこれやですっかり世話になってしまいました。
そしたら、この間、いきなり、
「マサちゃんとこの会社、今度、市から橋梁修復工事を請け負ったみたいじゃない。
ウチの下請連中を使ってくれねえかい」
なんて持ち掛けられたんですよ。
「下請業者はもう全部決まっちゃってるし、そのあたりの差配は全部親父がやっているから、ちょっと無理なんだよ」
っていってやんわりとお断りしたら、梅宮の奴、いきなり態度を変えて
「あれだけ世話させといて、そりゃないだろ。
そこを曲げて何とかしろ!」
と怒鳴り始めたんです。
そして、
「極道組」
って書かれた名刺を差し出しながら、
「いやね、実は、オレ、ここの組のまあ、準会員みたいなもんなわけさ。
てゆうか、組からもいろいろ世話受けててさ。
マサちゃんのところも、円満に商売やりてえだろ。
ちょっと協力してくれよ」
って絡みつくように話し掛け、それでも断ると、
「ウチの組織分かっとんのか!」
といってすごむんですよ。
それで、
「何とかしてみるよ」
といってその場は取り繕って帰ってきたんですけど。
「極道組」
はここらでも有名な暴力団で、要求を無視した時の報復も怖いし、先生、どうしたらいいですか。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:反社会的勢力への基本対応
暴力団員などから不当な要求を受けたり、彼らから嫌がらせや生命・身体・財産などに対する危険を伴う言動を受けたりした場合の基本対応は、弁護士や警察に相談し、刑事告訴や民事上の手続(面談禁止を求める仮処分手続等)を速やかに行うことです。
暴力団サイドも、ビジネス(専門用語で「シノギ」等といいます)で動いているわけであり、ビジネスである以上、
「最小限の犠牲で、最大限の成果を得る」
という損得計算が稼働の前提となります。
警察や弁護士が動き出し、
「告訴だ」
「裁判だ」
となってくると、見込める成果に比べて犠牲があまりに大き過ぎ、ビジネスとしての採算性が破綻し、暴力団サイドとしても手を引かざるを得なくなるのです。
このように、毅然とした対応を整然と行うことこそが、解決のための早道なのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:暴力団対策法上の中止命令
ところで、暴力団への対抗策としては、伝統的な方法である刑事告訴や民事手続以外に、暴力団対策法(以下、「暴対法」)に基づく措置も検討すべきです。
暴対法は、暴力団員などが市民生活に不当に介入する行為を
「暴力的要求行為」
として類型化し、これらの行為が行われた場合、警察署長に対して当該行為を禁止する命令(中止命令)を発する権限を付与しています。
そして、中止命令を申し立てる際、暴力的要求行為を行っている本人のみならず、当該暴力団員が所属する組織の代表者等も中止命令の対象者とすることができる、という点が重要なポイントになります。
すなわち、組織のトップに中止命令が発令された場合、
「暴力的要求行為」
を行っている者にとっては、
「目上の者には絶対に迷惑をかけられない」
という状況となるため、
「暴力的要求行為」
を萎縮させる効果を与えることができるのです(なお、2008年暴対法改正で、暴力団員による一定の不法行為に関し、暴力団の代表者に無過失の責任が課されるようになっています)。
以上のとおり、暴対法上の中止命令には、
「組織内の上下関係が効果的に働き、事案を早期かつ劇的に解決することができる」
という巧妙なメカニズムが内包されているのです。

モデル助言: 
まずは、所轄の警察署に相談して、
「極道組」
が、暴力団対策法上の
「指定暴力団」
として指定されているか、または、
「極道組」
の上位組織が
「指定暴力団」
として指定されているかと、梅宮がこれらの暴力団員かどうかを調べてもらいましょう。
その結果、
「指定暴力団」
の暴力団員であることが判明した場合、まずは、
「そのような不当な下請参入要求は、暴力団対策法上の暴力的要求行為に該当するので、所轄警察署長に中止命令発令を申し立てます。
その際、極道組のトップも中止命令の名宛人として加えさせていただきます」
と明確に伝えてみましょう。
恐らく、これでほぼ退散すると思いますが、それでも収まらないようであれば、所要の手続を粛々と取っていくことになります。
たまに、暴力団と関係のない者が暴力団員を騙って不当な要求を行うケースもあります。
本件の梅宮もエセ暴力団である可能性もありますので、
「貴殿は、極道組の組員ということですが、中止命令発令の前に、念のため、『貴殿が構成員であるか否か』、また、『貴殿が構成員であるとして、組として貴殿の行為を認めているのか』ということを組に対して照会してみますが、よろしいな」
といってみましょうか。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00175_企業法務ケーススタディ(No.0130):工場抵当法の活用

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社ヤンキーナ 代表取締役 木下 椰樹菜(きのした やきな、23歳)

相談内容: 
チョリーッス、先生。
今日はお世話になった人の会社にカネを貸す件で、一応相談に来ました!
アタシさ、今の会社立ち上げるまでは給食工場で働いてたんだぁ。
似合わないっていうと思うけどさ、人にはそういう時代だってあるもんなの!
その工場持ってる今田食品って会社には、今田一助(ぴんすけ)っていう社長がいるんだけどぉ、工場は特許技術満載のオートメーション化した無菌工場だから
「競合なんておらへん!」
ってブイブイいわせてたの。
彼は根っからのバクチ好きで、最近ではヤクザの賭場にまで出張ってるって噂を聞いてたから、
「それはアウトだからやめな!」
って何度もいってたの!
でも、全て聞く耳ナシ!
ま、とうとう警察のガサが入って、賭場への出入りがばれ、で、小うるさいPTAから責められて、結局、納入してた学校全部から契約切られちゃって瀕死状態、お馬鹿よね!
商売人だから、オフィス向けの宅配弁当に業態を変えて何とか乗り切ろうとしてて、いつも馬鹿にしてた私に頼ってきたってわけ。
不動産全部に抵当つけて構わないから、運転資金や機械のレイアウト変更のために5億円貸してっていうんだけど、不動産の評価はぎりぎり3億円くらい。
世話になったし、万一の場合、2億円は泣く覚悟で貸そうと思ってんだ。
ほんとは、5億円貸すなら、5億円分きっちりガッツリ担保取りたいけど、ま、そんな方法なさそうだし。
これって、しょうがないよね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:企業への事業資金の融資の注意点
企業が、取引先や関係先に対して事業資金の融資を行う、ということはよく見受けられます。
もちろん、収益が見込める事業を計画的かつ合理的に営んでいる限り、何もプライベートな企業なんかに泣きつかなくても銀行が貸してくれるはずですが、無計画あるいは不合理な冒険的事業を企図するような場合や、不祥事等が発生して企業の存続に疑義が持たれるような場合には、銀行が相手にしてくれません。
このようなときには、設例のように、取引先や知人の経営者に泣きつく、といったことが生じます。
企業間の融資においては、
「困ったときはお互いさま」
という情実が働き、経済合理性のない形で無責任な融資が行われ、その結果、トラブルに発展しがちです。
しかし、よくよく考えれば、
「金貸しのプロである銀行が相手にしない」
という属性を有した債務者にカネを貸すのですから、
「フツーに貸したのではまず返ってこない」
とみるべきです。
したがって、
「そもそも貸すのを断るか、適当な見舞金を差し出して追い返すか、どうしても貸すのであれば、ガッチリ担保を取って貸す」
というのが経営者として取るべき行動ということになります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:工場抵当
ところで、設例のように、評価額3億円程度の不動産を担保に取って、5億円貸すのは、極めてリスキーといえます。
地方銀行や信金・信組で、こういうリスキーな融資が行われることがありますが、この種の経済合理性のない融資は、法律上、背任という犯罪行為となりますし、実際、この種のことが露見して、逮捕者が出たり、自殺者が出たりしていることは皆さんご承知のことと思います。
この状況で貸すなら1億円ないしせいぜい1億5千万円が妥当なところですが、どうしても5億円貸すという場合は、担保の取得方法を一層工夫しなくてはなりません。
すなわち、担保提供者が工場設備を有している場合、土地やその上の工場といった不動産だけでなく、有機的な企業施設を一体として抵当権の設定対象とする工場財団抵当という方法により、担保価値を再評価することで、融資判断を再考する余地があります。
設例では、
「特許技術満載のオートメーション化した無菌工場」
ということですから、施設丸ごと担保に取れるのであれば、
「有機的に一体となったいつでも動かすことが可能な工場」
という状態の担保価値を把握できるのですから、5億円をはるかに上回る担保評価となる可能性があります。

モデル助言: 
そもそもの話ですが、今田さんには申し訳ないですが、経営判断と情実は切り離すべきであり、適当な見舞金を差し出して、まずは追い返すことを検討するべきですね。
今田さんの目論見が現実的かつ合理的な事業計画というのであれば、そもそも銀行が資金を貸してくれているはずですし、銀行が貸さない、ということは彼の計画に根拠がない、ということなんでしょうね。
それに、御社の体力から考えると、万が一2億円については回収できないなどという事態になりますと、経営に影響が出かねません。
まあ、どうしても貸したいというのであれば、先ほど申しあげたとおり、特許権やノウハウ等の知的財産権をも含めた工場施設全体を担保に取る
「工場財団抵当」
という方法によるべきです。
工場財団目録を作成したり、他人の担保権が設定されていないかを確認する等もろもろ面倒くさい手続きが必要になりますが、こういう抵当方法を前提として工場そのものの価値を丸ごと評価して、7億円程度の価値が見込めるならば、万が一の場合も回収が見込めますね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00174_企業法務ケーススタディ(No.0129):DM送付コストダウンのリスク

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社幸楽チェーン 代表取締役 角野 春菜(かどの はるな、28歳)

相談内容: 
先生、ウチは、
「油控えめで、あっさり中華を楽しんでいただける」
をコンセプトとしたファミレスチェーンをやっています。
それで、顧客層は高齢者の方々が多いので、お値引き企画へのご招待やらについて、電子メールで送るわけにはいかないんですよ。
電子メールだったら、通信料がほとんどかからないし、ご招待状も顧客がプリントアウトしてくれればいいから楽なんですけれどもね。
そういうわけで、ウチでは、顧客名簿に基づいて、来店利用履歴を見ながら、常連さんや、最近ご無沙汰のお客様に対して重点的に、毎回、封書でダイレクトメールを送っているのですが、ウチの顧客って数万人単位でいるでしょ?
郵送料がホントバカにならないんですよね。
そしたら、ウチの従業員が、宅急便が提供している、安いメール便を見つけてきたんですよ。
これで実際の送付コストをシミュレーションしてみたら、年間で数百万円単位で安いんですよ。
これはもうメール便にするしかないです。
ただ、メール便の利用約款には、
「信書はお取り扱いできません」
ってあるんですよ。
「信書」
ってなんでしょうか?
まあ、私的には、
「個人的なことが書いてある、秘密めいた手紙」
とかですかねえ。
ウチがお願いするのは、秘密でも何でもない、お客さん全員に出してるような広告なんだから、別に問題ないですよね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:「信書」に関する郵便事業株式会社の独占
国民が自分の意思を他人に対して安心確実に伝達する手段が確保されることは、近代国家においては非常に重要です。
例えば、政治批判を含む議論以外のビジネスの分野でも、競合する第三者に秘密のまま自分の意思を意図する相手へ確実に送る手段が整備されていなければ、自由な競争すら危ぶまれますから、
「安価で、安心確実に通信を行う」
ことは、重要なインフラといえます。
憲法21条2項も、
「検閲は、これをしてはならない。
通信の秘密は、これを侵してはならない」
と規定して、国民が持つ
「通信の自由」
を重視しています。
これをうけて、郵便法は、郵便事業株式会社に対して、
「総務省令で定められた料金」
のもと、法令で定められた様々なサービスの提供を要求しています。
さらに、同法79条は、サービスの提供を担保するために、
「郵便の業務に従事する者が殊更に郵便の取扱いをせず、又はこれを遅延させたとき」
について、
「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」
まで定めています。
そして、同法4条は、同社に法令上厳しい責任を課す一方で、通信インフラたる郵便事業が確実に実施されるように、
「信書」
の取扱いについては、一定の例外(「民間事業者による信書の送達に関する法律」による例外)を除いて、原則として同社に独占権を与えております。
他方、同法76条は、同社以外の者が
「信書」
を運んだり、同社以外の者に対して信書の送付を依頼した場合には、
「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」
を科しています。
要するに、
「ショボい業者が安物の郵便サービスをやると、秘密がダダ漏れしたり郵便が届かなかったりして通信に対する社会的信用が低下するので、アングラなサービスはまかりならん。
郵便事業株式会社みたいなマトモな御用達商人に全部任せろ」
ということです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「信書」とは
郵便法4条は、
「信書」
について、
「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう」
と規定しています。
これでは何が
「信書」
にあたるか否かがわかりにくいところですが、総務省は、
「信書に該当する文書に関する指針」
で具体例を示しています。
これによれば、ダイレクトメールは
「特定の受取人を選別し、その者に対して商品の購入等を勧誘する文書」
であるから信書に該当する、とされていますから、
「信書」
の範囲は世間相場よりも広いです。
その他の具体例としては、
「見積書、契約書」
「業務を報告する文書」
「表彰状」
などが挙げられています。

モデル助言: 
宅急便業者が提供しているメール便サービスには、軽く
「信書はお取り扱いできません」
とか書いてある程度で、まさか、自分が送ろうとしていた
「見積書」
「表彰状」
さらには
「ダイレクトメール」

「信書」
にあたるとの認識はなかったかもしれません。
しかし、刑法上、自分が例えば
「見積書」
を送っていることはわかっているが、法律を知らなかったために、自分の行為が違法でないと誤解していた場合(講学上、「違法性の錯誤」といいます。)であっても、裁判所では、
「法律を知らなかったオマエが悪い」
という扱いしかされず、処罰の対象となってしまいます。
実際、2009年に、埼玉県が、信書に該当する書類を郵便ではなくメール便サービスを利用して送付したところ、警察が捜査を開始しました。
結局、法人たる宅急便業者及びその従業員らだけでなく、メール便を利用した県、発送を担当した県職員個人までもが、書類送検されました。
最近は、宅配業者の中にも、
「民間事業者による信書の送達に関する法律」
に基づいて許可を得て、信書を扱える御用達業者も増えています。
安物を使うと、知らない間に犯罪者になるかもしれないので、要注意ですよ。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00173_企業法務ケーススタディ(No.0128):PL(製造物責任)リスクに注意せよ

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
白鳥堂本舗株式会社 専務取締役 白鳥 珠子(しらとり たまこ、29歳)

相談内容: 
先生、ウチは代々、京都で和菓子屋を経営してるんですけどぉ、このたび、アタシに似て白雪のような、うつくし~
「バニラ味白玉団子」
の販売を始めるんです。
実は、コレ、ウチで新しく開発した上新粉(うるち米の粉)でできていて、ツルッとかまなくても飲み込めるように、それでいて、のど越しもごっくんとしっかりと楽しんでもらえるように大きめに作ってあるんです。
さらに、今回、新商品のキャンペーンとして、お年寄りとお子さまを対象にした
「つるりん! ごっくん! バニラ味白玉団子早食い大会」
を企画しているんです!
なんと、優勝者には
「白玉王子(女)」
の称号とトロフィー、そして、
「バニラ味白玉団子1年分」
をプレゼントします!
まぁ、アタシに似て、清楚で可憐で色白で、それでいて色白な白玉団子ですから~、アタシみたいなオ、ト、メ、のような子供が優勝するといいですね~。
あ、そうそう、最近、世間では産地偽装とか、賞味期限のゴマカシとかやっているみたいだけど、ウチの上新粉は全て新潟産だし、品質管理だって、東大工学部卒の超優秀エンジニアを管理部長として雇い入れ、彼に全て任せてあるから、何の問題もないわ!
おーほほほほ!
あとは、顧問弁護士の鐵丸先生が、お墨付きをくれるだけっ!
ヨロシクねっ!

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:製造物責任法(PL法)
ある商品が原因となって損害が発生した場合、損害の賠償を請求するためには、民法の不法行為規定(民法709条以下)に従って、被害者側が、加害者の故意・過失などを立証しなければなりません。
しかしながら、当該商品の詳細や製造過程に関する情報はすべて加害者の下にあることから、この故意・過失を立証することは容易ではなく、商品が原因で事故が起きても、消費者は賠償を諦めなければならなかったことも多々ありました。
そこで、このような“消費者の泣き寝入り”を打破すべく制定された製造物責任法(PL法)は、
「製造業者等は、引き渡した製造物の欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときは、これによって生じた損害賠償をする責めに任ずる」
と定め、故意・過失を問わず、とにかく商品に“欠陥”があった場合には、有無を言わさず責任を負わせることとしました。
要するに、
「物を製造した以上、その物に欠陥があってこれが原因で損害が発生した場合には、四の五の言わずに全責任を負え」
というものです。
そして、このPL法の適用に際しては、“製造物の欠陥”を、概ね
1 製造上の欠陥
2 設計上の欠陥
3 指示・警告上の欠陥
に分類し、それぞれの項目において適切な安全性を有していたかどうかが判断されることになります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:こんにゃくゼリー事件
2007年頃から、こんにゃくを材料としたやや弾力性の高いゼリーを噛まずに飲み込み窒息してしまう事件が相次ぎ、社会問題にもなっていました。
そして、2008年7月、
「子供や高齢者は喉に詰まるおそれがあるため食べないように」
と記載された警告文に気付かず、1歳9カ月の幼児に凍ったこんにゃくゼリーを食べさせてしまい、窒息死するという痛ましい事件が発生しました。
この事件は、その後、PL訴訟に発展し、昨年(2010年)9月、神戸地裁姫路支部は、
1 製造上の欠陥
2 設計上の欠陥
3 指示・警告上の欠陥
の観点から製造元の責任を検証しましたが、最終的に遺族からのこんにゃくゼリーの製造元に対する損害賠償請求を退けました。
訴訟には勝利したものの、マスコミやインターネット上の誹謗中傷などで製造元が被った社会的な制裁は大きく、また、商品の販売停止・改良を余儀なくされました。
事件を受け、2010年7月、消費者庁が食べ物の形や硬さを規制する法整備が必要との見解をまとめるなど、現在、法的な規制の動きも活発化しております。

モデル助言: 
白鳥堂本舗さんの新商品ですが、かまなくても飲み込める? 大きめに作ってある? お子さまを対象にした
「バニラ味白玉団子早食い大会」
を企画している? PLリスクに対する認識が甘すぎます。
確かにこんにゃくゼリーの裁判では製造元が勝ったものの(現在、控訴審が係属中)、被った社会的制裁は大きく、そんなリスキーな事業に“お墨付き”なんて絶対にあげられません。
真面目に消費者の安全を考えるなら、品質管理をしっかりするだけじゃなく、例えば、団子の真ん中に穴を開けるとか、団子の形を平べったくするとか、喉に詰まらないような形状にするようにするための安全性改良の努力を惜しむべきではありません。
「バニラ味白玉団子早食い大会」
なんて発表した瞬間に、ネットの掲示板で祭りが始まりますよ。
まずは、PL法の趣旨、背景、近時の事件や解釈動向をきちんと説明しますので、早速社内ミニセミナーを企画してください。
あ、その際、バニラ味白玉団子の試食とかのつまらぬ気遣いは結構ですので。
念のため。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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