00132_企業法務ケーススタディ(No.0086):会計検査院が襲来した!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
シュール・ゲイ&スベール証券株式会社 COO 深井亮(ふかい りょう、35歳)

相談内容: 
リーマンショック以来、ウチの会社も、個人の有価証券取引が冷え込んじゃって、大変ですよ。
そうそう、それでなんですが、ちょっとやっかいな話がありまして。
一昨年、高校時代からの友人で、独立行政法人で退職積立金の運用責任者やっている山崎って奴から
「ウチの退職積立金を運用してみないか」
って相談があったんです。
まぁ、おカタい法人らしくて、あまりハイリスクの投資はできないから手数料なんかはそんなに稼げないんですけど、金額もそれなりに大きかったから、喜んで引き受けさせてもらったんです。
そしたら、例のリーマンショックですよ。
投資先として組み入れたところがポシャって、元本が欠けちゃった。
そうしたら、山崎、パニックになって
「なんとか取り戻せ。
オレをクビにする気か!」
なんて言い出す。
仕方がないから、当初の運用ポリシーに抵触するリスクのある投資を提案したら、山崎は
「契約はオレが口頭で許可する。
イチイチ文書巻きなおすと3カ月かかる。
とにかくやってくれ」
と必死になって頼むんで、やってはみたものの、これもダメで、結局、また損が増えちゃった。
悪いことしたなあ、なんて思ってたら、昨日、いきなり、灰色のスーツを着てしかめっ面をした連中がウチの会社にやってきて、
「御用だ、御用だ。会計検査院だ。独立行政法人との取引に関する帳簿を一切合切提出しろ。
拒むようなら強制的に持っていくぞ。問題があったら、ただちに刑事告発するからな。覚悟しとけ」
なんて言い出すんです。
とりあえず、
「責任者の深井は、具合悪くなって早退して病院に行った」
ことにして、お帰りいただきました。
どうなんですかね?
私、牢屋に行くんですかね?
もう怖くて怖くて。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:会計検査院法の改正
日本国憲法第90条は
「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない」
と規定しており、これを受けた会計検査院法第20条は
「会計検査院は、日本国憲法第90条の規定により国の収入支出の決算の検査を行うほか、法律に定める会計の検査を行う」
と規定しております。
このように、国の会計が会計検査院検査の対象となるのはもちろんですが、会計検査院法は、会計検査院が必要と認めるときには、
「国が直接又は間接に補助金、奨励金、助成金等を交付し又は貸付金、損失補償等の財政援助を与えているものの会計(例:日本放送協会の会計)」
「国が資本金の一部を出資しているものの会計(例:日本郵政株式会社の会計)」
なども検査ができる旨を定めております。
さらに、平成17年の会計検査院法の改正で、
「国もしくは国が資本金の二分の一以上を出資している法人の工事その他の役務の請負人もしくは事務もしくは業務の受託者又は国等に対する物品の納入者のその契約に関する会計」、
すなわち、国などに対し、業務サービスなどを提供する業者や、備品などを納入する業者などの会計内容に対しても検査を行えるようになりました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:会計検査院による検査方法
前記改正により、会計検査院の検査は、官庁などに出入りする文具品などの納入業者らにも及ぶこととなり、会計検査にとっては検査遂行上、大きな武器を手に入れることになりました。
会計検査院は、会計検査院法に基づき、会計検査院の検査を受けるものに対し、帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出を求めたり、関係者に質問したり、出頭を求めることができますし、必要な場合には会計検査院の職員を派遣して、実地検査をすることもできます。
会計検査院の検査を受けるものは、このような検査に対し、
「これに応じなければならない(会計検査院法25条、26条)」
とされております。
しかし、会計検査院は捜査機関ではありませんので、捜索や差押さえといった強制捜査はできません。
また、検査に従わなかったとしても罰則が課されるわけではありませんので、不必要な検査や過剰な検査に関しては、きちんとした理由を述べてお断りすることも不可能ではありません。

モデル助言: 
当該独立行政法人が、国から補助金をもらっていたり、国から資本金の一部を出していたりしている場合、その取引先である御社も、会計検査院法上の会計検査の対象となります。
もっとも、前記のように、会計検査院には強制の捜査権限があるわけではありませんし、脅しつけるような検査手法はそれ自体大きな問題です。
「拒むようなら強制的に持っていくぞ」
「告発するから覚悟しておけ」
などと発言していたのなら、これは大きな問題ですので、この点はキチンと釈明させるべきですし、場合によっては、正式な苦情申入れも検討すべきです。
まあ、
「威嚇されっ放し」
というのもケッタクソ悪いので、会計検査院長宛に苦情の内容証明でも送りつけ、反撃し牽制しつつ、調査手法をソフトなものに変更させましょう。
あとは、適切な落とし所をさぐりながら、話をうまく丸めて行きましょうかねぇ。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00131_企業法務ケーススタディ(No.0085):ストックオプションとインサイダー取引

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
アンシャンレジーム興産株式会社 社長 山垂井 五三(やまだるい いつみ、34歳)

相談内容: 
ボンジュール!
先生聞いて!
ストックオプションで従業員を救済してあげ~る~の話!
ちょっといいかな?
あ~先生、忙しいところ驚かしてすまんね。
や~いつぞやの弊社の従業員士気向上のためのストックオプション発行ではお世話になりました。
従業員一同、お陰で一所懸命に一騎当千の働きをしてくれてきたのだがね~、財務部から今期の決算の報告がきましたんや~!
そこで、事情が変わった~!
今期は前期よりもさらにさらに減収減益やないか~い!
このままだとボーナスは出ないし、今期の決算内容が外部に出たとたん、株価も急降下するやないか~い!
今期の報告内容を知った従業員の間からは、
「年末はパンが食べられない」
なんて悲惨な叫びが聞こえてくるやないか~い。
上場してしまった以上、私が個人的に持っている弊社株式を決算内容が外部に出る前にコッソリと売るのもインサイダーになるからダメと法務から止められるやないか~い。
そこへ救世主が登場~。
コンサルタントの樋口がいうには、
「法律上、ストックオプションの権利行使はインサイダーの規制対象ではないので、決算内容が外部に出る前に権利行使しても大丈夫」
らしい。
ん~、事情が変わった~!
早速、従業員たちには、決算内容が外部に出る前にストックオプションの権利行使をさせて、今年の年末にはパンとケーキが食べられるようにさせてあげよう。
ストックオプションを従業員に与えておいて本当によかった~!
かんぱ~い!

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:インサイダー取引規制
金融商品取引法(旧証券取引法)は、
「資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もつて国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする(第1条)」
という目的を実現するため、詳細な規定を設けています。
株価は市場において形成された客観的で公正な企業価値を反映するものであり、このような期待があるからこそ、投資家は市場を信頼し、資本主義が健全に機能することになります。
その意味では、市場における株価は、正確な情報に基づき、自由かつフェアに評価されたものでなければなりません。
反対に、市場における株価形成のプロセス自体が歪められたり(相場操縦)、株価形成の際に虚偽の情報が混入したりすること(開示における虚偽記載)、さらには、
「一部の者だけが正しい情報を持つ結果、本来あるべき企業価値とは離れた株価が形成されること(インサイダー取引)」
も、投資家の市場に対する信頼を失わせ、資本主義という制度そのものを破壊しかねない悪質な行為と考えられることになります。
このような点から、金融商品取引法は、インサイダー情報による取引を違法視し、刑事罰や課徴金の制裁など厳しい制裁を科しています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:ストックオプションとインサイダー取引
ところで、ストックオプションの権利を行使して株式を取得する場合については、
「厳格な手続きが予定されており、投資家による市場への信頼喪失が発生しない」
という理由で、インサイダー取引に該当しないものとされています(金融商品取引法166条6項)。
ただ、
「ストックオプションがインサイダー取引にならない」
のはあくまで、株式取得面に限ってのことであり、重要事実を知った者が公表前にストックオプションで取得した株式を売却したりすると、当該売却行為にはインサイダー取引規制が及びことになります。

モデル助言: 
コンサルタントの樋口氏がいっていた
「ストックオプションの権利行使はインサイダーにあたらない」
との話は間違いではありませんが、
「権利行使」
というのは、与えられたストックオプションの権利(新株予約権)を行使して、株式を取得することまでしか意味していません。
ですので、権利行使した株式を入手して、手元に置いておき、眺めるだけなら誰も文句をいいません。
しかしながら、
「大幅な減収減益」
という重要事実を知ったインサイダーが、当該事実の公表前に、皆を出し抜いて、売却して暴利をむさぼることはインサイダー取引として禁止されるのです。
証券取引等監視委員会や証券取引所などは、株式の売買を毎日監視しています。
「このタイミングのこの取引は、インサイダーでなければできない」
と思しき異常な取引については、取引の規模にかかわらず厳重な調査の対象となりますので、
「ちょっとした小遣い稼ぎだから、お目こぼしにあずかれる」
などと思ったらあとで大変なことになりますよ。
特に御社のように上場したばかりの企業では、インサイダーに関する知識が職員の間に徹底しておらず、安易にインサイダー取引に手を染め、企業の信用まで落としてしまう実例が少なくありませんので、一度、社内セミナーを実施して啓発活動をしておいた方がよろしいですね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00130_企業法務ケーススタディ(No.0084):秘せずば特許なるべからず

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
井尻理研株式会社 社長 井尻 昇(いじり のぼる、45歳)

相談内容: 
本日は、弊社の大躍進の前祝ということで、ご挨拶に伺わせていただきました。
実はですね、ついこないだ、わが社で、とんでもなく素晴らしい技術が完成しましたんです。
不況のせいか、当社のようなショぼいベンチャー企業にも、昨年あたりから、理系出身の博士号もっているような連中が
「就職させてくれ」
と言ってわんさか押し寄せてきました。
その中で京都大学理学部大学院卒ってのがいたんですが、ヤツがやってくれました。
さすが、天下の東大、宇宙の京大、構想力がぶっ飛んでます。
自動車のマフラーに、この舌のような形状をした板を取り付けると、1秒間18回という高速スピードでレロレロし、排気ガス中の二酸化炭素が激減する、という仕掛けです。
私も三流私立大卒とはいえ、一応理系なので分かるのですが、この研究のすごさは、ノーベル賞級ですし、何といっても、二酸化炭素排出25%減の国家目標を達成するに当たって間違いなく貢献しますし、それに、やらしい話、この技術、無茶苦茶儲かります。
早速、明日、業界団体主催の定例の研究発表会があるので、マスコミとかをワンサカ呼んで、研究の成果発表を大々的にやる予定です。
来月には特許出願する運びですから、特許が取れた暁には、大企業とのライセンス交渉など、先生にガツンとお願いしますから、一緒にガッポガッポ儲けましょうね。
アーハハハハハハ。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:特許権が認められるための要件
自由な競争による経済社会の発展を標榜するわが国において、
「特定のアイデアや思いつきといったものに規制がかけられ、その使用が制限される」
などというのは、国是に真っ向から反する話です。
しかしながら、
「斬新で高度な技術に対して一定期間独占的な利用権を与え、保護することにより、発明が促進し、産業が発達し、結果として社会や国家が豊かになる」
という観点から、わが国においても特許制度というものが定められています。
このような特許制度の趣旨からは、
「アイデアや思い付きであれば何でもかんでも特許権を与える」
ということにはならず、
「産業の発達に寄与するような新規の発明に限って、特許を与える」
という仕組みが導かれます。
このような観点から、特許法において、特許要件として、新規性、すなわち
「その発明が未だ社会に知られていないこと」
が加えられています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:特許出願前の研究発表には要注意
研究者の中には、特許法の知識に疎いために、研究が成功すると、嬉しさのあまり、特許出願なんて面倒なことは後回しにして、すぐに研究内容を発表してしまう方がいらっしゃいます。
しかしながら、この行為は特許取得にとっては非常に有害な影響を与えます。
すなわち、研究発表をしてしまうことで、その研究内容が特許出願に先立ち社会に知られてしまうこととなり、特許を受けるための要件である新規性が喪失してしまうのです。
発表をした本人からすれば、自分の行った研究と同一又は似通った内容の研究が誰かに発表されてしまう前にいち早く発表したいのは心情として当然でしょうし、何より、
「自分で発見した研究成果・技術を自分自身が発表することで、なぜ特許権が与えられなくなるのか?」
と不信に思われるかもしれません。
しかし、新規性のない発明には特許を原則与えないとしているのは特許制度の本質から導かれる要件であり、特許法の立場としては
「成果をいいふらしたいのであれば、特許出願してからにしなさい」
ということなのです。
とはいえ、ときに、法律も粋な計らいをしてくれるもので、特許法は、新規性のない発明については原則特許権を与えないとしつつ、30条にて、
「特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会」

「刊行物」
にて発表した場合には、例外的に、新規性が失われないとの救済規定を設け、
「研究者の功名心」
に一定の配慮を与えています。

モデル助言: 
ガッポガッポという景気のいい話はまことにありがたいのですが、その前に、そもそも御社が特許を取れなくなるところでしたね。
明日の発表会は業界団体の定例会だそうですから、
「特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会」
にはあたらないでしょうね。
研究発表を行った瞬間に、新規性が喪失し、特許権は永久に取れないということになります。
どうしても発表を行いたいというのであれば、別のアプローチを考えないとダメですね。
特許法29条1項1号にいう
「公然知られた」
とは、
「秘密状態を脱した」
ことをいうとされています。
すなわち、その研究発表を聞いた人間と守秘義務契約、つまり、秘密を守るという約束をしている場合には、
「公然知られた」
とはなりません。
ですので、明日の研究発表会の参加者全員から守秘義務契約書を徴収しておけば、なんとか新規性が維持されますかね。
とはいえ、そもそもそんな舌が高速でレロレロなんて発明で特許取れますかね。
ま、発明の高度性の点も含めてよく検討してください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00129_企業法務ケーススタディ(No.0083):自爆出願にご注意

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社太陽広場 中野 訓 (なかの くん、49歳)

相談内容: 
ウチのヒット商品
「リゾートラバー」
について相談させてください。
この商品、単に腕に着けるだけのゴム製のアクセサリーで見た目も全然お洒落じゃないんですけど・・・。
ほら!
匂いません?
すごい良い香りでしょ?
けっこう人気なんですよ。
ただ、実はこれ、けっこう簡単に作れちゃうんです。
高い値段で売るために、素材のゴムに特殊な製法があるような雰囲気でPRしてるんですけど、本当のところ、どんなゴムでもできちゃうんですよね。
香り付けのほうも、コーラとラー油と大きな玉ねぎを・・・、おっと、いかん。
とにかく、そこらへんのお店で手に入るような材料とか薬品を混ぜた液体の中にテキトーなゴム製品を1週間も漬け込んでおけば、誰でも作れちゃう~みたいな。
だから、この製法、絶対バラしちゃダメなんです。
そうしたら、先日、中堅パソコンメーカー法務部の勤務経験のあるウチの八原(ぱっぱら)法務部長が、
「社長! そういう知的財産は、特許を出願しておかないと危ないですよ」
っていうんです。
確かに、他社にマネされたり、先に特許出願されちゃったら大変だし、やっぱり早急に出願しておいたほうがいいですよね?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:自爆出願の代
特許権、実用新案権、意匠権及び商標権を総称して、産業財産権(かつての工業所有権)といいます。
近年のわが国の
「知的財産戦略」
のお陰で、特許権をはじめとする産業財産権は一躍脚光を浴び、マスコミ等が騒ぎ立てる
「発明で大金持ち」
のシンデレラストーリーと相まって、
「何でもかんでもとにかく出願」
という風潮が高まりました。
しかしここ最近、こうした状況に疑問を呈する声が上がり始めました。
といいますのも、特許権をはじめとする産業財産権に共通する特徴として、権利として保護されるためには
「登録」
が必要であるという点が挙げられます。
この
「登録」
という制度は、裏を返せば
「企業機密を世界中に暴露する」
ことを示しています(ただし、意匠権については3年以内に限り登録内容を秘密にする制度があります)。
確かに、登録された権利を侵害して商売する企業などには、利用の中止を求めたり、利用許諾の対価を請求したりできますが、単に家庭内で利用する場合等、個人使用の範囲にとどまっている限りは利用の中止や対価を求めることができません。
つまり、一般消費者を対象とする
「誰でも作れちゃう」
商品の作り方を出願して、これが一般に公開された場合、たとえ他企業がマネしなくても、商品の売れ行きは落ち込んでしまうわけです。
さらに、知的財産権の属地主義(登録した国の国内のみしか効力が及ばないこと)の原則のお陰で、わが国でせっかく出願・登録されても、海外で別途出願の手続をとらなければ、海外ではパクられ放題となってしまい、これを避けようとして、たくさんの国で出願すれば、それだけ多額の費用が掛かります。
「わが国での無計画な出願の乱発が、かえってわが国の貴重な知的財産流出の深刻な要因となっている」
との批判がなされている所以です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:営業秘密の重要性
それでは、今回の
「リゾートラバー」
の製造方法のような企業秘密は、法律上の保護を一切受けられないのか、というと、そんなことはありません。
ここで登場するのが企業法務の伝家の宝刀、不正競争防止法に規定される
「営業秘密」
です。
あまり知られていませんが、
「営業秘密」
は広い意味での
「知的財産権」
に含まれるもので、産業財産権に負けない重要なものです。
「営業秘密」
に該当する情報は、法律上の手厚い保護が与えられており、営業秘密の不正な取得・使用・開示行為に対しては、民事上、差し止め請求や損害賠償請求が認められている上、悪質なものには刑事罰まで課されます。
「営業秘密」として保護される対象は、特許権や実用新案権等と異なり大変幅広く、およそ事業に有用な情報であればOKです。
1 秘密として管理されている
2 有用な情報であり
3 公然と知られてはいないものであれば
「営業秘密」
としての手厚い保護を享受できます。
つまり、厳重なパスワードをかけて保管し従業員に厳格な守秘義務を課すなど、営業に有用な秘密情報を厳重に管理しておけば、ライバル企業も迂闊に手出しできなくなるというわけです。

モデル助言: 
そんな簡単に作れるものが特許として認められるかどうか甚だ疑問ですし、実用新案にしても、保護の対象は
「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」(実用新案法1条)
ですから、製造方法や定まった形のない液体などはそもそも対象外です。
特許出願して企業秘密を自主的にさらした挙げ句、結果的に特許が取れなかった場合には、競争優位性を失うわ、恥はかくわ、出願費用は無駄になるわで目も当てられません。
「リゾートラバー」
なんて、商品の性質上、出願に最も適さないものの典型例ですよ。
「知財の時代だから、なんでもかんでも出願すべき」
なんてのは、実務を知らないアタマでっかちの生兵法もいいところです。
そういう
「知ったかぶりの知財バカ」
の話など無視して、営業秘密として法律上の保護が与えられるよう、しっかりとした情報管理体制を構築することにこそ心血を注ぐべきですね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00128_企業法務ケーススタディ(No.0082):下請業者への購入規制の問題点

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社アイネ化粧品 横分 剣 (よこわけ けん、49歳)

相談内容: 
こんな御時世だと、かえってギラギラしててゴージャスなほうがウケるんでしょうネ。
当社は、古き良き昭和時代をコンセプトに、そんなイメージの化粧品を作ってるんですけど、売れ行きは昇る龍のごとく上昇中です。
ただ、ちょっと困ってることがありまして。
当社の本年度の戦略商品
「クレイジー・ポマード」
だけが全然売れないんですよ。
ハンサムボーイにはポマードが必需品だと思うんですけど、ベトベト過ぎて今の若い人は嫌がるみたいですネ。
それで、当社も考えまして、来月から
「クレイジー・ポマード販売キャンペーン」
と称して、役員や従業員の知人とか、取引先に対して、協力を求めることにしたんですよ。
まぁ、主なターゲットは、当社製品の製造を請け負っている下請業者なんですけどネ。
下請業者との取引担当者が、各下請業者に対して、取引額に応じて1社につき10~100ダースの目標個数を決めて
「クレイジー・ポマード」
の購入を要請するんです。
下請業者たちからは
「ポマードなんて買わされても持て余すだけだ」
という強い反対があったみたいですけど、結局、取引担当者が
「俺の話を聞け! 5ダースだけでもいいから! 嫌なら他の企業の仕事でも請け負うか?」
なんて強気で何度も要請し続けたら、一部を除いてほとんどの下請業者がそれぞれの目標個数の購入を了承してくれそうみたいで、一安心してます。
当社も下請業者には沢山仕事をあげてるわけだし、あくまで任意の協力を要請してるだけだから、問題ないですよネ?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:独禁法と下請法
独禁法は、大企業など取引上優越した地位にある企業が、その地位を不当に利用して圧力をかけるなどし、相手方企業に不利な取引条件等を強要することを、
「不公正な取引方法」
のうちのひとつ、
「優越的地位の濫用」
として禁止しています。
もっとも、この弱肉強食の資本主義経済においては、契約締結や取引条件の交渉等の局面において厳しい交渉が行われるのは当然のことであり、
「どこまでやると不当なのか」
の判断は難しく、その分、公取委(公正取引委員会)が
「優越的地位の濫用」
として独禁法違反を認定するためには、長時間を要する慎重な調査や手続が不可欠となっています。
そこで、一般に極めて弱い立場にあるといえる下請業者を画一的な基準と簡易な手続で迅速に救済するために、独禁法の補完法としての下請代金支払遅延等防止法(長ったらしいので「下請法」と略称されます)が制定されました。
例えば、化粧品といった
「物品の製造委託」
の場合、原則として、
1 資本金3億円を超える企業が3億円以下の業者に下請けさせる場合、
もしくは
2 資本金1千万円を超える企業が1千万以下の業者に下請けさせる場合に、
下請法が適用されます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:物の購入強制の禁止
下請法は、適用対象となる下請取引について、発注元会社に対し
「下請代金の減額」「買いたたき」等の
「11の禁止事項」
を命じており、そのうちのひとつとして、
「正当な理由なく自己の指定する物を強制して購入させること」
を禁止しています(物の購入強制の禁止。同法4条1項6号)。
違反した発注元会社には、公取委による警告や勧告措置等が待っています。
ここにいう
「正当な理由」
とは、例えば、
「下請業者に発注した製品の品質を一定に保つために、発注元会社が自社製原材料の(適正な価格での)購入を要請する場合」
などが挙げられますが、今回のように、単に自社の在庫の消化を目的としているような場合には、正当な理由があるとは認められません。
また、
「強制して購入させること」
とは、下請業者による上辺だけの
「任意の了承」
の有無で決まるわけではなく、発注元会社としての強い立場を利用し、物の購入を取引条件に組み入れさせる場合はもちろん、事実上、物の購入を余儀なくさせているような場合も含まれます。
典型例としては、
1 発注担当者など下請取引に影響を及ぼし得る者が購入を要請する場合
2 下請業者ごとに目標額や目標量を定めて購入を要請する場合
3 購入しなければ不利益な取扱いをする旨を示唆するような場合
4 下請業者が反対したにもかかわらず重ねて購入を要請する場合
等が挙げられます。
今回のキャンペーンは、このすべてに該当するものといえるでしょう。

モデル助言: 
確かに、市場競争社会では合意があればどんな取引をすることも自由なのが原則ですが、強い立場を利用して弱い立場の業者にアンフェアな合意を要求することは、もはや
「自由で公正な市場競争」
とはいえません。
最近では、2008年4月に、物の購入強制の禁止に違反した発注元会社に対して、
「違反行為で得た利益額(約一千万円)を下請業者に速やかに支払うこと」
等を求める公取委の勧告なんかも公表されてますし、会社名の公表等による企業信用の失墜を回避するためにも、今回のキャンペーンは即中止すべきですね。
だいたい、商売に失敗したからといって、そのツケを下請けに押しつけるのは商売道に反しますよ。
ここは潔くビジネスでの負けを認めて、マット系とかワックスとか今風の売れ線のものを作って挽回した方がいいですね!

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00127_企業法務ケーススタディ(No.0081):偽りの“限定”“割引”広告

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
三森中央電工株式会社 会長 小島 美幸(こじま みゆき、29歳)

相談内容:
先生ご承知のとおり、当社は、海外のしょぼい健康商品や美容品を見つけて買いつけてきては、テレビやインターネットなどで通信販売していますが、昨年、当社の企画部長が、台湾の会社からなかなか見栄えのいい美顔器具を見つけてきたんです。
海外のよくわかんない大学の先生が特許を取得した秘密の光線を発することで肌を活性化させるという代物なんですが、やってみると結構効果があるんです。
さっそく、健康器具ブームに乗っかって大々的に売り出そうってことで、今年初めに定価4万9800円で売り出したんです。
ところが、これがぜんぜん売れずに、在庫が積み上がる一方でどうしようもない。
そこで、営業の連中に
「あんたらなんとかしなさい。
期末まで在庫残したら承知しないわよ」
ってハッパかけたら、ウマい販売方法を考えてきたんです。
日本人って、「期間限定」とか、「限定何個」ってのに弱いじゃないですか。
そこに目をつけて、
「限定50個をご提供! 早い者勝ち! 今週土曜日までに購入すれば1万円引!」
ってキャッチコピーで販売することにしたんです。
もちろん、商品はたくさんあるから50個超えても販売しちゃうし、ホトボリ冷めたらまた同じように、
「販売再開! 限定50個」
「土曜日までなら安い」 
って具合です。
このキャッチコピーが大当たりして、倉庫で眠っていた商品がまたたくまに売れて、在庫がどんどん減っていきました。
そうやって喜んでいたんですが、昨日、いきなり、消費者庁っていう役所からの通知がきて、このキャッチコピーは景品表示法に違反する行為だから詳しく調べる、とかいって脅すんですよ。
在庫を一挙に掃くか、限定して小出しにするかなんてウチの自由だし、お客さんも商品を安く買えるわけだから、何の問題もないじゃないですか。
こんなの、嫌がらせですよ、まったく。
先生、とっとと追い返してください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:景品表示法
景品表示法とは、正式には不当景品類及び不当表示防止法といいます。
消費者は、商品を購入するにあたり、より質の高いもの、より価格の安いものを求めますし、商品を販売する事業者等はそのような消費者の期待に応えるため、他の事業者の商品よりも質を向上させ、また、より安く販売する努力をし、このような過程を通じて市場経済が発展していきます。
ところが、品質や価格などに関して、誇大な広告や過大な景品類の提供が行われるようになると、消費者が誇大な広告に惑わされたり、商品を選択する際に商品の品質ではなく景品の善しあしに左右されるようになり、その結果、質が良く安い商品を選ぼうとする消費者の適正な選択に悪影響を与えてしまい、本来あるべき
「商品の価格と品質による競争」
がなくなってしまいます。
そこで、公正な競争を確保し、もって一般消費者の利益を保護することを目的として景品表示法が制定されたのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:有利誤認表示
以上のような趣旨で定められた景品表示法ですが、第4条第1項第2号において
「実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるものであって、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる広告」
等を禁止しています。
具体的には、商品・サービスの取引条件、購入方法などについて、実際よりも顧客にとって有利であると偽って宣伝したりする行為、例えば、過去に定価で販売したことがないにも関わらず、広告などで
「今なら通常価格から1000円引!」
などと表示する行為が
「有利誤認表示」
に該当することになります。
消費者庁(かつての所管官庁であった公正取引委員会から平成21年9月1日付で消費者庁に移管されました)から、当該
「有利誤認表示」
行為の排除命令がなされ、命令の公表等を通じて対消費者イメージが急激に悪化してしまう場合があります。

モデル助言: 
ま、おっしゃるとおり、在庫をどのように切り取って売るかは企業の経営判断ですし、お客さんに対しても定価以下の割引販売なので、一見すると損がないように思える。
しかしながら、実際50個を超えても販売しているにもかかわらず限定50個と謳って販売するのは、価格と品質以外の
「飢餓感」
という要素を不当に誇張して消費者の選択を誤らせるものですし、当初から50個以上であっても売るつもりであれば宣伝文句自体虚偽といわれても仕方ないですね。
また、恒常的に
「1万円引き」
で販売しているなら、最初から
「1万円引きの値段」
を表示すればよいわけで、恣意的に実績のない定価を提示してそこからの値引きを不当に誇張するのは、
「お客さんに虚偽のお得感」
を与えているともいえます。
ま、争ってもいいですが、争えば争うほど、消費者がドン引きするだけで、強気は愚の骨頂です。
一応争う姿勢を見せつつ、
「規制の基準の公表がなかったので問題ないだろうと早合点したが、今後はご指導を得て慎むので、寛恕されたし」
と平伏し、注意・警告で静かに幕引きさせるのが一番でしょうね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00126_企業法務ケーススタディ(No.0080):違約金を上回る実損害が発生した!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
木暮製パン株式会社 社長 木暮 伝右衛門(こぐれ でんえもん、47歳)

相談内容: 
鐵丸先生、そのパン、美味しいであろう。
最高級の特別な小麦粉で作ったわが輩の会社の自信作なのだよ。
これが今、巷で大人気であり、わが輩の会社もがっぽがっぽの大儲けである。
そして、聞いて驚いてほしい。
先日、ついにあの有名なフレンチ・レストラン
「レーニン・ギョームの館」
から、わが輩の会社のパンを卸してほしい旨の申し入れがあったのだ。
今回のパンの研究開発には多額の投資を行い、社運を懸けてきただけに、このように大成功を収めると深い感動が押し寄せるものだな。
ところが、今回のパンの要となっている最高級小麦粉の仕入れ先である世紀粉末株式会社が、わが輩の会社がウハウハなのを見て悔しがり、突然小麦粉の値上げを要求してきたのである。
そんな不当な要求など当然はねのけてやったら、世紀粉末は、今度は返す刀で、
「わが社は、御社には絶対小麦を卸さない。
契約が切れる本年末まで、契約に書かれているとおり、先月の売買代金の5分の1の違約金を振り込んでやる!」
などいってきた。
世紀粉末の社長め、世界的な小麦粉不足をいいこと幸いに、もっと高い値段で買ってくれる取引先を見つけ出してきたに違いない。
冗談ではないぞ!
こちらはもう
「レーニン・ギョームの館」
と契約してしまっているのだ。
あの小麦粉で作ったパンでなければ
「レーニン・ギョームの館」
も納得しないだろうし、わが輩の会社が被る大損害は、小麦粉の売買代金の5分の1程度のケチ臭いカネでは全く埋め合わせできんぞ。
こんなことがあっていいのか!
もっと賠償金をふんだくることはできないのか、鐵丸先生!

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:玉虫色の言葉「違約金」
「違約金」「制裁金」「ペナルティ」
という言葉は、ビジネスの世界でもよく耳にしますが、その実際の意味について正確に理解している方はあまり多くないように思われます。
それもそのはず、
「違約金」
という言葉は、
「債務者が債務不履行の場合に、債権者に対して給付することを約束した金銭」
などと説明されるものの、実際には、次のように
1 予め定められた損害賠償額(損害賠償額の予定)
2 実際の損害のほかにプラスαで課される制裁金(違約罰)
などなど、多種多様な意味で用いられる、いわば「玉虫色のマジックワード」なのです。
これらは、それぞれ似たようなものに見えるかもしれませんが、
「1 損害賠償額の予定」
の意味であれば、実際に発生した損害額がいくらであるかとは無関係に予定額の賠償しか請求できないのに対し、
「2 違約罰」
の意味であれば、当該金額の請求に加えて、別個に、実際に生じた損害額の賠償をも請求できます。
このようにたかが言葉一つですが、解釈によって、時に巨額の差を生み出します。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:民法の原則
わが国の民法は、
「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
この場合においては、裁判所は、その額を増減することができない」(420条1項)
と規定し、
「1 損害賠償額の予定」
に拘束されます(ただし、法外に高額または低額の予定をすると公序良俗違反として無効にされることがあるほか、利息制限法などの特別法による規制もあります)。
その上で、同条3項は、
「違約金は、賠償額の予定と推定する」
と規定し、
「違約金」
は、(推定を覆すような)特段の定めがない限り、
「2 違約罰」
ではなく
「1 損害賠償額の予定」
であるとしています。
したがって、契約書の中に特段の説明がなく
「違約金」
とだけ書かれた約定が存在する場合、損害賠償を請求する側は、この推定を覆さない限り、実際に発生した損害額が予定額を上回ったとしても、予定額しか請求することができません。
予定額以上の損害を請求するには、あらかじめ契約書の中で、
「違約罰として○○円を支払う。
ただし、甲はさらに契約の履行を請求し、あるいは実際に生じた損害の賠償を求めることができる」
等と定める必要があるのです。

モデル助言: 
今回の御社と世紀粉末株式会社との間の契約書を見る限り、
「違約金」

「違約罰」
の意味であると解釈させるような明確な文言はないようですね。
てゆうか、なんで直近売買金額の5分の1なんてみみっちいペナルティにしたんですか。
5倍なら理解できますが。こんなの、契約違反を誘発するようなもんじゃないですか。
え?
よく読んでなかった?
ま、これからは、あやふやな表現を避け、明確な違約罰条項を記載するようにして、違約罰の額も、契約遵守を促すような高額なものにすべきですね。
とはいえ、このまま放置するのも悔しいでしょうから、少しドンパチやりましょうか。
「違約金条項の『5分の1』は錯誤で、契約上の真の意思表示は『5倍』であり、そのことは相手方も知っていた。そうでないと、あまりにも不合理でおかしい」
等と主張してみましょうか。
また、世紀粉末の一連の行動を全体としてとらえ、
「不当な取引拒絶や優越的地位の濫用に該当し、独禁法に違反する」
と構成し、公正取引委員会への被害申告も同時にやっちゃいましょう。
落とし所としては、取引数量をコミットするとか、支払条件を改善して手打ち、といったところでしょうかね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00125_企業法務ケーススタディ(No.0079):外国消費者のクレーム対応

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
エトセトラ株式会社 社長 大抜 由美(おおぬき ゆみ、35歳)

相談内容: 
近頃、わが社のアクセサリー
「アジアの純金」
がいい感じなんです。
わざと重くしてあって、ピッカピカの金メッキが純金よりも純金らしいですよ。
ま、お値段はお手頃ですが。
純和風のデザインが疲れたOLの癒しアイテムに大人気なんです。
その上わが社は、輸出や通販はやらず、純粋に国内向けのみの販売戦略をとってますが、それがかえって
「黄金の国ジパングを実際に訪れないと買えない」
って噂になって、最近は、直営店舗に外国人のお客様も増えてきました。
ところが、ひとつ困った問題が起きています。
P国から旅行で来た裕福なお客様が
「アジアの純金」

「愛人のプレゼント用」
にと30個まとめ買いしたんですが、後日、
「重すぎる割に鎖が貧弱で、買ったもののうち18個がすぐに鎖が切れて壊れてしまった。
プレゼントしたのに恥かいたぞ」
ってクレームがきたんです。
非常に繊細な商品なので、ちょっと手荒な扱いをしたら壊れてしまうのはしょっちゅうで、いちいち対応してたら会社がもちません。
売価が手頃なこともあり、わが社では
「ノークレーム・ノーリターン」
という内容で欠陥の責任(瑕疵担保責任)を一切負わない内容の約款をつけてます。
お客様には購入の際に詳しく説明して十分に納得していただいた上で、その場で欠陥がないことを確認してもらってます。
でも、そのお客様は、
「P国の消費者契約法によれば、相当な理由なしに業者の担保責任を排除する条項は無効である」
なんていって、わが社の約款など関係ない、と息巻いています。
裁判も辞さないなんて脅されてますが、おとなしく返品受けた方がいいんですかね。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:売買契約の準拠法
場所や当事者などの要素に外国が絡む渉外的な法律関係には、
「どこの国の法律により規律されるのか」
という問題があり、規律する国の法律を
「準拠法」
と呼びます。
わが国の法の適用に関する通則法(通則法)7条によれば、私人同士の契約の成立や効力についての準拠法は、当事者が契約の際に合意した国の法律となります。
仮に契約の際に準拠法を決めなかった場合には、例えば通常の動産売買契約であれば売主側の国の法律が準拠法となります(通則法8条)。
今回の場合、売買契約の際に準拠法が決められていなかったようなので、売主側の国の法律、すなわち日本法が契約準拠法となるのが原則です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:新設された「消費者契約の特例」
ところが、平成19年1月から施行された通則法において、消費者と事業者の間の契約(消費者契約)について、消費者保護の観点から、
「消費者契約の特例」
が新設されました(通則法11条)。
これによると、契約の際に準拠法が決められていなかった場合には、消費者が常日頃生活している国(常居所地)の法律が準拠法となります。
また、準拠法が決められていた場合でも、消費者が、自分の常居所地の法律のうち特定の強行規定(契約当事者同士が適用しない旨を合意しても、強制的に適用されてしまう規定)も適用するよう求めた場合には、その規定が適用されることになっています。
ですから、事業者は、外国人のお客さんと契約の場合、十分注意をしないと、思わぬところで
「アウェーの法律」
に縛られることになります。
もっとも、
「消費者契約の特例」
にも例外があります。
消費者自らが事業者側の国に赴いて契約を締結した場合(「能動的消費者」と呼ばれます)、
「自ら進んで外国の事業者と取引したのだから保護してあげる必要はない」
とされ、適用がなくなるのです。
ただし、事業者が消費者に対し、当該消費者の常居所地で
「勧誘」
を行っていた場合には、
「消費者契約の特例」
が適用されるので注意してください。
この場合は、
「外国の事業者の勧誘に乗っかって取引をしてしまったのだから、保護してあげる必要がある」
というわけです。

モデル助言: 
今回は、P国人のお客さんが日本に出向いてアクセサリーを買って帰ったわけですから、能動的消費者に当たり、
「消費者契約の特例」
は適用されません。
従って、原則どおり日本法が契約準拠法となり、P国の消費者契約法の適用されませんので、問題ありませんね。
御社はウェブサイトで
「アジアの純金」
の宣伝をしているようですが、海外では具体的な販売に向けての電話やダイレクトメール等の個別的な勧誘は一切していないということなので、この程度であれば
「消費者契約の特例」
が適用される
「勧誘」
には当たりません。
それに、18個とはいえ、廉価なアクセサリーのために弁護士費用を使ってまで本気で訴訟を提起するということも考えられませんし、単なるブラフと見ていいでしょう。
とはいえ、それほど大きな額ではありませんし、せっかくいい評判を博している海外で悪い噂をたてられるリスクもありますから、ここから先の対応は御社の
「客商売」
としての経営判断の問題ともいえますね。
ま、
「訴訟となると、18名の愛人の方全員に出廷いただき、具体的な商品使用方法を証言いただくことになりますが・・・」
とか牽制して相手の戦意を喪失させつつ、特別の計らいとして
「最新製品を優待価格で提供する」
というあたりで事態を収束させるのが現実的なところでしょうね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00124_企業法務ケーススタディ(No.0078):白地手形の取り扱いの極意!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
小林通商株式会社 社長 小林 健道(こばやし けんどう、37歳)

相談内容: 
5年ほど前、つきあいのあった宮川商事にお金を貸して、借用証がわりに約束手形を受け取ったんですわ。
もちろん、チラシの裏とかじゃなくて、正真正銘、銀行の手形帳から切り取ったヤツですわ。
そのころの宮川商事は深刻な経営危機の状態で、返済時期も決めらず、
「手形の満期日は、今、決めんでええさかい、宮川商事の業績が復活した時期を支払期日にしとこか」
なんてユルイ合意にしときました。
ゆうても、その他の部分、手形の振出日や金額、受取人などの事項は、ちゃんと記載させましたわ。
ところが、宮川商事は最近エライ景気がええ様子で、逆に今度はウチの会社が危ないことになってきました。
それで、このあいだ、宮川商事の社長の宮川に、
「エライ景気ええらしいやんけ。5年ほど前に貸したお金を返してくれへんか」
って話したんですわ。
そしたら、宮川の奴、
「返済期限もユルかった話やし、今請求されても困るわ。
それに、あんなもん時効で、手形なんかもう使えへんで。
ゆうとくけど、ウチに無断で手形にグチャグチャ書き加えたらほんなもん、偽造やで。
気ぃつけや!」
なんてぬかしよる。
確かに手形法の条文を見てみたら、70条に
「満期ノ日ヨリ三年」
で時効になるとか書いてあるんですよね。
ちゅうことは、5年前の手形はもう時効なんでしょうか。
それに偽造だとかどうとか物騒なこと言われるし、もう、この手形には見切りをつけた方がいいんでしょうかね。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:白地補充権とは
手形は、振出人が重大な債務を負うという性格から、その記載方法は、厳しく規律されます。
すなわち、法律上、
「必ず記載しないと、未完成手形として、法的効力が生じない事項(必要的記載事項)」
というのが定まっています。
とはいえ、実際の手形取引においては、設例のケースのように、手形の必要的記載事項の一部をブランク(白地)にしたまま振り出され、後日、その手形の受取人が振出人との合意にしたがってブランクを埋めること(「補充」と呼ばれます)で、その手形を完成させる取扱とすることが多く見受けられます。
設例のように、手形の決済日を後日取り決める趣旨で白地にしておくような場合は、
「満期白地」
などといい商業取引でよく使われます。
そして、白地手形の白地部分に必要な記載を行い、完成手形に仕上げることのできる権利は
「白地補充権」
と呼ばれ、当該権利は、振出人と受取人の合意によって生じるものとされています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:満期白地手形の白地補充権の時効
満期日が記載された手形であれば、その手形の時効は、記載された満期日から3年後ということになります(手形法70条「満期ノ日ヨリ三年」)。
すなわち、記載された満期日から3年が経過してしまえば、その手形本体が時効にかかってしまいますので、白地補充権が行使できなくなり、手形としての強力な権利行使が不可能となり、単なる民商事債権の証拠としてしか使えなくなります。
他方、満期日が記載されず空白のままである場合については、手形法70条が
「満期ノ日ヨリ三年」
と規定する以上、時効がいつまでたっても始まらないのではないか、との疑問が生じます。
この点については、簡便な金融手段として手形が飛び交い、これに比例して事故が多発した昭和30年代まで裁判例・学説が入り乱れた状態でしたが、昭和36年11月24日に、最高裁が小切手に関する訴訟において、
「『手形に関する行為』(商法501条4号)に準じて5年間の消滅時効にかかる」
との判断を下すことにより、理論上の決着がつきました。
この判例法理により、手形についても、満期が白地とされた場合、振出日から5年間で白地補充権が消滅時効にかかり、以後、手形としての権利行使ができなくなると解釈されています。

モデル助言: 
宮川商事から受け取った満期白地手形については、振出日から5年間で白地補充権が消滅してしまいますから、
「5年ほど前」
というのが5年経過してしまったのか否かで結論が異なってきます。
至急、振出日の特定をお願いします。
もし、まだ時効が来ていなかったら、急いで満期日を補充して、手形としての権利を行使しましょう。
宮川は偽造だとかなんとか言っていますが、法的には、満期白地の手形を交付した行為自体が、白地補充権を付与したと解釈できますし、補充しても無断で偽造したことにはなりませんね。
心配であれば、宮川に対して
「偽造云々言っておられるが、白地補充権を制限した旨の別段の合意があるのであれば、具体的合意内容とその証拠をご提示いただきたい。
応答がなければ、手形交付とともに無制限の白地補充権を付与したとの当方の認識に貴方も同意したものと考える」
との内容証明でも送りつけておきましょうか。
最後に、5年となると貸金としての商事時効も到来しますから、別途催告もしておきましょうね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00123_企業法務ケーススタディ(No.0077):マンションの建築確認申請が留保された!

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
星屋建設株式会社 社長 星屋 英俊(ほしや ひでとし、37歳)

相談内容: 
今、うちの会社では、不動産不況をお笑いでフッとばそうと、
「爆笑マンション」
っていうのを計画しているんです。
それで、一番の特徴は、窓やベランダの配置や壁の色なんかで工夫して、マンションの壁面がボクの顔に見えるように設計して、鼻の穴の部分に当たる3階のガラスに白色の上下稼働のタペストリーカーテンを付けて、上げ下げすると鼻からうどんが出てくるように見えて笑いが取れる仕掛けになっているんです。
一応、建築基準法とかその他の法令に則って建築確認申請していたんですけど、最近、周辺住民が、下品だとか、環境破壊だとか失礼なことを言い出して、マンションの建設に大反対をし始めたんです。
さらに悪いことには、どうやら、マンション建設反対住民の中心メンバーがウチの会社と周辺住民が揉めていることを役所にタレこんだらしくて、役所から、
「周辺住民とよく話合いを行って円満に紛争を解決するように」
と指導されてしまったんです。
建築士の先生がいうには、そもそも、住民説明会ってのは条例で決められているだけで、住民説明会で反対されたからって建築確認をもらえないなんてことはないっていうじゃないですか。
それなのに、役所は、
「周辺住民の皆様と話し合って円満な解決をせよ、という行政指導をした以上、話し合いができるまでは貴方の建築確認は留保しますので、建築確認は下ろせません」
の一点張りなんです。
これって、絶対、役所の嫌がらせですよね。
先生、行政訴訟とか一発食らわして、役所にぎゃふんといわせてやってくださいよ。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:建築確認とは
建築確認とは、建築基準法に基づき建築確認を行う建築主事等が、一定規模以上の建築物の建築を希望する者の申請にかかる建築計画が建築基準法や建築基準関係の規定に適合しているかどうかを工事開始前に審査する行政行為をいいます。
そして、この行政行為としての建築確認は、
「許可」

「認可」
といった一定の裁量を伴う行為ではなく、その文言通り、
「申請」
に添付された設計図書などが建築基準法やその他の建築基準関係規定に適合するか否かを機械的に
「確認」
する作業に過ぎません。
したがって、適正に行われた建築申請に対し、建築主事等が何らかの裁量をはたらかせることは原則としてできないと考えられています。
ところで、星屋建設が受けた行政指導とは、行政機関が、一定の行政目的を実現するために特定の者に対し一定の作為や不作為を求める勧告や助言などをいいます。
このような行政指導に従うか否かはあくまで任意とされていますが、行政指導に従わないことを理由として一定の不利益処分(行政処分)が課されることもあるので注意が必要です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:建築確認を留保する行政指導における問題
設例と同様に、建築主と周辺住民との間の紛争に関する行政指導が行われていることのみを理由として建築確認申請に対する処分を留保したことにつき、当該
「建築確認を留保したこと」
の是非をめぐって国家賠償請求訴訟が提起されたことがあります。
これに対し、最高裁判所(昭和60年7月16日判決)は、原則として
「建築主事が当該確認申請について行う確認処分自体は基本的に裁量の余地のない確認的行為の性格を有するものと解するのが相当である。(中略)建築主事としては速やかに確認処分を行う義務があるものといわなければならない」
としつつ、
「建築主が確認処分の留保につき任意に同意をしているものと認められる場合」
などには、当該留保も例外的に適法としました。
しかしながら、さらなる例外則として、
「建築主が右のような行政指導に不協力・不服従の意思を表明している場合には、(中略)行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは違法である」
としました。

モデル助言: 
星屋さんの場合、法令上の建築基準を全て満たしているのに
「周辺住民の皆様と話し合って円満な解決がされるまで建築確認は留保します」
といわれているわけですが、最高裁の理屈によれば、原則当該
「留保」
は違法とされますが、建築主が当該行政指導に任意に応じている場合には、確認申請留保も問題ないとされてしまいます。
逆に、
「話し合いなんかせえへんで! さっさと確認せんかい!」
というのであれば、星屋さんとして
「行政指導に不協力・不服従の意思を表明」
しておかなければなりませんので、役所宛に、内容証明郵便による通知書で
「周辺住民の皆様と話し合えという行政指導には従うつもりはありませんので、早急に確認申請に対して所要の判断を下してください」
とはっきり意思表示をする必要がありますね。
とはいえ、地域住民と軋轢を抱えたままでは、行政上問題なくても、別途司法上の問題として建築が差止訴訟が提起されるリスクもありますので、まずは円満な話し合いを進めた方がいいと思いますよ。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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