01344_会計・税務関連法務>会計・税務関連法務(フェーズ2)>経営政策・法務戦略構築フェーズ>税負担減少を企図した取引設計上の注意点その2

4 租税回避行為の否認

租税回避行為は
「脱税」
とは異なり、課税要件は充足していないので、
「脱税」
ではありません。

しかし、税法が税の軽減を予定している
「節税」
とは異なり、本来税法が課税を予定する行為について、異常な法形式をあえて選択することで税の負担を免れており、これを放置することは税の公平性の観点から問題があります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

そこで、実務上は、租税回避行為について、当事者が用いた法形式を租税法上は無視して、通常用いられる法形式が用いられたものとして処理して課税するという
「租税回避行為の否認」
が行われることがあります。

したがって、
「租税の負担を回避するスキーム」
を発見したとしても、それが否認されて課税されるリスクについて、慎重に検討する必要があります。

この点については、租税回避行為の否認を定めた法律が存在しない場合にまで税務当局が否認をすることは、
「租税の内容は法律で決定されなければならない」
という租税法律主義(憲法84条)に違反するとして争うことも考えられますが、税務訴訟における税務当局側の勝訴率の高さから考えると、あまり冒険的な戦略法務をするべきではありません。

なお、消費者金融業者武富士の前経営者がその息子に対して行った、香港を舞台とした贈与について、税務当局が租税回避行為の否認を行い、これを東京高裁が支持したものの、最高裁は、租税回避行為には該らない、との判断を下しました。

このように、裁判所の判断が分かれる事例が存在することからも、租税回避行為がはらむリスクは過小評価するべきではありません。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

企業によっては、いわゆる節税商品を購入し、戦略的な(あるいは冒険的な)税負担減少を実施するところもありますが、これは大きな危険性を孕みます。

このような税務戦略も、節税額の大きさに比例して、税務署による否認リスクも高くなる傾向にあり、全体として観察すると、企業行動として合理性が乏しい場合も多々ありますので、この種の戦略法務の企画・検討・実施にあたっては、十分なリスク検証が必要です。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01343_会計・税務関連法務>会計・税務関連法務(フェーズ2)>経営政策・法務戦略構築フェーズ>税負担減少を企図した取引設計上の注意点その1

企業が税負担減少を企図して特定の取引を設計・構築する場合、
「当該取引が脱税、節税、租税回避行為のいずれに該当するか」
という課題を解決することが必要になります。

1 脱税

脱税とは、課税要件を充足するにもかかわらず、それを税務当局に隠して(仮装・隠蔽して)税金の支払を免れる行為であり、処罰されます。

具体的には、二重帳簿を用いて、現実に存在する取引とは異なる申告を行った場合や、同族会社であるにもかかわらず、その判定の基礎となる株主等の所有株式等を架空の者又は単なる名義人に分割する等により非同族会社としている場合などに、脱税と判断されます。

2 節税

節税とは、税法で定められている様々な特典を活用するものであり、本来、法が予定している税の軽減です。

税法は頻繁に変更されるために、税法上の優遇措置について詳しい税理士に相談しつつ、経営サポート法務を実施することが推奨されます。

例えば、法人を設立する際、資本金が1,000万円未満だと、税法上、設立以後2期は消費税免税事業者となるため、設立時の資本金の額を調整することが行われます。

3 租税回避行為

租税回避行為とは、一般的には、
「通常用いられる法形式とは異なる異常な法形式をあえて選択することで、結果的には、通常の法形式を選択した場合とほぼ同一の経済的効果を実現しているにもかかわらず、通常の法形式を選択した場合に課されるべき税負担を軽減ないし排除すること」
とされています。

わかりやすく言い換えると
「(明らかに違法とはいえないが)法が予定していなかった税負担を減少させる取引」
というものです。

例えば、以下のような取引が租税回避行為の典型例とされます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01342_会計・税務関連法務>会計・税務関連法務(フェーズ2)>経営政策・法務戦略構築フェーズ>技術的に難易度の高い取引や、会計上の効果が劇的な取引の組成に際する注意点

ライブドア事件のように、金融行政による資本市場規制の考え方は、
「株式公開市場は、多くの利用者を抱える一種の公共インフラ(現在は金融の国際化が進んでいるため、国際的な公共財ともいえます)であり、 このインフラの健全性を害する行為は、厳罰を以て臨む」
というものです。

要するに、
「資本市場は、上水道と同じく国民生活に必要なインフラであり、虚偽の会計報告を行うことは、上水道を汚染する行為と同じである」
という見方です。

このような点から、企業が、会計技術上あるいは税務戦略面において技術性の高い取引やユニークな取引、あるいは会計上の劇的な改善効果が期待される取引組成を行う場合、金融当局は非常に厳しく目を光らせ、あら探しとも思えるような形で過酷な調査を行い、少しでも非違が発見されると、課徴金や刑事罰等の厳しいペナルティを課す方向で臨みます。

したがって、このような金融当局の厳しい監視を誘発する取引を組成・構築するにあたっては、ファイナンスや会計・税務といった他分野の協働部門や社外専門家と緊密な連携を取りつつ、保守的に進めていくべき必要があるでしょう。

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01341_会計・税務関連法務>会計・税務関連法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令管理

1 金融商品取引法

金融庁ウェブサイト「金融商品取引法について」
概要について、金融庁作成パンフレットPDFが配布されています。

なお、上場企業については、金融商品取引法のほか、同法に関する膨大な内閣府令に加え、各証券取引所規則等にも服しますので、これらの法令管理も重要な法務課題となります。

2 税法

初学者向けに税法の概要を説明したものとしては、
『税法入門(第6版)』(金子宏ほか著・有斐閣)
『ベーシック税法(第7版)』(岡村忠生ほか著・有斐閣)
等が参考になります。

より深く高度な内容の理解向けの書籍としては、
『租税法(第18版)』(金子宏著・弘文堂)
等を推奨します。

実際の課税実務は国税庁の通達に基づき実施されるため、通達を確認しておくことは極めて重要です。

なお、簡易な応答事例集としては、
国税庁ウェブサイト「タックスアンサー」
が便利です。

3 税務争訟に関する先例の収集

税務争訟の先例(判決のほか、国税不服審判所の裁決例を含む)については、
税理士情報ネットワークシステム」(Tax Accountant Information Network System。通称「TAINS」)
がデータベースとしては非常に利用価値の高いものとなっています(ただし、税理士等を中心とした会員制)。

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01340_会計・税務関連法務>会計・税務関連法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境

1 会社法

会社法431条以下の
「計算等」
の章は、会社法会計について定めているところですが、会社法をうけた法務省令である会社法施行規則、会社計算規則だけでは、その内容が抽象的であるため、実際に会計処理を実施することが困難です。

前述のとおり、会社法は
「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」
に従って会計を行うべきであると定めている(会社法431条)ところですが、それにあてはまるものの1つとして企業会計審議会による
「企業会計原則」
があげられています。

他方、中小企業については、大企業とは異なる会計処理を認めても違法とは言い難い場合があるとされており、会計参与設置会社である中小企業においては、より簡易な基準である
「中小企業の会計に関する指針」(日本会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所、企業会計基準委員会)
に従う例が見られます。

2 金融商品取引法

金融商品取引法は、
「資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図」る
ために、上場会社(上場会社以外であっても、社債を発行したことがある会社の一部や、一定数以上の株主が存在する会社については、開示義務が定められています)について、その財務内容を開示することを定めています。

3 租税法

企業法務においては、法人税法、消費税法、所得税法(源泉徴収)、印紙税法等が問題となります。

法人税法においては、
「法人から、個人又は法人に対して贈与した場合には、法人にも課税される」
などの、個人レベルの常識とは異なる課税がなされることがありますので、注意が必要です。

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01339_会計・税務関連法務>会計・税務関連法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>課題と対応の基本

1 虚偽の会計報告に対して課される厳しい処分

東京証券取引所のマザーズ上場企業であったライブドア及びライブドアマーケティング(現メディアイノベーション)が、架空売上の計上などを理由に、2006年に上場廃止になったほか、当時のライブドア社長以下経営陣は、この有価証券報告書における虚偽記載の罪で有罪判決を受けました。

これは、前述の企業会計原則の1つである資本取引・損益取引区分の原則に従わず、資本取引とすべき自社株の売却益を利益計上したことにより、粉飾を行ったことを問擬されたものです。

企業会計原則や制度会計上遵守が義務づけられる各種基準は、企業が正しい財務上の情報提供を行う前提として、その遵守が厳しく求められます。

有価証券報告書や会社法の計算書類などの開示書類に虚偽記載が行われた場合、取締役には次のような責任が発生する可能性があります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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2 オール・ハンズ・ミーティングによる知見統合の重要性

なお、企業は、自らの行う取引その他の経済活動について、いかなる会計上の効果が発生し、またいかなる課税がなされるかについて知らないまま行動を完了してしまい、後日、想定外の会計上の認識や課税がなされてしまうことがあります。

法務担当者としては、会計や税務に関する自らの知見の限界をよく認識し、特に新たな事業スキームや見慣れない形式の取引を検討する際には、オール・ハンズ・ミーティングを開催して、税理士、会計士の意見を同時に徴収し、各方面の知見を統合する形で進めていくべきです。

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01338_会計・税務関連法務>会計・税務関連法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>概説>制度会計における3種類の会計

1 金融商品取引法会計(投資家への開示)

企業の利害関係者の中で投資家に対する情報開示については、金融商品取引法が特定の会計報告を義務づけています。

すなわち、上場企業に投資しようとする者が、正しい情報に基づき、投資に関する意思決定を行うことができるようにするため、金融商品取引法は、上場企業に対して、有価証券報告書に企業の正しい財政状況等を反映させた会計情報を記載することを要求しています。

具体的には、金融商品取引法193条において、一般に公正妥当であると認められるところに従って内閣府令(財務諸表等規則)で定める用語、様式及び作成方法により会計報告を行うべきことが義務づけられています。

2 会社法会計(分配可能額の計算)

金融商品取引法会計が投資家保護を目的とするのに対して、会社法会計は、債権者を保護する目的を有します。

株式会社においては、株主は、会社に対して可能な限り多くの剰余金配当実施を求めます。

このため、債権者は、
「会社が、分配可能額を超えた剰余金配当を実施することで、財産が不当に社外へと流出し、結果、負債が返済できない状況に陥り、債権者を害するのではないか」
との不安にさらされることになります。

そこで、会社法は、会社の財産状態について正しく報告させ、分配可能額を超えた利益配当により、債権者を害することがないよう、会社に対し会社法会計による計算・報告を義務づけています。

無論、会社法会計においても、会社に対して融資や投資を検討する者や会社との取引を検討する者等の利害関係者に対して、投融資ないし取引上の意思決定に必要となる情報を提供するという機能が期待されています。

会社法431条において
「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」
に従って株式会社の会計を行うものと規定する一方で、制度会計における目的(正確な分配可能額の計算による債権者の保護)との関係で、同法432条に基づく法務省令(会社計算規則)によリー定の修正・変容が行われています。

以上の金融商品取引法会計と会社法会計においては、財務会計として基本的な計算プロセスは同一でありながら、制度会計に基づき大きく変容される結果、言葉の定義も含め、若干の乖離・差異がみられますので、この点整理しておきます。

なお、旧商法時代の会社法会計(旧商法会計)と旧証券取引法会計には財務諸表の表示区分や名称、様式などのレベルで大きな乖離がみられました。

そのため、旧商法に基づく財務諸表開示と、旧証券取引法に基づく財務諸表の開示とで、企業はそれぞれ報告のインターフェースを大幅に変更することが求められていました。

この点は、改正会社法施行に伴い、両制度会計の規制内容のギャップが大きく緩和されています。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

3 税務会計(課税負担の公平)

企業は、税務会計、すなわち
「法人税法等の税法の規定に従って課税所得及び税額を計算することを目的とした会計」
に従った決算を行う必要もあります。

法人税法22条4項は、法人の事業年度の収益の額等について
「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする」
と定め、かつ、同法74条1項は、法人の確定申告が
「確定した決算に基づき」
実施されなければならないと定めていることから、税務会計は、会社法会計を基礎にした計算がなされることになります。

しかしながら、税務会計は、企業の正確な担税力計測、すなわち、
「租税負担の配分基準となる課税標準の算定」
を目的とするものであり、このような目的の違いから、制度会計上の修正が加えられることになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01337_会計・税務関連法務>会計・税務関連法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>概説>財務会計の目的

企業の目的は、株主や債権者から集めた資本を用いて、取引活動等を行って収益を上げ、債権者に対して返済を行い、株主には利益を配当し、そして、適正に納税するなどの形で、営利追求の結果得た成果を各利害関係者に還元していくことです。

そして、企業の経営陣は、会計期間中企業の経営状況を正確に記録するとともに、これを一定の基準ないし原則にしたがってまとめあげ(期間損益計算)、その結果を財務内容(会計期間における財政状況及び財産状態)として、各ステークホルダーズに対して正しく報告する義務(課税当局に対しては、報告とともに申告納税を行う義務)があります。

他方、経営陣は、事業に必要な資金を確実に得るため、投資家や金融機関に対しては、常に、
「自らの経営する企業の経営状況が良好であり、投資対象として魅力的である」
旨実態と異なる報告を行う動機を有しています。

また、経営陣は、企業の負担すべき租税債務を低減させるために、税務当局に対しては、担税力を過少に表現する報告を実施する動機を有しています。

このように、経営陣は、損益計算ないし会計報告のプロセスにおいて、常に、真実の実態とは乖離した報告を実施する誘惑にさらされていますが、他方、これらの虚偽の会計報告や、虚偽ないし仮装隠ぺいにわたる会計処理を前提とした税負担減少行為については、法律上、厳しいペナルティが科せられています。

すなわち、金融商品取引法においては、会計上の虚偽報告すなわち有価証券報告書への虚偽記載行為に対して課徴金や刑事罰が定められています

また、脱税行為に対しては、税法上、重加算税や刑事罰が予定されています。

会社法においても、財務諸表の虚偽記載に対しては過料が規定されているほか、
「虚偽の会計に基づき、配当可能額を超えた違法配当が実施されたケース」
に対しては刑事罰が科せられます。

前述のとおり、財務会計は、
「企業の財政状況及び財産状態を正確に記録・計算し、会計期間における計算結果を、企業の利害関係者に対して、正しく報告する」
という目的を担い、企業に対して、定量的にモデル化された企業の事業活動の情報の作成・報告を義務づけています。

他方、
「定量的なモデル化」
の方向性は、企業の利害関係者の情報ニーズ毎に異なります。

そこで、企業が会計期間に行った財務会計の報告に際しては、企業の利害関係者の情報ニーズの多様性に伴い、会社法や金融商品取引法といった各法律により規制(報告のルール)が加えられることになります。

会社法や金融商品取引法といった各法規制に基づき行われる会計を制度会計といい、この段階において会計は複数以上存在すると整理されます。

運営管理コード:CLBP474TO475

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01336_会計・税務関連法務>会計・税務関連法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>概説>会計の種別

企業において用いられる会計には、
「管理会計」

「財務会計」
が存在します。

「管理会計」
とは、企業が自主的に行う任意のもので、公表を予定せず、企業内部の意思決定を合理的に実施するための会計です。

他方、
「財務会計」
とは、後述するように、企業を取り巻く利害関係者(ステークホルダーズ)に対して企業の経営状況や財産状態について正確な報告を行うことを目的としています。

財務会計については、会社債権者の保護を目的とした会社法に基づく会社法会計、上場企業の投資家等に対して企業の経営状況に関する正しい情報を提供することを目的とした金融商品取引法に基づく会計、さらに、公平な課税実現のため企業の担税力を計測するための法人税法に基づく税務会計等、利害関係者の利害目的にあわせて複数以上存在します。

そして、それぞれの規範ないし原則が定める会計基準を通して、企業の正しい財務内容(財政状況及び財産状態)を利害関係者に報告することが義務づけられています。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01335_会計・税務関連法務>会計・税務関連法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>概説>企業の会計処理の流れ

企業が、日々の取引を記録し、これを会計原則に従って処理し、会計報告を作成するプロセスの概観は次のようになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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