01314_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>消費者法実務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令管理

1 書籍

企業の担当者においては、コンメンタールなどよりも、まずは一般消費者向けに書かれた書籍によって、当該法律によって民法商法が具体的にどのような修正を受けているのかを俯撤したほうが、採用を検討するビジネスモデルのリスクの度合い(弁護士に相談すべき問題か否か等)が判明しやすいものと思われます。

(1)
『ガイドブック消費者契約法(第2版)』(佐々木幸孝ほか編・法学書院)
『ガイドブック特定商取引法』(村千鶴子著・法学書院)
『改正法対応 すぐに役立つ消費者契約法・特定商取引法・割賦販売法の法律知識』(藤田裕著・三修社)
消費者契約法、特定商取引法、割賦販売法がどのようなものか全く知らない初心者でもわかりやすく書かれています。

(2)
『特定商取引に関する法律の解説(平成21年版)』(消費者庁取引・物価対策課 経産省商務情報政策局消費経済政策課編・商事法務)
同法を所管する官庁の編によるものであり、特定商取引法の対象となるビジネスモデルを採用す.る企業の担当者にとっては必須です。

(3) 
『コンメンタール消費者契約法(第2版)』(日弁連消費者問題対策委員会編,商事法務)
法曹各者や消費生活センターの実務担当者等向けに書かれており、内容は厚いです。

2 インターネット検索

消費者庁ウェブサイト経済産業省ウェブサイトにて、最新のニュースリリースが発表されており、法改正が頻繁なこの分野の情報をアップデートすることができます。

なお、消費者保護系の弁護士や司法書士らによるウェブサイトも有用な情報を提供してくれますが、改正法に対応した内容か否かについて、チェックする必要があります。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01313_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>消費者法実務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境その2

5  消費者保護条例

消費者保護関連法令としては、【01312】のほか、各自治体が住民を保護する目的で消費者保護条例を制定している場合があります。

ただ、自治体の消費者保護条例の規制態様としては、条令違反に対して強力な罰則を適用するものではなく、危害の防止や表示の適正化の観点から、指導、勧告、協力要請、違反事実の公表といった、ソフトな規制手段が取られていることが多いようです。

例えば、神奈川県は、食品等の輸入業務を行う事業所を営む輸入業者が県に届出を行う制度を制定し、県が当該事業所を把握することで、輸入食品の安全性に関する指導等を行っています(神奈川県食の安全・安心の確保推進条例)。

また、食品等の自主回収を行う場合には県に報告する制度を新設し、県が県民へ情報提供を行うことで、健康被害の発生防止を図ります。

食の安全・安心条例を制定しているのは28都道府県(2013年現在)にのぼりますので、食品を扱う事業者は、条例についても調査を行う必要があります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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6 景品表示法

企業のコンシューマーセールス(消費者向営業)を規制するものとして、消費者を誤認させるような不当な商品表示や射幸心を煽るような過大な景品類の提供を禁止する目的で定められた景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の規制が及びます。

顧客誘引にそれほど力を入れなくても十分なブランド力があるような企業等は、これまで景表法など意識すらしなかったと思われます。

しかし、最近では、個人消費が冷え込み、また業界再編の波を受けて企業間競争も活発になり、積極的に顧客誘引を行おうとした結果、大企業でも景品表示法に抵触してしまう、という事例が出てきています。

コンシューマーセールス事業を展開する企業に関しては、業種・業容を問わず、景品表示法は適正に把握しておかなければなりません。

なお、景品表示法違反の措置としては、消費者庁長官(内閣総理大臣より委任)による措置命令(同法6条)を受け、カタログやチラシやポスターの回収等が命じられる場合があります。

また、措置命令に違反した場合、刑事罰が科されることになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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7 各種営業規制

以上のほか、コンシューマーセールス(消費者向営業)には個別業法の規制が及び、事業展開にあたって行政上の許認可を要すべき場合があります。

コンシューマーセールス(消費者向営業)に関する代表的な許認可事項に関し、整理しておきます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01312_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>消費者法実務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境その1

コンシューマーセールス、すなわち企業の消費者に向けた営業・販売活動に関しては、消費者を保護すべく、様々な法律が強い規制を及ぼしています。

1 消費者基本法

消費者保護法制の一般法であり、消費者保護政策の推進体制の整備、国民生活センターの役割、企業の基本的責務等について定めています。

2 消費者契約法

企業と消費者との間に情報量・交渉力の格差があることを前提に、契約自由の原則や自己責任原則を貫いて消費者に過酷な契約責任を負わせるのは適当でないとの考えに基づき、一定の場合に、消費者が契約を取り消すことができるほか、消費者に不利な契約条項の無効を主張できるものと定めています。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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なお、消費者契約法は、強引なセールスを行う一部の業者だけに適用されるものではなく、以下のとおり、大学の前納授業料の不返還措置にも適用されており、業種・業態を問わず広く適用されるものであり、コンシューマーセールス(消費者向営業)を展開するあらゆる企業のあらゆる営業・販売活動において規制への対応が求められます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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3 割賦販売法

消費者が企業から商品やサービスを買う際に、購入から
「2ヶ月以上の期間にわたって3回以上の分割払いを行う場合」
及び
「2ヶ月以上後の1回払い若しくは2回払いを行う場合(自社割賦(割賦販売)及びローン提携販売については除く)」
に適用されます。

割賦販売法の規制の内容は、原則として全ての商品・サービス・権利の割賦販売について、企業に契約情報の事前開示(開示書面交付)と契約書面の交付(契約書面交付)を義務づけるとともに、消費者にクーリングオフ権(無条件・無制限に契約の撤回あるいは解除をすることができる権利)が認められます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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「割賦販売法の規制対象から除外される商品・サービス・権利」
とは、以下のとおり、限定されたものとなっており、ほぼ全ての企業のコンシューマーセールス形態が捕捉されるといっても過言ではありません。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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4 特定商取引法(特定商取引に関する法律)

企業のコンシューマーセールス(消費者向営業)について、規制しています。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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規制の態様としては、前述の割賦販売法と同じく、政令で定められた商品・サービス・権利の特定商取引について、企業に契約情報の事前開示(開示書面交付)と契約書面の交付(契約書面交付)を義務づけるとともに、消費者にクーリングオフ権が認められています。

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01311_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>消費者法実務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>課題と対応の基本

企業間で行われるコーポレートセールス(法人向営業)では、多くの企業は、漫然と民法・商法の適用を前提とした取引は実施せず、競争優位を確立するために、自己に有利な多数の特約を作り出し、契約関係に盛り込んでいきます。

しかし、コンシューマーセールス(消費者向営業)においては、対等な当事者間において予定されている自由な取引は一歩退き、消費者の利益を、法令が保護することになります。

特に、消費者契約法8条は
「事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効」
を規定し、さらに同法10条は、
「消費者の利益を一方的に害する条項の無効」
までも規定しているところであり、
「自己に有利な特約」
を締結したと思っていたものが、法令によって無効とされることがあります。

このように、コンシューマーセールスにおいては、自らの扱う商品やその供給形態が消費者を保護する法令の規律を受けるか、受けるとして、その法令の内容や行政処分例、裁判例はどのようなものがあるか、について十分に検討しつつ、ビジネスモデルを構築する必要があります。

民法商法等の一般的な規定のみに従ってビジネスモデルを構築すると、後になってから大幅な修正ばかりでなく、当該ビジネスモデルを断念せざるをえないという事態すら発生しかねませんので、注意が必要です。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01310_消費者法実務>消費者向営業活動に関する個別法務課題>消費者法実務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>概説

私人の間で取引を行う際には、民法や商法のみが適用されるのが原則であり、その際、当事者(特に、契約当事者が双方とも企業の場合)は、当事者の自由に決定することができる任意規定の部分については、当事者間の交渉により、自由にその内容を決定するのが通例です。

ところが、企業の営利活動が消費者に向けて展開される場合(コンシューマーセールス、消費者向営業)では、情報量や交渉力に勝る企業が、劣る消費者を食い物とする構図が是正されることなく放置されることがあるため、消費者を保護すべく、様々な法律規制が制定整備されています。

これらの消費者を保護する法律は、民法や商法等の一般法を大きく修正し、消費者を強く保護する方向で規定されており、通常の商取引の感覚で経済合理性の追求を徹底し過ぎると思わぬところで責任を追及されることになるので、注意が必要です。

経済産業省は2007年6月に、英会話学校最大手のNOVAが事実と異なる広告で勧誘したり、契約時に虚偽の説明をするなとしたのは特定商取引法違反(不実告知など)に当たるとして、同社に長期コースの新規契約など一部業務を6ヶ月間停止するよう命じました(同社はその後、2007年10月26日に会社更生手続の開始申立て)。

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01309_独禁法実務>法人向営業に関する個別法務課題>特殊な課題・新たな課題>課徴金減免制度

課徴金減免制度(LeniencyPolicy)とは、入札談合やカルテル等により独占禁止法に違反した事業者が、いわば“自首”するような形で、自ら違反を申告した場合、申告した順番に応じて、以下のとおり課徴金を減免する制度です。

もっとも、自主申告を行ったとしても、公正取引委員会の調査により、申告内容が不適切であったと判明した場合には、減免制度の適用が見送られることになります。

その初の見送り例が、商店用シャッターの販売を巡り価格カルテルを結んでいた事例において、自主申告があったものの内容が不適切であり、追加資料の提出にも応じなかったため課徴金を減免しなかったとされた事件です(2010年6月9日)。

“自首”を促し、それに基づき調査を進めながらも、公正取引委員会独自の判断で減免を許さないことがあるのですが、どうせ“自首”をするなら事実を正確に申告することが必要となります。

課徴金減免の具体的手続フローは次のとおりとなります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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課徴金減免制度は、当初
「日本には馴染まない」
などと批判されていましたが、現在では、一定の効果を上げているといわれています。

同制度に基づき公正取引委員会に届け出られた自主申告は、制度導入(2006年1月)初年に79件に達しその後も年間80件前後で推移していましたが、2010年1月の制度拡充(減免申請者数の拡大など)後はさらに増え、年間100件ないし140件程度で推移しています。

2009年度のカルテルや談合の摘発件数22件のうち実に21件で自主申告があったというのであり、密室で行われる傾向にある独占禁止法上の違反行為の摘発に大きく寄与していると考えられます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01308_独禁法実務>法人向営業に関する個別法務課題>独禁法実務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>犯則調査

犯則調査とは、独占禁止法違反による犯罪嫌疑が生じ、当該事件を司法捜査として調査を行うべき場合、裁判官が発する許可状に基づき、強制力をもって、捜索等を行い、必要な証拠物件を差し押さえることができる調査手続をいいます。

犯則調査は、裁判所の許可状を必要とする反面、強制力を行使できる点で通常の行政調査とは異なり、むしろ、司法警察活動に近い性格を有します。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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犯則調査は、行政目的による審査手続とは厳格に区別されます。

これは、犯則調査における厳しい手続規制(令状主義)を潜脱すべく、行政調査の名の下に、犯則調査が行われることを防止する目的です。

具体的には、公正取引委員会内部に、以下のような、犯則調査と行政調査とのファイヤーウォールの設置がなされました。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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司法警察の場においても、任意捜査の名の下に実質的な強制捜査を実施するという方法が多用され、適正手続違反として多くの裁判で争われた例をみても明らかなとおり、上記ファイヤーウォールが厳格に維持されるかどうかについて今後の公正取引委員会の犯則調査のあり方を厳格にチェックする必要があるというべきです。

無論、個別の犯則調査事案について上記ファイヤーウォールを無視した不当な調査が行われたのであれば、弁護の際、厳しくその非違を攻撃することになります。

犯則調査の手続フローとしては、以下のような形となります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01307_独禁法実務>法人向営業に関する個別法務課題>独禁法実務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>東京高等裁判所での審決取消訴訟

審判手続において審判請求が棄却される審決が出された場合、企業としては、東京高等裁判所に審決取消訴訟が提起できます。

まず、この訴訟提起は審決の効力が生じてから30日以内に行わなければならず、迅速に企業としての意思決定を行うべきことが求められます。

むしろ、前述のとおり、審判手続が
「公正取引委員会の構成員である審査官の主張を、同じ公正取引委員会の構成員である審判官が判断する」
という歪な構造を内包していることをふまえるのであれば、企業法務担当者なり担当弁護士としては、当初から審判請求棄却審決が出されることを見越して、東京高等裁判所への訴訟提起の委任を取り付けておくべきともいえます(無論、予想に反して審判段階で望ましい結果が出れば、当該委任を解除してもらえばいいだけです)。

訴訟が始まってからは、相当な苦戦が待ち構えています。

すなわち、審決取消訴訟においては、実質的証拠法則(独占禁止法80条)が採用される結果、公正取引委員会(審判官)が認定した事実は、これを立証する実質的証拠がある限り、裁判所を拘束することになります。

すなわち、審決取消訴訟を提起させる企業側にとって非常に高いハードルが待ち構えることになるのです。

とはいえ、このように高いハードルが存在する審決取消訴訟も、企業側が勝訴している例もあるので、粘り強く弁護を展開すれば、公正取引委員会の非を司法が糺してくれる可能性も絶対に無いとはいえません。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

前述のとおり、事実関係に関しては実質的証拠法則が働くため勝訴には高いハードルを乗り越えなければなりませんが、下記のように手続非違に関しては、東京高等裁判所も企業側の主張にきちんと耳を傾けてくれるようです。

その意味で、実体関係のみならず、公正取引委員会の手続非違に関しても厳しくチェックした上で、司法の場で争うことは有益と思われます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01306_独禁法実務>法人向営業に関する個別法務課題>独禁法実務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>審判手続

公正取引委員会により排除措置命令や課徴金納付命令が発令した場合、当該命令を受け入れるのであれば、各命令は確定します。

他方、各命令について争う場合は、審判請求を行い、審判手続に移行することになります。

しばらくの間は審判手続が存置されます。

2013年5月24日にはこれらを含む改正法律案が閣議決定されていますが、いまだ立法・施行はなされていませんので、2013年8月現在の法環境を前提に、実務的対応を述べておくこととします。

審判手続に関しては、審査官とは別の審判官が事案を審議し、各命令の妥当性を調べることになりますが、審査官も審判官も同じ公正取引委員会に所属する者である以上、審判手続段階で、審査の結果発令された命令が覆される可能性はほぼゼロと言っても過言ではありません。

したがって、審判請求するのは時間の無駄という考えもあります。

しかしながら、命令自体が全く反対に覆ることはないといっても、微調整され課徴金が減じられたりする場合や、排除措置が変更されたりする可能性はありえます。

審判に不服があれば、さらに(行政機関とは別の司法機関である)東京高等裁判所において(行政判断とは別の)司法判断を仰ぐことが可能ですが(独占禁止法85条により審決取消訴訟は東京高等裁判所の専属管轄)、これも審判請求をせずに命令を確定させてしまっては途を閉ざされます。

加えて、後述のとおり、東京高等裁判所の審決取消訴訟においては、実質的証拠法則が働くため、審判手続が事実上、最終事実審としての機能を有します。

すなわち、審判段階で手を抜くと後の訴訟での挽回は不可能となります。

さらに言えば、公正取引委員会に対して徹底して抵抗する姿を見せることにより、今後のさらなる調査等を牽制する効果も出てきます。

したがって、発令された排除措置命令や課徴金納付命令に少しでも異議や不服があるのであれば、原則として審判請求はすべきと考えられます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

なお、審判手続における争訟弁護に関しては、審査段階での意見陳述と同様の形で進めることになりますが、審判段階では、
「審査官が検察官役となり、審判官が裁判官役となり、命令の当否をめぐって審査官と企業側が争う」
という三面構造になります。

したがって、一方的に自己の主張を述べる意見申述における弁護構造とは違い、審査官の主張に対して企業側の主張を相戦わせる形になる点がやや異なります。

最後に、審判請求を行う場合、審判手続が開始されたというだけでは、すでに発令された排除措置命令や課徴金納付命令の効力は維持されますので、審判請求後、速やかに、執行停止の措置(独占禁止法54条、70条の6)も申立てるべきです。

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01305_独禁法実務>法人向営業に関する個別法務課題>独禁法実務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>審査後の手続

審査後に関しては、審査が打ち切られる場合(不問に付される場合)や注意・警告等の是正指導で終了する場合のほか、排除措置命令や課徴金納付命令の発令のための事前手続に移行する場合があります。

これら事前手続に移行したことは、排除措置や課徴金納付の事前通知によって認識されます。

この通知は、排除措置命令や課徴金納付命令の予告としての性格を持つもので、その後、被審人の意見申述、証拠提出を経て、各命令が発令されます。

被審人の意見申述、証拠提出の機会は最大限活用すべきです。

事実関係について争いがあれば当然ながら積極的に否認し、反論し、反対証拠を提出すべきです。

また、事実関係がほぼ同じでも、例えばカルテルの指揮・実行の主体性や関与の度合い等いわゆる情状面について実態と異なる事実を審査官が主張するような場合も当然争うことになります。

独占禁止法に関するコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)の活動内容との関係も、審査争訟弁護を通じた企業防衛と大きく関係してきます。

企業の中には、独占禁止法違反行為を抑止するため、企業内従業者性悪説に立脚し、適正なリスク・アプローチに基づく効果的な内部統制ステムを構築・運用しているところも多く存在します。

このような内部統制システムがあるにもかかわらず、営業現場の担当者や従業員が独自の判断ないし勇み足でこれに反した行動ないし取引を行った場合には、企業の責任ではなく、個人のスタンドプレーということになり、実体・情状両面に大きな影響を及ぼし、企業の責任が消滅ないし軽減される余地が出てきます。

このような意味で、独占禁止法違反を予防・防止・検知するための内部統制システムの概要や運用(教育・研修、内部通報システム、監査等の実施状況)の実態も積極的な防御の一部として主張すべきです。

公正取引委員会の審査官の活動が、常にかつ絶対的に適法・適正とは限りません。

公正取引委員会の命令を受けた審査官の審査処分(強制立ち入り、出頭命令、提出命令等の各処分)が適正手続(憲法31条)に反する形もしくは極めて不当な形で行われる場合があります。

特に、犯罪調査の一貫として犯則調査が導入され、刑事司法としての犯則調査と行政目的での一般審査が厳格に区別されるようになりましたが、ときにこの両手続が審査の現場や犯則調査の現場で区別されずに各権限が行使されることも想定されます。

万が一、適正手続に反する形で審査が行われるようなことがあれば、刑事訴訟法上の違法収集証拠排除則や毒樹の果実理論を全面展開し、かかる違法手続により得られた証拠に基づきあるいは関連する各命令を排除するための弁護活動も検討されるべきです。

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