00059_ブラックジャーナリストの特性と撃退法

ブラックジャーナリストという言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、これは
「本や記事を書いたことはおろか、マスコミに勤めたこともないが、取材活動と称し、相手方に対して、金銭を要求することを生業とする方々」
のことを指します。

たまに、
「公表されるといろいろ都合の悪いことを嗅ぎ回っている」
という理由で、通常の取材活動をしているフリーのジャーナリストを
「ブラックジャーナリスト」
呼ばわりされる方もいますが、こちらは
「ウザいジャーナリスト」
であっても
「ブラックジャーナリスト」
とは異なります。

すなわち、ブラックジャーナリストは
「取材に名を借りた恐喝を行う犯罪者」
であり、報道を目的とした適正な取材活動とは完全に区別されます。

とはいえ、ブラックジャーナリストは、名刺の肩書に
「ブラックジャーナリスト」
と書いているわけではなく、別に額に
「暗黒記者」
と入れ墨をしているわけでもないので、一見すると普通のジャーナリストそのものであり、彼らによる恐喝行為と適正な取材活動との外形上の区別は困難です。

ただ、ブラックジャーナリストは、一般的に、次のような特性を有していることが私の実務経験により明らかになってきています。

・彼らは、一般に、本名を名乗りたがりませんし、身分証明を求められたりするのを嫌がります(恐喝の前科がバレるから)。
・彼らの名刺に記載されている所属する報道機関も住所を手がかかりに商業登記簿謄本を取り寄せようとしても存在しなかったりする(会社を騙っているだけで設立すらしない)。
・彼らの名刺には携帯電話番号しか書いていないし、Eメールは書いていないか、無料メールアドレス(足がつくのはイヤだから)。
・主要著書や執筆記事、その他ジャーナリストとしての実績を問い質しても、答えたがらない(そもそもまともな記事を書いたことがない)。
・録音したり、録画されたり、とにかく自分の活動が記録されるのを嫌がる(自分の活動が証拠として残ってしまうと、また恐喝で刑務所に行く羽目になる)。

ブラックジャーナリストによるエセ取材を撃退するのは、彼らのこういう特性をうまく利用することがポイントになります。

まず、逃げずに、堂々と取材に応じるべきです。できれば、取材対象者本人ではなく、代理人や専門担当部署による対応で差し支えないでしょう。

取材に応じるとはいいつつ、実際には、
「取材の前提として、そちらの素性を確認させてただきたい」
と言って、まず相手の素性について当方が逆取材をするのです。

まず、本人に録音録画の了解を取り、録音録画を開始。

次に、本人確認という名目で、免許証のコピーを取らせてもらいましょう。

そして、名刺に書いてある所属元が架空の会社でないことの言質を取った上で、その場でインターネット経由で登記簿謄本を取り寄せて確認をはじめます。

さらに、ジャーナリストとしての実績としてどういうものがあるか丁寧にお伺いしましょう。

仮に、執筆した図書や取材についてあれこれ述べだしたら、これらすべてについて、目の前で出版社に電話連絡し、これみよがしに裏付調査を徹底してやりましょう。

少しでもウソが判明したら、その場で厳しく追及し、弁解が破綻した段階で、刑法の偽計業務妨害罪の条文を読み上げるとともに、同罪の成立を声高に宣言し、直ちに110番通報します。

まあ、こういう対応している間に、相手は自主的に退散することが多いです。

ブラックジャーナリストたちも、命をかけて不正を追及したいわけではなく、効率よく恐喝したいわけですから。

頭のいい彼らは、
「こちらが面倒くさい相手であり、これ以上かかわるとリスクになる」
とわかれば、自然に手を引くはずであろうと考えられます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00058_企業法務ケーススタディ(No.0018):ブラックジャーナリストから取材に名を借りた恐喝を受けた場合の対処方法

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社ナチュラル・イースト 社長 国原 比嘉志(くにはら ひがし、49歳)

相談内容:
鐵丸先生、寒いっすよねぇ。
いや、どうもこうも、参っちゃって。
今日は、いつものようなビジネスや契約の話じゃないんですよ。
こんな恥ずかしい話、先生しか相談できなくて。
いえね、この前、ちょっと魔が差して、17歳の女の子と遊んでたところ、警察に厄介になりまして。
といっても、私自身、彼女がまさか未成年なんて思ってなかったこともあって、先生にお世話にならず、事情聴取だけで釈放されたんですよ。
それで、済んだと思ってたら、昨日、なんか知らないオッサンが、会社の周りうろちょろしてて、いきなり
「国原さんですか」
なんて呼びかけれて名刺渡されたんです。
名刺には、
「独立通信社 ジャーナリスト 馬喰 一徹(ばくろ いってつ)」
なんて肩書が書いてあり、
「この前、逮捕されたそうですが、そのことについてお伺いしたい」
なんて聞いてくる。
とりあえず、
「何のことかわからない」
と言って、あわててオフィスに入り、その日は裏口から帰宅したんですが、今朝、総務部長に外を確認させたら、またオフィスの前にいるらしい。
独立通信社なんて聞いたこともないですが、万が一、こんなことが表沙汰になったら、女性向けの化粧品や健康食品を売っている我が社は、売り上げが激減して、倒産です。
先生、どうしたらいいんでしょうか。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点:ブラックジャーナリストとは
今回は、いわゆるブラック・ジャーナリスト、すなわち
「本や記事を書いたことはおろか、マスコミに勤めたこともないが、取材活動と称し、相手方に対して、金銭を要求することを生業とする方々」
による
「取材に名を借りた恐喝 行為」
であり、報道の自由に基づく取材でもなんでもありません。
とはいえ、 名刺の肩書に
「ブラックジャーナリスト」
と書いているわけではなく、一見すると普通のジャーナリストそのものであり、彼らによる恐喝行為と適正な取材活動との外形上の区別は困難であり、ここが、難題です。

モデル助言:
そもそも、一番悪いのは国原さんですよ。
いい年して、子供相手に何やってるんですか。
どういう弁解をしたのか知りませんが、逮捕されなかったのが不思議なくらいですよ。
ま、それはさておくとして、
「独立通信社の馬喰一徹」
ですか。
独立通信社なんて聞いたこともないですし、ネットで検索しても出てこない。
こりゃ、
「 取材活動と称し、相手方に対して、金銭を要求することを生業とする人間」
完全にブラックジャーナリストですね。
ちゃちゃっと撃退しちゃいましょ。
私が御社オフィスに出向き、代理人として、堂々と取材に応じましょう。
取材に応じるとはいいつつ、実際には、
「取材の前提として、そちらの素性を確認させてただきたい」
と言って、まず馬喰の素性について私が逆取材をするのです。
まず、本人に録音録画の了解を取り、録音録画を開始。
次に、本人確認という名目で、免許証のコピーを取らせてもらいましょう。
そして、名刺に書いてある株式会社独立通信社が架空の会社でないことの言質を取った上で、その場でインターネット経由で登記簿謄本を取り寄せて確認をはじめます。
さらに、ジャーナリストとしての実績としてどういうものがあるか丁寧にお伺いしましょう。
仮に、執筆した図書や取材についてあれこれ述べだしたら、これらすべてについて、目の前で出版社に電話連絡し、これみよがしに裏付調査を徹底してやりましょう。
少しでもウソが判明したら、その場で厳しく追及し、弁解が破綻した段階で、刑法の偽計業務妨害罪の条文を読み上げるとともに、同罪の成立を声高に宣言し、直ちに110番通報します。
まあ、こういう対応している間に、相手は自主的に退散しますよ。
彼らも、命をかけて不正を追及したいわけではなく、効率よく恐喝したいわけですから。
頭のいい彼らは、
「こちらが面倒くさい相手であり、これ以上かかわるとリスクになる」
とわかれば、自然に手を引くはずですよ 。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00057_債権譲渡を実施する上で踏むべき手続き

債売買や譲渡というと、土地・建物(不動産)や車・船・設備(動産)など
「物に対する所有権」
のやり取りが定番ですが、法律上、売り買いできるものには制限がなく、金銭債権も譲渡が可能です。

しかし、弁護士や事件屋やプロの金貸しの方は別として、債権譲渡に複雑な作法があることは意外と知られていません。

事例の長谷川さんのように
「金銭債権を譲り受けるには、借用書や金銭消費貸借契約書等の契約証書を取り上げれば大丈夫」
などという考えや、
「債権譲渡契約を公正証書で交わしたから大丈夫」
などという考えをされる方が多いのですが、いずれも法的には誤りです。

債権譲渡を行うために、債権をもっている売り主と契約書を交わしただけでは、全く不十分なのです。

債権譲渡を完全ならしめるには、債権を譲渡した人から譲渡された債権の債務者(第三債務者)宛に
「債権は、私が買主(債権譲受人)に譲渡したから、以後は私(債権の売主、債権譲渡人)ではなく、 買主(債権譲受人) に払ってくれ」
というお知らせ(債権譲渡通知)をしなければなりません。

債権の売主(債権譲渡人)と買主(債権譲受人)との間の債権譲渡契約自体、別に口頭でやっていいことですし、債権譲渡通知によっても立証可能ですので、この契約にあまり神経を使う必要はありませんが、債権譲渡通知は絶対欠いてはなりません。

以上のとおり、 買主(債権譲受人) としては、売主(債権譲渡人) に
「債権を買主(債権譲受人) に譲渡した」
旨の第三債務者宛通知書を書かせて、第三債務者に送りつける必要があります。

なお、この通知書は、内容証明郵便で郵送すべきです。

すなわち、借金でクビが回らなくなった人間が債権者から追い込みをかけられると、1通だけでなく、2通、3通と債権譲渡通知を書かされることになり、ひとつの債権をめぐって譲受人同士の激しい争奪戦となります。

法律上、このような
「1つの債権を巡って何人も買受を名乗り出る、かぐや姫状態」
ともいうべき事態になった場合、
「内容証明郵便以外の通知方法をした譲受人」
は債権争奪戦の参加資格がないものと扱われます。

すなわち、最後まで確実に債権をわが物にするのであれば、内容証明郵便で債権譲渡通知をしておく必要があります。

そして、内容証明郵便で債権譲渡通知した譲受人が複数いる場合通知到達順で勝敗が決せられます。

従って、送付する際は速達扱いとしておき、また、到達が争われる場合に備えて配達証明も付けておくべきです。

ちなみに、あまり知られていませんが、債権譲渡通知以外の方法として、譲渡対象債権の債務者(第三債務者)に債権譲渡を承諾させる文書を差し入れさせ、これに確定日付を付しておくという方法も可能です(民法上、債権譲渡の対抗要件具備の方法として、通知または承諾が必要とされていますが、後者の方法による、というものです)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00056_企業法務ケーススタディ(No.0017):とにかく急ぐ場合に、もっとも早く債権譲渡を完遂するための手法

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社135R 会長 長谷川 君彦(はせがわ きみひこ、51歳)

相談内容:
おう、鐵丸先生、元気か。
相変わらず、調子よさそうよのぅ。
儲けまくってるそうやんけ。
今日は、ちょっと相談乗ってんか。
ゆうても、相談ちゅうほどのことでもないんやけどな。
先生、島田和七(しまだわしち)ちゅう漫才師覚えているか?
そうそう、あの、声のでかいヤツや。
俺、あいつと知り合いなんや。
あいつが売れんようになったころに、1000万円ほど貸してやったんや。
ちょこちょこ返してきよって、元本700万円になってるんやけどその後まだチンタラ返すようなことゆうてけつかる。
さすがに
「ええ加減、耳そろえて返せ」
ちゅうことゆうたら、
「カネないんやけど、債権もってるさかい、これで堪忍してくれ」
ゆうて、なんや借用書もってきよった。
どうやら、和七が、大阪にいる漫才師仲間の
「中田カボス」
ちゅうヤツに500万円貸しとったらしい。
俺に借りたカネ返さんと、知り合いにカネ貸しとってん。
ええ根性しとるで、ほんまに。
和七もカボスもあんましカネもっとらんみたいやけど、カボスの方は、なんや、今度家に道路ができるゆうことで、結構な立退料もらうらしい。
ゆうても、カボスは根っからの博打好きで、何時カネがなくなるかわからん。
カボスがまだカネもっとる間に、和七から手に入れた借用書もって、取り立て行こう思てんねん。
ああ、もちろん金属バットもってなんかいかんよ。
あくまでジェントルマンとして払おうてもらうんや。
なんか、気ぃ付けとくことあるか。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点:債権譲渡を完遂するために必要な「対抗要件」の内容と具備手法
長谷川さんとしては、和七に
「債権を長谷川さんに譲渡した」
旨のカボス宛通知書を書かせて、カボスに送りつける必要があります。
なお、この通知書は、内容証明郵便で郵送すべきです。
すなわち、借金でクビが回らなくなった人間が債権者から追い込みをかけられると、1通だけでなく、2通、3通と債権譲渡通知を書かされることになり、ひとつの債権をめぐって譲受人同士の激しい争奪戦となります。
法律上、このような事態になった場合、
「内容証明郵便“以外”の通知方法をした譲受人」
は債権争奪戦の参加資格がないものと扱われます。
すなわち、最後まで確実に債権をわが物にするのであれば、
「内容証明郵便」
で債権譲渡通知をしておく必要があります。
そして、内容証明郵便で債権譲渡通知した譲受人が複数いる場合通知到達順で勝敗が決せられます。
従って、送付する際は速達扱いとしておき、また、到達が争われる場合に備えて配達証明も付けておくべきです。
ちなみに、あまり知られていませんが、債権譲渡通知以外の方法として、譲渡対象債権の債務者(事例の場合、カボス)に債権譲渡を承諾させる文書を差し入れさせ、これに確定日付を付しておくという方法も可能です。

モデル助言:
教科書的に言えば、内容証明郵便による債権譲渡通知書式を和七のところに持っていって、押印させ、速達でカボスのところに送るべきですね。
借用書を持っているだけでは、法的には不完全な債権譲渡ですから。
それより、もっと手っ取り早い方法がありますよ。
和七ってヒマなんでしょう。
和七と一緒にカボスのところに直接行かれたらどうですか。
カボスから
「和七から長谷川さんへの債権譲渡を異議なく承諾します」
という文書を作成し、公証役場で確定日付を取ってくる。
譲渡通知にこだわって速達郵便が届くの待っているなんてトロいもいいとこです。
どんなに速達が早いといっても、新幹線で大阪に直接乗り込んだほうが早いに決まってますから。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00055_非欧米諸国への輸出ビジネスを行う場合には疎漏なく検討すべき、外為法の輸出規制

その昔、まだ、ロシアがソビエト連邦とか言われていた時代、日本の某メーカーが、ココム規制なんて聞き慣れない規制に反したカドでえらくバッシングされたことがありました。

その後、ベルリンの壁が崩れ、平成の世となりましたが、
「輸出規制なんて過去の遺物、今や貿易をもっと自由化し、イッツ・ア・スモール・ワールドだ」
なんて思っていると実は大間違いで、現在でもシビアな輸出規制が存在します。

すなわち、9.11のテロ以来、日本は、国際協調体制の中で大量破壊兵器の不拡散を行うべく、厳正な輸出管理規制を行っています。

しかも、最近の大量破壊兵器というものは、爆弾とか鉄砲とか見るからに物騒なものじゃなくて、民生品も使い方を変えれば簡単に細菌兵器とかに転用可能ということで、一見すると兵器とは無縁なフツーの民生品まで輸出規制品目として上げられています。

たとえば、カーボンシャフトのゴルフクラブですが、炭素繊維がミサイルの重要部品になるようで、インスタントコーヒーを作るためのフリーズドライ装置(冷凍凍結乾燥機)も細菌兵器を作ろうとする者にとっては喉から手が出るほどほしい装置だそうです。

あと、シャンプーに含まれているトリエタノールアミンなんて成分が化学兵器を作る上では重要なネタ成分になったり、自動車部品工作機械のうち特定の機械を使えば簡単にウラン濃縮が出来たりするようです。

貿易のプロや弁護士でも、こんなのいちいち覚えていられませんし、
「軍事転用可能な汎用品リスト」
というのも知らない間にアップデートしている場合だってあります。

実際、国際法務体制が相当整備されているべきはずの大手メーカーが、
「農薬散布用のヘリコプターを、許可無しで、アメリカとか中国とか韓国とかの問題なさそうな国に輸出した」
との理由で、外為法違反に問われ、警察沙汰になったという話もありました。

いずれにせよ、新たに、国境を超えてモノを売るような場合、注意が必要です。

なお、この規制は外為法(外国為替及び外国貿易法)が根拠法令です。

外為法というと旧大蔵省や日銀とかが所管してそうなイメージがありますが、所管官庁は、財務省ではなく経済産業省ですので、問い合わせや規制状況を確認する際には間違えないようにすべきです。

もっとも、ネット上、各種啓発のための情報開示がされておりますので、こういうものでスタディした上で、適否に迷った場合は、問い合わせ等を事前にしておくべきだと考えます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00054_企業法務ケーススタディ(No.0016):安易な輸出ビジネスをすると、知らないうちに「安全保障上の脅威」に及んでしまい、逮捕されるリスクも生じる

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
コスゲ・インターナショナル社 副社長 ケイン・小菅(けいん こすげ、32歳)

相談内容:
鐵丸先生、アケマシテ、オメデトウゴザイマス。
日本にキテ13年にナリマスが、まだ、日本語、チョト、難しいネー。
近くのホテルで、賀詞交歓会がアリマシタので、チョト、新年のご挨拶方々、立ち寄らせていただきました。
景気も回復し、ウチの会社のメインビジネスの日本製品の輸出もグローイング・エン・グローイング。
ま、特に先生のお世話になることナイケド、近況を、チョト、お話ししますね。
私のダディの、CEO、シャッ長の、ジョー・小菅は、昨年からずーと中東なんすよ。
昔、ダディがロスで空手を教えていたころの教え子の中東の某国の留学生が、母国に帰って商売始めたんですよ。
なんか、日本製品をスゲー欲しがっていて、ちょうど、ウチの会社もインターナショナル・トレーディングやってるもんすから、トントン拍子に話が進んで、ま、今年の終わりにはウチのメジャー・カスタマーになりますよ。
ま、彼の母国は、今、チョト、
「テロ支援国家と関係あるんじゃないか」
なんて話題になっていますが、彼自身は、スゲーいいヤツですし、ノー・プロブレムですよ。
売ってくれって言っているのも、ゴルフクラブとか、シャンプーとか、自動車部品工作用機器とか、インスタントコーヒー製造用装置とかで、人殺せるようなものなんかないですし。
ま、そんな感じで、今年も、先生のお世話にならず、プリティ・クールな年になりそうデスヨ。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点:外為法による輸出管理規制の補足範囲の広汎さ
9.11のテロ以来、日本は、国際協調体制の中で大量破壊兵器の不拡散を行うべく、厳正な輸出管理規制を行っています。
しかも、最近の大量破壊兵器って、爆弾とか鉄砲とか見るからに物騒なものじゃなくて、民生品も使い方を変えれば簡単に細菌兵器とかに転用可能ということで、一見すると兵器とは無縁なフツーの民生品まで輸出規制品目として上げられています。
たとえば、カーボンシャフトのゴルフクラブですが、炭素繊維がミサイルの重要部品になるようで、インスタントコーヒーを作るためのフリーズドライ装置(冷凍凍結乾燥機)も細菌兵器を作ろうとする者にとっては喉から手が出るほどほしい装置だそうです。
あと、シャンプーに含まれているトリエタノールアミンなんて成分が化学兵器を作る上では重要なネタ成分になったり、自動車部品工作機械のうち特定の機械を使えば簡単にウラン濃縮ができたりするようです。
実際、国際法務体制が相当整備されているべきはずの大手メーカーが、
「農薬散布用のヘリコプターを、許可無しで、アメリカとか中国とか韓国とかの問題なさそうな国に輸出した」
との理由で、外為法違反に問われ、警察沙汰になったという話もありました。
いずれにせよ、新たに、国境を超えてモノを売るような場合、特に、欧米諸国ではなく、非欧米諸国への輸出を行う場合、民生品であっても、注意が必要です。
なお、この規制は外為法(外国為替及び外国貿易法)が根拠法令です。
外為法というと旧大蔵省や日銀とかが所管してそうなイメージがありますが、所管官庁は、財務省ではなく経済産業省ですので、問い合わせや規制状況を確認する際には間違えないようにしてください。

モデル助言:
新年早々、不愉快な助言をしてしまい、恐縮です。
今、確認したところによると、御社輸出品は、すべて許可品目ですし、仕向国が、
「かの有名なテロ支援の疑いのある、某国」
であるとすると、不許可になる可能性が高いですね。
取り急ぎ、経済産業省に早急にアポ入れをして事前相談に参りましょう。
それと、今後の状況によっては、輸出する予定で仕入れていた購入品の契約解除をしなければならない可能性があります。
「経済産業大臣の輸出許可が得られなかった場合には違約金なしで解除できる」
というような条項を仕入契約に入れておきましょう。
最終仕向国に目をつむったふりして、第三国経由にしたりとか、変な小細工は絶対しちゃダメですよ。
この問題では、すでに逮捕者が出ていますし、甘くみると、牢屋行きです。
ま、早く、発見できてよかった。
出だしでケチがついたので、今年は、いい年にならないかもしれませんが、気持ちを切り替えて、最悪の年にならないようにしましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00053_金融機関やコンサルタントから提案・紹介される“節税商品”の実体と危険性

外資系の金融機関は、非常に優秀な方が多く、いろいろな金融商品を開発し、提供してくれます。

無論、中には、緻密な理論を構築して、安全で高収益を生むような商品もありますが、すべての商品がまともであるという保証はありません。

節税商品とは、
「お金をリスクに晒して、その対価として利回りや配当を得る」
という本来の金融商品ではなく、シンプルに言えば、民事組合のパススルーシステム(組合の損金を直接自己の損金として計上できる)を利用して、
「税務上の損金を買う」
という仕組のものです。

ちょっと前に興行用の映画フィルムを使った節税商品がありましたが、映画フィルム以外では、飛行機や船を使ったリース事業を行う組合を作り、やはりパススルー制と組み合わせて損金計上するような商品(レバリレッジド・リースと呼ばれます)もあります。

どれも
「机上の」
税務理論としてはよく考えられていて、一見すると、効果的な節税ができそうなのですが、こういう
「実体の希薄な商品を使った、税務行政にケンカを得るような強引な損金処理」
を税務当局が笑って受け入れてくれるほど世間は甘くなく、どれも当局と大喧嘩に発展しています。

結論をいいますと、飛行機や船を用いたレバレッジド・リースは事業実体ありということで損金計上が認められ、最高裁もこれを容認しましたが、映画フィルム債の方は、フィルムが事業のために用いられているような実体がないということで、最高裁は税務署の更正処分と過少申告加算税賦課処分を認める判断をしています。

裁判所の判断だけをみると、飛行機と船はOKで、映画はヤバイ、なんて簡単に考えてしまいそうです。

しかしながら、税務署とのトラブルに巻き込まれた(最高裁までもつれこんでわけですから、事件に投入された時間やエネルギーや弁護士費用等はハンパなものではないでしょう)、という点では、飛行機や船のリース事業に参加した場合であっても相当シビアなリスクにさらされた、とみるべきです。

商品を売る側は、いかにも
「節税プランは完璧です」
ということを、セールストークに謳います。

ですが、売る側の金融機関は、売った後に顧客がどんな税務トラブルを抱えたとしても、
「損金計上できると判断するか、損金計上できると判断するとして、実際損金計上するかどうか等は、すべて自己責任だから、関知しない」
という態度を取ると思われます(もちろん、同情はしてくれたり、紛争対策のための税理士や弁護士を紹介してくれることはあっても、決して手数料を返したりはしてくれません)。

「いい話にはウラがある」
という警句は、実に的を得たものであり、たとえ売り込む側が、仕立てのいいスーツを着て、高価なネクタイをぶら下げ、学歴が高く、名の通った金融機関に勤めていても、セールストークを鵜呑みにするととんでもないトラブルに巻き込まれる可能性があります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00052_企業法務ケーススタディ(No.0015):ハイブロウな金融マンが勧める「節税商品」に潜むリスク

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社オフィス・ワン・トゥー・スリー 代表取締役 間目 宏(まめ ひろし、62歳)

相談内容:
相談なんですが、実は、節税のことなんです。
といっても、先生に節税プランを考えてくれって言うんじゃないんです。
実は、ピーマン・シスターズっていう外資系の証券会社に勤めている大学時代の同期で御法川(みのりかわ)っていう調子のイイのがいるんですが、そいつが、節税商品買わないか、って言うんです。
私も仕組はよくわからないんですが、ファンドを通じて、アメリカの著名歌手が今度作るアルバムの権利か何かを買うことにより、多額の損金を私の会社が計上していいって言うんです。
先生もご承知のとおり、当社は、今期も来期も利益がかなり出るので、節税に頭を痛めていたところなんです。
売り込んでくる御法川は、
「大丈夫、任せろ、任せろ。
税金なんて払うヤツはバカだ」
なんて言って、やけに自信タップリなんです。
先生にはバブル期の変額保険の問題でもお世話になりましたが、ああいう失敗経験もあるので
「金融屋の口車に乗るとロクなことはない」
ってのが肌でわかってまして、心配になったんです。
先生、やっぱり、こういう節税商品って、問題あるでしょうか。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点:節税商品に内在するリスクの本質
外資系の金融機関は、非常に優秀な方が多く、いろいろな金融商品を開発し、提供してくれます。
無論、中には、緻密な理論を構築して、安全で高収益を生むような商品もありますが、全ての商品がまともであるという保証はありません。
設例の商品は、民事組合のパススルーシステム(組合の損金を直接自己の損金として計上できる)を利用して、
「損金を買う」
仕組のものかと思われます。
本件の商品は、ちょっと前に興行用の映画フィルムを使った節税商品がありましたが、その応用でしょう。
「机上の」
税務理論としてはよく考えられていて、一見すると、効果的な節税ができそうなのですが、こういう
「実体の希薄な商品を使った、税務行政にケンカを得るような強引な損金処理」
を税務当局が笑って受け入れてくれるほど世間は甘くなく、どれも当局と大喧嘩に発展しています。
裁判所の判断だけをみると、飛行機と船はOKで、映画はヤバイ、なんて簡単に考えてしまいそうです。
しかしながら、税務署とのトラブルに巻き込まれた(最高裁までもつれこんでわけですから、事件に投入された時間やエネルギーや弁護士費用等はハンパなものではないでしょう)、という点では、飛行機や船のリース事業に参加した場合であっても相当シビアなリスクにさらされた、とみるべきです。
商品を売る側は、いかにも
「節税プランは完璧です」
ということを、セールストークに謳います。
ですが、売る側の金融機関は、売った後に顧客がどんな税務トラブルを抱えたとしても、
「損金計上できると判断するか、損金計上できると判断するとして、実際損金計上するかどうか等は、すべて自己責任だから、関知しない」
という態度を取ると思われます(もちろん、同情はしてくれたり、紛争対策のための税理士や弁護士を紹介してくれることはあっても、決して手数料を返したりはしてくれません)。
「いい話にはウラがある」
という警句は、実に的を得たものであり、たとえ売り込む側が、仕立てのいいスーツを着て、高価なネクタイをぶら下げ、学歴が高く、名の通った金融機関に勤めていても、セールストークを鵜呑みにするととんでもないトラブルに巻き込まれる可能性があります。

モデル助言:
御法川さんから渡されたパンフレットをみる限り、いかにもカネがかかった体裁で、横文字で大層な商品名が書いてありますが、御社が購入するのは、シンプルに言えば
「税務当局とのケンカの種」
です。
もちろん、節税手法には、確立した判例理論を保守的な形で運用したものもありますが、そういうものでも、税務当局と見解を異にした場合、最終的には自己責任でリスクを取らされます。
セールス担当の御法川さんは強気で調子が良さそうですが、手渡されたパンフレットを読む限り、
「販売用資料」
「金融商品取引法により規制されるべき開示資料ではない」
「税務的な判断まで保証するものではなく、当該判断は、別途ご自身の税理士等の専門家のご助言によりご判断ください」
なんて、無責任なことが相当書いてありますよね。
ま、最終的に、私に弁護士費用を払って、5年も6年も税務当局とのケンカを続ける根性があれば別ですが、もう少し、冷静に考えられた方がいいですね。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00051_企業法務ケーススタディ(No.0014):「常識の通用しない無法者に対して、面倒な裁判手続を回避し、自己判断と実力行使で対応する方法(自力救済)」における重大なリスク

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
株式会社大地不動産 社長 鈴本 宗雄(すずもと むねお、58歳)

相談内容:
ややややややや、先生、先生、先生。
大変なことになっているんですよ。
当社が下北沢に所有している、学生向賃貸用のワンルームマンションでトラブルになりましてね。
トラブルっていっても、バカバカしい話なんですよ。
このマンション、もともと社宅だったんですが、昨年末に購入後、リフォームしまして、ちょうど今年の春から学生向けに入居を募集したんですよ。
場所柄すぐに満室になったとこまではよかったのですが、借りた学生にどうしょうもないのがいましてねぇ。
入居した当初から、
「日当たりが悪い」
「騒音がうるさい」
「隣の学生が女連れ込むので迷惑だ」
「エレベーターを掃除しろ」
なんてクレームばかりいいやがるんですよ。
そのうち、
「この部屋は、まともな人間の居住環境としては、かなり劣悪なもので、家主として適切な義務を果たしているとは言い難いので、家賃はその分下げます」
なんてふざけたこと書いた手紙出してきて、6月ころから、8万円の家賃を4万円にしか払わなくなった。
こっちは、総務部長が対応して、出てけって通告したんですが、学生の方は
「解除には理由がない。
出て行かせたければ裁判でも起こしたらいい」
なんて、これまたナメたことをいいやがる。
あんまりふざけているんで、もう追い出すことにしました。
幸い、ゼミ合宿だかなんだかで明日から学生の野郎いないから、引越業者手配して荷物を実家に送り返してやるんですよ。
引っ越し代を連帯保証人の親に請求するので、そんときは、先生頼みますよ。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点:自力救済は単なる違法行為
大地不動産社(大地社)のケースは、世間でよくある話です。
江戸時代なら、ガタガタいって家賃を払わないような不逞な店子に対しては、大家さんが
「タナ上げろぉってんだ、この野郎!」
って叫んで、強制的に占有を排除しても誰も文句を言いませんでした。
ところが、時代は降り、今は平成の世、日本は法治国家です。
大地社が、賃貸借契約の解除と不動産の明渡しを求めて、学生相手に訴訟を提起し、この判決に基づいて、強制執行手続によって明渡しを実施することは可能です。
他方、こういう手続を実施すると、時間とエネルギーと弁護士費用がかかりますし、たかだか4万円の差額家賃のためにこんな手続を取っていると割に合いません。
そうすると、
「手っとり早く問答無用で明渡しをやっちゃえ」
ってことになるのですが、これは完全な違法行為であり、鈴本さんは、不法行為に基づく損害賠償責任に問われるほか、不動産侵奪罪にも問われることになりかねません。
無論、設例のケースにつき明渡しを求めて訴訟が提起されますと、学生側が勝手に賃料を下げる理由がなく解除が認められる可能性が高いと思われます。
すなわち、学生が貸室を占有する権利を喪失しており、鈴本さんが明渡しを実施することに正当性があるように思えます。
しかしながら、現代の法律のシステムは、
「占有という事実状態が一方当事者によって勝手に変更されない」
ということを保障することにより社会秩序を保っています。
学生側に貸室を占有する権利があるかないかを決めるのはあくまで裁判所であって、どんなに学生側の言い分が不当でも、鈴本さんが勝手に決めつけることは許されていません。
このような観点から、不動産侵奪罪(刑法235条の2)は、法的根拠のない事実上の占有を奪う場合であっても成立するものとされています。
「裁判が面倒くさいから」
「弁護士費用が高いから」
「相手の言い分を聞く暇ないから」
なんてのは弁解なりえず、強制的な占有奪取行為は完璧な違法行為として取り扱われます。
「貸したら最後、家は借りた人間のモノ」
「占有に九分の利あり」
なんていいますが、貸した以上、相手が自主的に出て行くか、裁判で勝訴しない限り、相手がカネを払わなくても居すわることを容認せざるを得ない、ということになるのです。

モデル助言:
お怒りはごもっともですし、弁護士費用をケチりたい気持ちはわかりますが、これは訴訟するほか途はありません。
弁護士費用をケチって強制的に追い出すことをしますと、今度は、鈴本社長の刑事弁護でもっとカネがかかります(笑)。
とはいえ、学生も、こちらをナメきって、故意にやっているような節がありますし、単に明渡せというだけでなく少しお灸をすえる必要もありますね。
私の方から正式に内容証明郵便による通知を出状し、
「不当な理由でこちらに訴訟提起という手間をかけさせた場合、不当応訴による損害賠償を請求する」
旨警告しておきましょう。
実家にいる彼の両親とも連帯保証人になっていますから、もちろん、両親にも通知を出状します。
常識のある両親なら自主的に退去する方向で息子を説得するでしょう。
とはいえ、最近は、いい年した親でもおかしいのがいますから、一緒になってキーキー騒ぐかもしれませんが。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00050_「企業が『契約自由の原則』『私的自治』を理由に好き勝手やろうとした場合に、制限介入する法律」としての独禁法

「ドッキンホウ」
という言葉を聞かれた方は多いでしょうし、その内容についても、独占やカルテルを禁止する、というくらいのことは皆さんご存じだと思います。

「ドッキンホウ」
の正式名称は、
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」
といわれるものですが、市場の独占やカルテルを禁止しているほか、その名称のとおり、
「公正取引の確保をすること」
も法律の目的になっています。

自由競争を是とする資本主義社会においては、
「契約自由の原則」
「私的自治」
が金科玉条のルールとされており、
「地獄の沙汰もカネ次第」
の諺どおりであり、札束や取引上の権力があってできないことは見当たりません。

しかしながら、あまりいい気になって横暴に振る舞っていると、
「独禁法上禁止される不公正取引に該当する」
と言われて、きついお灸がすえられる可能性が出てきます。

「不公正取引がダメ」
といっても、具体的に何が公正で不公正かということがルール化されていないと昔の社会主義国のように経済活動が停滞してしまいます。

そこで、
「不公正取引」
とされる行為は、公正取引委員会が指定するという形で具体化されています(なお、指定には、全業種に適用される一般指定と、特定業種に適用される特殊指定があります)。

例えば、不公正取引のうち
「優越的地位の濫用」
といわれるものですが、
「取引上の地位が取引相手に優越していることを利用し、商慣習上不当な形で、取引相手に対し、役員の選任について、自己の指示に従わせたりすること」
が一般指定14項によって禁止されています。

メインバンクが役員選任を干渉するようなことを融資先に求めることがありますが、金融機関の通常の債権保全の目的や限度を超えたと認められる場合には、アウトと判断される可能性があったりします。

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