01614_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(5)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその1_概説

1989年に行われたソニーのコロンビア・ピクチャーズ・エンターテイメントをターゲットとするM&A(約5000億円で買収するも業績は振るわず)

2002年5月ころから開始されたウォルマートの西友をターゲットとするM&A(買収価額は非公表ながら、業績低迷)

2003年10月17日に完了したテスコのシートゥーネットワークをターゲットとするM&A(2012年6月18日 には、イオンが同株式の50%を1円で取得する予定であることを発表する形で、撤退)

2006年1月ころから6月ころまでに行われたセブン&アイホールディングスのミレニアムリテイリング(西武百貨店、そごうやロフト等)をターゲットとするM&A(当初1311億円で株式の大半を買取、さらに株式交換で追加取得した際、890億円相当の株式を発行し、投資総額2201億円で買収したが業績不振 )

2006年10月16日に行われた東芝のウェスチングハウスをターゲットとするM&A(6600億円で買収後、赤字続きで巨額損失を出したが、粉飾決算し、後に判明。損失判明後は、東証一部から東証二部への降格指定替え)

2007年8月14日に行われたHОYAのペンタックスをターゲットとするM&A(944億8200万円で買収するも、最終的には減損処理、デジカメ事業をリコーに売却)

2012年2月27日に行われた三井倉庫ホールディングスの三洋電機ロジスティクスをターゲットとするM&A(242億円で買収。その後、255億円の減損処理と、会長・社長の引責辞任)

2013年に行われた丸紅のガビロンをターゲットとするM&A(2800億円で買収し、1000億円もののれん代を計上するも、業績不振で、2020年3月期には最終的に500億円の評価損を計上し、丸紅は、連結最終損益が1900億円の赤字〔過去最大の赤字〕に転落〔2019年3月期は2308億円の黒字〕。)

2009年12月21日に行われたパナソニックの三洋電機をターゲットとするM&A(米国独占禁止法〔反トラスト法〕クリアランス等の各種課題クリアランスを経由して、予想以上に買収プロセスが長期化し、苦労の末、約6600億円で買収し、5180億円という巨額ののれん代を計上するも、2013年3月期には前期と併せて約5000億円の減損処理し、同期に7650億円の赤字を計上し、63年ぶりに無配転落)

その他、
キリンのスキンカリオールをターゲットとするM&A(1400億円の減損を計上)、
LIXILのグローエをターゲットとするM&A(グローエの中国子会社ジョウユウ社長の巨額横領が発覚し660億円の減損計上)、
NTTグループのディメンション・データをターゲットとするM&A(3000億円で買収するもいまだテコ入れ中)、
日本郵政のトール・ホールディングスをターゲットとするM&A(4000億円の減損計上)、
富士通のICLをターゲットとするM&A(1900億円で買収後、2900億円の減損計上)、
古河電工のルーセント・テクノロジーをターゲットとするM&A(1000億円の評価損計上)、
第一三共のランバクシーをターゲットとするM&A(買収後、3500億円の損害が発生)、
日立のIBM社のハードディスク事業をターゲットとするM&A(毎年100億円単位の損失垂れ流しが続いた)、
グリーのポケラボをターゲットとするM&A、
DeNAのiemoをターゲットとするM&Aなどなど

M&Aという営みは、
「吉本新喜劇でよくみる、全員コケる芸」
のように、面白いように、失敗し、失敗して、失敗し倒しています。

「M&Aの失敗例は、芸能人の離婚率とだいたい同じ比率なのではないか(おそらく90%近くが失敗)」
という私の感覚値もふまえて考えると、M&Aプロジェクトは、成功することが稀有で異常で例外な営みで、デフォルトでは、ほぼほぼ失敗するのが普通、ということになります。

しかしながら、この買物、どの企業も面白いように失敗します。

対象が
「企業」
ということであっても、突き詰めれば、卵や大根やカップラーメンや缶コーヒーと同様、単なる
「買い物」
に過ぎないM&Aです。

逆に、M&Aという営みを成功に導くためには、どのようなポイントをケアすることが必要なのでしょうか。

M&Aを成功させるためには、
(A)現実的な投資回収シナリオが機能する適正な買収価格あるいはこれを達成するためのハードな交渉
(B)PMI(ポストマージャーインテグレーション。M&A後の統合実務)による円滑な経営統合作業
(C)全体的な戦略の合理性
のすべてが必要です。

しかし、これらはいずれも日本企業にとって
「不得意中の不得意項目」
なのです。

不得意以前に、前記3つの成功要因を無視または軽視し、少なくとも、当該要因を逸脱した行動をしています。

だからこそ、日本企業は、M&Aという
「たかが買い物」
如きを、びっくりするくらい、アホみたいに、失敗し続けてきましたし、今後も失敗し続けるのだと思います。

初出:『筆鋒鋭利』No.0106-2、「ポリスマガジン」誌、2016年6月号(2016年6月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01613_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(4)_単なる「買い物」に過ぎないM&Aがモメる状況・経緯

1 「究極の一品モノ」でオーナーの「愛着」が半端ない「売買対象物としての『企業』」

企業は、そこらへんの市場に
「日用品」
として転がっているわけではなく、経営者が丹精込めて作り上げ、育て上げた、
「究極の一品モノ」
です。

当然ながら、手放す方は、愛着がありますし、ちょっとやそっとでは手放してくれません。

絵画や彫刻などの美術品なら、持っているだけで、たいしたメンテナンスをしなくても傷んだり、減価したりしません。

しかし、企業は、経営者がものすごい労力や精神力を投入して生かし続けないと、たちまち、市場から見放され、赤字をまきちらし、社会のお荷物になります。

経営者も若い間はいいですが、歳をとって、体が大変になってくると、企業メンテナンスするだけでも大変になってくる。

こうやって、
「愛着はあるが、持っているのは大変」
という状況をズルズル続けているうちに、企業が客からも市場からも見放され、劣化していき、最後は、倒産という恥さらしを回避するため、身売りを選択する状況に追い込まれます。

2 身売りのための「売り物」を安値で買い叩く側面をもつM&A

M&Aという取引の手段ないし方法は、まともな使われ方をする場合もありますが、現在においては、ほとんどの場合、廃業回避や事業承継や、さらには倒産処理方法の1つとして機能しています。

ある企業が倒産しそうになっており、完全に死ぬ前にどこかに安値で引き取ってもらいたい。

「身売り」
というと聞こえが悪いし、
「企業を産み、育ててきた、愛着というか執着というか怨念じみた感情」
に支配されたオーナー経営者が
「倒産」
という恥さらしの終わり方では納得しないし、話が進まない。

じゃあ、
「M&A」
というハイカラな言葉でごまかしてしまえ。

行き詰まっている企業にM&A話が出てくるとすれば、こんな状況が考えられます。

とはいえ、
「便所」
のことを
「お手洗い」
と言い換えたのと同様で、品のいい言葉を使ったからといって、便所で行う行為が、華麗で美しいものになるわけではありません。

いろいろ外来語でごまかそうとしても、やっていることの本質は、
「身売り」
を前提とした買いたたきと、買いたたきを前提とした実地調査です。

買いたたこうとしている側は、対象企業の社長が
「バカで舞い上がり易いタイプ」
であると見ると、華麗な言葉で、当該社長が調子に乗るようにし向けていきます。

そして、バカが舞い上がっている間に隙をついて、情報収集し、値踏みし、選択肢を巧妙に減らしていき、精神的に支配していきます。

そして、にっちもさっちもいかなくしてから、徹底的に買いたたき、身ぐるみ剥ぎにかかるのです。

見たこともない連中(たいていは偏差値が高そうで、いいスーツを着こなし、バカ高いネクタイをぶら下げている)がうろちょろして、書類をコピーしていき、社長がやたらとM&A用語を使いだすときは、
「M&A」
という名の
「身売り」
が進んでいると見ていいかと思います。

3 買う側としても失敗の可能性が高いM&A

また、企業がM&A話をもちかけられている場合も問題です。

M&A(合併・買収)が、失敗例が相当数あることはあまり知られていません。

正確な調査をしたわけではありませんが、私の感覚では
「M&Aの失敗例は、芸能人の離婚率とだいたい同じ比率なのではないか(おそらく90%近くが失敗)」
と思います。

ちなみに、古いものですが、日経新聞(2011年4月28日朝刊)によると、世界の歴代金額上位3件は、いずれも買収成立から数年以内に数兆円単位の損失が生じている、とのことです。

また、同記事によると、特に、加工型製造業やサービス業といった川下産業の大型M&Aは、 川上産業に比べて買収後の経営統合作業が複雑になる面があり、失敗する場合が多いそうです。

初出:『筆鋒鋭利』No.0106-1、「ポリスマガジン」誌、2016年6月号(2016年6月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01612_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(3)_単なる「買い物」に過ぎないM&Aが、何故それほどまでに難しいのか

この
「M&A」
のどこがどう問題か、といいますと、
「企業の価値がはっきりわからない」
ということにつきます。

普通の取引をする際は、土地であれ、車であれ、機械であれ、だいたい相場というか時価というか、値段というものは
「世田谷のこの駅の近くにあるこの住宅地のこの土地であれば、だいたい坪これくらい」
「レクサスのこの型式の3年落ちの車輌であれば、だいたいこのくらい」
「このコピー機はだいたいこんなもの」
といった具合に想像がつきます。

値段がわからず、お互い値段をめぐって七転八倒するような厳しい交渉をする、なんてことはありません。

ヒトも同様です。

「こういう学歴・経歴で、こういう職歴のヒトなら、だいたい年俸これくらい」
ってことはある程度わかります。

ノウハウやソフトも同様です。

無論、ヒトやノウハウ等については、多少、一義的でないこともありますが、それでも、共通のモノサシがなく、お互い言っていることが噛み合わず、長期間かけて交渉するということは稀です。

ところが、同じ買い物であっても、買う対象が
「企業」
という一種の
「仮想人格を有する有機的組織」
となると、なかなかそういうわけにはまいりません。

無論、上場企業であれば、
「時価を前提に支配プレミアムを乗せると、だいたいこんなもの」
ということがわかります。

そんな値段が想像・推定しやすい上場企業ですら、TОBの後始末で株式買取価格が高いとか安いとかで年単位で延々と裁判をする例があったりします。

これが、上場していない株式会社の価値となると、まるでわかりません。

だいたい、決算書をはじめとした財務諸表すら、
「きちんとした会計上の真実が反映されたもの」
かどうかも疑わしい。

企業経営をしている方にとっては、自分が作った会社というのは、自分の息子であり娘であり、分身であり、自分の生き様そのものです。

そういう企業の価値となると、値段なんかつけられません。

まさしく
「priceless」
となり、期待する買収価格はとんでもなく高額になりがちです。

他方で、買う側は、事業経営者として買うにせよ、金融ブローカーが
「金融商品」
のような趣で買うにせよ、1円でも安く調達したい、ということになります。

そういうこともあり、M&Aは、単に
「企業を取引対象物とした取引」
であるにもかかわらず、モメて、モメて、モメ倒すのです。

初出:『筆鋒鋭利』No.0105-3、「ポリスマガジン」誌、2016年5月号(2016年5月20日発売)

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01611_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(2)_M&Aとは「買い物」に過ぎない(「企業」を対象とする「特殊な買い物」)

M&Aとは、企業そのものを取引対象とする売買、すなわち
「買い物」
の一種ということです。

普通の取引対象といえば、ヒト、モノ、カネ、ノウハウといった形で、個別経営資源毎にバラバラで調達します。

他方で、
「これをいちいちやっていると面倒くさくてしょうがない。ヒト・モノ・カネ・ノウハウが統合的にシステマチックに合体して動いている、人格そのものを取引しちゃった方がいいんじゃね?」
ということで、
「企業まるごと買っちゃえ」
という趣で形成されてきたビジネス分野です。

初出:『筆鋒鋭利』No.0105-2、「ポリスマガジン」誌、2016年5月号(2016年5月20日発売)

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01610_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(1)_言葉こそよく聞くものの、誰もよくわかっておらず、知ったかぶりのまま迂闊に手を出すと大やけどを負う、「難易度の高いビジネスプロジェクト」としてのM&A

最近、大企業のみならず中小企業等においてさえよく耳にするようになったM&Aですが、
「意識高い系」
の知ったかぶりのビジネスマンは、
「エムアンドエー」
といわず、
「エムエー」
というようです。

まあ、たしかに、英語風に発音すると、
「エム、ンエー」
みたいに聞こえますので、間違いはないのですが。

このM&Aですが、言葉こそ最近随分メジャーになりましたが、よく聞く割に、実はあまり知らない、
「知ったかぶりビジネスキーワード」
の代表選手のようなものです。

「営業不振で頭を抱え、起死回生を狙うが、どうも妙案が浮かばない、だけど、海外行くのもリスクだし、最後に残ったカネを使って、ミラクルな一手で、華麗な復活を遂げたい」、
そんなことを妄想する、やぼったいドメスティックな企業の社長が、突如、
「デューディリ(デューディリジェンス)」
「DIPファイナンス」
「プレゼントバリュー」
「DCF」
「EBITDA」
「EBITDAマルチプル」
「シナジー」
「PMI(ポストマージャーインテグレーション)」
なんて言葉を使いはじめます。

そして、この種の知ったかぶりの中小企業オーナーが、よくわからないまま手を出し、経験値の無さが災いし、ほぼすべて、無残に失敗します。

こうして観察しますと、
「M&A」
は、言葉こそよく聞くものの、誰もよくわかっておらず、迂闊に手を出すと大やけどを負う、
「難易度の高いビジネスプロジェクト」
と総括可能かと思います。

初出:『筆鋒鋭利』No.0105-1、「ポリスマガジン」誌、2016年5月号(2016年5月20日発売)

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01609_企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト(12)_「海外進出を成功させるための人材」に欠如した中小企業が採るべき代替戦略

「自分が海外に行くわけにはいかないし、自分の分身として責任をもって海外で一旗挙げてくれるようなスキルと意思をもった人材にも恵まれない中小企業」
が、最後には、
「ああ、どうしよう、我が社は海外進出できない。どうしよう」
と嘆息することが多い、という実情が存在します。

では、そんな中小企業として、海外進出プロジェクトについて、どのようにして対応すればいいのでしょうか?

答えは実に簡単です。

1 海外進出自体やめてしまう

進出などやめてしまえばいいのです。

ある事業にリスク課題があって、制御不能・管理不能なリスクが残存し、かつそのリスクが発現した場合、大きすぎて、企業の生命すら奪いかねない場合、もっとも端的なリスク管理方法は、当該事業をやめてしまう。

これに尽きます。

誰かが、
「そんなに無理をしてまで、大変な思いをし、会社を破綻させるリスクを冒してまで進出しろ」
といって進出を強制しているわけでもありません。

わざわざ苦労とリスクを背負い込んでまで、アジアくんだりになど進出などしなくてもいいんです。

2 生産活動の効率化をしたいなら、廉価な人件費を求めて海外進出するより、FAやICT(DXやAIやRPAを含む)を研究して導入する方がはるかに有益

国内で地味に努力して、生産活動を工夫したり、商売を広げたりできる余地はいくらでもあります。

例えば、AIやRPAを導入すれば、ホワイトカラーの生産性は劇的に改善されます。

トップがDXを理解し、ICTリタラシーを向上させ、さらにいえば、PCとスマホを使いこなすだけで、経営管理機能を担う人員は大幅に不要となるはずです。

生産工程の見直しとFA化の推進をすれば、
「言葉も通じない、話も通じない、思いも通じない、規律に無縁で、誠実で堅実なカルチャーとは無縁な、俗悪と無作法をはびこらせるかもしれない方々」
と無駄に付き合ってカネと時間とエネルギーを喪失するよりはるかにメリットがあると思います。

結局、AIやRPAの導入以前の技術特性把握、DXの理解、ICTの習熟とか、生産工程の見直しとか、そういった地味な作業を忌避し、
「アジア進出!」
という壮大な妄想を華々しく展開することによって、
「何かワクワクするようなことをしたい」
「これで一挙に大逆転したい」
という愚劣で幼稚な発想にもとづき、日本の多く残念な中小企業と、そのような企業を経営する残念な社長が、哲学も展望もシビアな計算もなく、大量にノコノコとアジアに出かけて行っては死屍累々となっている。

これが、生産拠点をアジア諸国に移転しようとして大失敗する愚かな企業における根本原因です。

3 営業・販売を拡大したいなら、いきなり海外進出するのではなく、現地提携先を調査発見し、パートナーシップ戦略・アライアンス戦略を試行してみる

営業や販売についても同様です。

これまで、製造業においては、ほどほどの品質を大量に市場に流し込み、市場でシェアを獲得し、その後、商品力で競争力優位を築いていく経営、すなわち
「プロダクトアウト」型
の経営戦略が、オーソドックスな戦略とされてきました。

しかし、市場がグローバル化し、また、
「ドッグイヤー」
「マウスイヤー」
といった経済スピードの加速化が常識となり、
「大量に出回る、ほどほどの品質の商品」
は、おどろくほど早く陳腐化し、海外から、
「ほどほどの品質と、冗談のような廉価な商品」
が押し寄せてくるとひとたまりもありません。

国内の販売不振が続くと、ついつい
「海外にいって一旗挙げて、リベンジだ」
と安易に考えてしまいがちです。

無論、ルイ・ヴィトンやエルメスやブルガリなど、すでに世界的ブランドとして知名度を確立している商品であれば、
「進出後短期間に相当大きなボリュームの売り上げを立てる」
ということも合理的に期待できます。

しかしながら、
「『日本国内ですら知名度がなく、誰も買ってくれないような商品』しか作っていないような企業が、言語も文化も違う国の市場でいきなり知名度を獲得し、バカ売れして大成功する」
というのはまず不可能です。

結局、日本ですらロクに知名度がない陳腐な商品しか作れない陳腐な中小企業が、コンサルティング会社や現地コーディネーターの口車に乗せられて現地法人を作った場合、結構な額をスってしまい、現地法人を1~2年で解散・清算する、ということが多いようです。

国際的にビジネスを展開したいのであれば、何も現地法人を作って、いきなり拠点を作って遮二無二進出する必要などありません。

現地法人を作るということは、現地の言語に基づき、現地の会計基準と現地の法律にしたがった法的書類と会計書類と税務申告が必要ということを意味しています。

しかも、この煩雑でコストのかかる手続きは、会社を解散して清算するまで、未来永劫続きます。

これだけですでに莫大な費用と手間とエネルギーを消耗しますが、投下した多額の投資を回収するには、相当大きなボリュームの売り上げを立てる必要があります。

自らは日本国内に拠点を置いた状態で、現地のチャンネルを有する現地企業と販売先や代理店として契約し、そこと緊密に提携しながら、市場にチャレンジすれば、リスクもコストも労力も少なくて済むはずです。

4 営業・販売を拡大したいとしても、同じ戦略や戦い方で安直に戦場を変える前に、今一度、戦場や戦局を見直し、戦略を再定義し、戦法を再構築してみる

さらにいえば、国内でもまだまだ生き残れる方法があるかもしれない。

市場における顧客のニーズに併せてモノ作りをしたり、さらにいえば、モノにサービスを加えた、顧客の要望を叶える高付加価値なソリューション(もの作り+おもてなし)提供していくこと、すなわち
「マーケットイン」型
の経営戦略に真剣に取り組めば、いくらでも生き残れる場所が見つかるかもしれません。

5 マルドメ企業(まるでドメスティックな企業)が海外進出を夢みてしまうのは、コンプレックス(劣等感)克服が原因の可能性

頭とセンスを地味に酷使するような戦いを忌避し、見た目だけ派手にみえる
「海外に打って出る、壮麗なアウェー戦」
を挑んだものの、地の利の不利が災いして、ボロ負けし、会社の生命を縮めてしまう、というアホな失敗をなぜ多くの企業をやらかすのか。

自分が
「国内において地味で広がりのない事業をやっている」
ということに強いコンプレックスをもっている中小企業の社長の方々は、“国際事業”や“海外進出”や“現地法人”といったキーワードに弱く、意味なく無駄なことをしがちだからだと推測します。

また、海外事業の経験がない素人ほど、
「海外で事業を行えば、どんなバカでも大成功するはずだ」
という根拠のない妄想を抱き、
「地道な経営改革より見た目な派手なバクチで会社を劇的に改善できるのではないか」
と甘い夢をみがちなのです。

こういう背景もあり、
「丸ドメ(まるでドメスティックな・純粋国内指向の)事業を、ド根性と勢いで立ち上げたが、海外経験なく、総じて視野が狭いタイプの社長」
が、国内においてなすべき課題が山のようにあるにもかかわらず、海外に異常な期待を抱き、コーディネーターやコンサルティング会社などの口車に乗せられ、海外進出話にオーバーコミットしてしまい、結果、会社を重篤に危機に陥れてしまうのです。

「コンプレックスのある、成り上がりの、幼稚なオーナー経営者が、誇大妄想的に海外に進出して痛い目に遭う」
という話は、朝鮮出兵や明王朝の征服といった妄想を抱いて大失敗した豊臣秀吉の時代から変わりません。

6 イタい膨張政策より、堅実な引きこもり戦略・穴熊戦法を再考してみる

ですので、豊臣秀吉のようにイタい膨張政策で晩節を汚すより、徳川家康のように
「引きこもり」「穴熊」戦略
で、地味で堅実に内部の地盤固めをすることが、企業を長く存続させる秘訣なのかもしれません。

初出:『筆鋒鋭利』No.104、「ポリスマガジン」誌、2016年4月号(2016年4月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01608_企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト(11)_中堅中小企業が海外進出を成功させるには、オーナー経営者自らが直接乗り込むほかない

「海外進出という、もともと勝ち目の少ないアウェー戦を戦い抜くには、ラスボス(ゲームの最後に登場する、最強のボスキャラクター)が、当初から陣頭に立って、真剣に取り組む姿勢が絶対必要であり、そのことは歴史上証明された事実でもある」
ということを申し上げました。

そして、逆に、
「大将が、ラクをして、最前線や現場に出ることを忌避した挙句、悲惨な負け方をした例」
も歴史上多数存在します。

関ヶ原で大惨敗を喫した西軍総大将の毛利輝元、大阪の陣で徳川家康に完膚なきまでに敗北して滅ぼされた豊臣秀頼、いずれのリーダーも、陣頭に立つことを忌避し、よく状況がつかめないまま、気がついていたらボロ負けしていた、という憂き目をみました。

これら総大将は、ともに、
「オーナーないし指揮命令の最終責任者たるトップが、安全なところに安穏と居座り、危険な最前線には、手下を派遣して、危険性の高い事業を担わせ、うまく行ったら、その成果のみ手中におさめる」
などと、消極的で、プロジェクトそのものを甘く、軽く考えた態度でいたため、負けるべきして負けたわけです。

勝つべきリーダーは、勝敗にとことん執着し、細かなところまで他人任せにしませんし、そもそも自分の他人を一切信じません。

また、勝つべきリーダーは、
「無能な味方、敵より怖い」
ということを知っており、部下に接するスタンスは
「信じて、信じず」
「任せるが、警戒は怠らず、フォローはしっかりする」
というものであり、部下であっても根源的な部分での猜疑心は最後まで捨てません。

「過酷な敵情」

「無責任な部下の無能と懈怠」、
この
「2軸の潜在的なカウンターパート(仮想敵)」
ときっちり正対・対向し、二正面作戦を強いられる。

これが、組織のリーダーの立場です。

「自らが負担する想像を絶する責任をビビッドに理解認識し、その上で、最後まで気を抜かず、勝ち抜き、結果を手中にする」
というタイプのリーダーは、安穏とは無縁です。

「リスクも不確実性も高く、失敗したら財産はおろか生命さえ奪われる、戦争」
において、死ぬリスクすら顧みず、最前線に立ち続け、リアルな戦況報告を受け、刻々と変化する戦局を捉えて、融通無碍・臨機応変に、想定外や膠着した状況に非連続的な変化をもたらす戦術を試行(と錯誤)を繰り返すなどして、最後まで、すべての状況を自分が掌握・制御し、人任せを一切排し、己の能力や制御の及ぶ限り、力の限り、命の限り、闘い抜きます。

こういう観点からすると、
「ラクをして、最前線や現場に出ることを忌避し、安全なところに安穏と居座り、危険な最前線には、手下を派遣して、危険性の高い事業を担わせ、うまく行ったら、その成果のみ手中におさめる」
などといったナメた考えであった毛利輝元や豊臣秀頼が、ボロ負けしたのは当たり前です。

大阪冬の陣・夏の陣の事例でいいますと、
「すでに『征夷大将軍』を引退し、OB(大御所)となっているにも関わらず、駿府から出馬し、現役リーダー(二代将軍秀忠)に任せることなく、最前線に出張って、状況を直接把握し、作戦を立案し、指揮し、督戦し続けた、『徹底した現場主義』を貫いた徳川家康」
との比較において、
「結局、大阪城を一歩も出ず、全てを他人任せにした豊臣秀頼」
がボロ負けしたのは当然の結果です。

ビジネスもこれと全く同様であり、
「絶えず変化し、襲いかかるリスク情報を素早く察知し、不確実性を前提にした、試行錯誤の連続」
といった状況での戦いを日々強いられます。

ましてや、海外進出となると、
「住み慣れた土地でのホーム戦」
ではなく、
「言葉も、話も、常識も、理屈も、思いも、常識も、状況認知や解釈についてまで、これまでのやり方も全く通用しない、完全なアウェー戦」
です。

成功するためには、
「すべての責任と権限をもち、事態対処のための完全な自由裁量を有する、強烈な士気とインセンティブが与えられたリーダー」
が、戦略の修正、ゲーム・チェンジ、マイルストンの組み換え、ときには、設定した目標の変更すら適時・瞬時に行うことを休む間もなく継続し、ようやく
「戦いの体をなす」
というレベルです。

油断したり、気を抜いたり、
「任せてはいけないタイプのリーダーに丸投げ」
といった、商売をナメたことをやっていると、たちまち損失が増大し、事業継続が困難な状態に陥ります。

「こんな圧倒的な権限と裁量を前提とするリーダーシップ」
はプロジェクトオーナー、すなわち
「負けたら、即、命より大事なカネや会社を失う」
という痛い目と責任を担っている人間であるオーナー経営者以外存在し得ません。

他人任せにし、適当な報告を求め、快適な日本で
「隔靴掻痒」
の議論をして、遠いところから適当な指示を飛ばしたところで、指示が到達するころには、さらに状況が悪い方向に変化し、命令自体が陳腐になっている。

こんなことを繰り返しているうちに、たちまち失敗を重ね、最後は、這々の体で敗走することになるのです。

番頭・手代レベルに、元手を渡して、
「あんじょうやってこい」
という適当な指示で、成功を夢想する、なんてことをやっても、うまく行く道理がありません。

こういう言い方をすると、
「自分(オーナー経営者)が出て行くと、国内がおろそかになるので無理だ」
「『命を賭して、完全に成し遂げる強靭な意志と、成功時に得られる莫大なインセンティブと、平然かつ冷静にやり抜くスキルと、自然と被支配者がひれ伏す強烈なオーラと、悪魔の手先のような性根と、常に、エレガントに振る舞える典雅さをもった人間に、法律はおろか神をも恐れぬやりたい放題の裁量を与える』といった海外事業責任者が必要というのはわかるが、そんな、自分でもできないようなことをやってのける人間は、社内のどこにも見当たらないし」
と、言い訳をはじめ、遂には、
「ああ、どうしよう! 我が社は海外進出できない! もう、八方ふさがりだ!」
と頭を抱える中小企業オーナーがよくいらっしゃいます。

じゃあ、どうすればいいのか?

答えは、実に簡単です。

初出:『筆鋒鋭利』No.103、「ポリスマガジン」誌、2016年3月号(2016年3月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01607_企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト(10)_中堅中小企業が海外進出を成功させるには、オーナー経営者自らが直接乗り込むほかない

「目的があいまいで、考えも甘い中小企業が、アジア等の海外進出をおっ始めても、相当な確率で失敗して悲惨な状況に陥り、撤退もままならない状態に陥る」
という典型的な事例について、悲惨な状況に至るまでの詳細なメカニズムは、すでに冷静かつ合理的な観点で分析させていただきました。

逆に、海外進出成功、というか
「海外進出をまともなビジネス・プロジェクトとしてキックオフ」するには、
「圧倒的な士気と、この士気を支える鼻血が出るほど魅力的なインセンティブ」を前提に
「植民地時代の欧米列強資本家のような“エゲツナイ目的”を、しびれるくらい、リアルにかつ明確に理解し、当該目的を実現するタスクを具体的に把握し、かつ当該タスクを完遂しうる知見と覇気とスキルを有するリーダー(責任者)」
が、文字通り、
「進出国に骨を埋めるつもり」で、
「ゼロというか、ハンデキャップ満載の“マイナスから”スタートする覚悟」で、
「実質創業」する、
という前提環境が必要条件となります。

とはいっても、そこらへんの中小企業において、社内を隅々まで見渡してみたところで、
「犀利な有能さと、エゲツないくらい、カネや成果に執着するリーダー」
となる資質を有する人材が、掃いて捨てるくらいゴロゴロ存在する、ということではなかろう、と推定されます。

そもそも、
「『犀利な有能さがあり、エゲツないくらい、カネや成果に執着するリーダー』となれるような気概と能力を持った人間」
なら、とっくに、中途半端な規模の会社に見切りを付けてを辞めて、自分で商売立ち上げているか、外資系企業で、信じられないくらいの高給をもらって活躍しているはずです。

要するに、前述のような
「『海外進出を任せるに足るリーダー』としてのプロファイルに該当する、『資本主義的競争社会の権化』のような人材」
あるいは
「東京でたまにみかける、日本人を蔑視して、舐め腐っていて、死ぬほど高額の給料をもらって、唖然とするくらいいい暮らしをしていて、クソ忌々(いまいま)しい、反吐が出るほど、イヤ~な感じの、外資系企業の幹部」
というキャラは、当該企業のオーナー経営者、すなわち、
「創業経営者」

「(覇気を喪失した2代目・3代目等ではなく)創業精神を持つオーナー経営者」
その人自身くらいしかいない、ということなのです。

すなわち、中小企業においては
「功成り名を遂げた創業経営者が、老体に鞭打って、現地に乗り込み、環境・言語・文化・商売慣行といった数多くのハンデをすべて呑み込み、文字通り“死ぬ気”で、もう1回、『創業というミラクル』を成し遂げる」
ということくらいしか、海外進出に成功することは想定できないのです。

これらのことは、別に、私が思いつきで適当に言っているわけではありません。

歴史上も、
「海外進出というか、アウェー戦を闘い抜いて、勝利を収め、領土や国富を増大させるような国家ないし組織」
は、すべからく、前記のようなリーダーシップ戦略を採用しています。

膨張政策を採る国家においては、
「領土拡張紛争の最前線」

「占領によって新たに獲得した地域の近くに本拠地(軍事拠点等、トップが指揮命令をする中枢)」
を移転し、トップ自身もそれまで安穏として暮らしてきた土地を離れ生活の本拠すら移してしまう、という事例が、歴史上多数確認されています。

足利尊氏は、関東出身の豪族でありながら、鎌倉幕府を承継せず、わざわざ
「魑魅魍魎の政敵がウヨウヨいる、アウェーの占領地である京都」
に室町幕府を開きました。

尊氏は、生まれ育った故郷である関東の地(生誕は京都丹後という説もありますが、育った場所が栃木県の足利荘であることは間違いありません)を捨て、敵地ともいえる京都に室町幕府を開いて、死ぬまで睨みを効かせ続けました。

尊氏は、
「54歳」
という当時の平均寿命に近い晩年に、故郷から遠く離れた京都二条万里小路第で、戦いの怪我が原因で亡くなりました。

まあ、今風にいってみれば、尊氏さんは、自ら海外進出し、過酷な仕事が原因で体調を崩し、志半ばで亡くなった
「モーレツ社長」
ということになろうと思います。

膨張する軍事国家を率いる織田信長も、本拠地を尾張に留めず、占領目標である京都に近い安土に政治・軍事の中心(安土城)を作りました。

一説には、今後の西国進出を考えていた信長は、京都など目もくれずに素通りし、大阪石山本願寺跡に巨大な軍事要塞の建築を考えていた、とのことです(この軍事要塞構想は、豊臣秀吉に引き継がれ、「大阪城」が誕生しました)。

まぁ、信長も、本拠地を捨てて、海外進出拠点に引っ越し、さらに隣国まで事業を広げようとしたところ、常務なり専務なりの裏切りにあって、異国の地で死に果てた、といったところでしょうか。

最終的には失敗したものの、豊臣秀吉は、朝鮮出兵にあたって、肥前名護屋に一大軍事都市を作り、大阪城ではなく、当該地に実質的な本拠地移転をし、そこから直接指揮命令を行ないました。

以上のとおり、
「海外進出という、もともと勝ち目の少ないアウェー戦を戦い抜くには、ラスボス(ラストボスの略。ゲームの最後に登場する、最強のボスキャラクター)が、当初から陣頭に立って、真剣に取り組む姿勢が絶対必要であり、そのことは歴史上証明された事実でもある」
ということがいえるのです。

他方、以上とは逆に、
「大将が、ラクをして最前線や現場に出ることを忌避した挙句、悲惨な負け方をした例」
も数多く存在します。

著者:弁護士 畑中鐵丸
著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

初出:『筆鋒鋭利』No.102、「ポリスマガジン」誌、2016年2月号(2016年2月20日発売)

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01606_企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト(9)_海外進出に失敗する企業にみられる「必敗の方程式」ないし「敗北のスパイラル」

海外進出成功企業の要素として、
海外進出目的が合理的に設計されていて、かつ明確に意識されており
目的を実現するための基本的なタスクイメージもしっかりと具体化されており
各タスクを実践する人材スペックが明瞭であり、
・当該人材を発掘・発見・調達でき、
・当該人材が遺憾なくスキルを発揮できるような物的環境(予算や報酬やインセンティブ)を整備できる
と、分析しました。

すなわち、
「植民地時代の欧米列強資本家のような“エゲツナイ目的”を、しびれるくらい、リアルに、明確に、理解し、これを平然と実現して、成果を挙げられる、『東京でたまにみかける、日本人を蔑視して、舐め腐っていて、死ぬほど高額の給料をもらって、唖然とするくらいいい暮らしをしていて、クソ忌々(いまいま)しい、反吐が出るほど、イヤ~な感じの、外資系企業の幹部』のようなリーダー(責任者)」
を発見・発掘・登用し、当該リーダー(責任者)に対して
「圧倒的な士気とこの士気を支える鼻血が出るほど魅力的なインセンティブ」
を提供し、徹底的に、情け容赦なく、
「進出当事国の環境条件におけるメリット(低賃金や魅力的な競争環境)」
を最大限活かす活動を行うことが必要である、ということをお伝えしました。

こういうことを言いますと、
「ここまでやるのか」
「ここまで徹底しなければならないのか」
「これほどまでにリアリティスティックな行動スタイルがないと成功しないのか」
と嘆息が聞こえてきそうですが、これくらいシビアな感覚でもなお、成功は
「可能性」
に留まります(ここまでやってもなお失敗する可能性は顕著に存在します)。

逆に、
「はちみつ漬けのシロップが充満し、一面お花畑の光景が広がる脳みそ」
で、
「世界は1つ、人類は皆兄弟。平和に、仲良く、ハッピーに、同じ人間として共に手を携えてがんばれば、きっとうまくいく」
といった、愚劣な妄想に満ちた感覚で海外進出する、という経営者は、正直申し上げて、
「お前、商売とか海外進出とか国際ビジネス、舐めてんのか」
としか評しようがありません。

結局、「植民地時代の欧米列強資本家のような“エゲツナイ目的”を、しびれるくらい、リアルに、明確に、理解した上で、
1 「海外進出を経済的に成功させるために必要となる、いずれも極めて達成困難な、各タスク」 を、命を賭して、完全に成し遂げる強靭な意志と、
2 これら各タスクを、一定の冗長性(リスクや想定外に常に対応しうるための時間的・経済的・精神的冗長性)を確保しつつ、涼しい顔をして、平然かつ冷静にやり抜けるだけの知識・経験・スキルと、
3 「成功時に得られる、鼻血が飛び出るくらい、旨味があるインセンティブ」を設計して、臆面もなく要求するだけの豪胆さと、当該インセンティブに対する健全な欲望と、
4 声一つ発することなく、被支配者が自然とひれ伏す強烈なオーラと、
5 悪魔の手先のような性根と、
6 遂行しているタスクの毒々しさを全く感じさせることなく、常に、ジェントルかつエレガントに振る舞える典雅さ、
といった各スペックを漏れなく実装した人材
「成功時に得られる、鼻血が飛び出るくらい、旨味があるインセンティブ」
を設計して、臆面もなく要求するだけの豪胆さと、当該インセンティブに対する健全な欲望
「圧倒的な士気とこの士気を支える鼻血が出るほど魅力的なインセンティブ」
を前提に
「植民地時代の欧米列強資本家のような“エゲツナイ目的”を、しびれるくらい、リアルに、明確に、理解したリーダー」
となるべき日本人など、まず、滅多にいませんし、仮にそういう
「東京でたまにみかける、日本人を蔑視して、舐め腐っていて、死ぬほど高額の給料をもらって、唖然とするくらいいい暮らしをしていて、クソ忌々(いまいま)しい、反吐が出るほど、イヤ~な感じの、外資系企業の幹部」
のような
「稀有な日本人」
がいたとしても、彼ないし彼女は
「誰かのために命を張る」
なんてアホらしいことなど興味すら示さず、自分自身で乗り込んで一旗揚げ、成功の果実を独り占めするだけです。

上記のようなインセンティブを前提に、
「他人事」ではなく「我が事」として、
本気で、死ぬ気で、
海外で事業立ち上げに邁進するのは、結局、
「創業経営者」

「(覇気を喪失した2代目・3代目等ではなく)創業精神を持つオーナー経営者」
だけ、ということになります。

すなわち、海外進出の成功のためには、
「創業経営者」

「(覇気を喪失した2代目・3代目等ではなく)創業精神を持つオーナー経営者」自身が
直接現地に乗り込んで、ゼロというか、ハンデキャップ満載のマイナスからスタートする覚悟で、もう一回、創業する、ということが必須の前提となります。

日本で成功し、カネに不自由せず、ストレスやフラストレーションなどまるで感じず安楽な生活をエンジョイできている
「創業経営者」

「(覇気を喪失した2代目・3代目等ではなく)創業精神を持つオーナー経営者」
が、安穏とした環境を放擲し、老体にむち打ち、それまでの成功体験をすべて捨てる覚悟で、アウェーで、不利な戦いをして、死に物狂いで事業立ち上げをもう1回最初からやり直す、ということを嬉々としてやるのであれば、海外進出が成功する可能性もあるでしょう。

ところが、海外進出を甘くみる
「創業経営者」

「(覇気を喪失した2代目・3代目等ではなく)創業精神を持つオーナー経営者」
は、
「他人任せで適当にやってもうまくいく」
などと考え、番頭さん(役員)や手代さん(部課長)を送り込むだけです。

送り込まれた方も、現地に行くと日本でまるで勝手が違い、やることなすこと障害だらけで、日々壁にぶち当たる現実を目の当たりにする。

結局、普通にやっても成果が出ず、無理に成果を出そうとすると、命の危険にさらされる。

実際、2012年7月18日、自動車メーカー・スズキのインド子会社、マルチ・スズキのマネサール工場(ハリヤナ州)で、従業員による暴動が発生し、工場幹部1人が死亡、約90人が負傷する、という事件が発生しています。

「他人のために命を張るなんてマジ勘弁。そんなことするくらいなら、適当にやって失敗して、『海外進出は難しいです』という弁解をして帰国した方がマシ」
という、ある意味当たり前の感覚を持つ、番頭さん(役員)や手代さん(部課長)を送り込んでも、論理的・合理的に考えて、うまく行くはずなどビタ1ミリありません。

かくして、

・海外進出の困難さをきちんと理解せず、あるいは、「海外進出したら、他人からかっこよくみられて、威張れたり、国際的な大企業から『マルドメ(まるで、ドメスティック。完全な国内志向)の中小企業』などと呼ばれる劣等感が払しょくできる」といった経済合理性とは無関係な意図・目的で海外進出を計画する

・海外進出を甘く考えるか、「(見栄を張ったりやコンプレックス解消のための)ファッションアイテム」として海外進出を考えることから、「創業経営者」や「(覇気を喪失した2代目・3代目等ではなく)創業精神を持つオーナー経営者」自身が、命がけで乗り込むことはしない

・そこで、番頭さん(役員)や手代さん(部課長)を送り込むなど他人任せで何とかしようとする

・番頭さん(役員)や手代さん(部課長)には、「圧倒的な士気とこの士気を支える鼻血が出るほど魅力的なインセンティブ」は与えられないし、また彼らは「植民地時代の欧米列強資本家のような“エゲツナイ目的”を、しびれるくらい、リアルに、明確に、理解したリーダー」というキャラでもない

・海外で事業立ち上げを任された番頭さん(役員)や手代さん(部課長)は、やがて、その「しびれるくらいきっつい現実」に直面し、「他人のために命を張るなんてマジ勘弁。そんなことするくらいなら、適当にやって失敗して、『海外進出は難しいです』という弁解をして帰国した方がマシ」という、ある意味素直な考えをもつようになり、かつ、実際そうする

・かくして、海外進出を甘く、軽く考えるオーナー系企業の海外進出プロジェクトは、当然のように失敗する

・なお、自らの愚を悟り、早期に失敗見極めが出来れば傷が浅く済む可能性もあるが、諦めきれず、あるいはサンクコスト・バイアス(埋没費用の無視ないし過小評価によるミスジャッジ)に罹患ないし脳内汚染されて、「損切り」のタイミングを逸失し、資源の逐次投入による泥沼に入り込み、企業を危殆ないし瀕死の状況にまで追い込んでしまう

という
「必敗の方程式」
ないし
「敗北のスパイラル」
ともいうべきプロセスが次々に実現していき、ボロ負けし、這う這う(ほうほう)の体で、海外での事業を畳んで日本に帰ってくるのです。

初出:『筆鋒鋭利』No.101、「ポリスマガジン」誌、2016年1月号(2016年1月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01605_企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト(8)_海外進出に成功する企業の手法その4_海外進出成功企業の戦略・まとめ

海外進出に成功する企業においては、登用されるリーダー(責任者)のスペックにおいて、共通する要素があります。

そして、その前提として、リーダー(責任者)が果たすべきタスクについて明確かつ具体的なデザインが先行しています。

さらにいえば、明確かつ具体的なタスク・デザインのための必須の先行ないし前置課題として、進出目的が明確かつ具体的に定められています。

すなわち、海外進出に成功する企業には、必ずといっていいほど、
「東京でたまにみかける、『日本人を蔑視して、舐め腐っていて、死ぬほど高額の給料をもらって、唖然とするくらいいい暮らしをしていて、クソ忌々(いまいま)しい、反吐が出るほど、イヤ~な感じの、外資系企業の幹部』」のような人材、
すなわち、(くどいようですが再言しますと)

【設定・構築目的において】
「『植民地時代』において、列強諸国の資本家が、『アジアその他の植民地に進出すると、劣等民族(※当時の彼らの認識であって、私の認識ではありません)を奴隷労働力として廉価に活用できたり(工場等を作って、生産資源として活用する場合)』あるいは、『文明レベルの劣る民族(※当時の彼らの認識であって、私の認識ではありません)に対して、圧倒的な価値と希少性を有する商品・サービスを提供することを通じた、市場争奪、支配が可能である』ことを前提として進出した」
のと類似あるいは近似した、非常にシビアな功利的メンタリティーにもとづいて「エゲツナイまでに経済合理性に適った目的」が設定・構築されていることを前提として、

かつ、

【設定・構築目的達成のために設計された基本的タスクにおいて】
「1 現地の人間になめられないような制度やカルチャーを現地法人に浸透させ、確立する」
「2 強烈な強制の契機をはらんだ圧倒的なオーラを醸し出し、徹底して高圧的な支配を実行する(とはいえ、植民地時代ではないので、支配的な要素はおくびにも出さないように努め、極めてジェントルかつエレガントに、スマートな形で実効的支配を展開する)」
「3 俗悪・無作法・怠惰を許さない、徹底した管理を敷く」
「4 客観的基準と合理的観察によるエゲつない能力差別を行ない、論功行賞を明確に実施し、ルール違反者に対する過酷な懲罰を徹底して行う」
「5 独禁法を愚弄する精神で、競争者の存在を否定し、あるいは新規参入の目を容赦なく摘む形で、市場を迅速かつ圧倒的に支配する(つもりで頑張る。実際は法令には触れないように細心の注意を払う)」
「6 このような市場支配(を目指した、法に触れない経済活動)を、大量のカネ、物量を背景に、高圧的に、スピーディーに、SMART基準にしたがって、効率性を徹底追求して行う」
という各タスクを成し遂げるというミッションを明確に理解・把握し、

【基本的タスクを遂行しうる人材スペックにおいて】
1 前記1から6の「海外進出を経済的に成功させるために必要となる、いずれも極めて達成困難な、各タスク」を、命を賭して、完全に成し遂げる強靭な意志と、
2 前記1から6の「海外進出を経済的に成功させるために必要となる、いずれも極めて達成困難な、各タスク」を、 一定の冗長性(リスクや想定外に常に対応しうるための時間的・経済的・精神的冗長性)を確保しつつ、涼しい顔して、平然かつ冷静にやり抜けるだけの知識・経験・スキルと、
3 「成功時に得られる、鼻血が飛び出るくらい、旨味があるインセンティブ」を設計して、臆面もなく要求するだけの豪胆さと、当該インセンティブに対する健全な欲望と、
4 声一つ発することなく、被支配者が自然とひれ伏す強烈なオーラと、
5 悪魔の手先のような性根と、
6 遂行しているタスクの毒々しさを全く感じさせることなく、常に、ジェントルかつエレガントに振る舞える典雅さ

といった要素ないしスペックをすべて実装した
「海外進出を成功させることの出来る、しかるべきリーダー(責任者)」
が存在し、当該人材に委ねることができるからこそ、海外進出に成功するのです。

上記のような
「東京でたまにみかける、『日本人を蔑視して、舐め腐っていて、死ぬほど高額の給料をもらって、唖然とするくらいいい暮らしをしていて、クソ忌々(いまいま)しい、反吐が出るほど、イヤ~な感じの、外資系企業の幹部』」
によって経営されている外資系企業が、どの企業も、例外なく、順調にあるいはしびれるくらい儲かっている、という
「帰納的に確認できる経験上の事実」
と照らし合わせて考えてみてください。

ご理解いただけますでしょうか?

海外進出に成功する企業には、成功するだけの明確な根拠と理由があるのです。

要するに、
海外進出目的が合理的に設計されていて、かつ明確に意識されており
目的を実現するための基本的なタスクイメージもしっかりと具体化されており
・各タスクを実践する人材スペックが明瞭であり、
・当該人材を発掘・発見・調達でき、
・当該人材が遺憾なくスキルを発揮できるような物的環境(予算や報酬やインセンティブ)を整備できる
からこそ、海外進出に成功するのです。

逆に、
「海外進出に失敗する、残念な企業」
というのは、前記のような目的もタスクも人材スペックも明確にしたり、整理していません。

目的もあいまいなまま、目標も実施戦略もロクに立てず、
「しかるべきリーダー(責任者)」
などいません。

むしろ、上記のような
「海外進出に成功する企業」
とは真逆に、企業として、
「海外の国や人々や各団体と仲良くなって、国際交流する」
などといった愚劣で不可解な目的しか持たず、
「金儲け」「商売」
を真摯に追求する気概も能力もなく、さらにいえば、
「そもそも『何をしたらいいか』すらさっぱりわからない適当な人間」

「すべてにおいて、ぬるく、曖昧で、適当なこと」
をさせるから、失敗すべくして失敗するのです。

以上のような観点・視点から観察すると、日本企業の多くが、海外進出、アジア進出、中国進出にことごとく失敗するのも当然至極であり、「史上空前の進出ブームの後に訪れた、これまた史上空前の撤退ブーム」などという、愚劣にして蒙昧なニッポン企業の動向
「さもありなん」
といった感があります。

初出:『筆鋒鋭利』No.100-4、「ポリスマガジン」誌、2015年12月号(2015年12月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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