01632_M&Aにおけるデューディリジェンス実務の意味と価値

「デューディリジェンス(Due Diligence。「デューディリ」あるいは「DD」と略されることもあります)」
という言葉が、よくM&A業界界隈で聞かれます。

M&A実務の世界では、
「買収対象である企業の調査」
とほぼ同義のものとして使われています。

M&Aを
「結婚」あるいは「養子縁組」
になぞらえると、
「お嫁さんあるいは養子にもらう予定の女性ないし子女(買収対象企業)が、健康体か、過去の妙な男性関係をひきずっていないか、変な感染症に罹患していないか、前科前歴や盗癖や虞犯傾向がないか、妙な宗教に入信していないか、粗暴な性向や奇天烈な性癖がないか」等、
「円満な結婚生活等にとって障害となるべき事項」
の有無や範囲や程度(重篤さ)を調査することがデューディリジェンスに相当します。

この話から透けて見える、常識では考えられない、異常ともいえる取引ルールがあり、これを踏まえていないと、
「デューデリ」
をなぜ、そんなに御大層に取り上げるのか、いまいちピンとこないと思いますので、この辺も含めて解説します。

すなわち、M&Aの取引の大前提として、
「よく調べず、漫然と相手を信頼して、『これはそれなりに良い企業だ』と思ってある企業を買ったところ、実際の中身は、ボロボロで、ほとんど価値がなかった」
という場合、120%、良く調べずに買った方がアホ、騙される方が悪い、というのが、この種の取引の基本中の基本中の基本ルールだからです。

さらにいえば、そもそも、車や不動産等とは違い、企業の値段には相場というものが観念しがたく、企業の値段自体、いってしまえば
「あってないようなもの」
であり、よく調べずに、適当な値段をつけてしまうと、大損することもあります。

そして、このような
「大損」
の事態は、すべて買い手1人の全責任となるのです。

古代ローマ以来の
「買い手は常に注意せよ(caveat emptor〔ラテン語〕。英語は、Let the buyer beware。)」すなわち
「買い物に失敗したら、すべて買い手が悪い。買主の不注意がすべての原因」
というルールが極めてシンプルかつ劇的に作用するのがM&A取引、というわけです。

だからこそ、この
「デューデリジェンス」
「デューディリ」
「DD」
という称するプロセスが、M&Aにおいて非常に重要、といわれるのです。

すなわち、M&Aの買い手が、そもそも買収対象企業を買うかやめるか、買うとしてどのような方法(ストラクチャー)や条件(価格、支払方法、表明保証〔瑕疵担保〕、付帯条件等)で買うかの意思決定をするに際して、対象会社の問題点を、調査・発見・ミエル化・カタチ化・言語化・数字化・文書化して検討を行う手続きを、
「デューディリジェンス」
と呼称します。

そして、このデューディリジェンスですが、一切、決まりはありません。

範囲、程度、対象、予算、動員資源たるプロフェショナル、かけるべき時間やコストやエネルギー等も、特にこれといった決まりはなく、広汎な冗長性を持っています。

もちろん、デューディリジェンスをしない自由もあります。

デューディリジェンスをやらずにM&Aを行って、企業を買う買い手のことを、私の知るごく限られた範囲では、
「チャレンジャー」
と呼んだりしますが、もちろんこれも買う側の自由。

前述のとおり、
「買い手は常に注意せよ」
という法格言はありますが、
「わーってるわ。余計なお世話だバカヤロウ。いちいち、うっせーんだよ」
といって、法格言をシカトして、買い手が自ら無視して冒険的な取引をやる自由まで否定されるものではありません。

ところで、このデューディリジェンスですが、どういう文脈で語られるか、という点ですが、米国の証券取引紛争における訴訟実務において、
「証券発行について、目論見書(registration statement)に誤りがあっても、発行主体が一定程度の合理的注意(デューディリジェンス)を尽くして作成し開示したものであれば、その過誤の責任は問われない」
という、防御側の免責抗弁として登場したもののようです。

要するに、
「いや、たしかに、間違いがあったかもしんないけど、自分は自分なりに、必死こいて一生懸命やって、相当な注意を尽くした(デューディリジェンスを果たした)んだから、多少の間違いは勘弁してよ」
という、
「なんとも志の低い、見苦しい責任逃れのための言い訳のための道具概念」
として出てきたものです。

そもそも論ですが、もともと、買収対象となる会社は、何らかの問題を抱えています。

あなたが
「売上もぐんぐん伸びて、利益もさらに伸びていて、市場も環境もよく、さして経営に手がかからず、四六時中『チャリンチャリン』の音が鳴り止まず、課題や障害もなく、長期的に成長を継続することが約束しているような会社」
のオーナーであれば、まず、この会社を売ってカネに替えてしまうより、
「金の卵を生み続ける雌鳥」
を永遠に保持し続けるはずです。

したがって、売りに出ている会社というのは、何かしらの問題や課題やリスクや面倒を抱えているはずであり、叩けばホコリが大量に出てくるようなシロモノです。

他方で、M&Aは、たいてい急ぎます。

急かされます。

M&Aを5年かけてやりました、10年がかりでやり遂げました、なんて話は聞きません。

もちろん市場の変化の速さや経済の展開スピードということもあるのでしょうが、売る方はなるべく瑕疵や欠陥や粗が見つかる前に売り逃げしたいでしょうし、買う側もぼんやりしていると厳しい競り合いになるので早くまとめたい、という双方の思惑もあって、尋常じゃないスピードでまとめる買い物(しかも、対象はあいまで、かつ高額な買い物)、となります。

このため、どんなに眼力のあるプロが鑑定しても、間違いや見逃しや漏れや抜けの1つや2つ、10や20、100や1000は普通に出てしまいます。

その際、さんざん急がされた担当者(プロジェクトマネージャー)が、あとから、スポンサーやプロジェクトオーナーから
「なんで見つけられなかった。お前の目は節穴か、責任とれ」
などと詰め寄られたらたまったもんじゃありません。

そこで、この妥協の産物として、
「デューディリジェンス」
というプロセスを差し挟むことによって、仮にあとから
「間違いや見逃しや漏れや抜けの1つや2つ、100や1000は出てしまった」
ということがあっても、
「いや、たしかに、間違いがあったかもしんないけど、自分は自分なりに、必死こいて一生懸命やって、相当な注意を尽くした(デューディリジェンスを果たした)んだから、多少の間違いは勘弁してよ」
という、なんとも志の低い、見苦しい責任逃れのための言い訳(デューディリジェンスの抗弁)を機能させて、神の御業ならぬ欠陥と疎漏だらけの人間の所業を寛解して、営みを前にすすめていくということになるのです。

当然ながら、
「デューディリジェンスの質や程度や疎漏の無さ(準完全性)」

「デューディリジェンスに費やす時間とコストとエネルギー」
は見事な比例関係に立ちます。

このあたりは、損害保険の付保とよく似ています。

すなわち、ありとあらゆる事態に備えてより保険でカバーする範囲を増やして保険をかけようとすると、保険金はどんどん高くになります。

他方で、保険金をケチりすぎると、いざ事故が起こったら保険がおりず大損害を被る、ということになる。

要するに、ディールサイズやリスクのレベル等を勘案しながら、
「オプティマム(ちょうどいい塩梅)」
なプロジェクトサイズを決定して、この範囲で、効率よく調査を行って、各種意思決定にフィードバックしていく、というマネジメントが求められるのです。

なお、デューディリジェンスと表明保証条項設計も緊密な関係に立ちます。

すなわち、デューディリジェンスの対象外とされた範囲については、売主側に
「この(デューディリジェンスでカバーされなかった)範囲については問題や課題やリスク等はないことを表明し、保証します。万が一、嘘ついていたら賠償責任を果たします」
と約束させることで、M&A取引の安全性を確保していく、というわけです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01631_簡素な守秘義務契約書サンプル(条文見出しのみ)

以下、契約書起案の参考としていただく趣旨で、契約書として盛り込むべき条項のみ記しておきます。

※1 契約書式全文のリクエスト
なお、本契約書全文を書式として提供ご希望の「弁護士法人畑中鐵丸法律事務所の顧問先企業」や、「一般社団法人企業法務機構の法人会員の登録担当者及び個人会員の方」については、「契約書式リクエスト」を「指定メールアドレス」宛いただければ 、「無償あるいは所定のメンバー向け提供手数料」にて、下記契約書全文をwordファイル形式にてご提供させていただきます。

※2 契約書に関する法律相談・依頼
約を締結することになり、交渉相手方から契約書案を受け取ったり、あるいは当方がドラフトを作成する前提で、契約書式を入手して契約書起案等に着手したものの……
(1)【代読の依頼】取引相手方から契約書案を提示されたが、適正な機能的識字能力を有する人材がなく、当該契約書案の意味や内容や展開予測について理解・把握できず、企業サイドにとっては、象形文字で書かれた呪文か暗号文のようにしかみえないので、機能的識字能力を有する企業法務専門弁護士に、内容を読解・把握して、その意味する内容を、平均的知能と読解能力を有する一般人でも理解できるように、咀嚼して教えてほしい
(2)【ビジネスモデルや取引条件の構築・設計に関する相談 そもそも、ビジネスモデルや取引条件そのものについて、
・経済合理性があるか、
・安全保障上の致命的なリスクがないか、
・他にスマートで安全な取引構築・設計方法がないか
といった点について
企業法務専門弁護士に意見を聞きたい
(3)【契約書作成の依頼構築したビジネスモデルや取引条件については全く不安はないが、時間がない、スキルがない、法務責任者が不在、マンパワーがない、といった理由で、契約書作成を企業法務専門弁護士に外注したい
(4)【契約書校正の依頼】 構築したビジネスモデルや取引条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、特定のリスク管理課題について条項の具体的作成を企業法務専門弁護士に依頼したい
(5)【契約書最終チェックの依頼】構築したビジネスモデルや契約条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、「構築したビジネスモデル・契約条件」と「作成してみた契約書案」との間に齟齬矛盾がないか(整合性が取れているか)・疎漏がないか、企業法務専門弁護士に最終的な確認を依頼したい
(6)【英文契約書の取扱の依頼】海外の取引相手等と英文での契約書を取り交わすことになったが、時間がない、スキルがない、法務責任者が不在(顧問弁護士が国際ビジネスに対応できない)、マンパワーがない、といった理由で、対処不能の事態に陥っているので、国際業務のできる企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
(7)【契約交渉その他の依頼】交渉に関する支援(「主張ロジックや対抗ロジックや想定問答等の創出・作成・校正・確認といった交渉支援」の依頼や、「交渉代理」プロセス全般の依頼)や、決裁立会等その他契約成立に至るまでの課題対処について企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
といったリクエストをお持ちの「弁護士法人畑中鐵丸法律事務所の顧問先企業」や、「一般社団法人企業法務機構の法人会員の登録担当者及び個人会員の方」については、「契約書相談リクエスト」を「指定メールアドレス」宛いただければ、「無償あるいは所定のメンバー向け提供手数料」にて契約書完成や調印、さらには決裁(弁済、履行、引渡し等。代理方式のほか、立会支援方式を含む)までフォローアップさせていただきます。

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所 / 一般社団法人企業法務機構

========== 以下、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

契約タイトル:秘密保持契約書

【前文】

【本文】
主要条項(契約書本体部分・ビジネスモデルや取引条件の記述)
第1条(定義)
第2条(主要目的)
第3条(秘密保持・守秘年限)
第4条(例外)
第5条(アクセス)
第6条(返却)

一般条項(契約書付随部分)
N/A

【後文】

【契約締結日】

【署名項】

========== 以上、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01630_デザイン業務等の業務請負契約書サンプル(条文見出しのみ)

以下、契約書起案の参考としていただく趣旨で、契約書として盛り込むべき条項のみ記しておきます。

※1 契約書式全文のリクエスト
なお、本契約書全文を書式として提供ご希望の「弁護士法人畑中鐵丸法律事務所の顧問先企業」や、「一般社団法人企業法務機構の法人会員の登録担当者及び個人会員の方」については、「契約書式リクエスト」を「指定メールアドレス」宛いただければ 、「無償あるいは所定のメンバー向け提供手数料」にて、下記契約書全文をwordファイル形式にてご提供させていただきます。

※2 契約書に関する法律相談・依頼
契約を締結することになり、交渉相手方から契約書案を受け取ったり、あるいは当方がドラフトを作成する前提で、契約書式を入手して契約書起案等に着手したものの……
(1)【代読の依頼】取引相手方から契約書案を提示されたが、適正な機能的識字能力を有する人材がなく、当該契約書案の意味や内容や展開予測について理解・把握できず、企業サイドにとっては、象形文字で書かれた呪文か暗号文のようにしかみえないので、機能的識字能力を有する企業法務専門弁護士に、内容を読解・把握して、その意味する内容を、平均的知能と読解能力を有する一般人でも理解できるように、咀嚼して教えてほしい
(2)【ビジネスモデルや取引条件の構築・設計に関する相談 そもそも、ビジネスモデルや取引条件そのものについて、
・経済合理性があるか、
・安全保障上の致命的なリスクがないか、
・他にスマートで安全な取引構築・設計方法がないか
といった点について
企業法務専門弁護士に意見を聞きたい
(3)【契約書作成の依頼構築したビジネスモデルや取引条件については全く不安はないが、時間がない、スキルがない、法務責任者が不在、マンパワーがない、といった理由で、契約書作成を企業法務専門弁護士に外注したい
(4)【契約書校正の依頼】 構築したビジネスモデルや取引条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、特定のリスク管理課題について条項の具体的作成を企業法務専門弁護士に依頼したい
(5)【契約書最終チェックの依頼】構築したビジネスモデルや契約条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、「構築したビジネスモデル・契約条件」と「作成してみた契約書案」との間に齟齬矛盾がないか(整合性が取れているか)・疎漏がないか、企業法務専門弁護士に最終的な確認を依頼したい
(6)【英文契約書の取扱の依頼】海外の取引相手等と英文での契約書を取り交わすことになったが、時間がない、スキルがない、法務責任者が不在(顧問弁護士が国際ビジネスに対応できない)、マンパワーがない、といった理由で、対処不能の事態に陥っているので、国際業務のできる企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
(7)【契約交渉その他の依頼】交渉に関する支援(交渉に関する支援(「主張ロジックや対抗ロジックや想定問答等の創出・作成・校正・確認といった交渉支援」の依頼や、「交渉代理」プロセス全般の依頼)や、決裁立会等その他契約成立に至るまでの課題対処について企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
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========== 以下、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

契約タイトル:業務請負契約書

【前文】

【本文】

主要条項(個別取引内容):
第1条(目的)
第2条(本件業務について)
第3条(本件業務への指示)
第4条(業務発注書)
第5条(業務により生じた権利の取扱)

第12条(請負代金支払方法)

第15条(契約期間)

一般条項:
第6条(再委託等の禁止)
第7条(権利及びクレーム処理等)
第8条(資料の提供など)
第9条(資材の調達・管理等)
第10条(業務遂行に必要な物品の供与)
第11条(報告義務)

第13条(秘密の保持)
第14条(危険負担)

第16条(委託者による契約解除)
第17条(受託者による契約解除)
第18条(解約)
第19条(解除、解約後の取扱)
第20条(第三者への譲渡等禁止)
第21条(損害賠償)
第22条(提出書類)
第23条(担保の差入)
第24条(内容の追加・削除)
第25条(協議事項)
第26条(仲裁条項)

【後文】

【契約締結日】

【署名項】

========== 以上、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01629_業務委託および物流システム構築請負契約書サンプル(条文見出しのみ)

以下、契約書起案の参考としていただく趣旨で、契約書として盛り込むべき条項のみ記しておきます。

※1 契約書式全文のリクエスト
なお、本契約書全文を書式として提供ご希望の「弁護士法人畑中鐵丸法律事務所の顧問先企業」や、「一般社団法人企業法務機構の法人会員の登録担当者及び個人会員の方」については、「契約書式リクエスト」を「指定メールアドレス」宛いただければ、「無償あるいは所定のメンバー向け提供手数料」にて、下記契約書全文をwordファイル形式にてご提供させていただきます。

※2 契約書に関する法律相談・依頼
契約を締結することになり、交渉相手方から契約書案を受け取ったり、あるいは当方がドラフトを作成する前提で、契約書式を入手して契約書起案等に着手したものの……
(1)【代読の依頼】取引相手方から契約書案を提示されたが、適正な機能的識字能力を有する人材がなく、当該契約書案の意味や内容や展開予測について理解・把握できず、企業サイドにとっては、象形文字で書かれた呪文か暗号文のようにしかみえないので、機能的識字能力を有する企業法務専門弁護士に、内容を読解・把握して、その意味する内容を、平均的知能と読解能力を有する一般人でも理解できるように、咀嚼して教えてほしい
(2)【ビジネスモデルや取引条件の構築・設計に関する相談 そもそも、ビジネスモデルや取引条件そのものについて、
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(4)【契約書校正の依頼】 構築したビジネスモデルや取引条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、特定のリスク管理課題について条項の具体的作成を企業法務専門弁護士に依頼したい
(5)【契約書最終チェックの依頼】構築したビジネスモデルや契約条件については全く不安はなく、書式を参考に契約書案を作成してみたが、「構築したビジネスモデル・契約条件」と「作成してみた契約書案」との間に齟齬矛盾がないか(整合性が取れているか)・疎漏がないか、企業法務専門弁護士に最終的な確認を依頼したい
(6)【英文契約書の取扱の依頼】海外の取引相手等と英文での契約書を取り交わすことになったが、時間がない、スキルがない、法務責任者が不在(顧問弁護士が国際ビジネスに対応できない)、マンパワーがない、といった理由で、対処不能の事態に陥っているので、国際業務のできる企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
(7)【契約交渉その他の依頼】交渉に関する支援(交渉に関する支援(「主張ロジックや対抗ロジックや想定問答等の創出・作成・校正・確認といった交渉支援」の依頼や、「交渉代理」プロセス全般の依頼)や、決裁立会等その他契約成立に至るまでの課題対処について企業法務専門弁護士に依頼ないし外注したい
といったリクエストをお持ちの「弁護士法人畑中鐵丸法律事務所の顧問先企業」や、「一般社団法人企業法務機構の法人会員の登録担当者及び個人会員の方」については、「契約書相談リクエスト」を「指定メールアドレス」宛いただければ、「無償あるいは所定のメンバー向け提供手数料」にて契約書完成や調印、さらには決裁(弁済、履行、引渡し等。代理方式のほか、立会支援方式を含む)までフォローアップさせていただきます。

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========== 以下、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

契約タイトル:業務委託および物流システム構築請負契約書

【前文】

【本文】

主要条項(個別取引内容):
第1条(目的)
第2条(業務内容)
第3条(契約期間)
第4条(対価および支払方法)

一般条項:
第5条(秘密保持)
第6条(契約解除)
第7条(再委託・権利譲渡)
第8条(成果保証)
第9条(成果物の帰属)
第10条(協議事項)
第11条(合意管轄)

【後文】

【契約締結日】

【署名項】

========== 以上、 契約書サンプル(条文見出しのみ) ==========

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01628_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(19・終)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその12_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅹ)_(i)正しくプロジェクトの結末を総括する

皆さん、お手洗いに行ったら、必ず、拭くべきところを拭き、流すべきものを流し、手を洗い、身だしなみを整えてからお手洗いから出てこられると思います。

たとえ、用足しの途中に、重要な電話がスマホにかかってきて、一時中断となったとしても、この手続を省略して、何も体裁をほどこさずに、電話をしながらお手洗いを出て、歩きながら電話をしている人はまずいらっしゃらないと思います。

もし、そういう方がいれば、間違いなく警察か、精神病院のご厄介になっているはずです。

このように、何か着手して、それを、本来の形で終わる場合はもちろんのこと、不本意あるいは想定外の形で失敗が確定したり、一定期間休止することになったりといった形で、プロジェクトの進行が見込めなくなった場合、結果であれ、途中経過であれ、きちんと総括しておくのは、お手洗い後にきちんと後処理ないし身だしなみを整えるのと同様、非常に重要なことです。

ところが、実際の産業社会には、かなりだらしない行動が横行しており、
「お手洗いに行っても、そのまま放置し、手も洗わず、身だしなみも整えないで出てくる」
といった形で、プロジェクトを放置する方がかなりの割合でいらっしゃいます。

プロジェクト終了想定期限がきたら、あるいは見極めをすべきタイミングとなったら、まずは、総括をすべきです。

目的全部達成、一部達成、修正された目的達成であれ、
失敗・諦め・撤退という無様なものであれ、
結末を総括しなければなりません。

よくいわれる、
PDCAサイクル(plan-do-check-act〔ion〕 cycle)、
すなわち、
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act〔ion〕(改善)の、
C(評価)項目の実施をきちんとすべき、というお話です。

このPDCAサイクルが重要であるというメッセージは、業務を継続的に改善していくというルーティンにもあてはまりますが、M&Aのような
「ルーティンの要素がない、チャレジングな新規プロジェクト」
も同様です。

もちろん、目的が想定どおり、期限内に全部達成されれば、総括など不要です。

しかし、世の中そう甘くありません。

M&Aや新規事業立ち上げのような
「ルーティンの要素がない、チャレジングな新規プロジェクト」
については、想定通りの完全なゴール達成に至る方が稀で、
一部しか達成できなかったり、
当初想定と全く違った奇形的な形でなんとか採算が取れるようになったり、
失敗・諦め・撤退という悲惨な結末を迎えることになったり、
というミゼラブルな状況に陥る割合の方が圧倒的に高いものです。

特に、プロジェクトの責任者や担当者は、失敗の露顕を恐れ、失敗が露顕するにしてもなるべく遠く遅くしようという組織人としての防衛本能に抗えず、失敗が現実のものとなることが確定してもとりあえず、総括せず、ずるずると続ける、そんなバイアスが強烈に働きます。

その結果、泥沼に引きずり込まれても、
「そのうち天佑がある」
という意味不明で身勝手な妄想で、事態打開を神に祈りつつ、損害を拡大します。

日本の組織の構成員のメンタリティーは、先の大戦におけるインパール作戦の頃から、あまり変わっていません。

いずれにせよ、良き結果に限らず、失敗やデッドロックといった無様な帰結であれ、重要な中間事象であれ、適時適切に、バイアスを交えず、正しく総括をして、無駄な追加資源投入を阻止し、プロジェクトの正式なギブアップや、より状況に合理的に即応したゲーム・チェンジを行うタイミングを早めるべきです。

M&Aにとどまらず一般のプロジェクトについて適用される範囲にまで話が広がったため、長くなりましたが、以上が、
「M&A成功のための必須アイテム(A)~(C)」
の最終項目である
「(C)全体的な戦略の合理性」の全容
です。

そして日本の企業の多くは、M&Aが下手くその中の下手くそで、その理由が、
(A)現実的な投資回収シナリオが機能する適正な買収価格あるいはこれを達成するためのハードな交渉
(B)PMI(ポストマージャーインテグレーション。M&A後の統合実務)による円滑な経営統合作業
(C)全体的な戦略の合理性
という知見ないしスキルの欠如に基づくことが原因である(あるいはそもそもこのような知見ないしスキルの存在すら知らないので、無知ゆえに実装の前提を欠くことも含む)、と申し上げました。

「人的資源(相応の知識と経験をもつ経営トップ及び実務遂行部隊)を含むリソースが十分な企業が、『1万円札を3000円』で買うような有利なディールに取り組む」
といった形で合理的で戦略的に行うならともかく、
「知識も経験もなく、本業自体がうまくいかず、苦境に喘いでいる企業」
が、アドバイザーという名の
「ブローカー」
の口車に乗せられて、一発逆転を狙いM&Aマーケットという
「鉄火場」
に乗り込み、身ぐるみ剥がれて死期を早める例が多くみられます。

「知識も経験もなく、本業自体がうまくいかず、苦境に喘いでいる企業」
というのは、ほぼ100%、これら(A)~(C)の知見ないしスキルがないわけですから(このようなスキルがあれば、そもそも、本業不振といった鈍臭い状況に陥らないと思われます)、
「そのような知見ないしスキルが成功に必須のアイテムであるM&Aというプラクティス」
をおっぱじめて、これで挽回しよう、という考え自体がかなり常軌を逸しているのです。

初出:『筆鋒鋭利』No.127、「ポリスマガジン」誌、2018年3月号(2018年3月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01627_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(18)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその11_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅸ)_(h)正しく試行錯誤する

01626において、
「(g)命令の達成状況を確認する」
というビジネス上のタスク・アイテムについて、
「正しい命令が、正しく、予定どおり実行され、成果が想定どおり達成される」
ということ事態が稀有である、という保守的な想定のもと、慎重に、臆病に、命令達成状況を細かく把握し、確認することが、プロジェクト・マネジメントにおいて必須であり、また、そのために必要な人員やシステムも、きちんと整備構築しておく重要性をお話しました。

ところで、正しい命令が、正しく、予定どおり実行さえすれば、成果は
「必ず」
出る、といえるでしょうか。

前提として、ここでテーマにしているのは、M&Aのような、
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
の遂行についてです。

「電車で3駅先に辿りつく」
とか
「電話をかけてメッセージを伝える」
とかの雑用・ルーティンではなく、
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
の遂行です。

当然ながら、そんなご大層で面倒なものが、一発で想定どおりの成果が100%出るなんてことは、およそあり得ません。

仮に、成果が出たとしても、当初の想定よりずいぶん劣化したものであったり、成果は出るには出たがとんでもなく時間や労力やコストがかかってしまい、経済的にはほとんど意味がなかった、という結果に終わることがほとんどです。

その意味では、プロジェクトの遂行責任者としては、まず、
「正しい命令が、正しく、予定どおり実行したとしても、想定外の事態や状況に陥り、一筋縄ではいかないか、さらに、無残なまでの失敗をするかもしれない」
という現実的で冷静な心づもりをしておくことが、致命的に重要です。

こういう言い方をすると、
「最初から負けるつもりでどうする」
「精神力が足りないぞ」
「相手は鬼畜米英だ。こちらには神がついている。不退転の決意で望めば、天佑があり、竹槍でB29が落とせるはずだ」
「我が国には、古来より、言霊思想というのがあってな、うまくいかないとか、失敗とか、不吉な将来を想起させる忌み言葉を口にすると、うまくいくものも、うまくいかないぞ」
などと、非難にさらされることがあります。

もともと、人間の脳内には、
「楽観バイアス」
という、
「しびれるくらい愚劣な、『思考上の偏向的習性』というか、『脳の予測機能における、絶望的なまでの構造的欠陥』」
が備わってしまっており、これに、
「忌み言葉」だの、
「精神力で負けるな」とか、
「メンタルを強くしろ」、
「熱くなれ」とか、
意味不明の集団内の同調圧力にさらされると、
「想定すべき病理的事態」
を考えること自体に罪悪感を感じてしまい、
「病理的事態」とか
「想定外」とか
「失敗」とか
「うまくいかない」とか
の思考を完全に封殺してしまいます。

ところが、そもそも、プロジェクト遂行責任者として、与えられているテーマは、
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
です。

責任者がどのような思考をするかどうかに関係なく、
「想定外」とか
「うまくいかない」とか
「そんなはずはない」とか
「あるべき姿と違う現実に直面する事態」
など、ゴマンと出てきます。

さらに、悲劇は訪れます。

想定外の事態に直面すると、人間から冷静な思考力を奪い去ります。

「当初想定」

「直面した病理的結末」
に齟齬が生じた場合、
「当初想定」
を前提とした
「当初戦略」
が機能しないわけですから、
「当初想定」
「当初戦略」
にこだわらず、さっさと、逃げて戦線を離脱し、
「現実に直面し、新たに把握し認知できた現実」
に即応した
「第一次修正戦略」
を練り直して、陣容を整えて再戦を期すべきです。

ところが、
「想定外」とか
「失敗」とか
「うまくいかない」とか
の思考を完全に封殺してしまった挙句、想定外に直面して冷静な判断力を喪失した(言葉を選ばないとすると、「アホ」になった)責任者は、混乱したまま、愚劣に当初戦略にこだわり、すべての資源を無駄に消失(戦争で言えば、戦果なく部隊全滅)という愚劣な帰結を招きます。

まるで、
「かつて、愚劣な精神状態の指揮官によって、敗戦に次ぐ敗戦という醜態を晒し、最終的には無残な敗戦の結果を招き、国民を地獄の底に突き落としたどこぞの国の、どこぞの軍事組織」
の話のようですが、いずれにせよ、プロジェクトの遂行責任者としては、まず、
「正しい命令が、正しく、予定どおり実行したとしても、想定外の事態や状況に陥り、一筋縄ではいかないか、さらに、無残なまでの失敗をするかもしれない」
という現実的で冷静な心づもりをしておくことが、致命的に重要であることは、ご理解いただけると思います。

以上のとおり、正しく試行錯誤する前提として、
「正しい命令が、正しく、予定どおり実行したとしても、想定外の事態や状況に陥り、一筋縄ではいかないか、さらに、無残なまでの失敗をするかもしれない」
という現実的で冷静な心づもりをしておくことが、致命的に重要である、ということをお話しました。

すなわち、常に想定通りにいかないこと、想定していない事態に見舞われ、足を引っ張られたり掬われたりすることを警戒しておくことが、まずは大事である、ということになります。

想定が外れたからといって、パニックに陥って、すでに無意味になっている当初の段取りに固執するのではなく、冷静に、目的を達成するための二次的・補完的手段を構築したり、当初目的が維持できない場合には現有資源を動員して達成される二次的目的に修正したり、ということをしなければなりません。

この繰り返しによって、何らかの結果が出るか、資源が枯渇するまで、資源運用を継続する。

これが、正しい試行錯誤です。

ところが、実際、ビジネス・プロジェクト遂行の現場で起きているのは、かなり愚劣で悲惨な事態です。

一度やってダメなら、ジタバタしたりあがいたりせず、潔くあっさりと、やめたり休んだりする。

あるいは、失敗や想定外が生じたら、それで思考停止に陥り、行動を停止し、神風や都合のいい天変地異や外的事象によって状況が改善することを夢想する。

こんなことをしても、悲惨な結果(あるいは莫大な資源動員の挙句、何らの結果も出ていないという悲惨な現実)はビタ1ミリ変化しません。

そのうち、実施組織は、どのような行動に出るか。

悲惨な結果から目を背け、なるべく忘れるようにする。そして、失敗という結果のみ、組織で共有し、
「皆の失敗だから、誰の失敗でもなく、故に、誰も責められない」
という状況を作り出し、組織のタブーとして、触れないようにする。

これが、外部の受託組織となると、死活問題になります。

プロジェクトが終了してしまうと、報酬がもらえなくなったり、お払い箱になるので、結果が出ていなくとも、活動を維持継続する正当性を創出する。

独断で、コミュニケーションなく、勝手に目的を書き換え、別のことを始め、
「何か仕事をしている」
という外形を作って、状況を引き延ばす。

これは、試行錯誤とはいえ、
「仕事を継続すること自体を自己目的化したもの」
であり、事業の目的、すなわち
「少ない資源でより多くの富を創出する」
というものとは根本的に異なるものです。

なお、先程、
「すでに無意味になっている当初の段取りに固執したりせず、冷静に、目的を達成するための二次的・補完的手段を構築したり、当初目的が維持できない場合、現有資源を動員して達成される二次的目的に修正したり、ということをしなければなりません」
と申し上げましたが、手段の改変や目的の変更といった、プロジェクトにまつわる重要な変更が生じた場合、プロジェクト実施を委ねられている責任者たるマネージャーは、修正提案を命令発令者に意見具申することが求められます。

意見具申はおろか、報・連・相すらなく、独断で勝手なことをするのは強く戒められます。

以上を前提とすると、優秀なプロジェクトマネージャーとは、物事が想定どおりにいかないことを常に念頭におき、多岐にわたる悲観想定をしつつ、想定外に直面した場合、手段の変更や目的の再設定といった、現実的な補完策を繰り出すとともに、これを独断で実施せず、プロジェクトオーナーと報・連・相を維持しつつ、柔軟に対応できる人間、ということになります。

高学歴で高い事務処理能力を有しつつ、失敗経験が豊富で、かつ、打開手段を構築するための創造性に富んでおり、さらに、スタンドプレーと無縁な、上司と緊密な連絡を取ることのできる、
「可愛気と愛嬌」
のある奥ゆかしい組織人、ということになります。

圧倒的知性と業務遂行能力がありながらも、思考の柔軟性、経験の開放性、新奇探索性、謙虚な自己評価をもち、知ったかぶりをせず、謙虚にたゆまぬ知的努力を重ねる好漢、快男児、女傑というイメージの人間、
さしづめ、
「東大卒でありながら、そんなことをおくびにも出さず、謙虚な努力家で、上司に可愛がられる、若き日の木下藤吉郎といった、企業人」
といった趣でしょうか。

初出:『筆鋒鋭利』No.125、「ポリスマガジン」誌、2018年1月号(2018年1月20日発売)
初出:『筆鋒鋭利』No.126、「ポリスマガジン」誌、2018年2月号(2018年2月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01626_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(17)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその10_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅷ)_(g)命令の達成状況を確認する

01625では、
「正しくデザインされ、策定され、発令した命令」
が、
「漫然と成果を待っていただけでは、永遠に正しく実行されないまま放置されるか、あるいは、本来の方向とは違った方向に進みだして、有害な結果をもたらすリスクが増殖する」
ということを指摘し、
「正しい命令が、正しく実行されるためのスキル」
をご紹介しました 。

そして、
「正しい命令が、正しく実行されるため」
には、この前提として、命令の達成状況が適時適確にモニタリングされる必要があります。

人間は、ウソをついたり、ごまかしたり、すっとぼけたり、言い訳を考える習性を有する動物です。

もし、
「私はウソをついたことがない」
「ごまかしたことはない」
「すっとぼけたりしたことは生まれたこの方一度たりともない」
「人生一度も言い訳をしたことはない」
という方がいたとしたら、その方は、人間ではないか(人工知能か何かが脳に入っているか)、あるいは病的な嘘つきのはずです。

ちなみに、アメリカのある大統領、ウィリアム・フリントン(関係者のプライバシーに配慮し、仮名とさせていただきます。以下、同じ)氏は、記者会見で、
「もう一度言います。私はあの女性、フリンスキーさん(仮名)と性的関係を持っていません。

私は誰にも嘘をついたことがありません。いまだかつて一度もありません。この申し立ては虚偽です」(西川賢『ビル・クリントン 停滞するアメリカをいかに建て直したか』中公新書より)
と、のたまったそうです。

世の中、いろいろウソはありますが、
私は誰にも嘘をついたことがありません。いまだかつて一度もありません
というのは、もっともミエミエ・スケスケ・ギンギン・ギラギラの額縁付きの、ひっどい、ウソですね。

こんなウソを堂々と言い切れる、フリントン(仮名)氏のメンタルもダイヤモンド級です。

なお、その後、フリンスキー(仮名)さんが体液の付着した
「青いドレス」
を含む物証を提出し、当該体液が、DNA鑑定の結果、フリントン氏(仮名)の提出した血液サンプルと一致したことから、フリントン(仮名)氏も観念し、ウソをついていたことと認め、謝罪しました。

脱線しましたが、人間は、ミスをし、誤解し、エラーをし、さらに、これが露見しそうになっても、ウソをついたり、ごまかしたり、すっとぼけたり、苦しい言い訳を考える習性を有する動物です。

このような現実的前提をふまえると、正しい命令を誤解したり、理解してもサボったり、サボるつもりはなくとも迷走したり、あるいは勝手な判断で暴走したりする可能性は十分あり得ます。

そのような失態を犯した挙句、自己保存のメンタリティから、
「自ら招いた結果とはいえ失敗を指摘され非難される」
という不名誉な事態の発覚を先延ばしにして有耶無耶(うやむや)にしてしまおうという、姑息で卑怯な魂胆のもと、報告連絡相談を意図的に懈怠したり、責任者や上層部が積極的に突き回さない限り報告を忌避したり、報告をするにはするが、抽象的で曖昧で
「どうとでも解釈されるような、しかも、現場は努力して頑張っている、というメッセージが入った」
無内容な報告に終始して、事実上、事態の露見を隠蔽する、ということも、実際の企業社会ではよくみられる状況です。

いずれにせよ、
「線表(せんぴょう)」
を策定し、線表に基づく達成状況の監視は必要です。

また、遅滞や懈怠に対するペナルティーを定め、これをシビアに運用することは必須です。

進捗状況すら管理せずに、丸投げしたり、ブラックボックスを作ったままの遂行体制を放置容認したり、現場からの抽象的で無内容な報告を鵜呑みにするのは、NGです。

「現場を信じて、任せる」
「(線表による達成状況の監視とペナルティーのシビアな運用などは)部下を信頼していないと思われ、却ってやる気をそぐのでそこまで細かいことはしない」
などと命令の達成状況や進捗を細かく管理することを放棄すると、撤退のタイミングすら見失い、泥沼の状況に陥り、果てしない資源喪失を招きかねません。

「正しい命令が、正しく、予定どおり実行され、成果が想定どおり達成される」
ということ事態が稀有である、という保守的な想定のもと、慎重に、臆病に、命令達成状況を細かく把握し、確認することが、プロジェクト・マネジメントにおいて必須であり、また、そのために必要な人員やシステムも、きちんと整備構築しておくべきです。

初出:『筆鋒鋭利』No.124、「ポリスマガジン」誌、2017年12月号(2017年12月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01625_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(16)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその10_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅶ)_(f)命令を正しく実行させる

「SMART」基準を充足する適切なコミュニケーションメッセージとしての「正しい命令」が発令されたとしましょう。

「正しい命令」
すなわち、
「デタラメで適当で、具体的かつ現実的な観点で何を達成したいのか理解不能な命令」
ではありません。

また、
「たとえ、美辞麗句がまばゆいくらいに散りばめられた格調高い文章で表現されていたとしても、抽象的で、意味不明で、指示内容が一義的でない命令や、難解さや高尚さのため命令を受けた実行担当者において何を期待し、何を義務付けられているか、さっぱりわからないようなシロモノ」
ではなく、身勝手な解釈や、裁量や冗長性の欠片もない、しびれるくらい、明確で具体的な命令が、無事、命令遂行責任者の認識範囲に到達されたとしましょう。

では、あとは、放っておけば、勝手に命令が遂行され、命令で想定された結果が転がり込んでくるでしょうか?

そんなわけはありません。

大日本帝国海軍連合艦隊司令長官であった山本五十六は、
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」
と言ったそうです。

海軍のような、指揮命令系統が整備されていて最終目標が
「敵をより多く殺戮する」
という単純明快な組織ですら、このような状況です。

普通の企業組織において、
「しっかりした、具体的で、明瞭な命令さえ出しておけば、あとは結果が出るだろう」
などという期待を抱く方が、知的水準が疑われます。

ところで、総支配人という仕事があるのをご存知でしょうか?

ホテルなどで、
「支配人」
とは別に、
「『総』支配人」
という肩書をもつ方がいます。

この仕事って一体何なんでしょうか?

具体的に考えてみましょう。

都内の外資系の超高級ホテルをイメージしてください。

同じようなホテル、仮にAホテルとBホテルというものがあり、どちらも同じ星の数で、設備の新しさも同じ。

一休の口コミも同じく4.8ポイントとしましょう。

AホテルとBホテルも同じ料金でした。

唯一の違いは、Aホテルには、支配人のほかに、総支配人がおりますが、Bホテルは支配人しかいません。

皆さんは、同じランクの同じようなホテルに同じ値段で宿泊する場合、総支配人がいるAホテルを選びますか? それとも、Bホテルを選びますか?

こういう質問を投げかけた場合、たいていの方は、総支配人のいるAホテルを選びます。

ただ、理由を聞いても、明確な答えが返ってきたためしはありません。

もちろん、私も、Aホテルを選びます。

ただし、私は、Aホテル、すなわち、支配人だけのホテルを忌避して、総支配人がいるホテルを選ぶ明確な理由を説明できます。

その理由とは、総支配人のいるホテルの方が、明らかに価値が高いからです。

その付加価値の理由は、総支配人の仕事の内容に関わります。

総支配人の仕事とは、支配人の仕事にケチをつけることであり、粗を探し、罵倒したり嫌味をいうなどして、指導し、改善させたりすることです。

もっと端的にいうと、総支配人の仕事とは、支配人を、いびって、いびって、いびり倒すことです。

無論、支配人としてはたまったもんじゃありません。

ミスができないし、気が抜けないし、緊張しっぱなしだし、常にストレスと不安を抱えますから。

ただ、客としては、朗報です。

人間は、本質的に、サボりたいし、手を抜きたいし、失敗してもごまかしたいし、客を適当にあしらいたい。

客が喜ぼうが、失望しようが、給料に変化がなければ、なおさらです。

Aホテルの支配人もBホテルの支配人も立派な人格者でしょうし、誠実な接客のプロかもしれません。

しかし、やはり、緊張が緩む瞬間もあるでしょうし、立派で誠実なプロに、さらに、出来栄えを直接ガン見して監督する人がいれば、より高いパフォーマンスが期待できる、というものです。

掃除の回数や、サービスの品質、ささいなミスの数、スーツの微細なシワ、食器の汚れ、そんな細かいところまで考えれば、
「常に、監視し、少しの気の緩みがあれば目ざとく発見され、罵倒され、いびり倒され、まったくリラックスができない」
という状況におかれたAホテルの支配人の方が、圧倒的かつ絶対的に仕事を一生懸命やってくれるはずです。

だから、私は、客の立場として、同じカネを払うなら、目の上のたんこぶが常にあって、不安とストレスに苛まれながらミスやエラーをゼロにするために全神経を集中するであろう、Aホテルを迷わずに選ぶのです。

この話のポイントは、人間は、エラーやミスを犯し、サボるのが本質であり、たとえ、どんなに単純なルーティンであっても、放置しておけば、適切な結果が得られることを期待することは、困難である、ということです。

でなければ、
「総支配人」
などという、無駄で無意味な職種が存在する意味が説明できません。

ホテルの
「総」支配人
という、
「支配人とは、別に存在する、一見すると、無駄で無意味にみえる職種」
の存在意義と価値を明らかにすることを通じて、
「人間は、エラーやミスを犯し、サボるのが本質であり、たとえ、どんなに単純なルーティンであっても、放置しておけば、適切な結果が得られることを期待することは、困難である」
ということを明らかにしました。

このような厳然たる現実があるからこそ、
「身勝手な解釈や、裁量や冗長性の欠片もない、しびれるくらい、明確で具体的な命令が、無事、命令遂行責任者の認識範囲に到達されさえすれば、あとは、放っておいても、勝手に命令が遂行され、命令で想定された結果が転がり込んでくる」
というわけにはならないのです。

じゃあ、どうすべきなのか?

答えはすでにお示ししました。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」(大日本帝国海軍連合艦隊司令長官であった山本五十六)
です。

ホテルの支配人や総支配人という、限定されたサービス産業における、特殊な職種の話から、もう少し、普遍的で卑近な話へと広げていきます。

一般の企業組織においては、
「中間管理職」
と呼ばれる職種が存在します。

もし、企業の従業員のすべてが、
「日本語を正しく理解でき、明確で具体的で現実的な指示事項を期限内に要求された基準を充足する形で、完成し、フィードバックする(未就学児童が小学校受験で身につけることを要求される指示行動と同じです)」
ことができれば、命令を作成・発令する
「管理職」
とこれを実施する実務担当者さえいれば、
「中間管理職」
という、
「意味が今ひとつ理解できない、運用を間違えば、ただの寄生階級と化すリスクのある有害職種」
を設ける必要は乏しいはずです。

実際、従業員のリテラシーとスキルとモラール(士気)が高く、命令の作成・発令をする管理職サイドも適切な命令を作成・発令するスキルを持ち合わせる先端企業においては、
「中間管理職」

「意味が今ひとつ理解できない、運用を間違えば、ただの寄生階級と化すリスクのある有害職種」
とみなし、事実上撤廃した、フラットな経営組織を構築し、大きな成果を上げています。

グーグルや、アップル、フェイスブック、サイバーエージェント、スタートトゥデイ、ワークスアプリケーションズ、といったクリエイティブな先端企業で、働かない部下の管理に辟易し、新橋の焼き鳥屋で毎晩愚痴を垂れている、しがない中間管理職が大量に存在する、という話はあまり聞きません。

この種の先端企業では、正しい命令を作成・発令・受領する管理職と、正しい命令をきちんと理解し、これをカタチにし、期限内に要求された水準で完成させ、適切にフィードバックできるプロフェッショナルのようなスタッフが大量に存在して、日々、効率的に付加価値を創出しています。

「圧倒的にデキル上司と圧倒的にデキル部下の中間に存在し、コミュニケーションを邪魔するような寄生職種」
は想像できませんし、実際、見当たらないと思います(いても、すぐ居場所がなくなり、クビになるでしょう)。

しかし、この成功モデルは例外です。

一般的な労働集約型企業においては、フツーの人、すなわち、
「エラーやミスを犯し、サボるのが本質であり、たとえ、どんなに単純なルーティンであっても、放置しておけば、適切な結果をフィードバックすることは永遠にできない」
という属性をもつ、烏合の衆しかいません。

これを命令実施部隊として率いて、価値創出しなければなりませんし、このような部隊を統制する重要な中間管理機能を担う職種が絶対的に必要になります。

それゆえ、
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてや」り、
また、他方で、監視し、出来栄えや時間の遅れをチェックし、必要に応じて改善やスピードアップを命じ、さらに、
「指導や教育によっても改善不能な、リテラシーかスキルかモラール(士気)のいずれかまたは全てを欠如する、構造的欠陥を抱えた有害異分子」
を組織から排除する(異動、転籍、退職勧奨、解雇等を行う)権限と責任を有する、中間階層が絶対的に必要なのです。

このように、
「中間管理職」
という仕事は、重要な意味と機能があります。

「身勝手な解釈や、裁量や冗長性の欠片もない、しびれるくらい、明確で具体的な命令」
を現実にする、という、ある意味、当たり前すぎる、陳腐の極みのようなタスクですが、
「エラーやミスを犯し、サボるのが本質であり、たとえ、どんなに単純なルーティンであっても、放置しておけば、適切な結果をフィードバックすることは永遠にできない」
という本質的属性を有する平均的労働者の集団に実施させるのは、稀有で偉大な営みといえます。

ところで、企業組織を描いたテレビドラマ等において登場する中間管理職像は、現実のそれとはかなり乖離する形で歪められているような気がします。

まず、
「しがない」中間管理職
として描かれる中間管理職については、
「いったい何の仕事をやっているかわからない」
「ぶっちゃけ、いてもいなくても同じじゃね」的な
否定的なイメージです。

次に、
「上にペコペコ、下に威張り散らす、姑息な腰巾着」
として描かれる中間管理職については、
「上のデタラメで一貫性のない、間違った指示を、朝令暮改の如き振り回して下を疲弊させるだけの有害分子」
「つか、仕事の邪魔してるだけじゃね」
という否定的なイメージです。

最後に、
「情熱的で、ポジティブで、部下を信頼し、部下からも敬愛される、ヒーロー的リーダー」
として描かれる中間管理職もいますが、こちらは、
「上の命令を拒否したり、無視したりし、部下を信頼し、部下とともに、無断・無許可の行動を果断に実施し、最後に会社の窮地を救う」
という肯定的なイメージです。

これらは、いずれも圧倒的に間違っているといわざるを得ません。

以上のとおり、
「企業組織を描いたテレビドラマ等において登場する中間管理職像」
は、
「現実のそれ」
とはかなり乖離する形で歪められている、というお話をさせていただきました。

その上で、テレビでよく描かれる典型的な
「中管理職」像
を整理し提示しました。

1 「しがない」中間管理職
  =「一体何の仕事をやっているかわからない」、「ぶっちゃけいてもいなくても同じじゃね」的な否定的なイメージ
2 「上にペコペコ、下に威張り散らす、姑息な腰巾着」として描かれる中間管理職
  =「上のデタラメで一貫性のない、間違った指示を、朝令暮改の如き振り回して下を疲弊させるだけの有害分子」、「つか、仕事の邪魔してるだけじゃね」という否定的なイメージ
3 「情熱的で、ポジティブで、部下を信頼し、部下からも敬愛される、ヒーロー的リーダー」として描かれる中間管理職
  =「上の命令を拒否したり、無視したりし、部下を信頼し、部下とともに、無断・無許可の行動を果断に実施し、最後に会社の窮地を救う」という肯定的なイメージ

これらはいずれも圧倒的に間違っていると言わざるを得ません。

まず、1の
「何をやっているかわからない、しがない、つまらない職種」
という否定的イメージについてですが、中間管理職は、自ら実務(タスク遂行)を担わず、部下のタスク遂行管理を行うわけですから、仕事が明快でわかりやすいものでないのは当たり前です。

野球やサッカーの監督は、自らプレーするわけではありませんし、
「起用や交代の指示をしているだけだし、巨人の監督やサッカー日本代表の監督くらい、ぶっちゃけ、オレでもできんじゃね?」
という声もよく聞きます。

ですが、実際は、監督がいないと、チームは集団として機能や価値をもち得ず、組織プレーはできず、ただの烏合の衆と化すことは明白です。

すなわち、
「自らプレーするわけではなく、指示するだけだし、見た目に派手で、希少性と特異性ある活動をしているわけではない」
からといって、組織行動を規律する上で意味や価値がないわけではありません。

次に、2の
「部下にガミガミ小うるさく、上には媚びへつらう」
イメージも、中間管理職の仕事の性質上、本質的なものであり、これを否定するのは、組織行動を理解していない未熟さによるものです。

管理者として、部下と適切な人間関係を構築するためには、漫然と信頼したり依拠したり人任せにするのではなく、
「とことん相手を信頼せず、緊張関係を作ること」
が、必須の前提となります。

正しい人間関係を構築するためには、相手を信頼することではなく、むしろ、
「相手をとことん信頼しないこと」
という
「一般には不愉快な真実」
を実践することが管理職には求められます。

そもそも、管理する対象(部下)が、とことん信頼できるのであれば、中間管理職など不要です。

そんな優秀なスタッフがウジャウジャいてフラットな組織運営ができるのであれば、
「中間」管理職
など設けず、管理職から、直接、スタッフ、すなわち
「とことん信頼できる」
命令実施担当者に対して命令をバンバン出して、成果が自動的に上がってくるのを待てばいいだけです。

ところが、多くの企業においては、
「エラーやミスを犯し、サボるのが本質であり、たとえ、どんなに単純なルーティンであっても、放置しておけば、適切な結果をフィードバックすることは永遠にできない」
という本質的属性を有する平均的労働者が圧倒的多数を占めます。

このような属性を有する労働者と適切な関係を構築するためには、
「漫然と、疑うことなく、手放しで信頼し、依拠する」
関係はむしろ有害です。

「いつサボったり、誤解したり、もれぬけ・納期割れを起こすかわかったもんじゃない」
という猜疑を前提にした緊張関係が基本となるべきであり、
「とことん相手を信頼しないことによって、最高の人間関係を構築する」
機能が多くの企業組織に求められ、この重要な機能を担うのが中間管理職なのです。

なお、肯定的なイメージで語られる3の
「上司の命令を無視し、部下を疑わず信頼しきって、独自の見解でスタンドプレーするような中間管理職」
ですが、こちらは、出した成果の是非如何にかかわらず、言語道断の有害分子です。

たとえ、ヒーローぽく描かれようが、イケメンであろうが、人間的に素直で情熱的でイイ奴であろうが、即刻会社から追い出すべきです。

ビジネスの世界は、
「正解がわからない」
「未来が読めない」
という環境において、最善解、現実解を追求し、試行錯誤したり、妥協したり、融通無碍にゲーム・チェンジを果てしなく続けていく、成熟した大人の世界です。

「責任を取れる人間が、失敗がありうることを前提として、効率的な試行錯誤を繰り返し、それにより得られた成果を、組織階層秩序にしたがって、分配し、共有する」
ということで企業組織が成り立ちます。

責任を取れない人間、責任を取る立場にない人間が、独自の認識・見解で、勝手に会社の資源を運用してギャンブルを行い、
「偶然、結果が出たから、ルール違反を許せ。さらには、栄転させろ」
という主張が容認できないのは至極当然といえます(じゃあ、結果が出なかったら、投入資源や損害や機会損失を全て、当該個人が負担するのか、といわれれば、拒否するか、それ以前に支払能力がないでしょうし、アンフェアなやり方であることは明らかです)。

このように考えると、テレビドラマで否定的に描かれる、
「地味で、しがない中間管理職(前記1タイプ)」
や、
「上にペコペコ、下に威張り散らす、姑息な腰巾着タイプの中間管理職(前記2タイプ)」
は、企業において本来的な役割を担う、理想的で範とすべき中間管理職といえます。

他方で、お茶の間ではヒーローとして扱われる
「上の命令を拒否したり、無視したりし、部下を信頼し、部下とともに、無断・無許可の行動を果断に実施し、最後に会社の窮地を救うヒロイックな中間管理職(前記3タイプ)」
は、企業にとって有害かつ無益で、唾棄すべき厄介者です。

テレビドラマにおける、このような誤った中間管理職像の歪みの根源にあるのは、
「管理職にもなれない一般的サラリーマン(おそらく当該サラリーマンやその配偶者がその種のテレビドラマの視聴者ターゲットと想定される)」
の非現実的な願望にあると思われます。

すなわち、
「エラーやミスを犯し、サボるのが本質であり、たとえ、どんなに単純なルーティンであっても、放置しておけば、適切な結果をフィードバックすることは永遠にできない」
という現実から目を背けるため、うだつのあがらないダメサラリーマンが、ドラマという幻想空間において、エリートをコケにして溜飲を下げる、という構図が前提になっているように思われます。

以上、企業における管理、マネジメントというタスク・アイテムの重要性と、このアイテムの本質と根源的な課題を、
「企業組織を描いたテレビドラマ等において登場する中間管理職像」
についての世間一般の誤解ないし偏見を糺すことによって、解説してまいりました。

ここで、本来の話題に回帰します。

「命令を正しく実行させる」
とは、
「命令さえ明瞭で具体的であれば、あとは放っておいても勝手に達成される」
のは、まったくの誤りであり、
「マネージャー(管理職)」
による
「マネジメント」
という高度かつ価値ある機能を通じて初めて達成が期待できるもの、といえます。

そして、マネージャーの役割や機能としては、
「命令を遂行する人間(部下、スタッフ)から、嫌われること」
につきます。

管理職は、冷徹で峻厳な緊張関係を通じて信頼関係を醸成する、言い換えれば
「ナメられないように、しびれるくらいビビらせる」
という誰もが嫌悪する、そんな役割を求められることになるのです。

上下関係は緊張関係が基本となるものの、無論、関係を濫用して、いたずらにイジメたり、プレッシャーをかけたりするだけでは人は動きません。

合理的に準備を行ない、段取りを組むなど、部下やスタッフが動きやすい環境を整え、モデルタスクを実演し、FAQ(想定質疑)を準備し、質問や疑問や不明点が出ればいつでも応答・相談に対応できる体制を整備することも必要です。

さらに、インセンティブ設計(最高の成果が出せた場合の報奨に加え、努力したことは事実だが想定した成果が出なかった場合の努力賞や敢闘賞や残念賞も)や、取り組む中で自然と士気が亢進し効率が改善されていくようなシステム(ゲームロジック)も必要です。

このあたりは、くどいようですが、大日本帝国海軍連合艦隊司令長官山本五十六の
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」
という至言に凝縮されています。

管理職としては、タスクに実際取り組む部下やスタッフとは異なり、命令を遂行し成果を達成する責務を負うわけですから、常に、結果指向・目的指向で、卑劣で非常識なものも含めあらゆる方策を考えていなければなりません。

環境の変化を認識したら、それまでのやり方をすべて否定し、
「当該新しい環境において有益かつ効率的な新たなやり方」
を構築し、即座に実施するような柔軟性も必要になります。

あらゆる想定外を想定し、悲観的に考え、命令が達成できない場合の予備案(Bプラン)をもっておかなければなりません。

このような前提が整っていないと、
「命令は明瞭で現実的で合理的で正しいし部下は優秀で絶対うまくいくはずのプロジェクト」
がいつまでたっても成果が出ず、ついには頓挫する、という状況に陥ります。

このような事態に至った原因を探ると、
「命令を正しく実行させるための経営機能としてのマネジメント」

「経営思想ないし概念」
としてすっぽり抜け落ちていたり、マネジメントを担うべき管理職が自分の意義役割をまったく理解していなかった、という状況が浮かび上がってきます。

命令遂行責任者において、
「命令はしっかりしているし、部下も優秀だから、そんなにガミガミ言わなくても、フツーにやってりゃ、このくらいできるだろ」
という楽観的な想定しか持たず、想定が甘く、準備が不十分で、段取りが粗い。

部下やスタッフと管理職(命令遂行責任者)との間には緊張関係が皆無で、チーム全体が浮足だっている。

インセンティブ設計(残念賞も)がなく、やる気を出す前提環境がない。

「結果達成(成果達成)が、確定的な未来ではなく、いまだ可能性にとどまる」
にもかかわらずゲームロジックがなく、時間的冗長性がチーム全体を支配し、士気が亢進するどころか時間の経過とともに逓減し、徐々に、プロジェクトというよりルーティンとして遂行される雰囲気が蔓延し、
「成果を出す」
という目的を喪失し、目先の作業に従事することそのものが自己目的化する。

達成状況や進捗状況を監視するシステムも体制もなく、皆がそれぞれ面倒な作業を丸投げし、ブラックボックスがたくさんあり、何かやっている風ではあるが、何をやっているかわからない。

時間を徒過し、成果は出ず、だらけきった状態になっても、楽観バイアスに侵されているため、命令が達成できない場合の予備案(Bプラン)も出てこない。

そんな状況で、プロジェクトが崩壊したり、経済的意義を喪失して漂流したり、という現象は、日本企業において実によくみられます。

M&Aにおいては、当初
「“投資”として経済的意義あるプロジェクトとして良い企業ないし事業を安く買う」
という目的が、いつのまにか、
「どんなに高くても、買うこと自体に意義があるのであり、そのために、カネで済むならカネを際限なく投入し、買い物自体を完結させる」
というものにすり替わり、結果、どう考えても回収不能なアブノーマルなM&A取引をしてしまう。

さらにいえば、PMI(ポスト・マージャ-・インテグレーション。買収後の統合実務)において、買収対象会社(買われた企業)と買収会社(買った企業)との間で適切な緊張関係が形成できないまま、利益が出なくなったり赤字を垂れ流したり、あるいは制御不能なトラブルが発生してしまい、ついには減損して、無能愚劣を晒して株主その他の利害関係者に迷惑をかける。

いずれも、
「命令を正しく実行する」
という単純な課題を成し遂げるために必要な根本的経営思想である
「マネジメント」
という概念を欠如し、あるいはこれを担うべき
「管理職(マネージャー)」
が不在(あるいは形式上存在しても全く機能しておらず実質的に不在)のため、発生する悲劇であり、東芝、日本郵政など名だたる企業においても、凄まじいまでのダメっぷりを露呈しています。

初出:『筆鋒鋭利』No.120、「ポリスマガジン」誌、2017年8月号(2017年8月20日発売)
初出:『筆鋒鋭利』No.121、「ポリスマガジン」誌、2017年9月号(2017年9月20日発売)
初出:『筆鋒鋭利』No.122、「ポリスマガジン」誌、2017年10月号(2017年10月20日発売)
初出:『筆鋒鋭利』No.123、「ポリスマガジン」誌、2017年11月号(2017年11月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01624_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(15)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその9_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅵ)_(e)正しい命令を企画・制作し、正しくデリバリ(発令)する

物事を正しく進め、成果を出すためには、さらにいえば、M&Aのように
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
を成功させるためには、正しい状況認識ができ、正しく目的が定められ、正しく課題がみつけられただけでは、まだ不十分です。

大きなプロジェクトを進めて成果を出すためには、ほぼ例外なく、ヒエラルキー(階層性)を有する組織集団において行われることになりますし、そこでは、指揮命令が適切に伝達され実施されることが必要になります。

大勢が集まって、階層と身分と規律と秩序を作り、役割分担と指揮命令の確実な実行を通じて、相互に相互を利用補充する関係の下、個人では達成し得ないような大きな成果を成し遂げる、ということが人間であれサルであれライオンであれ、一定の知能を有する動物はその有益性を理解し、実行することができます。

政府、企業、ヤクザ、警察、軍隊、研究機関、オーケストラ、チームスポーツと、どのような組織集団であれ、
「大勢が集まって、階層と身分と規律と秩序を作り、役割分担と指揮命令の確実な実行を通じて、相互に相互を利用補充する関係の下、個人では達成しえないような大きな成果を成し遂げる」
という普遍的な前提が機能してはじめて価値を持ちます。

このような普遍的前提がない、ただの人の集まりは、飲み会であり、フェスであり、ドラッグパーティーであり、暴徒集団であり、将棋倒しで圧死者が出る人混みであり、無意味無価値あるいは有害危険なものでしかありません。

しかしながら、産業界において、ガバナンス(企業統治)や内部統制という、この
「普遍的前提」
ともいうべき課題が
「課題」
として議論されるほど、現在、日本の企業においては、階層や身分や規律や秩序や役割分担や指揮命令や責任の所在があいまいになりつつあり、これが企業内部の重篤な病巣と化しています。

ここで、M&Aに話を戻します。

組織が大きくなると、コミュニケーションが悪くなり、これが大失敗の原因となります。

2017年3月現在、M&Aのしくじりで企業存亡の危機に陥るという大失態をやらかし、私のような
「企業しくじりウォッチャー」
であり、
「日本企業M&A失敗事例収集家」
に、毎日毎日、美味しいネタをたくさんご提供いただいている東芝ですが、この企業、M&Aでこんな失敗をしていたそうです。

WHが15年末に買収した原発の建設会社、米CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)でただならぬ出来事が起きた。105億円のマイナスと見ていた企業価値は6253億円のマイナスと60倍に膨らんでいた」「複雑な契約を要約すると、工事で生じた追加コストを発注者の電力会社ではなくWH側が負担するというものだ」「問題は担当者以外の経営陣が詳細な契約内容を認識していなかったことにある。米CB&Iは上場企業で、原子力担当の執行役常務、畠沢守(57)らは『提示された資料を信じるしかなかった』と悔しさをにじませるが、会計不祥事で内部管理の刷新を進めるさなかの失態に社内外から批判の声がわき上がった」「原子力事業全体の損失額は7125億円にのぼった。16年4~12月期の最終赤字は4999億円となり、12月末時点で自己資本は1912億円のマイナスだ。先達が営々と蓄積してきた利益が全て吹き飛ばされ、ついに債務超過に陥った。」(2017年2月21日付日本経済新聞「もう会社が成り立たない」~東芝4度目の危機 (迫真)~より抜粋)

無論、東芝は、日本を代表する大企業集団ですが、このドタバタの悲喜劇を見る限り、
「階層と身分と規律と秩序を作り、役割分担と指揮命令の確実な実行」
という要素がなく、もはや、ただの人の集まりと化しています。

古代中国で巨大帝国を築いた漢帝国は、人類史上最高と言われる社会システムを発明しました。

それは、官僚制度といわれるものです。

「共通原理をもち、これを言語化した共通言語とし、これを自在に操れる官僚による文書行政を通じて、広大な領土を管理し支配する、という画期的なシステム」
を、漢帝国は作り上げたのです。

ちなみに、この
「官僚制度」
すなわち
「識字スキルをもつエリートによる文書行政システム」
ですが、私の理解では、
「性悪説」

「性『愚』説」
を前提とするものと考えます。

人間は、皆、愚かか、邪悪か、その双方であり、バカなことや、有害なことをしておきながら、猫の粗相隠しがごとき、発覚露見しないようにするし、発覚露見しても素知らぬ顔をする。

しかし、文書という
「認識内容や意思内容が当該時点で固定され、時間と空間を超えて、保存格納される媒体」
を組織運営におけるすべての言動の伝達道具としておけば、文書を読解し把握する人間同士においては、責任の所在が明らかになり、バカな行ないや、有害な行ないができなくなり、組織がバカや犯罪者によってつぶされるリスクがなくなるし、事後検証によって、バカな行ないが逓減していく。

「担当者以外の経営陣が詳細な契約内容を認識していなかった」
「提示された資料を信じるしかなかった」
という東芝は、このような適切な官僚制や文書行政システム、さらにいえば、性悪説や性愚説を前提とした
「不健全な人間の不健全な思考を増幅して認識し、あぶり出す、という健全な思考」
ができるような知性を持った人間が経営陣に誰もいなかった、というのが一連の悲喜劇の根源的原因といえます。

では、東芝のようなアホな失敗をしないためには、正しい階層制と適切な組織秩序を前提とした組織において、どのようなコミュニケーションをすべきだったのでしょうか?

「正しい命令を企画・制作し、正しくデリバリ(発令)する」
などという組織課題は、実はそれほど難しいものではありません。

それこそ、少年野球でも、高校生が部活でやっているサッカーチームでも、青少年の吹奏楽団でも、暴走族でも、ヤクザ組織でも、テロ組織でも、極フツーにできている事柄です。

ところが、企業集団が、普段やっているルーティンとしての営業活動から離れ、
「安くて、使える企業をみつけて、きちんと条件確認して、カモにされないようにして、エエ買いモンする」
といったプロジェクトをおっ始めると、途端に、暴走族や少年野球チーム以下の迷走集団に成り下がる、というのは不思議でなりません。

そこで、組織集団において、
「正しい命令を企画・制作し、正しくデリバリ(発令)する」
という(ある意味、すごく簡単な)タスクの本質を整理し、確認しておきます。

命令は、受ける方より、発する方が、より大きな責任を負います。

大変です。

苦労します。

よく、新橋あたりの安居酒屋で、
「部長はいいよな。命令するだけだから。命令されて、実施するオレたちの気持にもなってくれよな」
なんていう、若手サラリーマンの
「愚痴」
が聞こえますが、まさしく
「愚か」で「痴れた」
発言です。

命令は正しくなければなりません。

正しい命令を企画発案・構築・表現するため、それこそ、社長や上司や管理職は、ものすごく神経を使っていますし、また、使うべきなのです。

間違った命令、狂った命令は、組織に害を与え、命令を発した者にも害を与えかねない帰結をもたらしますから。

間違った命令、狂った命令、あるいは
「多義的な解釈が可能で、現場で好き勝手やりたい放題に、柔軟な運営裁量を内包するような、曖昧で意味不明瞭な命令」
を出してしまうと、当然ながら、プロジェクトはビタ1ミリ動きません。

動かないどころか、真逆の方向に進んで、時間、コスト、エネルギー、機会といった貴重な資源が際限なく流出する事態に見舞われる危険すらあります。

その昔、我が国において、
「アジアのみんなが、仲良く、平和で、楽しく暮らせる、極楽世界のような、同盟関係を作っていき、国際協調・世界平和を推進しなさい」
という政治目標が掲げられ、現場スタッフである政治家、官僚、軍人たちに、この実現を命じられるべく一大プロジェクトが動きはじめました。

しかしながら、不幸なことに、この命令は、その高尚さのため、具体性がなく、抽象的で、いろいろな解釈が可能であり、ま、ぶっちゃけいってみれば、
「多義的な解釈が可能で、現場で好き勝手やりたい放題に、柔軟な運営裁量を内包するような、曖昧で意味不明瞭な命令」
とも言い得るものでした。

で、
「アジアのみんなが、仲良く、平和で、楽しく暮らせる、極楽世界のような、同盟関係を作っていき、国際協調・世界平和を推進しなさい」
という拝命を受けた軍人たちは、何をやらかしたか?

でっち上げの謀略のテロを実行して、その事件の責任を相手国になすりつけ、
「われ、よう、やってくれよったのぉ」
とばかりに因縁をつけ、押し込み強盗のように侵略をして、傀儡国家を作って事実上乗っ取ったり、あるいは、予告もなくいきなり爆弾を落としてケンカをふっかけるなどして、他国を侵略しまくりました。

国際協調の意義を理解され、平和主義者で厭戦思想をお持ちであった昭和天皇は、自分の想定とあまりに異なる現実が出現して、さぞ、驚かれ、嘆かれたことかと思います。

とはいえ、この歴史的事実をみても、
「多義的な解釈が可能で、現場で好き勝手やりたい放題に、柔軟な運営裁量を内包するような、曖昧で意味不明瞭な命令」
を出すことの怖さ、すなわち、プロジェクトが真逆に進展し、ついには、組織の資源が際限なく損なわれ、組織を崩壊させる事態すら招来する、という危険があることが理解できます。

ちなみに、昔、TPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement。環太平洋連携協定)是か非か、みたいな議論があちこちでなされていますが、その実、議論している人たちの9割くらいは、そもそもTTPってどういうものか理解していないような気がしますし、実体が理解されないまま、実現したときのカタチがよくわからないまま、いいとか悪いとか、という議論をするのも、極めて危険な感じがします。

私などは、
「TPPは、本来的な意味の大東亜共栄圏。侵略戦争抜きの大東亜共栄圏」
といってしまった方が理解しやすいのではないか、と思います(却って誤解が広がるかもしれませんが)。

「正しい命令を企画・制作し、正しくデリバリ(発令)する」
というのは、少年野球でも、高校生のサッカーチームでも、青少年の吹奏楽団でも、暴走族でも、ヤクザ組織でも、テロ組織でも、極フツーにできている事柄である、と申し上げました。

しかしながら、こんな簡単な事柄も、やってみると、意外と難しく、
「ナメて適当な感じでやっていると、いつの間にか、企業が滅び、国が滅ぶ(実際、我が国は、約70年前に一度滅びました)」
くらい、エライ目に遭いかねない、極めて重要な課題である、とも申し上げました。

では、このビジネス上のタスク・アイテムである
「正しい命令を企画・制作し、正しくデリバリ(発令)する」
とうものは具体的にどのように遂行・実践すべきなのでしょうか?

間違った命令、曖昧な命令を発して現場が勝手に解釈し本来の意図や想定と真逆のことをおっぱじめたりすると、大きなロスやダメージが発生し、命令を遂行した者が責任を問われ、恥をかきますし、そのような誤った命令や、
「広汎な裁量を与え、現場の無秩序な暴走を許し、結果として、好き勝手やってよい」
と無制限の暴走を許す帰結が想定されるような、曖昧で抽象的で多義的な解釈が可能な命令を発した者も、相応のペナルティは受けることとなります。

これら、
「アホなことをしでかした戦犯」
は、場合によっては組織を追われますが、それ以前に、組織自体が崩壊の危機に陥ります。

なお、少し前、日本を代表する国際的大企業(仮に、「T」といいます)においては、トップが、
「多義的な解釈が可能で、現場で好き勝手やりたい放題に、柔軟な運営裁量を内包するような、曖昧で意味不明瞭な命令」
を悪用して、無茶苦茶なことをしていた、という事件が発生しました。

この企業T社では、成績が悪く
「赤点状態」
であったのに、そのまま、スポンサーに報告すると、恥をかいたり、怒られたり、干されたりする、という恐怖感からか、成績の改ざんを上層部主導で行っていたそうです。

上層部は、部下から
「全社一丸となってがんばりましたが、残念ながら、経営環境が厳しく、赤字になっちゃいました」
という報告を受けましたが、これに対して、上層部は、
「チャレンジしろ」
という命令を出したそうです。

おそらく、この会社では、粉飾決算したり、そのための各種データ改ざんをするような
「法を破る」行為
のことを、
「チャレンジする」
という言い方をしていたようです。

スーパーの警備員奥さん、ダメでしょ。今、商品をカバンにこっそり入れたでしょ。それで、レジを通さず、そのまま帰ろうとしたでしょ。これ、万引きですよ。窃盗ですよ。犯罪ですよ。なんで、こんなことしたんですか? ダメでしょ!
万引きした専業主婦すいません。つい、出来心でチャレンジしちゃったんです。犯罪とか万引きとか盗みとか、そんな物騒な言い方はやめてください。まるで私が犯罪者みたいじゃないですか。『チャレンジ』しただけなんですから
警備員あんた、何いってんの。何、『チャレンジ』って。あんたのやったことは、ま・ん・び・き。盗み。窃盗。ちょっと前、ほら、近所の堀江さんのとこの奥さんも、出来心で万引きして、ワーワーグダグダいってましたが。最後は、裁かれて、おとなしく、服役されて、今また、元気にやってますよ。あんたも、往生際悪く、『チャレンジ』とか訳わかんないこといってないで、ほら、一緒に警察行きますよ

といった趣のものなのでしょうか。

「規範的障害を乗り越えて犯罪行為を実現する」
というのも、まあ、いってみれば、
「チャレンジ」
であり、このT社内の符牒(チャレンジ=法令違反を敢行する)は、ブラックジョークとしてはかなり秀逸ですが、命令は具体的で的確である以前に、正しくなければなりません。

じゃあ、どんな命令が、
「正しい命令」
なのか。

具体的で、
明確で、
現実的で、
定量的で、
達成したか否かを客観的に評価することができ、
シンプルで、
アホでもわかり、
勝手な解釈を許さないこと、

「正しい命令」
の要素といえます。

もっと、明解に説明しますと、以前にも紹介しました、
「SMART」基準
を充足するコミュニケーションメッセージです。

◆要素1:「S」pecific(具体的に):誰が読んでもわかる、明確で具体的な表現や言葉で書き表されている
◆要素2:「M」easurable(測定可能な):目標の達成度合いが本人にも上司にも判断できるよう、その内容が定量化して表されている
◆要素3:「A」chievable(達成可能な):希望や願望ではなく、その目標が達成可能な現実的内容である
◆要素4:「R」elated(経営課題をクリアしうる現実的な目標に関連した):設定した目標が職務記述書に基づくものであるかどうか。と同時に自分が属する部署の目標、さらには会社の目標に関連する内容である
◆要素5:「T」ime-bound(時間的な制約は必須):いつまでに目標を達成するか、その期限が設定されているもの

が、
「正しい命令」
です。

このような要素の一部または全部が欠落した命令は、正しくない命令といえます。

デタラメで適当で、具体的かつ現実的な観点で何を達成したいのか理解不能な命令は、正しくない命令といえます。

また、たとえ、美辞麗句がまばゆいくらいに散りばめられた格調高い文章で表現されていたとしても、抽象的で、意味不明で、指示内容が一義的でない命令や、難解さや高尚さのため命令を受けた実行担当者において何を期待し、何を義務付けられているか、さっぱりわからないようなシロモノは、正しくない命令といえます。

初出:『筆鋒鋭利』No.117、「ポリスマガジン」誌、2017年5月号(2017年5月20日発売)
初出:『筆鋒鋭利』No.118、「ポリスマガジン」誌、2017年6月号(2017年6月20日発売)
初出:『筆鋒鋭利』No.119、「ポリスマガジン」誌、2017年7月号(2017年7月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01623_企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(14)_M&Aプロジェクトを成功させるためのポイントその8_(C)M&Aプロジェクトの全体的な戦略の合理性(ⅴ)_(d)正しく課題をみつける

M&Aは、
「結果とそこに至る経過が明確で一定の資源(時間と費用と労力)をかければ属人的な能力差にかかわらず予定調和的に成功ないし成果がイメージできるルーティン」
とは違い、
「正解も定石もなく、結果がどこまでいっても蓋然性にとどまるゲーム」
としての性格を有します。

このM&Aのような
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
を進める上で、正しい目的が設定された、すなわち、状況を正しく認知・解釈し、環境や相場観を把握し、そして、現実的で、達成可能で、経済的に意味のある目的が設定された、としましょう。

また、その目的は、
「あいまいで、多義的な解釈を招く、目的」
ではなく、
「具体的な完成予想図」
であり、
「成功時の未来の姿を具体的にイメージしたもの」
であり、しかも、しびれるくらいわかりやすく、
「どんなに、理解力不足な、妄想力豊かな、アホでも、勝手な独自解釈をしでかしようがない」
形で、共有される状態になった、としましょう。

もちろん、
「楽観バイアス」
を徹底的に排除して、自分に都合よく解釈できる要素は皆無となり、そのうえ、成功者や達成した経験者の話をよく聴いて、悲観シナリオやプランB(予備案、バックアッププラン)も含めた、保守的で、現実的で、堅牢な二次目的も設計・設定・具現化された、とします。

じゃあ、
「そろそろ、目的を達成するために、目的から逆算した手段構築に入るか」
というと、まだ早いのです。

目的が正しく設計・設定・具現化されたあと、次に行うべきことがあります。

それは、
「正しく課題をみつけること」
です。

よくある戦略の誤りというのは、課題抽出をせずに、いきなり段取りを組みはじめ、実行着手することです。

「ストレステストをせず、原発をおっ立てて、後から、津波が来て、深刻な厄災を撒き散らしちゃった」
という話も、要するに、
「課題発見プロセスがあることを知らなかった」か、
「そのようなプロセスを無視ないし軽視した」か、
「課題を探索するのが面倒くさいので、やっつけで、課題探索を適当に手を抜いておざなりにして、とっとと原発作りをおっ始めた」か、
のいずれか、またはすべてが原因であろう、と推察されます。

どんなに状況や環境が正確に認識され、具体的で合理的でシビアな目的が設計・設定・具現化されたとしても、課題がよくわかっていない、あるいは課題がないと信じてしまい、不安要素や都合の悪い事象や障害を、無視したり、見て見ぬふりをしたりして、いきなり取りかかれば、大きなプロジェクトは確実に失敗します。

そもそも、人間や組織は、ミスを犯すものです。

ミスから端を発したことがエラーとなり、エラーがリスクとなり、リスクが事故ないし事件となり、事故ないし事件が、やがてプロジェクトオーナーと関わった関係者全員を、奈落の底に突き落とし、皆を破滅させます。

金融の世界で、“ブラック・スワン”と呼ばれるものがあります。

スワン(白鳥)というのは、その名の通り、白い鳥です。

「黒い白鳥」
なんて、あり得ない。

ヨーロッパで、
「滅多に発生しないこと」
「あり得ないこと」
「起こり得ないこと」
を表す諺として、
「そんなのは黒い白鳥を探すようなものだ」
というものがありました。

そうしたら、1697年にオーストラリアで本当にブラック・スワンがみつかってしまったことから、
「起こり得ないことが起こった」
ことを表す言葉として使われるようになったというものです。

日本風に言い直しましょう。

よく
ありえないほど大げさな表現として、
「笑い過ぎて、ヘソで茶が沸く」
という言い方があります。

とはいえ、どれほど大爆笑して、腹筋が振動しても、決して、お茶が沸くほどのエネルギーが生まれることは現実的にはありえません。

ここに、
「黒田鳥男(仮称)」
という方がいたとしましょう。

黒田さんは、笑って腹筋が振動すると、腹部に高温を発する異常体質をお持ちで、実際、寒い日には、ヤカンを腹部において、吉本新喜劇をみながら、お湯を沸かし、紅茶を作って飲んでいる、ということが、ニュースで報道され、日本人全員が
「ほんまに、ヘソで茶を沸かす奴がいよった!」
「ありえへんこともあるもんや」
としみじみと言い合った。

そんな趣の話が、
「ブラック・スワン」
です(もちろん、話をわかりやすくするための喩え話です。某国大統領のように「お前のは偽ニュースだ」とかいわないでくださいね)。

このように、マーケット(市場)において、事前にほとんど予想できず、起きた時の衝撃が大きい事象のことを
「ブラック・スワン」
といいますが、その最近の代表例が、サブプライムローン危機(リーマンショック)です。

この事件は、
「誰も予測、想定できなかった」
などといわれます。

しかし、当時の社債利回り(AA格)を国債の利回りとの比較(社債の対国債スプレッド)の推移で見ると、アメリカやEU等では、2007年夏以降、拡大していくという異常状況がありました。

すなわち、エラー・メッセージは存在したのであり、このエラーをきちんと認識・評価していれば、ブラック・スワン(ヘソで茶を沸かす異常体質の黒田鳥男〔仮称〕さん)が発見され得ることも予測できたと思います。

ただ、人間には、
「正常性バイアス」
といわれるものもあり、ブラック・スワンの予兆があっても、
「これは何かの間違いだ」
「黒い白鳥なんているわけないだろ」
「ヘソで茶を沸かす奴がいる? それは偽ニュースだ!」
というバイアスをかけて、情報解釈を歪める心の動きが備わっている、ということであり、それこそが最も恐ろしい事態を招く“人間の脳の欠陥”なのです。

物事を正しく進め、成果を出すためには、さらにいえば、M&Aのように
「常識が通用しない、イレギュラーでアブノーマルなプロジェクト」
を成功させるためには、失敗の予兆を、事前に、正しく、具体的に予測し、対策をしておくことが必要です。

すべての事件や事故は、
「ある日突然、火星人が大挙として襲来して、地球を爆発させ、地球が3秒で消滅する」
といった趣の、サドンデス(突然死)のような形で発生するわけではなく、ほぼ確実に、失敗の兆候、すなわち、エラー・メッセージが存在します。

突然、ブラック・スワンが発見されたかのように受け取られ、皆が驚愕してひっくり返るのは、すでに存在していたエラー・メッセージを
「見て見ぬふり」
をする、という情報解釈をしてしまう心の歪み(正常性バイアス)があるためです。

「プロジェクトマネジメントにおける知性とはどういうものでしょうか?」
理数系の学部で学ばれた人の中には、
「エラーや異常値がいくつかあっても、全体を統合する美しい仮説や理屈や自然法則が絶対に存在するはずだ」
というロマンチックな妄想に冒されてしまっている方もいらっしゃいます。

無論、そのような思考も人類社会の発展のためには、絶対必要です。

しかしプロジェクトにおいて、この種のロマンチックな妄想は、危険有害極まりない代物といえます。

「細部の破綻があっても大丈夫。そんなものには目をつぶるべきだし、誤差や異常値など見えないふりしてしまえ。性善説や科学的合理性というバイアスを使って、全体を正常かつ健全に統合してモデル化し、そのことをもって、満足し、先に進むべきだ。仮説に反する有害な現実は、異常値や誤差やバグとして、シカトしちゃえばいい話」
こんな考えをもつ人間が、プロジェクトの責任者となったら、やがて、そのプロジェクトに関わる人間全員が破滅を味わいます。

「些細なミスやエラーがリスクにつながり、リスクが事件事故につながり、事件事故が破滅につながる」
のです。

ホニャララ細胞も、各種研究不正も、このような発生経緯から、やがて、関係者を破滅に導く厄災に至ったのではないでしょうか。

ホニャララ細胞の事件では、我が国を代表する科学者の自殺という事件まで発生し、有為かつ貴重な人的資源が我が国から奪われました。

さらにいえば、人類史上に残る厄災となった福島原発事故も、
「細部の破綻があっても大丈夫。そんなものには目をつぶるべきだし、誤差や異常値など見えないふりしてしまえ」
という、科学者やエンジニアの愚劣な奢りに根源的原因があると考えられます。

当初の疑問に戻ります。

「プロジェクトマネジメントにおける知性とはどういうものでしょうか?」
それは、課題発見能力と同義です。

1の不安要素から10のネガティブな未来を予測し、イメージできる能力です。

些細なミスやエラーを発見特定し、増幅した姿を想像でき、これを、プロジェクトチーム内で共有できるように、ムカつくくらいリアルかつ具体的かつ残酷に表現できる力です。

「そんなにネガティブで不愉快な未来を予測ばかりしていては物事が前に進まない。不安要素や都合の悪い事象や障害は、無視し、見て見ぬふりをし、そんな不愉快な出来事が出来しないように神に祈ろう」
こんなことを言い出すバカがプロジェクトチームの中にいるだけでプロジェクト成功は遠のきます。

ましてや、こんなバカが、プロジェクトを主導していると、チーム全員、身の破滅を味わうことになります。

「そうやって、悪態ばかりついていたら、プロジェクトなんか1つも達成できないぞ!」
という怒りの声が聞こえてきそうです。

だったら、やめりゃいいだけです。

別の、もっとマシで、冒険性やギャンブルの要素がなく、
「1万円札を3000円で買ってくるような、安全でラクな儲け話」
を探せばいいだけです。

2017年3月に、天下の名門企業、東芝が、存続危機に見舞われ、その後、東証1部から2部へ降格市場替えとなり、その後も長期間、厳しい経営状況が続いています。

このしくじりの最も大きなポイントは、原発を作るアメリカの会社を買収したら、儲かるどころか、膨張し続ける債務を背負わされた、というアホな失敗が原因です。

東芝はどうすればよかったのか?

簡単です。

「買収したら、買収した会社の債務を背負わされる危険がある」
というエラーを増幅して理解し、バカ高いのにそんなエラーが紛れ込んでいるアホな買収話、一蹴して取り合わなかったら、よかったのです。

「そんな消極の安全策ばかりでは、東芝の未来は築けない」
なんてバカことをいうバカな人間の話など無視して、半導体事業をしっかりやっていたら、今頃、高笑いしていたはずです。

初出:『筆鋒鋭利』No.115、「ポリスマガジン」誌、2017年3月号(2017年3月20日発売)
初出:『筆鋒鋭利』No.116、「ポリスマガジン」誌、2017年4月号(2017年4月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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