01691_🔰企業法務ベーシック🔰/企業法務超入門(企業法務ビギナー・ビジネスマン向けリテラシー)2_人は、生きている限り、法を犯さずにはいられない(前)

1 人間は人工知能やロボットではなく、本能をもつ「動物」の一種である

人間は、生きている限り、法を犯さずにはいられません。

これは、歴史上証明された事実です。

「人間が生きている限りどうしても法を守れない」
「人間が生きている限りどうしても病気や怪我と無縁ではいられない」

こういう厳然たる事実があるからこそ、
医者と弁護士という「人の不幸を生業とするプロフェッション」
が、古代ローマ以来、現在まで営々と存在し、今後も、未来永劫存続するのです。

「人間は動物の一種である」
という命題です。

普段暮らしていると、忘れてしまいがちな、重要な前提があります。

人間は、パソコンでもスマホでもAI(人工知能)でもなく、これらとは一線を画する、
「動物」の一種
です。

そして、
「パソコンでもスマホでもAI(人工知能)でもない、動物」である人間
は、生きて活動する限り、ルールやモラルと本能が衝突したときには、必ず本能を優先します。

なぜなら、我々は「動物」の一種ですから。

もし、
本能に反して、ルールやモラルを優先する人間がいるとしたら、
もはや、その人は
「動物」ではなく、AIかロボット
です。

いつもいつも、そんな、清く正しく美しい選択をする人間がいるとすれば、社会心理学上稀有な事例として、研究対象となり、
「なんで、そんな異常なこと、理解に苦しむことをやらかすんだ?」
と考察と検証が行われます(社会心理学では、反態度的行動というそうです)。

2 どんなに修行を積んで立派になっても、人間、欲には勝てない

私が、コンプライアンスに関するセミナーを行う際にご紹介する興味深い事件があります。

宗教法人の高野山真言宗(総本山・金剛峯寺、和歌山県高野町)の宗務総長が宗団の資産運用を巡り交代した問題で、外部調査委員会が損失額を当初の約6億9600万円から約17億円に訂正していたことが明らかになった(2013年9月11日の毎日新聞「高野山真言宗」「損失額、大幅に増」「外部調査委)」。その他、2013年4月22日付「朝日新聞」朝刊「高野山真言宗 30億円投資 浄財でリスク商品も 信者に実態伝えず 『粉飾の疑い』混乱」など多数の報道) 。
高野山真言宗の八事山興正寺(名古屋市昭和区)の土地を無断で売却し、利益を不正流用したとして総本山の高野山側と前住職(69)が対立している問題で、名古屋地検特捜部は12日、寺事務所など複数の関係先を背任容疑で家宅捜索した(日本経済新聞電子版2017年9月12日20時50分配信)。
同寺の前住職らが約80億円を不正に流用したとして、現住職側が背任と業務上横領容疑で告訴状を名古屋地検に提出したことが16日、分かった。14日付。関係者によると、前住職は在任中の平成24年、寺の土地約6万6000平方メートルを学校法人に約138億円で売却。現住職側は、前住職がこのうち約25億円を外国法人に、約28億円を東京都内のコンサルタント会社に送金したと主張。いずれの送金先も前住職と関連のある会社だったとしている。前住職の代理人弁護士は取材に「告訴内容を把握しておらず、コメントは控えたい」と話した。高野山真言宗は無断で土地を売却したとして、前住職を26年に罷免しているが、前住職は「罷免は不当」として現在も興正寺にとどまっている。興正寺は名古屋国税局の税務調査を受け、27年3月期までの3年間に約6億5000万円の申告漏れを指摘された(産経WEST2016年9月16日12時57分配信)。

実に味わいがある、というか、深い、というか、考えさせられる事件です。

「この大それた事件、どこの金の亡者がやらかしたのか?」
と思えば、千日回峰行(空海が教えた密教の修行)を完遂した阿闍梨(仏陀の「完全な人格」にかぎりなく近づいている高僧)もおわします、立派で、高邁な組織で実際あった事件です。

この話以外にも、宮司姉弟間の殺人で話題になった富岡八幡宮事件や、カトリック教会の児童への性的虐待事件など、
「我々、無知蒙昧で、欲まみれで、薄汚れた、迷えるダメ人間」
を導いてくださるはずの、
「難行苦行や修行や日々の祈りによって、欲を克服した、精神の高みに達したはずの聖職者の方々」
も、私のような小心者の想像を絶する、大胆で、えげつないことを、敢行なさいます。

そして、
「特定の」という限定はつくにせよ、
聖職者の方々が敢行された犯罪行為の凶悪さ、大胆さをみるにつけ、なんとも感慨深い気持ち
になります(「だって人間だもの」という有名な詩の一節が頭を過〔よぎ〕ります )。

これらの事件やトラブルに接すると、
「どんなに立派な修行を積んでも、人間、決して、欲には勝てない」
というシンプルだが鮮烈な事実を、我々に改めて再確認させてくれます。

3 法やモラルと本能が衝突した場合、人間はどちらを優先するか 

この話が、何につながるか、といいますと、
「人間が欲に勝てない以上、法やモラルを守れといっても、本能と衝突した場面では、必ず、本能が法やモラルに打ち勝つ!(と誇らしげに、高らかに言うような話でもありませんが)」
という社会科学上の絶対真実ともいうべき原理ないし法則につながります。

生まれながらの犯罪者や幼少期の特異な環境で虞犯傾向が顕著なまま成長し、反社会性が顕著で、意図的に罪を犯す場合もありますが、常識(という名の偏見のコレクション)にしたがって、心の赴くまま、ありのままに行動したら、知らないうちに法を犯していた、という場合もありえます。

独禁法違反や公務員(外国公務員を含む)への贈賄、テクニカルな要素が強い税法や金商法や知財関連の違反行為や権利侵害等など、
「お咎めを受けてもなお、一体何が悪かったのか、よくわからない」
といった類の法令違反事例も数多く存在します。

この点、金商法違反で前科一犯で実刑を食らったホリエモンこと堀江貴文氏について、一般の方や、あるいは司法修習生や企業法務を目指すなどとのたまう若手弁護士の皆様に、
「ホリエモンって、一体、どんな罪を犯したの? わかりやすく説明してくれる?」
といっても、皆、一様に口ごもります。

皆さん、ホリエモンが犯罪を犯したことは知っていますが、
「どのような法律があって(大前提)、ホリエモンがどのようなことをやらかし(小前提)、どんな悪さをどんだけ悪辣にやり遂げたのか?」
ということはほとんど理解していません。

「よくわからんが、司法当局が悪いことやらかした、と言っているし、マスコミもそう言っているから、多分、ホリエモンは悪い」
なんて、特定民族を、理由も不明なまま、悪者と扱ったり、差別したりするのと、同根の発想で、非知的で、愚劣の極みです。

話はそれましたが、
常識にしたがって、心の赴くまま、ありのままに行動したら、知らないうちに、世間の誰一人何が実質的に違法かについて説明できないような形で法を犯していたことになっていた、
という場合や、
「お咎めを受けてもなお、一体何が悪かったのか、よくわからない」
といった類の法令違反事例も数多く存在します

4 すべて遵守しようとしても、法律はあまりにも多すぎる

といいますか、すべての法律や規則はあまりに多すぎます。

法律のすべてを知っている人間は、この世の中にはいません、多分。

我々、神ならざる人間が、知らず知らずに、法を犯す、ということも十分あり得ます。

はずみで法を無視ないし軽視することももちろんあるでしょう。

また、法律自体に、間違ったものや、狂ったものも相当あります。

「健全な常識にしたがって行動したら、それが法令違反だった」
ということも、よくある話です。

法律は、俗に、
「六法」
などといいますが、6つだけではありません。

世の中には、6つとかの話では済まない、とてつもない数の法律が存在します。

法律だけで1,960とかあります。

これに、政令とか府令・省令とか規則とか足し上げていくと、法令全体の数は、8,284とかあります。

その中には、
ホニャララ「特別措置」法、
すなわち、
「理論的にぶっこわれてまともな説明が不可能だけど、とりあえず、まあ、いいから、これに従っといてもらおう」
といった趣の法律も存在します。

これら法律に加えて、通達といった従う必要があるのかどうか不明なものや、判例法といったどこに書いてあってどう使われるか今ひとつピントこないルールもあり、その全容は、内閣法制局でも、法務省大臣官房司法法制部でも、最高裁首席調査官でも把握できていないと思われます。

すべての法律を知っていて把握している人間がいるとすれば、円周率を万単位の桁で覚えている人間と同様、かなりレアな存在です。

それだけ法律があるわけですから、
「我々、神ならざる人間が、知らず知らずに、法を犯す」
ということも十分あり得ます。

はずみで法を無視ないし軽視することももちろんあるでしょう。

先程のホニャララ特別措置法や、どこぞの県に存在する意味不明な条例など、法律自体に、間違ったものや、狂ったとしか思えない内容のものも相当あったります。

5 法律のすべてが正しく理論的なものばかりとは限らない

「健全な常識にしたがって行動したら、それが法令違反だった」
ということも、よくある話です。

そもそも、法律ってどんな人が作っているのでしょうか?

もちろん、立派で法律を作るにふさわしい見識と教養をお持ちの方もいらっしゃるでしょうが、お笑い芸人、ニュースキャスター、土建屋、ブローカー、成金、地上げ屋、あるいは、かつては現在拘置所にいる刑事被告人といった、
「様々な職種で構成される、我々カタギとは全く異質で強烈なオーラを放つどぎついキャラの方々」
です。

また、モラルや遵法精神という点においても、
・女性も好きで、さらに結婚式をするのも大好きで、結婚している身で、奥さん以外の女性とハワイで結婚式挙げちゃったり、
・国情や政治現実の調査に熱心なあまり、政治活動費を使って広島の繁華街のSMバーの視察に行っちゃたり、
・TTP交渉でクソ忙しい最中に、千葉ニュータウンの開発に伴う県道の建設にまつわる特定企業の補償交渉も熱心に行ない、また蓄財にも熱心になってしまい、少しお小遣いをもらっちゃたり、
・育休を取得している間に堂々と不倫をやらかしたり、
といった、
「法とかモラルとかに関心もなく頓着もしない、ワリと大胆なことを平気でやらかす、変わった常識をお持ちで、『皆の人気者』という以外にどんな素養や素性を持っているのかも今ひとつ不明な方々」、
要するに、
「皆の人気者」という以外に、(前提能力検証課題に関する制度上の問題として、)とりたてて見識や教養が求められるわけでもない方々
が、議員となって法律を作ったり、いろいろ意見を言い合って、最終的に法律を定める権限をもつわけです。

すべてとは言いませんが、これらはすべて国会議員あるいは国会議員だった方々のプロファイルであり、私が脳内でイメージする
「国会議員」の典型的な姿
もだいたい同じような感じです。

そんな、(カタギの我々を基準とする限り)変わった常識や理解困難なモラルをお持ちの愉快な面々が、立法機関のメンバーとなって法律を作るわけですから、そんな方々の作る法律が、常にかつ当然に何から何まですべてマルっと完全無欠で清く美しく正しい・・・なんてあるわけがあるはずない。

当然ながら、狂った法律、非常識な法律、守るに値しない法律、理論的に明らかにおかしな法律、というものも結構あったりします。

特に、議員立法と呼ばれる法律については、その出来具合はお世辞にもいいとはいえず、立法の中身も、
「基本的人権の実現や、よりよき国家や社会を創造したり、国益の向上を目指した、後世に残るすばらしい法律」
は少なく、
「○○族と呼ばれる議員センセイが、特定の業界の利益の向上と結びつくような法律」
だったり、
「選挙の際、専業主婦やサラリーマンに手柄としてアピールしやすい法律」
といった代物がほとんどです。

議員立法で有名なのは、故田中角栄先生です。

彼が作った法案の多くは、道路、建設、開発あるいはこれらの 財源措置や特殊法人に関するものでした。

特に、かつての民主党政権の際に問題になった
「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」
も、角栄先生の議員立法として成立したものですが、要するに
「都会のサラリーマンがガソリン購入の際に支払う税金を、田舎の道路工事のためにばらまく」
というものであり、建設業界と地元のゼネコンを利するという目的においては、非常に分かりやすい代物でした。

この
「特別措置」法
とか
「臨時措置」法
とかいう法律の名称ですが、前述のとおり
「理論や体系をぶっこわした、意味も論理も不明で、合理的な説明のつかない、狂った法律」
とも評すべき代物です。

さらに、いいますと、ドイツのある時代のある法律には、特定の民族の財産を没収し、国有化する、という法律があったそうです。

法律には、まともなものも勿論ありますが、狂ったものもあり、しかも、その全容は、誰も把握できないくらい、星の数ほどあります。

法律が誰も把握できないほどの数があり、しかもその中には狂っているものがあるわけですから、遵守するしないのはるか手前、そもそも
「何がルールか」
を理解する段階で大きな問題を孕んでいます。

以上のとおり、法律が誰も知り得ないほど数多く存在し、法律自体に、間違ったものや、狂ったものもあるわけですから、
「健全な常識にしたがって行動したら、それが法令違反だった」
ということも、起こり得る話です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01690_🔰企業法務ベーシック🔰/企業法務超入門(企業法務ビギナー・ビジネスマン向けリテラシー)1_企業が法務や法令遵守を課題として捉え対処するのはなぜか

1 善良で健全な企業組織において、「法務」や「コンプライアンス(法令遵守)」といった課題対処が意識されているのか

健全な良識も常識も持ち合わせているはずの普通の企業において、
「法務」
「法令遵守(コンプライアンス)」
などという業務(お仕事)が必要になるのはどうしてなのでしょうか?

2 暴力集団や犯罪組織においては、組織防衛のため、法を意識した安全保障を整備するのは当然

もちろん、暴力団やテロ組織は、しょっちゅう法律を犯します。

法律を犯すことがこの種の特殊組織の本質であり、大事な生業であり、各構成員の至上命題ですから、当然ながら、この種の特殊組織においては、法律違反は日常茶飯事であり、ごく普通の陳腐な光景です。

こういう、法令違反を生業ないし組織の活動の本質とする組織においては、組織防衛のため、法令遵守(コンプライアンス)や、法務、すなわち、法令違反等の法的リスクに対する安全保障は致命的に重要であり、この種の組織が、必死になって、眦(まなじり)を決して、
「コンプラが大事だ!」
「法務を充実させろ!」
と大騒ぎするのはうなずけます。

3 一見すると、法令違反とは無縁なはずの企業組織がなぜ、最近になって、法務やコンプライアンスを意識しはじめたのか

しかしながら、銀行や商社や海外に展開する巨大メーカー等、東大京大一橋等超有名大学を卒業した、カタギもカタギ、真面目で優秀なエリートサラリーマンがうじゃうじゃいる、法を尊重し、法を守り、社会に貢献し、SDGsも意識し、企業倫理もしっかりしている、まともで真っ当な一流企業が、必死になって、
「コンプラをなんとかしろ!」
「法務組織は大丈夫か!」
「インハウス(社内弁護士)を増やせ!」
と、まるで明日にでも重大な法令違反が発覚し、 企業が潰れ てしまいそうな勢いで、絶叫しています。

これって、考えてみれば、相当、
「変」
です。

「コンプラ」
だの、
「法務」
だのと絶叫して、社内弁護士を含め、かなりの予算を使ってバカみたいに大量の法務スタッフを整備している、銀行や商社や海外に展開する巨大メーカーは、社会的に立派でまともなビジネスをしているように見えるのはただの幻想なのでしょうか?

「社内弁護士を含め、かなりの予算を使ってバカみたいに大量の法務スタッフを整備している、銀行や商社や海外に展開する巨大メーカー」
も、実際は、暴力団やテロ組織以上に、法を破り、ルールを愚弄する、危険で危ない商売をしていて、法令違反リスクや法務安全保障について、経営幹部一同、スーパー・ウルトラ・ハイパー・センシティブな感受性をもっていて、
「いつ捕まるか」
「明日にも地検特捜部がやってくるぞ」
「もう警視庁捜査2課が動いているぞ」
「公取委が来るかも」
と恐れを不安を抱えた日々を送っている、そんな、危険で反社 会的でヤッヴァい組織ということなのでしょうか?

有名アニメ「ドラえもん」を例にとって考えてみますと、
「イジメやルール違反をしょっちゅう行うやんちゃなガキ大将の剛田武ことジャイアン」やその親に対して、
「コンプラ教育をしっかりしろ!」
「どんな事件がいつ起こってもいいようにファミリーロイヤー(剛田家の顧問弁護士)を雇って法務体制を整備しとけ!」
と指示するのは意味と意義と価値あるメッセージです。

しかしながら、
「成績優秀で、行動も模範的で、先生の覚えもめでたく、すべてにおいてケチ一つつけようのない、出来杉君や、しずかちゃん」やその親に対して、
「コンプラ教育をしっかりしろ!」
「どんな事件がいつ起こってもいいようにファミリーロイヤー(家庭の顧問弁護士)を雇って法務体制を整備しとけ!」
と絶叫するのは、ローマ法王やマザーテレサに倫理や道徳を説教するのと同様、無駄で無益で過剰で無用であり、まったく意味がわかりません。

では、なぜ、まともな人たちが集う、まともな活動をする、まともな企業において、焦りまくって、必死になって、法令遵守や法務安全保障という課題に取り組むのでしょうか?

4 歴史上証明されたいくつかの事実

その答えは、次のような、歴史上証明された事実ともいうべき命題が明らかにしてくれます。

1)「忘れられがちな重要な前提」ではあるが、人間も「動物」の一種である
2)人間も動物である以上、本能と、ルールやモラルが衝突した場合、常に、本能を優先してしまう
3)すなわち、人は、皆、生きている限り法を犯さざるを得ない
4)人の集団である企業も、継続的に存続してその目的を追求する限り、その本能、すなわち営利追求とルールが衝突した場合、営利追求を優先して、法を犯さざるを得ない

そして、企業の規模が大きくなれば大きくなるほど、これに比例して、
「不可避的に法を犯してしまう」蓋然性
とトラブルのサイズは大きくなり、暴力団やテロ組織でもない、健全な良識も常識も持ち合わせているカタギの皆さんが集まる普通の企業においても、規模に比例して、
「法務」
「法令遵守(コンプライアンス)」
などという業務(お仕事)が必要となり、その対処のために、莫大な資源動員を行うことが求められるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01689_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(32・終)_総括

1 「仕事や人生や社会生活において本当に大切なこと」は本に書いていないし、学校でも教えてくれない

世の中、
「身過ぎ世過ぎ」
のために本当に大切なことほど本や新聞に書いていないし、テレビでも放送しない。

学校の先生や親も教えてくれない。

というか、
「『身過ぎ世過ぎ』のために本当に大切なこと」
を学校の先生やサラリーマンや専業主婦をやっている親は知らない。

そういうことを知っているなら、教師やサラリーマンや専業主婦などではなく、もっと別の人生を歩んでいるはず。

「世の中で、本当に大事なこと」
がほんの少し、手がかりのようなことが、たまに本に書いてあることもあるかもしれないが、腹が立つくらいわかりにくくしか書いていない。

2 「人生や仕事の『切所(せっしょ)』」で役に立つのは、「キレイゴト」ではなく「リアリティ」

「仕事や人生の大事な局面」
で、
「常識や、学校の先生や親に教えられたことや、テレビや新聞で言っていること」
にしたがうと、たいてい失敗する。

「常識や、学校の先生や親に教えられたことや、テレビや新聞で言っていること」
は理想であり、キレイゴトであり、耳障りはいいが、役に立たない。

「仕事や人生の大事な局面」
は、
「キレイゴトではどうにもならない、圧倒的な現実」
が大きく立ちはだかり、これに対して、
「あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、反則技」
を繰り出す
「ルール軽視の何でもあり」
で死にものぐるいで生き残るような場面。

法務の仕事のほぼすべては、
「会社や仕事の大事な局面」
か、これに密接に関わるものばかり。

だから、法務の仕事は、
「陳腐な常識」

「リアリティの乏しいキレイゴト」
が通用しないし、常識やキレイゴトにしたがった処理をしたら、たいてい無残に失敗し、ピンチに陥る。

常識とは、物心つくまでに身につけた偏見のコレクションであって、戦理とは真逆の有害な誤謬であることが多く、窮地に陥るのも、当然といえば当然。

3 「ピンチはチャンスに」なんて絶対ならない

失敗したら、ピンチになったら、ピンチは決してチャンスになどならない。

「ピンチ」

「大ピンチ」になり、
「大ピンチ」

「破滅」になるだけ。

ピンチになったら、敗北は必至・所与とし、とっととダメージコントロール(損害軽減措置)の検討を始め、素早く果断に実行するのが優れた実務家。

4 バカほど「一発逆転」を信じる

現実の社会においては、
「一発逆転」
というのはない。

ほぼ無い、というか、まったく無い。

特に、法務有事における危機管理や危機対処において、
「一発逆転」
は、絶対無い。

たまに、
「大事が小事に、小事が無事になり、無事になって元に戻る」
という僥倖に恵まれることがあるだけ。

そして、
「大事を小事に、小事を無事にし、無事になってデフォルトの状態に回帰させる」
程度の成果を挙げるために、途方も無い時間とコストとエネルギーを費やし、かつ、辟易するくらい真面目に取り組まないといけない。

「会社のお金を使い込んでしまい、損失を回復しようとして、先物に手を出す」
という
「一発逆転策」
や、
「粉飾を誤魔化すために、さらに、大掛かりな架空取引をでっち上げる」
という
「一発逆転策」
など、
「危機打開のために、考え出された、創造性豊かな一発逆転策」
なるものは、そのほとんどが、単なる法令違反や犯罪行為(しかも、よりスケールアップした別途の法令違反や犯罪行為)であったりする。

5 社長も役員も経営のプロかもしれないが、法律については素人である。経営者は、皆、法律など「消えて無くっちまえ」と思っており、隙きあらば、軽視し、無視しようとする

社長も役員も、金儲けには詳しいが、法律は全く知らない。

むしろ、法律など
「金儲けの邪魔」
「消えて無くっちまえばいいのに」
と考えて蛇蝎の如く嫌っており、露見さえしなければ、露見してもお咎めがなければ、お咎めがあっても大したことなければ、法律など無視あるいは軽視して、より大きく、より効率的に、より素早く、金儲けがしたい、と考えている。

彼ら・彼女たちの目の奥底をみればわかるが、経営者のほぼすべては、(当人の自覚のあるなしは別として)金儲けや経済合理性や効率性の中毒者、それもジャンキー(治癒困難な強度の中毒者)であり、また、そうでなければ、資本主義社会における過酷な市場でプレーできない。

法務担当者・社内弁護士をはじめとしたサラリーマンは、リスクを極度に恐れる羊であって、強欲な経済ジャンキーの脳の奥底を知らないし、想像もできないし、理解すら困難。

だから、社長や役員は、法務担当者や社内弁護士のことを
「使えない」
「わかっていない」
「寝言ほざいてるわ」
と敬遠し、煙たがり、避けたがり、見下げたり、無視したりする。

法務担当者や社内弁護士が社長や役員に
「コンプラ的に問題です」
などと陳腐な説教でもしようものなら、小学生がシャブ中のヤクザに対して
「覚醒剤やめますか、人間やめますか」
と真顔で説教するのと同様の悲喜劇が発生する。

法務もコンプラも結構だが、
「人を見て法を説け」
という格言を念頭に置くこと。

6 弁護士は「下世話な事件の裁判沙汰」について(ほんの)少し(だけ)詳しいが、ビジネスや企業法務は、まったく習っていない。しかし、知ったかぶるし、いっちょ前の口をきく。

弁護士は、確かに、法律のプロで、裁判の知見を相応に持っているかもしれない。

憲法や刑法や親族・相続など企業法務と無関係な知識も多く、他方で、民事や商事や会社法といっても、裁判沙汰にまでなったような異常かつ病理的な事件のことしか知らない。

労働法や金商法や知的財産権法や独禁法や消費者保護関連法や税法や会計といった企業活動に関連する法律や会計の知識は、属人的に偏在しており、すべて知っているわけではない。

M&Aや国際ビジネスを知らない弁護士も多いし、ビジネスや企業経営など、やったことも、携わったこともないし、という弁護士がほとんどで、実はよくわかっていない。

だけど、
「知らない」
「わからない」
とは決して言わないのも弁護士という生き物の偏向的習性。

弁護士を
「圧倒的知識と力をもつ、唯一絶対の神」
のように崇め奉り、帰依し、すべてを依存するのではなく、限定された機能や効用に着目して、ハサミと同じように、使い方を工夫することが極めて重要。

弁護士を崇め奉って丸投げするような真似をせず、
「偏向的習性」

「知性と機能の限界」
を把握して、ハサミのように自由に使いこなすのが、法務担当者(社内弁護士)の重要な役割と責任。

7 「字を読めること」と、「紙背まで読み取ること」とは別

弁護士その他の専門家は、
「字を読む」プロ
かもしれませんが、
「字を読めること」
と、
「紙背まで読み取ること」
とは別。

字を読めても、紙背が読めない、といった手合もいる。

憲法14条は、法の下の平等を保障している。

紙背を読めば、
「法の下の平等は保障するが、逆に言えば、経済的不平等を容認している」
ということ。

これは、単なる言葉遊びやレトリックではない。

紙背にこそ、絶対的本質が書かれている。

「経済的平等」

「結果の平等」
を徹底して志向した、かつてのソビエト連邦は、国家規模で破綻した。

我が国や西側先進諸国は、
「経済的不平等」
を、断固として、徹底的に、容認し、保障し、死守してきたし、今後もそうする。

憲法14条が体制として保障する国家の姿は、紙背にこそ、その本質が描かれている。

これが、紙背を読む、という意味。

そして、こんなことは、法学部で習わないし、司法試験でも聞かれないし、司法研修所でも習わないし、一般の法律家もよく判っていない。

知っているのは、最高裁判事その他、一部のエスタブリッシュメントだけ。

8 「知性・知恵」と、「情報・データ」は別もの

「正確無比なデータ」

「詳細な情報」
よりも
「リテラシー」
が、
「瑣末な議論」
より
「大局」
「本質」
が、重要。

「記憶力」
すなわち
「データや情報の蓄積と効率的な検索という機能を実装して、誰が解いても正解が1つの自然科学上の命題・課題を間違いを犯すことなく、忘却せず、正確に、即座に解答する能力」
は今や無価値。

Googleやコンピューターといった記憶装置・演算処理装置は、確かに、便利。

原始人や未開の部族はさておき、スマホを持っていてGoogleで検索できるだけの人間を、ただ、スマホを持っていて検索できるから、といって
「記憶力のある物知り」
として尊敬したりしない。

クイズ東大王も、テレビで観ていて暇つぶしにはなるが、人生や仕事の大事、会社の生き死にに関わる大事を相談しようとも思わない。

ハサミは便利だが、ハサミを尊敬するバカはいない。

「問題を見出し、問題を設定し、課題を創出できた上で、Googleの特性を理解し、Googleを活用して、問題解決手法を生み出したり、それを金儲けに利用したりする人間」
は知性があり、価値がある。

大事なもの・重要なもの・価値あるものは、
「記憶力に長けた試験秀才や物知り」
ではなく、
「メタ認知が出来、問題を発見・特定し、問題を解決して、価値を創造できる」
ような本質的知性や根源的スキルを実装した人間。

「覚えること、記憶すること」

「正解がある問題で、正解を正確に答えること」
は、人生やビジネスや企業の問題解決能力としては、ほぼ無意味で無価値。

分厚い法律書をみても、個別具体的な企業活動や取引において法的課題を抽出する方法は、そこに書いていない。

当然ながら、分厚い法律書を正確に記憶した法律バカに、目の前の課題対処を聞いても、何も答えられない。

株主から提訴要求通知が内容証明郵便で突如送られてきてパニックに陥った企業が、
「会社法で『優』を取った法学部の学生」
に、
「こんなの来たんだけど、任せるから何とかして」
と言って対処をお願いした場合、どうなるだろうか?

この
「試験秀才の21歳の学生」
は、戦略的・効果的に対処して、企業を救うことが出来るだろうか?
それとも、歯が立たず呆然とするだけだろうか?

9 知性とは懐疑能力・創造的であり、実務知性とは結果を出せるまで合理的試行錯誤やゲームチェンジを継続する執着心と同義

知性とは、懐疑する知的能力や想像する知的能力のことであり、問題を予知し、問題を発見し、問題を特定・具体化し、展開予測をし、ストレステストを実施する能力を指す。

また、実務的知性とは、
「あの手・この手・奥の手・禁じ手・寝技・小技・反則技」
を捻り出し、ゲームチェンジを含めた合理的試行錯誤を構築・遂行し続け、
「何とかする」
「結果を出す」
まで往生際悪く執着するために働かせる知的能力や精神作用である。

10 リスク管理の肝は、リスクの発見・特定

企業法務とはリスク管理。

リスク管理で一番重要なことはリスクの発見と特定。

ほとんどの企業はリスクの特定はおろか、発見すらできていないし、楽観バイアスや正常性バイアスに罹患し、気付いてすらいない。

日本企業のほとんどは、課題抽出が圧倒的に出来ていないので、課題対処のはるか以前の段階で、躓いているのが現状。

11 「生兵法“務”」は大怪我のもと

「生兵法“務”」は大怪我のもと。

迷ったら聞く。

迷ったら聞ける環境を作っておく。

但し、聞く相手と聞く内容と聞き方を間違えないこと。

法務の失敗は、自分が出来ると思って自分の常識で処理して失敗するか、知識も経験も能力もない人間に頼って失敗するか、のいずれかがほとんど。

12 企業法務有事課題は、「正解も定石もない、正解があるかすらもわからない問題」

企業法務有事課題は、ほぼすべて、
「正解も定石もない、正解があるかすらもわからない問題」。

そんな
「正解も定石もない問題」
について、自信たっぷりに正解や定石を語る人間は、
「素数について1以外の約数を知っている」
などとほざくようなもので、どんなに立派な肩書があっても、その人間は、 バカか詐欺師。

企業法務界隈には、その手合がわりとはびこっている(判決までもつれ込んだ訴訟においては、
「絶対勝てます」
と自信満々に言い放った挙げ句敗訴する手合が、単純計算で50%近く存在する〔弁護士として空気を読んで和解を勧めたが、依頼者が暴走して敗訴した、という例外状況ももちろんあり得るが〕)。

13 他人も、自分も、信じない

人間関係であれ、組織間の関係であれ、国家間の外交関係であれ、
「正しい関係」
「ありうべき関係」
構築に最も重要なことは、
「相手をとことん信用しないこと」。

上司であれ、社長であれ、弁護士であれ、裁判官であれ、学者であれ、親であれ、友達であれ、身内であれ、他人はすべて信じない。

自分以外の他人は一切信じず、他者の悪意を予測しつつ、他者の愚考や愚行を想定しつつ、睨み返されても予測や想定を披瀝し、これに対する備えを提案し、後で行う喧嘩を先にやっておく。

「目先の波風」
を立てておかないと、後から津波に襲われる。

さらにいえば、最も優れた人間は、自分自身ですら信じない

14 「創造的な仕事」をするためには、「陳腐な形式や退屈なモラル」は邪魔、すごく邪魔、非常に邪魔、迷惑なほど邪魔

大きなビジネスや新規のプロジェクトは、フツーのことをフツーにやっていては成功などしない。

トラブルや想定外の連続の事柄が次々生じる。

例外事象の対処には、常識や良識やモラルや過去の成功体験は一切通用しない。

学校で習ったり、親から教えられた、キレイゴトや理想論も通用しない。

というか、圧倒的な現実に立ち向かうには、キレイゴトや理想論に従うと、却って死期を早めるだけ。

「世間で評価される仕事というのは、あらゆる形式やモラルを排して遂行されているもの」
である。

15 さらにさらに

さらに、興味があれば、畑中鐵丸が執筆したシリーズコンテンツ
苛酷な社会を生き抜くための「正しい非常識」
が参考になる(かもしれないし、ならないかもしれない)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01688_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(31)_各論7_その他の法務課題(法人間取引〔独禁法〕、小売〔消費者法〕、債権管理回収、会計税務、倒産処理、M&A、反社対応、ネットトラブル、欧米系国際ビジネス、非欧米系国際ビジネス)

1 法人間取引の法務マネジメント(独禁法対策)

0)序

法人間取引の法務マネジメント(独禁法対策)に関する基本知識・前提知識に不安がある方は、

を事前にご高覧下さい。

1 法人間取引の法務マネジメント(独禁法対策)

2 小売の法務マネジメント(消費者法対策)

0)序

小売の法務マネジメント(消費者法対策)に関する基本知識・前提知識に不安がある方は、

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1)小売の法務マネジメント(消費者法対策)

3 債権管理回収

4 会計税務

5 倒産処理

6 M&A

企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(1)~(9)

企業法務部員として知っておくべきM&Aプロジェクト(10)~(19)

7 反社対応

8 ネットトラブル

9 欧米系国際ビジネス

10 非欧米系国際ビジネス

企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト(1)~(2)

企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト(3)~(12)

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01687_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(30)_各論6_知的財産マネジメントに関する法務(チエ〔情報、技術、ブランド〕のマネジメント)

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知的財産マネジメントに関する法務(チエ〔情報、技術、ブランド〕のマネジメント)に関する基本知識・前提知識に不安がある方は、

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1 知的財産マネジメントに関する法務(チエ〔情報、技術、ブランド〕のマネジメント)

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01686_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(29)_各論5_ファイナンシャル・マネジメントに関する法務(カネのマネジメント)

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ファイナンシャル・マネジメントに関する法務(カネのマネジメント)に関する基本知識・前提知識に不安がある方は、

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1 ファイナンシャル・マネジメントに関する法務(カネのマネジメント)

事業発展・拡大を目的として事業に関連して戦略的に投融資を行う場合(ストラテジック・インベストメント)
と、
財務活動の一環として金融の利益を獲得するために行う場合(フィナンシャル・インベストメント

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01685_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(28)_各論4_製造・調達マネジメントに関する法務(モノの調達・製造・廃棄の法務)

0 序

製造・調達マネジメントに関する法務(モノの調達・製造・廃棄の法務)に関する基本知識・前提知識に不安がある方は、

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1 製造・調達マネジメントに関する法務(モノの調達・製造・廃棄の法務)

00741_モノのマネジメント(製造・調達・廃棄マネジメント)における企業法務の課題1: モノつくり環境の変化
00742_モノのマネジメント(製造・調達・廃棄マネジメント)における企業法務の課題2: 製造拠点の海外移転にまつわる法務課題
00743_モノのマネジメント(製造・調達・廃棄マネジメント)における企業法務の課題3: 製造現場管理や製造委託先管理にまつわる法務課題
00744_モノのマネジメント(製造・調達・廃棄マネジメント)における企業法務の課題4: リスク・アプローチによるコンプライアンス体制構築
00745_モノのマネジメント(製造・調達・廃棄マネジメント)における企業法務の課題5:トップ・マネジメントによる製造現場の不祥事情報の早期把握の重要性
00746_モノのマネジメント(製造・調達・廃棄マネジメント)における企業法務の課題6:製造委託先との関係構築

00981_企業法務ケーススタディ(No.0301):廃棄物処理コストを大幅削減じゃ!

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01684_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(27)_各論3_労務マネジメントに関する法務(ヒトの調達・運用・終了の法務)

0 序

労務マネジメントに関する法務(ヒトの調達・運用・終了の法務)に関する基本知識・前提知識に不安がある方は、

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1 労務マネジメントに関する法務(ヒトの調達・運用・終了の法務)

00732_労務マネジメントにおける企業法務の課題1:採用を慎重に行うべき理由
00733_労務マネジメントにおける企業法務の課題2:どんな人間を選んで採用しようとするのか(採用する側と採用される側・学生側のイメージギャップ)
00734_労務マネジメントにおける企業法務の課題3:採用した人間を如何にうまく使いこなすか(ヒトという資源活用における企業と労働者との間のイメージ・ギャップ)
00735_労務マネジメントにおける企業法務の課題4:解雇に関する規制とトラブル(ヒトという資源廃棄における企業と労働者との間のイメージ・ギャップ)

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01683_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(26)_各論2_内部統制・コンプライアンスに関する業務

1 概念整理その1:「企業倫理」と「コンプライアンス(法令遵守)」の関係整理

1)コンプライアンスの所掌範囲に関する説の対立

広義説・倫理包含説:コンプライアンス=法令遵守+倫理的要請の遵守
狭義説・倫理排除説:コンプライアンス=法令遵守のみ。倫理的要請の遵守は、別途の問題として議論すべき、リーガルマターとしてのコンプライアンスの議論と混同すべきではない。

2)倫理包含説(コンプライアンス=法令遵守+倫理的要請の遵守 )

(1)倫理包含説の立場からの法務対応例:
このスキームはたしかに法的には正しいかしれない。しかし、そんな前例のないスキームをやること自体、企業倫理的に大問題であり、コンプラ違反だ。横並びの業界に波紋を巻き起こすし、業界的にも世間の目からも奇異なやり方に映り、風評上厳しい状況に陥る。すなわち、あざといやり方だ、金儲け主義だ、と非難されるなど、世間やマスコミからバッシングを受けるかもしれない。法務の意見としてはNGだ。社長には、『コンプラ違反につきやったら大変なことになる。検討に及ばず』、と伝えておけ

(2)倫理包含説の問題点:
倫理包含説によるコンプライアンス運用は往々にして、法務活動のサボタージュのための弁解として使われる。すなわち、コンプラという実体なき概念で思考停止を正当化してしまう危険がある。何でもかんでも、少しでも問題がありそうであれば、緻密な法的三段論法による検証を懈怠して、「コンプラ違反」と言っておけば、「リスクの大元がなくなり、リスクや危機が消失する」という意味でリスク管理として法務の仕事が完了するので、仕事の負担から解放される。また、「法的三段論法の検証が面倒くさい」というより「コンプラ的に問題、コンプラ違反だから、やめといたほうがいい」と言うと、知的で高尚に聞こえるし、思考放棄が誤魔化せ、また、自己評価も維持・改善・向上を図れる。
参照:
00013_「コンプライアンス的に問題です」という応答は、企業法務的に大問題であり、法務部員の職責放棄と同じ
01161_疑似法務活動の概念整理>倫理課題・CSR等と企業法務との関係整理>(2)法令遵守と倫理を渾然一体のものと考える説(「法令・倫理一体説」)の限界その1
01162_疑似法務活動の概念整理>倫理課題・CSR等と企業法務との関係整理>(2)法令遵守と倫理を渾然一体のものと考える説(「法令・倫理一体説」)の限界その2
01163_疑似法務活動の概念整理>倫理課題・CSR等と企業法務との関係整理>(3)「企業倫理」と「企業法務」との概念峻別の必要性
01164_疑似法務活動の概念整理>倫理課題・CSR等と企業法務との関係整理>(4)学説の状況
01165_疑似法務活動の概念整理>倫理課題・CSR等と企業法務との関係整理>(5)まとめ

3)狭義説・倫理排除説

(1)倫理排除説の立場を取る法務対応例:
「法令を調べる限り、明確に禁止した条項はみつからず、所管官庁に対する非公式の意見照会でも、違反とすべき点は見当たらない、との発言を得ています。ただ、あざといやり方で、相手方への打撃が大きく、報道のされ方によっては、ウチが悪者になるかもしれません。その意味では、消費者の離反を招くかもしれず、得られる経済的効果とレピュテーション上の犠牲とのバランスを勘案する必要があります。実際、よく似た事例ですが、この分野における新しいスキームを先取りしたX社は、マスコミから避難を浴び、結局、当該スキームを撤回するという不名誉な選択を強いられ、株価も大幅に下落しました。法務としては、以上のような法律以外のリスクも付記させていただきますので、PR、IR上のシナリオについて、担当部署とよく議論の上で、ジャッジしてください」

(2) 倫理排除説も、企業活動から、一切「倫理」に関する価値追求等を、無視・軽視・排除せよ、とまで言っているわけではない。
「法令遵守の問題」と「世間体の問題」を分けて議論せよ、と言っているに過ぎない。
参照:
01117_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズB)内部統制システム構築・運用法務>(1)法務の定義及び射程
01544_「『コンプライアンス』への視点──攻めのリスク管理戦略」

2 概念整理その2:「コンプライアンス法務」と「内部統制法務」の関係

01117_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズB)内部統制システム構築・運用法務>(1)法務の定義及び射程
01118_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズ3B)内部統制システム構築・運用法務>(2)内部統制の関係

3 企業内従業者性悪説(リスクアプローチ)対企業内従業者性善説

01119_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズ3B)内部統制システム構築・運用法務>(3)法務遂行上の基本的視点

4 コンプライアンス法務・内部統制構築運用法務を遂行する実質的な意味と価値

問題の所在:なぜ、コンプライアンスや内部統制といった事業課題を遂行する必要があるのか?何かメリットがあるのか?

前提:
人は法を守れない
組織も法を守れない
企業は、普通に活動しているだけで、常に法を犯してしまう可能性は絶対なくならない

他方で、予防は必要。「絶無を目指す、根絶」などという幼稚で愚劣で非現実的な幻想を目指すものではなく、「大事が小事に、小事が無事に近づくような」現実的な対処として必要

さらに、リアルな必要性で言うと、不祥事発生時点における「経営陣の免責」を目指した環境構築(アリバイ作り)が必要

免責適格要件を充足した(後日、裁判所が内部統制構築義務を履行したと評価するに足る)コンプライアンス体制の構築の必要性・実質的価値

5 内部統制システムを構築・運用の実務

00724_内部統制構築の実務1:内部統制システムを構築するにあたって、どのような哲学や基本理念基づき構築すべきか?
00725_内部統制構築の実務2:内部統制とコンプライアンスの相違点
00726_内部統制構築の実務3:内部統制やコンプライアンスを進める体制を効果的に構築するための具体的タスクデザイン
00727_内部統制構築の実務4:タスク(1)コンプライアンス教育・コンプライアンス研修
00728_内部統制構築の実務5:タスク(2)違反の検知-内部監査制度及び内部通報制度
00729_内部統制構築の実務6:タスク(3)違反の調査
00730_内部統制構築の実務7:タスク(4)違反者に対する制裁
00731_内部統制構築の実務8:タスク(5)再発防止策の策定・運用

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01682_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(25)_各論1_会社法・ガバナンス(企業統治)に関する業務

1 序

会社法・ガバナンスに関する基本知識・前提知識に不安がある方は、


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2 株式会社制度

1)法人制度と有限責任制度

01502_株式会社には「責任者」などという者は存在しない1「有限責任」とは社会的・一般的には「無責任」とほぼ同義
01503_株式会社には「責任者」などという者は存在しないビジネス・ジャッジメント・ルール
01504_株式会社には「責任者」などという者は存在しない「法人制度」の本質とそのダークサイド
01505_株式会社には「責任者」などという者は存在しない会社が破産しても、社長も連座して破産するとは限らない

2)株式会社運営システム

00720_株式会社運営システムと国家運営システムとの相似性

3 取締役の「期待される役割・与えられている権限・責任」と「実体・実情」とのギャップ

01545_取締役の悲劇(1)_取締役なるためには、学校も、試験も、資格も、能力も、条件も何にもない。したがって、「取締役」というだけで、一定の知的水準や専門能力の裏付けとはみなせない
01546_取締役の悲劇(2)_取締役は、現実の知的水準に関係なく、会社法上、すべからく「経営のプロ」とみなされて、会社運営に関する大きな権限を与えられてしまう
01547_取締役の悲劇(3)世間知らずの「取締役」が約束手形に触れたことで始まる悲劇その1「取締役」氏、約束手形と出会う
01548_取締役の悲劇(4)世間知らずの「取締役」が約束手形に触れたことで始まる悲劇その2「取締役」氏、約束手形の換金に成功する
01549_取締役の悲劇(5)世間知らずの「取締役」が約束手形に触れたことで始まる悲劇その3「取締役」氏、知らない間に、手形の連帯保証人として、手形訴訟を提起される
01550_取締役の悲劇(6・終)_圧倒的大多数が法律知識を欠落している「取締役」が法的トラブルに遭わないようにするための推奨行動

4 会社法違反に対するペナルティとしての刑事罰

会社法や金融商品取引法においては、多数の利害関係者の利害を規律する関係上、特定の規範については刑事罰の制裁を以て履行を強制しています。

現実に、会社法違反に関する事案の多くが刑事事件に発展しており、この点において、企業組織運営上の法務リスクとして、刑事裁判も視野に入れざるを得ません。

参照:
01176_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境>刑事訴訟法

5 企業組織運営に関する予防法務課題
経営陣として、法務安全保障上、法務部にきちんと把握し、常に答えてもらいたい事柄として想定されるもの:
「企業経営に『失敗』した場合において経営幹部が負担しなければならない責任としては、どのようなものがあるか?」
→ 失敗の種類により、負担する責任の性質・軽重が異なる

1)経営上の失敗・経済合理性を欠如した経営(経営が下手くそで、儲けるどころか損して資産を減らした、資金繰りに失敗して銀行や取引先や社員・関係者等に迷惑をかけた)

(1)経営責任:
経営責任は発生する。辞任に追い込まれる。辞任を拒んでも、解任されたり、任期満了後再任されなかったりして、会社を追われる。

(2)法的責任:
よほどひどい失敗でもない限り、ビジネスジャッジメントルール(経営裁量保護の法理)により免責される。
参考:
00573_取締役の重い責任から解放するロジックとしての「経営判断の原則」

(3)オーナーとしての責任(オーナー経営者の場合におけるオーナーとしての責任):
株主有限責任(社会的意味としては、「株主無責任」と同じ)であり、責任なし(投資した金を無くすだけ)

2)法令に違反する失敗・合法性を欠如した経営(より大きく、より効率的に、より早く儲けようとするあまり、法令や定款に違反する経営を行い、それが露見した)

(1)経営責任:
やはり、経営責任は発生する。辞任に追い込まれる。辞任を拒んでも、解任されたり、任期満了後再任されなかったりして、会社を追われる。 →辞任・解任

(2)法的責任:
ビジネスジャッジメントルール(経営裁量保護の法理)により免責されず、法的責任は発生する。

いかにビジネス・ジャッジメント・ルールがあるといっても、法令違反行為には経営裁量が働く余地はなく、免責が一切なされない。例えば、取締役等が、投機取引を実施する際に為替取引や商品先物取引の複数の信頼性ある専門家の意見といった適切な情報を収集し、かつ取締役会決議といった適切な意思決定プロセスを経ていたとしても、明確な法令違反を構成する以上、ビジネス・ジャッジメント・ルールが働く余地はなく、これに関与した取締役が罪を免れることは、ほぼ不可能であるということになる。

参照:
00921_企業法務ケーススタディ(No.0241):善管注意義務とビジネス・ジャッジメント・ルール

ア 民事責任(善良なる管理者としての注意義務の違反):

(ア)株主代表訴訟(株主が会社に代わって、賠償請求)
参照:
01192_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>代表訴訟その1
01193_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>代表訴訟その2

(イ)株主からの直接の損害賠償請求

イ 刑事責任:

(ア)回収可能性がないにもかかわらず貸し付けを行うことは状況によっては背任罪を構成する可能性がある
参照:
00437_会社私物化をした場合に役員個人が負うべき刑事責任リスク
00994_企業法務ケーススタディ(No.0314):ナヌ? 傷ついた親友の会社を助けてやったら「特別背任」!?

6 ありがちな取締役の失敗事例

1)利益相反取引:
00591_企業法務ケーススタディ(No.0199):トップの公私混同取引が発覚した!

2)競業取引:
00508_取締役が競業避止義務に反して、ライバル企業となる事業を始めた場合の法的責任

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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